西川和久の不定期コラム
4万円前後で耐衝撃/防滴設計の12型Chromebook「Acer C851T-H14N」
2020年3月11日 11:47
日本エイサーは3月4日、おもに子供向けとして耐衝撃/防滴設計のChromebook「C851T-H14N」を発表、25日より販売を開始する。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
Celeron N4000を搭載した12型のChromebook
国内ではおもに文教向けということもあり、露出が少なかったChromebookだが、最近CMや量販店で専用コーナーがあったり、一時期より見かけるようになってきた。とは言え、海外はともかくとして、国内はWindows搭載PC、Macなどと比べるとまだまだ知名度が低く、利用者も少ない。
初期のChrome OSは、Chromeブラウザが起動するだけと、用途もかぎられていたが、その後Google Playストアに対応しAndroidアプリが動作可能になり、最近ではLinux(ベータ版)も動くようになった。こうなると筆者のように興味が出てきた人も少なからずいらっしゃるのではないだろうか。
新しいOSを試すのならできるだけ安価なほうが……。というニーズに合う1台が今回ご紹介する「C851T-H14N」だ。おもな仕様は以下のとおり。
【表】Acer「C851T-H14N」の仕様 | |
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プロセッサ | Celeron N4000(2コア2スレッド/1.1GHz~2.6GHz/キャッシュ 4MB/TDP 6W) |
メモリ | LPDDR4-3200 4GB(デュアルチャネル対応) |
ストレージ | eMMC 32GB |
OS | Chrome OS |
ディスプレイ | 12型IPS式HD+(1,366×912ドット/3:2)、非光沢、10点マルチタッチ対応 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 600 |
ネットワーク機能 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.0 Type-C×2(USB PD、Displayport Alt Mode対応)、USB 3.0×2、HD対応Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力 |
バッテリ/駆動時間 | 44.6Wh リチウムポリマー/約12時間 |
サイズ/重量 | 296×228.7×20.4mm(幅×奥行き×高さ)/約1.296kg |
その他 | 耐衝撃/防滴設計、米軍基準のMIL-STD 810Gに準拠 |
店頭予想価格 | 4万円前後 |
プロセッサはGemini LakeのCeleron N4000。2コア2スレッドでクロックは1.1GHzから最大2.6GHz。キャッシュは4MB、TDPは6W。メモリはLPDDR4-3200 SDRAMで4GB。デュアルチャネル対応なので2GB×2となる。ストレージはeMMC 32GBと少なめだが、Chrome OSなのでWindowsなどのほかの環境と比較しても意味がない。
グラフィックスはプロセッサ内蔵のIntel UHD Graphics 600。外部出力用としてUSB Type-CポートがDisplayport Alternate Modeに対応している。ディスプレイは12型IPS式非光沢のHD+(1,366×912ドット)。アスペクト比は3:2。10点タッチ対応だ。
ネットワーク機能はIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0 Type-C×2(USB PD、Displayport Alt Mode対応)、USB 3.0×2、HD対応Webカメラ、microSDカードリーダ、音声入出力。Type-CはPower Delivery(PD)対応なので専用の電源入力はなく、付属のACアダプタも45W出力のUSB Type-Cコネクタを備えたものとなる。
本体サイズは296×228.7×20.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.296kg。クラス的には少し重めだが、耐衝撃/防滴設計、米軍基準のMIL-STD 810Gに準拠している。
44.6Whのリチウムポリマーバッテリを内蔵し、駆動時間は約12時間。店頭予想価格は4万円前後。感覚的には税込みで4万円切っていればリーズナブルといった感じだろうか。
筐体はマットなオールブラック。ほぼプラスチック製なのであまり高級感はない。ただし、高さ122cmからの落下や60kg荷重に耐える米軍基準のMIL-STD 810Gに準拠しているので頑丈だ。実測で1,293gあるため、持った時見た目よりは少し重く感じるだろうか。
12型のディスプレイは非光沢で目に優しく、アスペクト比が3:2なので、一般的な16:9と比較して縦が長くWebサイトなどが見やすい。明るさ、コントラスト、発色、視野角なども良好だ。ただしハイエンド機のパネルと比較すれば映りは劣る。色温度が若干低め(黄色い)だろうか。いずれにしてもここは価格並みだろう。パネルは180度傾けることができる。
マルチタッチに対応しており、ピンチイン/アウトの拡大縮小もスムーズに行なえる。また未だにタッチでないとうまく動かないAndroidアプリがあるため、Androidアプリを使うならタッチは必修だ。
キーボードはアイソレーションタイプの日本語配列。主要キーのキーピッチは約19mm。パネルのフチが太い分、広めのフットプリントが確保され、歪な並びがまるでなく快適だ。打鍵感は少し軽めでクリック感がある。仕様によると、「防滴設計で、最大330mlの水をこぼしても排水可能」、「キートップは引き抜けない固定式構造」となっている。
タッチパッドは、パームレストも含め十分面積が確保されている。また筐体のなかでここだけがツルツルした質感で、操作感も悪くない。3本指で上にスワイプすると仮想デスクトップ切替など、多くのジェスチャーにも対応。
動作時の振動やノイズは皆無。発熱も試用した範囲ではまったく気にならなかった。サウンドはスピーカーが裏にあり、机などに音が反射して前に出るタイプだ。あくまでもノートPC的なカマボコレンジなのだが、驚くほどパワーがある。音楽や動画のライトな再生なら十分だと思われる。
見た目が平凡ではあるが、価格を考慮すると予想以上に堅実に作られている。このクラスの製品に言うのも酷かもしれないが、キーボードバックライトがあればなお良かった。
Google Octane 2.0が13,240と普通に使える性能
初回起動時の画面キャプチャはしていないが、言語の選択(デフォルト日本/日本語)、Wi-Fiへ接続、いくつかの承認を経てログイン画面となる。ここでGoogleアカウントを入力すれば、以下に掲載している最初の画面が現れる。またすでに同アカウントでChrome OSを使用している時は、環境がそのまま引き継がれる。
今回同社のサイトで知ったのは、この文面。「Google社からの制限によりChrome OSに標準搭載以外のプリインストールアプリはありません」。つまり正規のChrome OS搭載機であれば、初期設定はすべて同じということだ。これはメーカー色が出せないデメリットと、ユーザーにとっては何を使っても同じというメリットがある。
ログイン後の画面はご覧のとおり。下にタスクバー(左右にも配置可能)、右にコントロール/通知パネル、左端のボタンを押せばメニューが表示され、Windowsと似た操作となる。メニューの多くは各サービスへのショートカットだ。Chromeブラウザは拡張機能も含めまったく同じ。
加えてGoogle Playストアが使え、Androidアプリが動作する。このとき、OSのバージョンは9。仮想デスクトップは最近追加された機能だ。
ファイルアプリはeMMCやmicroSDカード上のローカルファイル、Googleドライブなどに加え、NAS(SMB)へのマウントにも対応している。DropboxやSFTPの項目もあり、このあたりは初期の頃から進化した部分であり、遜色なく自宅の環境にChrome OSが溶け込めるようになった。
さらに開発者ならグッと来るのがLinux対応だ。現在ベータ版扱いであるが、Debianでバージョンは10.1(Buster)。コマンド系はもちろん、Visual Studio CodeやdarktableなどGUI系も動作する。
流行りのGitHubとDockerでちょいと環境を作り、Visual Studio Codeでコーディング&デバッグというのもあっさりできる。この点はWindows上のWSLより動作が速く互換性も高い(WSL2が出ればまた違うだろうが、WSLは動作が遅く、加えてDockerが動かない)。
参考までにVisual Studio Codeとdarktableのインストール方法は以下のとおり。
# Visual Studio Codeと日本語フォント
$ curl -L "https://go.microsoft.com/fwlink/?LinkID=760868" > vscode.deb
$ sudo apt install ./vscode.deb
$ sudo apt install fonts-ipafont fonts-ipaexfont
# darktable
$ sudo apt install flatpak
$ sudo flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://dl.flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
$ sudo flatpak install flathub org.darktable.Darktable
コンソール上は内蔵しているIMEがそのまま使える。ただし、Linuxアプリに関してはIMEを別途インストールしなければならない。加えてファイルアプリでマウントしたファイルシステムも見えない。Linux上でのマウントが必要となる(独立したコンテナで動作しているので仕方ない部分ではあるが)。このあたりwrapperか何かでシームレスになればより便利なのだが……。
話は前後するが、設定画面はChromeブラウザのそれと同じだ。アップデートはChromeブラウザだけでなくOSごと更新される。ダウンロード後、再起動すればあっという間に更新となる。これはWindowsやMacにはない特徴と言えよう。初回起動時は79系だったが、更新したところ80系(執筆時)となった。
加えてGoogle Playストア、Linux(ベータ版)、デバイス関連として、タッチパッド、キーボード、ディスプレイ、ストレージ管理、電源の項目が追加されている。Powerwashは完全に初期化することが可能だ。
ベンチマークテストは、簡易式だがGeekbench 5とGoogle Octane 2.0を実行した。
Geekbench 5は、Single-Core 430、Multi-Core 803。Google Octane 2.0のスコアは13,240。参考までに「HUAWEI P20 Pro HW-01K」(2年前のハイエンドスマホ)のスコアは、Single-Core 387、Multi-Core 1,763。コア数が違うのでMulti-Coreは劣っているが、Single-Coreはよく似ている。またGoogle Octane 2.0のスコアも同程度だ。したがって普段使いには問題ないレベルにある。
バッテリ駆動時間は、明るさ、音量を50%にしてVLC for Androidを使いWi-Fi経由でフルHD動画を再生したところ約12時間半で電源が落ちた。仕様上12時間なので、ほぼ仕様どおりだ。明るさ50%は明るく、音量50%はそこそこ鳴っているので、実際の運用でもこの程度は動くだろう。
以上のように日本エイサーの「C851T-H14N」は、Celeron N4000、メモリ4GB、eMMC 32GB、12型HD+(3:2)を搭載したChromebookだ。見た目はフチが太く、少し今時ではないものの、その分、耐衝撃/防滴設計でしっかりしている。ChromeブラウザはもちろんAndroidアプリ、そしてLinuxも使えるちょっとおもしろい環境でもある。
おもに子供向けとなっているが、安価で普段使いなら問題ない性能ということもあり、Chromebook入門機としても十分。Chrome OSに興味がある人に使ってほしい1台と言えよう。