ソニー「VAIO Zシリーズ」購入記【前編】
~VAIO type S(SZ)、VAIO type Zに続く3台目のマイVAIO



品名ソニー「VAIO Zシリーズ」
購入価格369,800円プラスα
購入日2010年2月25日
使用期間2週間

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 2006年4月に「VAIO type S(SZ)」(VGN-SZ90PS)を、2008年8月に「VAIO type Z」(VGN-Z90NS)を購入したのに続き、2010年2月25日に「VAIO Zシリーズ」(VPCZ11AHJ)を購入した。いずれも発売日(受注開始日)の購入だ。

●モバイル+GPUを体現した製品

 こう書くと根っからのソニーファンと思われそうだが、そういうわけでもない。ソニー製品は基本的に好きだが、VAIOを除き、今個人で所有しているソニー製品はプレイステーション3とPSPくらいしかない。

 ではなぜ、PCはVAIOなのか? 過去の遍歴を見て、ピンとくる人もいると思うが、自分の求めるスペックがそれらにしかなかったからだ。それは一言で言うと、モビリティとGPUだ。

 これらの機種は共通して、13型クラスのサイズ、1.5kg前後の重量、6時間以上駆動するバッテリ、そしてGeForceを搭載している。Web媒体の記者としてモビリティを求めるのは当然として、なぜGPUが必要なのか?

 2006年頃筆者は、某3D MMORPGにはまっており、サブキャラをノートPCで動かそうと思い、VAIO type S(SZ)を購入した。ゲーム用なら15型クラスでより良いGPUを積んだものも当時たくさんあったが、前述の通り、PCは仕事にも使うのが前提だったので、必然的にこの機種を選定した次第だ。

 次のVAIO type Zは、その後継機種で、ほぼ同じ本体サイズと重量のまま、液晶が1,600×900ドットと当時としては最高の解像度に進化。GeForceも引き続き搭載するが、今度はチップセット内蔵のIGPと再起動なしに切り替えが可能になるなど洗練され、悩むことなく買い換えを決意した。

VAIO type S(SZ)。まだ手元にあるが、今は家でVドラムに繋いで、その練習用にしか使ってないVAIO type Z。つい2週間前まで現役で使っていた。新Zが出てなければ今でも不満は少ない

 そして、今回のVAIO Z。2月に発表/発売、3月頭に出荷開始されたばかりのこの製品は、やはりサイズと重量はほぼ変わらないまま、Calpellaプラットフォームへの順当なアップグレードしたのにとどまらず、1,920×1,080ドットの液晶、そして最大で4基のRAID 0 SSDと他に類のないスペックに進化した。

 これはもはやモバイルPCというより、モバイルワークステーションと呼んでもおかしくない構成である。あまりこのクラスのPCに興味のないユーザーからすると、「それは持ち上げすぎでは」と思うかもしれないが、割とソニー製品を避けてきた同業者も発売日に購入したというと理解の助けになるだろうか。

 詳細な製品の仕様や特徴、ベンチマーク結果は過去記事で紹介しているので、そちらを参照していただくとして、本稿ではシリーズを使い続けてきたユーザーの視点からのレビューをお届けしたい。

●毎度悩ましいBTO構成

 まず、BTOの構成は、OS Windows 7 Ultimate(64bit)、天板プレミアムカーボン、本体色ブラック、パームレストブラック、CPU Core i5-540M、液晶1,920×1,080ドット、メモリ4GB、ドライブクアッドSSD 512GB+DVDスーパーマルチドライブ、ワイヤレスWANあり、ワイヤレスLAN MIMO 3×3、ノイズキャンセリングヘッドフォン、指紋センサー&TPM、FeliCaポート、Webカメラ、USB×3、キーボード英字配列、キーボードバックライト、Sバッテリ、標準ACアダプタ、3年ワイド保証となる。

 この構成での価格は369,800円(当時のCPU割引キャンペーン込み)だが、3年ワイド保証の差額(15,000円)オフ、VAIO 5%オフ、 Zシリーズ買替応援(5,000円オフ)といったクーポンを持っていたので、これを利用し、実際の支払総額は332,060円となった。ちなみに、本体とは別にLバッテリ(24,800円)とポートリプリケータ(15,800円)も購入している。

 5万円前後が当たり前になってきたノートPCに、30万円以上つぎ込むのは酔狂と言われるかもしれない。ただ、過去のS(SZ)やZも同じくらいの価格だったが、それと比べ、本体のベース価格や、BTO構成を引き上げたときの差額はずいぶん安くなったと感じる。メモリ4GBと8GBの差額が2万円というのはその最たる例だろう。また、本製品の仕様を考えると、この価格は決して安いとは言わないが、十分納得のいくものだと思う。

 やや余談だが、新Zを買うにあたり、ソニースタイルで旧Zを下取りに出すことも考えた。しかし、まだ新Zが発表されていない2009年末の時点ですでに下取り価格は3万5千円程度だった。確かに購入から2年近く経つが、Core 2 Duo P9500を搭載し、まだ十分前線で使えるマシンなのに、これは買い叩きすぎだと感じた。そのため、下取りは早々にあきらめた(今だといくらなのかも知らない)のだが、知り合いのライターさんに5万円で買い取っていただけることになったので、それも含めると、実質の購入価格は約28万円と言うことになろうか。

 さて、このようなBTO構成にした理由を述べよう。OSは業務上、Professionalでもよかったのだが、セキュリティ面からBitLockerを使う可能性を考慮し、Ultimateとした。ちなみに、32bit版はBTOに用意されていない。

 天板や本体色、好みでプレミアムカーボン+ブラックの仕様にした。グロッシープレミアムカーボンも見た目は美しいのだが、指紋の跡が気になるのでやめた。

 CPUは購入当時、最上位のCore i7-620Mとの差額がたったの1,000円しかなかった。このCPUは、Core i5-540MとTDPこそ同じ35Wなのだが、平均消費電力が高いというレポートを見ていたので、バッテリ持続時間を優先させ、この選択にした。また、最近では、各種アプリケーションでGPGPUによるGPUの活用が始まり、CPUの重要性が下がってきているということもあって、CPUの性能にはさほどこだわらなくなってきた。

 液晶はこの製品にとって唯一無二の特徴なので、フルHD以外に選択肢はない。メモリは少し悩んだ。というのも、前述の通り、4GBと8GBの差額が2万円しかないからだ。今はまだ4GBで十分だが、64bit OSの普及率が高まってることから、今後それ以上のメモリを効果的に使うアプリケーションや状況が出てくることはあり得る。しかし、最終的には、今すぐには8GBの恩恵が得られそうになく、メモリは後からでも増設(交換)できる、そしてそれよりも、後述のSSDのせいで跳ね上がった価格を抑えたかったので、4GBとした。

天板はプレミアムカーボンにした。写真では見えないがうっすらヘアライン加工されているCPUはCore i5-540M、メモリは4GB、OSはWindows 7 Ultimate(64bit)液晶はフルHDを選択。このように、ブラウザを2つ並べると、Impress Watchの媒体ならほぼ2つを横スクロールなしで閲覧できる

 ドライブの選択肢は最も多く、パターンとしてはHDDのみ、SSD+DVD、SSD+BDの3つがあり、HDD容量は2種類、SSD容量は3種類ある。光学ドライブの利用頻度は少ないのだが、CDのリッピングや、出張時にも資料をCD/DVDで渡されることもあるため、HDDのみは除外した。また、本製品のSSD、特にRAID SSDはフルHD液晶とならぶ大きな特徴であり、性能向上を確実に体感できる(ちなみにそれまでのZはHDD搭載機)というのもあった。

 DVDとBDの差額は5万円。これは最新の外付けBDドライブ単体の値段が2万~3万円というのを考えると、非常に高い。もちろん、本製品のドライブは特注の薄型モデルなので、この価格になるのは致し方ないのは分かるが、それでも高く感じる。結局、個人的にはBDは自宅のホームシアターでしか観ないので、DVDということにした。

 悩ましかったのはSSDの容量だ。旧Zでは200GBのHDDを積んでいて、そのうち約130GBを使用していた。そのため、128GB SSD(64GB×2)は外れた。さて、256GB(64GB×4)にするか、512GB(128GB×4)にするか。この両者で性能差は、体感レベルではほとんどない。つまり、容量だけの差なのだが、これも5万円するのだ。高い。だが、今後も2年使い続けるとすると、さらに占有量が増えるだろうこと、そして本製品のSSDはコネクタが独自仕様で、空き容量が逼迫しても取り替えがきかないことから、えいや! と512GBを選んだ。

SSDは128GB×4によるRAID 0の512GBを選択。ちなみに、すでに仕事環境を構築してるので空き容量はだいぶ減っている光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブ

 ワイヤレスWANは、旧Zでも使っていた。仕事柄、出先で原稿を書いたりすることもあるので、搭載させた。WiMAXは、ここへ来て都内でも使えるエリアが広がり、スピードも速いのだが、すでにUSBアダプタを所有しているのと、日本全国どこでも確実につながることを重視し、ワイヤレスWANを選んだ。併せて、ワイヤレスLANは2×2にする必要がなくなったのと、差額が3千円と安いので、3×3(WiMAXとは排他選択)にした。

 ノイズキャンセリングヘッドフォンは、実はノイズキャンセル機能自体にはあまり着目していない。だが、マイク付きイヤフォンとして仕事で使えるかもと思い、追加した。

 指紋センサーは個人的には必須だ。これを使うと、各種Webサービスにアクセスするのに、IDとパスワードを手で入力しなくても、一度登録しておけば、指紋をスキャンするだけで自動入力できるからだ。基本的に各種サービスなどのパスワードはすべて違うものを使っているが、覚えられるようある規則性は持っている。しかし、この機能を使えば、記憶する必要がなくなるので、ランダムな英数字のような強固なパスワードを利用できる。SZの時から使っているが、非常に便利だ。

 FeliCaポートは、はっきりいってついでだ。今のところ、個人的にはさほど便利に使える局面は見当たらない。セキュリティ用途(ログインやファイルのロックなど)にも使えるが、それは指紋センサーで事足りる。それでも、差額がたったの2千円なので、ついでにつけてしまった。

 キーボードは昔から基本的に英字配列を使っているので、今回もそうした。バックライトは割と本体重量にも影響するのだが、今までまれにではあるものの、暗がりで使っていて苦労したことがあるし、格好いいので搭載させた。

 バッテリは取材や出張で使うので、Lバッテリも必須なのだが、前述の通り、これは別途購入した。OfficeやATOKはすでに持っているので、不要だった。

無線系は、無線WAN(GPSもセット)、無線LAN(3×3)、Bluetoothという構成本体色はブラック、キーボードは英字配列。指紋センサー、FeliCaポートも追加キーボードのブラックライト。自動的にふわっと点灯/消灯する

 さて、最近ソニースタイルでは、先行発売のエントリー受付→先行注文→一般注文→出荷という流れを取っている。VAIO Zのエントリー受付が開始されたのは2月16日の13時。筆者は、13時3分にはエントリーを済ませた。

 エントリー応募者に対しては、2月25日の午前10時くらいから、過去の購入金額の多い人から順に受注開始のメールを送信し始めた。筆者は過去2台のVAIOを購入した実績があるので、やや優先され、午後1時前に案内が届いた。

 が、つながらない。このあたりから、急に注文希望者が殺到したようで、全く持って注文を進めることができないのだ。その日は、その後に取材が控えていたため、その時点での注文は諦め、ひとまず仕事をすることにした。

 仕事が一段落してからは、合間を見て注文しようとするがやはりだめ。このあたりで、夜を徹した作業になりそうな予感がしてきた。その翌日はたまたま有給休暇だったので、いったん自宅へ帰ることににし、ひたすらF5キーを連打した。

 その間、自分の注文作業にある致命的なミスがあったり、3時頃から8時頃まで睡魔に抗えず寝てしまったりで、最終的に注文が完了したのは、丸24時間が経過した26日の午後0時過ぎだった。今回は裏で「Torne」の受注開始もあったみたいで、いつにも増して混雑していたようだが、何はともあれ、もう少しスムーズに注文できるようにしていただきたい。

 ソニースタイルでは注文時に配送日の指定もできる。筆者の場合は最速が3月31日だった。しかし、この指定日はかなり余裕を持たせてあるようで、VAIOにおいては、配送日を指定しないと往々にして出荷が早まる。そのため、指定をせず待っていたところ、なんと約2週間も繰り上がり、3月16日に受け取ることができた。

 後編では、見た目、使い心地、そして性能についてのレポートをお届けする。

(2010年 4月 5日)

[Text by 若杉 紀彦]