ソニー「VAIO Zシリーズ」購入記【後編】
~見た目、使い心地、性能はどうか?



品名ソニー「VAIO Zシリーズ」
購入価格369,800円プラスα
購入日2010年2月25日
使用期間3週間

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。

 「VAIO Zシリーズ」購入記の後編をお届けする。ちなみに、弊社の別のスタッフもつい先日VAIO Zを購入したが、納期は1カ月以上かかるそうだ。BTOの構成にもよるが、発売から1カ月以上が経っても、人気を博しているようだ。

●高級さが洗練された外観

 それでは、見た目、使い心地、そして性能の観点から個人的な感想を述べていきたい。

プレミアムカーボンの天板。うっすらヘアラインも入っている

 天板はうっすらヘアライン処理されたプレミアムカーボン。金属的な質感すらあり、豪華さがある。また、全体の剛性も高く、つまむように持っても、たわんだりしない。

 キーボード面の筐体部分は、新たに削り出しのアルミ素材となったが、こちらは旧Zよりもより黒に近い色となり、個人的には渋みが増したと思う。パームレストは樹脂系の素材で、吹きつけの軽いテクスチャがあり、こちらもぱっと見には金属のようにも見えて格好良い。ただし、触った感触は、当然だが樹脂そのもので、旧Zに比べ高級感が失われてしまったように感じる。

 芸が細かいことに、本モデルから本体色に合わせて、バッテリの色もブラック系とシルバー系の2色が用意されている。ただし、Lバッテリはブラックのみとなる。

 液晶はフルHDとなったことで、これまでの1,600×900ドットから表示できる情報量が1.44倍に増えた。これにより、ブラウザとテキストエディタを左右に並べて、情報を参照しながら文字入力といったことが無理なくできる。また、単一のアプリケーションであっても、例えばOutlook 2007で件名のリストと、本文を上下のペインで表示させたときなどの閲覧性が高まる。

 フルHDモデルは出荷時に文字のサイズが中(125%)に設定されている。筆者は両目の視力が1.5以上あるので、小(100%)かつブラウザでの文字サイズを小にしたが、視認性に問題はない。だが、やはり視力が低い人に見せると、この設定はきついようだ。

 向上したのは精細さだけではない。色域も高くなった。RGB 8bit表示が可能になり、Adobe RGBカバー率も96%ということで、映像の表現力も一段高まっている。…ハズだ。断定できないのは、今のところ驚くような違いを体感できていないため。観る人が観るべきものを観れば分かるのだろうが、BDビデオを観たり、一眼レフで撮影した写真をレタッチしたりといった用途には使っておらず、また、一番使用時間が長い会社では24型の液晶につないでそちらだけで見ていることも手伝って、まだそこまで堪能できていないのだ。ただし、旧Zでは視線を動かすと、RGB 6bit表示による波模様のようなものが見えるのだが、これはほぼなくなった。

 なお、これは固体の問題だが、画面中央部分に1つ黒点、いわゆるドット落ちを見つけてしまった。残念だが、諦めるほかない。1ドットなので1mm四方にも満たない小さな点なのだが、良すぎる視力がここでは徒となってしまい、折に触れ、軽いため息が出る。

 液晶は表面処理が変わったようで、旧Zよりも写り込んだものの輪郭がややくっきり出るようになった。しかし、自宅でもいろんな角度/格好で使ってみたが、映り込みが気になったことは一度もない。

旧VAIO type Zの画面。「ゴミ箱」の文字の幅は7mmを切る程度新VAIO Zの画面。「ゴミ箱」の文字の幅は6mmを切る程度。旧Zから大幅に小さくなったとは感じないマウスカーソルの中央の黒ずみがドット落ち。見つけても落ち込むだけなので、特に探してないが、今のところ1つだけ確認している
●ファンノイズが激減
バックライトキーボードにすると、キートップがつるつるした感じになり、皮脂によるてかりがやや気になる

 続いて使い心地。キーボードは、キーの大きさや配置は旧Zと全く同じだが、バックライトモデルだけは、キートップのテクスチャがなくなり、つるつるした感じになった。これは、まだ完全には馴染めないでいる。このせいで、皮脂がついた際のてかりが気になる。また、今でこそだいぶなくなったが、使い始めは指が滑って、タイプミスすることもあった。とはいえ、キータッチは欠点と言う程のものではない。慣れでカバーできる範囲だと思っている。キーストロークは旧Zより気持ち浅くなってるらしいが、体感できないほどで、十分な深さがある。タッチは若干軽くなった。

 キーボードバックライトは、視認性を確保できていても、プロジェクターを使うために薄暗くされた部屋などでもばっちりオンになる。周囲から見ると、目立ってかっこいいのだが、こういう状況だとバッテリを無駄に消費してる気になる。オンにする明るさの閾値を設定できればいいのだが、それはできない。もちろん、夜中に部屋で電気を消したまま、ふとPCを使いたいときなんかは便利だ。

 重量はほぼ変化していないので、持ち歩く際の感覚には変化はない。ただし、それまでのHDDからSSDに変わったことで、例えば机に置いたりする際、HDDモデルでは衝撃検知センサーが割と敏感に反応するのだが、これに気を遣わずに済むようになった。

 本機のGPU切り替え機構は、新たにACやHDMIの接続を検知して自動切り替えするオートモードが加わったが、最新のOptimusは採用しておらず、基本的な仕組みは旧Zと同じだ。しかし、切り替えにかかる時間はかなり短くなっている。旧Zはリカバリ直後、新Zは個人的な利用環境を構築済みというわけで、若干新Zの方が不利だが、それでも旧ZはGPUからIGPへの切り替えが約17秒、IGPからGPUが約12秒かかるのに対し、新Zでは前者が約3秒、後者が約9秒といずれも大幅に高速化されている。

 また、ソフトウェアインターフェイスも改善されている。旧Zでは、スイッチを切り替えると、まず切り替えを行なう旨のダイアログがでて、そのOKを押すと、アプリケーションが起動している場合(ほとんどがそうだろう)、アプリケーションを終了しないとデータが失われる可能性がある旨のダイアログも出る。しかし、新Zでは2回目以降は警告を出さないようにするチェックボックスが用意され、OKボタンを押す必要がなくなった。

DirectXなどのAPIをフックしているアプリケーションが起動していると、GPU切り替え時に警告が出る

 ただし、DirectXやDXVA、CUDAなどのAPIを利用するアプリケーションが起動している場合、そのアプリケーションをユーザーが終了させるか、切り替えソフトに強制切替させるかを選ばせるダイアログが出る。筆者が普段使うアプリケーションで警告が出るのは、Sleipnir、PowerDVD、Paint Shop Pro X2など。特に、Sleipnirはメインで使うブラウザなので、常時起動しているが、強制切替すると一部描画がおかしくなる。ので、長時間駆動が不要な場合は、バッテリ駆動でもGeForceをオンのままにしている。

 普段は焦点が当たりづらいが、特筆しておきたいのはファンノイズの低下だ。挙動を観察していたところ、CPU負荷が3割以下なら、ファンの回転数は最低限にとどまるようだ。この時のファンノイズは、実質皆無と言っていい。もちろん音は出ているが、排気口に耳を近づけて初めて聞こえるレベル。オフィスどころか、周りに誰もいない自宅であっても、生活音にかき消されて聞こえない。ノイズの種類も、一般的な風切り音とは違い、「ジジジ」といった感じなのも寄与しているのかもしれない。

 これに加え、普段のCPU負荷も低いレベルに抑えられている。VAIOには、便利なのだが、詳しい人間にはちょっとお節介とも言えるコンテンツ系ソフトが多く入っている。これらの一部は、メディアファイルが保存されると、バックグラウンドで解析をかけたりする。旧Zはリカバリを直後に近い(各種アップデートは実施済み)の状態で常にCPU負荷が10%前後ある。ほかのアプリケーションを起動すると、すぐに3割程度に達して、常時ファンの回転数が上がってしまう。

 OSやアプリケーションのバージョンが違うため正確な比較ではないが、新ZのCPU負荷は、出荷時の状態で1%前後しかない。現在では、解析系のソフトはサービスを強制停止させているが、普段使いのアプリケーションを多数立ち上げていても、2~5%前後で安定している。新Zでも高負荷が連続するとそれなりのノイズを発するが、その機会は3Dゲームプレイ時くらいで、大幅に減っている。これは非常に評価が高い。

●オーディオ周りとポートリプリケータには難あり

 このように多数の改善点が挙げられる一方、オーディオ周りは全般的に弱まった。まず、スピーカーは音量が確実に下がった。最大音量にしても、ソースによっては不足感を感じたり、音が割れ気味になることもある。まがりなりにも、フルHD液晶とBDを搭載できる機種なら、もう少しがんばらないとだめだろう。

 ヘッドフォン出力については、音質はつなぐイヤフォンやヘッドフォンに大きく依存するが、少なくとも音量の点でスピーカーより格段にましだ。ただ、一緒に購入したノイズキャンセリングイヤフォンの音は、こもったような感じで、音楽をじっくり聴くのにはあまり適していない。ちなみに、本機は旧Zで省略されたSound Realityが復活しているのだが、それを使うためのアプリケーションが搭載されていないようだ。

 ノイズキャンセルの能力は、これまで使ったことがないので、他の製品と比較はできない。とりあえず、なにも音を出していない状態で、ノイズキャンセルのオン/オフを行なうと、その効果を実感できる。ただ、これはイヤフォンがカナル型で密閉性がいいので、ノイズキャンセルをオフにしていても、外部の騒音はある程度遮断される。

 むしろ、このイヤフォンはマイクとしての利用価値が高いと思っている。ノイズキャンセルは、イヤフォンのユニットに内蔵されたマイクで外部の騒音を広い、ノイズ成分に対して逆の位相の音を出すことで、これを打ち消す。そのため、OSからは当然、スピーカーとマイクが接続されたと認識され、これを既定のデバイスとすれば、普通のマイクとして録音に利用できるのだ。

ノイズキャンセリングイヤフォン本体の外側に外部ノイズを拾うためのマイクを内蔵している。これは通常のマイクとしても使える
【サンプル録音】ノイズキャンセルをオフにして編集部のノイズを録音【サンプル録音】ノイズキャンセルをオンにして録音

 もう1つ、オーディオ周りで欠点だと思っているのが、標準のマイク。これがヘッドフォンジャックのすぐ横、つまり右手の平の下あたりにある。仕事柄、OneNoteでメモを取りながら録音するので、標準マイクで試したところ、キータイプの音はもちろんのこと、タッチパッドをなぞる音まで克明に録音されてしまった。ノイズキャンセリングイヤフォンなら、PCから少し離れた位置に置いておけるので、この問題を解消できる。ただ、こっちはこっちで、繋いだときに、まれに音声出力が死んでしまうことがある。ドライバの問題だと思うので、アップデートを望みたい。

 これはユーザーが限定的だが、ポートリプリケータについても紹介しておこう。これは、ACアダプタ、USB 2.0×4、DVI-D、ミニD-Sub15ピン、Gigabit Ethernet×2を備えている。

 旧Zでも使っていたが、新Z用はまずUSBが1ポート増えた。これは素直に便利だ。Ethernetが2つあるのは、当初なんだろうと思っていたのだが、単にハブとして機能するらしい。

新Zのポートリプリケーター端子は背面に集約。黄色いシールはEthernetの保護用
旧Zのドッキングステーション。手前半分は折りたためる構造背面の端子。新ZよりUSB 2.0とEthernetが1ポートずつ少ない

 DVI-Dの先には24型のWUXGA液晶をつなげており、本体と合わせ、1,920×1,080ドット+1,920×1,200ドットという2画面構成が可能になる。これを利用するときにはSPEEDモードにする必要がある。

 基本的には外部液晶にしか出力してないのだが、ポートリプリケータから取り外しても、画面が本体に戻らない。どうやら、外部出力につなげたままになっているようで、何も見えない状態でFn+F7(外部出力の切り替えホットキー)を押して、エンターキーを押すと復帰する。また、設定で液晶を閉じたときと開けたときに「何もしない」にしているのだが、いったん閉じて開けると、外部液晶が切断される。マニュアルにはほとんど使い方が書かれていないので、これらが仕様なのかどうかすら分からないが、これも改善を望みたい。なお、HDMIではケーブルを抜くと、すぐに本体に映像が戻る。

 また、大きく気になるのが、「アンドックボタン」がなくなったことだ。SZや旧Zではポートリプリケータ(当時の名称はドッキングステーション)を、ソフトウェア的に切断させるためのボタンがついていた。ので、ちょっとノートを持ち出したいときは、これを押して(あるいはWindowsのシャットダウンメニューからドッキング解除を選ぶ)、画面に通知が出てから取り外していた。

 これがなくなったということは、このポートリプリケータはいつ取り外してもいいという扱いになったようだ。これは楽に聞こえる。しかし、USBにはHDDなどを繋いでいる場合があり、取り外そうとした瞬間に外部HDDに書き込みにいくことも十分考えられる。この点を考えると、新しい仕様には不安を感じる。

【4月12日追記】ポートリプリケーターのマニュアルには記載がないが、VAIO Zの電子マニュアルには、「ポートリプリケーターを本機から取りはずすときは、必ず本機の電源を切ってから取りはずしてください。電源を切らずに取りはずすと、作業中のデータが失われるおそれがあります。」と記載されている。ポートリプリケーターの仕様として考えにくいのだが、これが正しい使い方のようだ。この件についてご教示いただいた読者の方に感謝します。

 もう1点苦言を呈すなら、少し本体をはめにくくなった。旧Zはバッテリあたりを支点にして置いて、手前を下ろせばはまったのだが、新Zでは本体を水平にして、真上から位置合わせをしつつ載せる操作が必要になった。とはいえ、これは非常に細かい点であることを付記しておく。

旧Zのドッキングステーションは「UNDOCK」ボタンを押してから取り外すようになっていたが、新Zではなくなったちなみに、新旧問わずドッキングコネクタの右上と左上に金属の接点がある。これは旧Zだが、本体をはめるときにそれに注意しないと、このように底面の塗装を削ってしまうことがある

●まさかメール受信速度まで上がるとは

 次に性能についての所感。Core i5-540M+GeForce GT 330Mということで、本製品はよほど重い3DゲームやフルHD動画の編集/コンバートなどを除き、ほとんどのコンシューマ用途で十分な性能を発揮できるといって言い。具体的なベンチマーク結果の数値については、関連記事にすでに掲載されている。というわけで、ここでは旧Zと比較した体感的な差を中心にお伝えしたい。

 やはり、性能差を一番感じるのはSSDだ。とにかく速いの一言に尽きる。例えば、各種ファイルのインデックス作成。Windowsではデスクトップ検索のためのインデックスをバックグラウンドで作成する。PCを乗り換えたり、OSを入れ替えたりするとき、筆者は数千個のファイルを移し替える。このインデックス処理は旧Zの場合、一晩とか平気でかかっていた。

 今回も同様に、旧Zから必要なファイルを一気に新Zにコピーしたのだが、たぶん1時間かかっていない。たぶんというのは、きっちり計測するのを忘れていたためで、データをコピーし終わったあとに、何気なくインデックス処理を確認したら、完了となっていたのだ。

 アプリケーションの起動も当然速い。Outlook 2007やPaint Shop Pro X2といった重めのソフトも10秒とかからず立ち上がる。前者についてはメールのデータサイズによって左右される部分もあるが、長年使っているだけに、明らかに速いのが分かる。

 驚いたのは、「メールの受信速度」まで速くなったことだ。筆者宛に届くスパムメールの量は半端じゃない。数えたことはないが、1日に受信する1,000~2,000件程度のメールの95%はスパムだ。そのため、朝起きたときや、海外に出張して初めてネットにつながった時などは、数百件のジャンクメールを一度に受信する羽目になる。

 こういうとき、これまでは、回線がどれだけ速くても、「ぱっ、ぱっ、ぱっ」という感じで、受信件数が増えていた。筆者はこれまで、これが最高速度なのだと信じていた。

 ところが、新Zで同じように数百件を受信したところ、「ずどん」と一気に受信が完了したのだ。どうやら、以前まではHDDの速度がボトルネックになって「受信速度」が遅くなっていたらしい。これは予想だにしなかったSSD効果だった。

 具体的な性能について、簡単ながらベンチマークも測定してみた。といっても、一般的なものはすでに過去のレビューで行なっているので、個人的に仕事でよく使うツールで測ってみた。内容は、デジカメで撮影した320×240ドット30fpsのQuickTime(40MB Motion JPEG)動画を、QTConverterで無圧縮AVI(370MB)に変換。続いて、そのAVIの映像にVirtualDubでロゴを挿入して、AVI(554MB)で保存。最後にこれをAzFLVEncでFLV(300kbps)に変換。それぞれの時間を測定した。

 結果としてFLVへの変換は大きな差が出なかったが、それ以外では2~3倍の高速化が確認できた。やや偏りのあるテスト内容だが、筆者個人としてはこれが実際に業務上の作業内容なので、この結果が直接的な性能向上として感じられている。

【表】ベンチマーク結果

新VAIO Z旧VAIO type Z
QTConverter8秒15秒
VirtualDub4秒13秒
AzFLVEnc20秒23秒

 GPUについては、実はVAIO type S(SZ)を買ったときのようにゲームをプレイしなくなったので、3Dグラフィック用途には今のところ活用していなかったりする。とはいえ、もちろん3D性能も気になるのでストリートファイターIVベンチを実行してみた。設定は1,280×768ドットのデフォルトだ。結果としては、旧Zのスコア5,900、11.43fpsに対して、新Zはスコア9,356、53.27fpsという圧倒的な差が出た。新Zは通常のゲーム画面(キャラが2つのみ登場)では、ほぼ60fpsを維持しているので、アーケードやプレイステーション3とほぼ同じ感覚で遊ぶことができる。率直な意見として、モバイルノートに期待する以上の性能だ。ちなみに新ZのCPU内蔵GPUでは、スコア5,913、11.58fpsだった。

ストリートファイター4ベンチの様子。通常のゲーム画面ではほぼ60fpsを維持ベンチマークの結果。ハイエンドGPUにはかなわないが、快適にプレイできるとの判定

 さて、前回少しだけ言及した通り、現在は3DよりもGPGPUの用途の方が気になっている。また、DXVAを利用した動画再生のアクセラレーションも、割と頻繁に恩恵を受けることになる。この点について、いくつか参考となる結果をお伝えしようとしたのだが、どうも挙動に怪しい点がある。そこで、この点については、結論を少し先延ばしにして、別途改めて、検証結果をお伝えしたいと思う。

 モバイルノートということで、バッテリの駆動時間も重要な性能の1つとなる。ソニーによる標準バッテリでの公称駆動時間は約6.5~7.5時間。これはもちろんGeForceをオフにして、CPU内蔵GPUを使った場合の時間。2月にレビューした際には、無線LANをオンにした状態でBBenchで約6時間という結果が出た。

 普段筆者が発表会などに参加するときは、OneNoteを使ってメモと録音をとる。同時に、多くの場合、無線LANか無線WANをオンにした上で、Sleipnir(タブを10~20個)、Outlook 2007、Windows Live Messenger、Twitterクライアントも立ち上げて、各種メッセージを受信できるようにしている。また、バッテリは寿命を考慮し、いたわり充電で8割しか充電させないようにしている。

 こういった状態で実際に仕事をしながら、何度かバッテリ駆動時間を測ってみたところ、80%から50%に減った時点で約1時間が経過し、残量による駆動時間は約1時間50分程度になることが分かった。つまり、トータルで3時間弱使える計算になる。これは、無線LANでも無線WANでもおおむね変わらなかった。

 厳密な比較ではないが、旧Zでも似たような環境(8割充電や利用するアプリ)で作業し、だいたい感覚としては3時間程度使えていたので、バッテリ性能はほとんど変わってないと言える。

 先の約6時間という結果を聞いていたので、8割充電でも4時間ちょっと位は動くことを期待していたのだが、目論見が甘かったようだ。とはいえ、一般的な取材であれば3時間有れば十分で、また、それ以上が必要なら無線やアプリケーションを落とすことで4~5時間は使えると踏んでいるので、個人的なバッテリ性能評価は及第点といったところだ。

●大幅な性能の向上と、従来通りのモビリティ

 まだ使い始めて3週間程度だが、過去の2機種と比べ、この製品が一番満足度が高い。バッテリ駆動時間や大きさ、重量と言ったモビリティ性能が同じままで、性能が向上しているのだから、当然と言えば当然かもしれない。

シリンダーの左側はACコネクタ。旧Zはここが一体化されていないので、アダプタの着脱時にややぐらつくが、それがなくなった

 だが、一番強く感じているのは、数値には表わしにくい完成度が高まったという点だ。例えば外観。シリンダー構造など大枠でのデザインはほかの現行モデルと共通だが、削り出しのアルミを贅沢に使った本製品のデザインは洗練されている。もちろん、そうすることで値段が跳ね上がっているかもしれないが、この値段分の高級感が十分にある。

 また、ファンノイズの少なさや、GPU切り替え速度の向上なども、あり合わせのパーツの組み合わせでは実現できない、開発者のこだわりを強く感じる部分だ。

 システムの安定度もかなり向上したと感じている。過去の2製品はそれぞれ、Windows XPとVistaだったので、それに影響を受けている部分も多分にあるが、特にGPU切り替え回りの安定度が良くなった。旧Zでは切り替えに1分近く待たされたり、その結果切り替わらなかったりということがままあったが、今のところそういう不具合には一度も出会っていない。

 筆者は、旧Zを使い出した頃から会社でデスクトップを使わなくなったが、新Zは液晶の解像度も性能もデスクトップに全く引けをとらなくなり、これ1台で完結するようになった。筆者のような常に持ち歩いて使うモバイル用途から、据え置きメインのプロフェッショナルクリエーション用途、開発用途、そして個人的なエンターテイメント用途にまで、本機は幅広く対応できるマシンであると言える。

 とはいえ、また2年後に次世代Zに買い換えていることは、想像に難くない。

(2010年 4月 9日)

[Text by 若杉 紀彦]