買い物山脈

デカけりゃ冷えるはず! そう思って420mmの簡易水冷にしてみたら……

製品名
ARCTIC Liquid Freezer II - 420 Rev.4
購入金額
1万9,800円
購入日
3月18日
試用期間
約1週間
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
AMD Ryzen 7 5800Xに、420mmサイズの簡易水冷「ARCTIC Liquid Freezer II - 420 Rev.4」を組み合わせてみた

Ryzen 7 5800XにしたらCPUファンが常時うなりだした

 AMDのCPUが安くなっていると聞いて、これはさすがに買い時だろうと判断し、Ryzen 7 5800Xに飛びついた。なんとなくそろそろ新型CPUが発表されるのではないか、みたいなタイミングだったので、その影響で値下がりしていたのだと思う。が、買いたい時が買い時である。新型が圧倒的にパフォーマンスアップしていたとしても後悔はない。ないんだぞ!

 それはともかく、Ryzen 5 2600Xからのアップグレードである。2600Xも、筆者のような執筆仕事(その他RAW現像、動画編集、ゲームなど)には十分な性能を発揮していたのだけれど、マザーボードがX570だし、どうやらソケットAM4も今の世代がほぼ最後っぽいので、値下げでコストパフォーマンスが高くなった5800Xを選んでみたわけだ。コア数が増えて仕事の生産性も、もりもり上がること間違いなし!

AMD Ryzen 7 5800Xに交換した

 ところが、CPUを交換してすぐに気付いたのが、CPUファンの騒音。2600Xの時はよほど大きな負荷をかけたときでなければなかったファンノイズが、5800Xにした後はアイドル状態でも聞こえてくる。試しにモニターツールでチェックしてみたところ、CPUの温度はアイドル時で50℃前後だった。ちょっとWebブラウザを操作しただけでガッと温度が上がり、CPUファンがうなり出す。

空冷CPUクーラーはサイズの「BIG SHURIKEN3」。採用されているファンはKAZE FLEXで、最大回転数は1,800rpm(±10%)。2600Xの時はとても静かだった

 UEFIで温度に応じたCPUファンの回転制御をしているから、騒音はこの設定内容によるところもあるのだけれど、動画のエンコードをすると下記のグラフのように90℃を超えるような状況になっていた。当然CPUファンは100%全開。それでも温度上昇は止めきれていないので、これよりもっと時間のかかる動画エンコード処理をさせると、サーマルスロットリングによってCPU性能が顕著に落ちる可能性も考えられる。

空冷CPUクーラーで動画エンコードしたときのCPU温度、ファンなどのステータス推移
空冷CPUクーラーでゲームをプレイしたときの同推移

 これは大変よろしくない。CPUに優しくないし、とにかくうるさい。涼しい3月でこれだ。これから春、夏と暖かくなってきたときのことを考えると思いやられる。今のうちにCPUを冷却する方法を本気で考えなければ! ただ、いくら冷えてもうるさいのは困る。静音化を目指すなら簡易水冷を試してみたい。そのうえで径が大きく、同じ回転数でもより大きな風量が得られるファンが良さそうだ。

 そんなわけで、多くの製品で採用されている120mmファンではなく、140mmサイズのファンを備えた280mmの簡易水冷システムを探していたのだが、ラジエータはデカければデカいほど冷えやすいはずである。もっとデカいヤツはないものか。もちろんある。140mmファンを3個装着した420mmサイズの簡易水冷システムだ。280mmよりも、360mmよりも、420mmの方がデカいんだから、より冷えてくれるに違いない。

 で、その結果選んだのが、420mmの簡易水冷システムの中でも実売2万円(購入時時点)以下という比較的安価な「ARCTIC Liquid Freezer II - 420 Rev.4」(以下、Liquid Freezer II)。とにかくデカい。パッケージからして見たことのない形状だ。そしてなにより今どき珍しく光らないのがいい。地味ながらもキンキンに冷やしてくれそうだ。しかしこの時、安易に420mmを選んだことで、あんな苦難に見舞われるとは思いもしなかったのである……。

「ARCTIC Liquid Freezer II - 420 Rev.4」のユニークなパッケージ。デカいラジエータが斜めに入っていることが容易に想像できる
箱から取り出したLiquid Freezer II本体。3連ファンがはじめから取り付けられていた
写真だと大きさが想像しにくいので、CPUと比較してみた。これでデカさが伝わるだろうか
この規則正しく並ぶラジエータフィンがそそる
分厚いラジエータ。厚みは38mm
ファンは140mmサイズ。回転数は200~1700rpm(±10%)とのこと
水冷ヘッドにはVRM冷却用のファンを備えている
銅ベースのプレイトを採用
同梱物。水冷ヘッド固定用のパーツが揃っている。グリスもちゃんと付属
正規代理店で購入したものにはLGA1700用のマウントキットが添付。インテル第12世代CPUにも対応する

420mm対応のミドルタワーケースに入れようと思ったら

 筆者が使用しているケースはFractal Designの「Meshify 2」。前面メッシュのポリゴン形状が特徴のミドルタワーだ。決して小さくないケースではあるが、大きすぎるわけでもない。それでも天面に420mmサイズのラジエータが装着可能なポテンシャルをもつ。コイツにLiquid Freezer IIをブチ込めば5800Xもバッチリ冷えまくりでウッハウハである。

筆者の仕事用マシンのケースはFractal Design「Meshify 2」

 自宅に届いたLiquid Freezer IIをワクワクしながらさっそく取り付けようとしたが、どうもギリギリだ。420mmサイズではあるが、これはあくまでも3連ファンのサイズを意味しているのであって、ラジエータ全体の長さは約460mmになる。さらに厚みはラジエータとファン(+ねじ頭)で合計70mm近く。前後のケースファンが邪魔になるのでファンの位置を下げて固定し、それでもすんなり入らないのでケース後方のファンを外し、天板を外し、その天板にLiquid Freezer IIを先に固定してからケースに取り付けようとしたが、いろいろ試行錯誤して最終的に諦めた。悔しいッ!

ラジエータ全体の長さは実測すると約459mm
厚みも68mmくらいある

 ケースとしてはギリギリ420mmサイズを取り付けられそうではある。でも、マザーボードの背面インターフェースを覆うシールドの厚みが邪魔になった。このシールドがあと5mm薄ければ収まったのに……。天板に新たなねじ穴を切ってラジエータの位置をずらすことで、もう少し追い込めそうではあったが、それでも数mm足りない感じだった。

マザーボード背面インターフェースのシールドがつかえてLiquid Freezer IIを奥まで押し込めず、インストールを断念

 しかしまあ、こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。5800Xを冷やすためには420mmのLiquid Freezer IIが(筆者には)どうしても必要なのだ。ではどうするか。マザーボードを換えるのも1つの方法だが、手間もリスクも大きい(どんなマザーボードにしても干渉する可能性を捨てきれない)。

 あとはケースをもっとデカいヤツにする方法もある。これはわりと簡単だ。なので、同じMeshifyシリーズのフルタワーケース「Meshify 2 XL」をすぐさまポチッた。CPU、Liquid Freezer II、ケースの3点セットの交換ですごい出費になったような気もするが、自作PC界隈ではよくあることだ。しょうがない。ああしょうがない。

仕方がないのでフルタワーケース「Meshify 2 XL」(左)を購入した
高さと奥行き、内部空間の広さがここまで違えばLiquid Freezer IIも入るだろう

空冷から簡易水冷に変えて、どれくらい冷えっ冷えになるのか

ミドルタワーケースからとりあえず空冷CPUクーラーのまま移行。なんだかスッカスカな感じ

 2日後に届いたMeshify 2 XLにさっそくPCパーツを移行。まずはこれまでと同じ空冷CPUクーラーのままで、CPU温度、CPU使用率、CPUファンの回転数の推移を見てみた。結果は以下の通り。

フルタワーケース、空冷CPUクーラーで動画エンコードした結果
フルタワーケース、空冷CPUクーラーでゲームをプレイした結果

 フルタワーならではのエアフローの余裕からくるものだろうか、動画エンコードではピーク時で約3℃低下した。しかし温度が上昇傾向なのは変わりがなく、根本的な解決になっていない。ゲームプレイ時も1℃ほど下がり、全体的に穏やかな温度変化となっているようだが、効果的な改善とは言えないだろう。ファンは相変わらずほぼフル回転なので、うるさいままだ。

 そんなわけで、いよいよLiquid Freezer IIを投入してみる。Liquid Freezer IIはケース前面への取り付けにも対応するが、今回は天板に固定することにした。ミドルタワーに比べて天板付近のスペースには十分な余裕があり、干渉する箇所は全くなし。Liquid Freezer IIでは、ラジエータに対するファンの取り付け方によって送風方向をカスタマイズできるが、今回はデフォルトのまま、ケース内部から外部に向けて排気する形で取り付けた。

マウントをマザーボードに取り付け
水冷ヘッドにもマウントをセット。この写真ではネジを間違えているので注意(スミマセン)
安全を期して天板を取り外し、ラジエータを取り付けてからケースに装着することにした
ケースに装着したところ

 電源ケーブルは、Liquid Freezer IIの水冷ブロックから伸びる1本(4ピン)のみ。これをマザーボードのCPUファン用のコネクタに接続する。システムによってはラジエータのファン用と水冷ポンプ用の2本のケーブルを接続するタイプもあるが、Liquid Freezer IIはCPUファン・ポンプ(と、水冷ブロックに搭載されたVRM用ファン)兼用のようだ。

 通常、CPUファンコネクタはPWM制御なので、この場合はポンプなどもPWM制御になる可能性があり、なんとなく不安はあるが、マニュアル通り接続する。さあ、どれくらい冷えるんだ!?

CPUにグリスを塗り、水冷ヘッドも装着
ホースの長さはわりとギリギリ
電源はマザーボード側のCPU FANコネクタからとる
装着完了

 まずは動画エンコード。下記のグラフにある通り、ピークでも71.4℃で、ミドルタワーの空冷と比較してなんとマイナス約20℃を達成した。フルタワーの空冷と比べてもマイナス約17℃。まさしく冷えっ冷えである(実際、70℃は熱いけど)。ピーク自体が処理途中に来ていることから、CPUの温度上昇を完全に押さえ込めていることがわかる。これなら長時間の高負荷処理も安心して任せられそうだ。

フルタワーケース、Liquid Freezer IIで動画エンコード
フルタワーケース、Liquid Freezer IIでゲームプレイ

 エンコード処理完了後の温度は、空冷だと元の温度近くに下がるまで相当の時間を要していたが、Liquid Freezer IIではそのタイミングも早い。さらにファンの回転数も処理完了直後に低下し始めているので、大きなファンノイズが発生する時間が短く済んでいる。

 ゲームプレイにおいても、ミドルタワーの空冷からマイナス約17℃、フルタワーの空冷からマイナス約15℃と顕著な効果があった。全般的におおよそ55℃前後で推移する状況で、こちらも不安はない。ファン回転数はおおむね60%とたっぷり余裕をもって駆動している。

 では、騒音の方はどうか。感覚的には「うるさい」と思うことがなくなった気がするけれど、空冷の時は120mmのCPUファン1つ、対してLiquid Freezer IIは140mmで低回転とはいえ3個。しかも天板に取り付けていて、計測機器により近いところで稼働しているという点でも不利だ。測定結果は下記のようになった。

温度も把握しつつ、ミドルタワー(空冷)とフルタワー(Liquid Freezer II)それぞれで、アイドル時とピーク時(動画エンコード時)の騒音を筐体から20cm離れた位置から測定。ケースファンの構成は同一
アイドル時およびピーク時のノイズ測定結果

 アイドル時は低回転ではあるものの、やはりファンが3個あるのが不利に働いたようだ。空冷のときよりノイズは少し大きくなっており、仕事中はほとんどの時間帯で低負荷であることを考えると、かえって動作音の多いPCになってしまった(ただし、空冷だとちょっとした処理が走るだけであっという間にファンの回転数が上がるので、グラフにあるような低ノイズを実感できることは少ない)。

 しかしながら、高負荷時は6dBほど低下しているので、以前に比べだいたい半分くらいの静かさになっているようだ。たとえばゲームをプレイしていても耳障りに感じる騒音は小さくなっているので、長時間より快適に遊べることになるだろう。

冷却効果は期待以上。ノイズは設定変更やケースファン交換で抑えたい

 結果としては、420mmサイズのLiquid Freezer IIによる期待以上の冷えっぷりには大満足。だけれど、静音性という面ではまだ改善の余地がありそうだ。

 ここまで冷えているのであれば、ある程度温度が上がることを許容して、アイドル~低負荷時のファン回転数をUEFIでより低く調整する選択肢もとれる。また、現在は固定回転になっているケース前後のファン(3個)をPWM制御のファンに交換するのも有効かもしれない。

 なんにせよ420mmのデカいLiquid Freezer IIは冷える、というのは間違いなさそうで、これからの暖かくなる季節に向けてとっても安心である。