買い物山脈
苦難を乗り越えつつも、3万円で10コアXeon環境をゲットする(後編)
2018年4月24日 11:00
- 製品名
- Xeon E5-2680 v2
- 価格
- 20,975円
- 試用期間
- 1週間
- 製品名
- ST-E5S_2011
- 価格
- 7,043円
- 試用期間
- 1週間
一部の世の中的には「Intelが連邦軍、AMDがジオン軍」というイメージがあるようだが、これは正しくない。Xeonを使ってこそジオン軍なのである。正しい読み方は「ジーオン」なので嘘ですが。
前編をお読みになった読者にとって、AliExpressやら淘宝網での購入は、中国語が苦手だとハードルが高く感じるかもしれない。筆者も手放しで購入を推奨するわけではないが、購入時に発生したトラブルは、クラウドの翻訳サービスなどを使って、チャットのコピー&ペーストである程度対処できるだろう。
作業の負担を軽減したいのなら、(Android)スマートフォンに「Google翻訳」と「百度輸入法」をインストールしてみることをおすすめする。Google翻訳では「タップして翻訳」をオンにすれば、チャット画面で中国語を選択&コピーするだけで、オーバーレイで日本語に翻訳してくれる。一方、百度輸入法は日本語で音声入力するとそれをリアルタイムで中国語に翻訳する機能があるので、それを駆使すれば、なんとかコミュニケーションはできるだろう。
さて、いよいよ先日入手したXeon E5-2680 v2と“Intel X79”マザーボードを見ていくとしよう。
意外と質実剛健なマザーボード?
さて本題のマザーボード。ST-E5S_2011という「製品名」は、CPUソケットの横に貼り付けられていた。おそらくOEM先の名称だろう。購入時は「双為」ブランドとされているものを購入したのだが、淘宝網を見ればわかるとおり、同様のマザーボードはほかのブランドとしても出されている。
詳しく調べていくと、どうやらこれらはShenzhen Xinlizhi technologyというOEMメーカーが製造しているらしいことがわかった。筆者が購入したのは、「3.5B」という製品のようである。
CPUソケットのリテンションはかなりの傷物だった。保管状況が悪かったのだろうか。2本のメモリスロットと拡張スロットは赤色で、淘宝網の写真(どちらも青)とは異なるが、製品情報には注釈があり、出荷する時期によってスロットの色が異なるとのことだったので、筆者がたまたま赤にあたったと言ったところだ。
VRMヒートシンクはネジ止めされていた。一方でチップセットのヒートシンクはプッシュピン留めで、筆者が入手したときはチップと接地せずに浮いていた。コア欠けを防ぐための緩衝材の片方が、チップコンデンサの上に乗っていたためで、筆者が手直しした。
製品の寿命に関わる電源部に関しては、VRMコントローラにuPI Semiconductor製の「uP1618A」を採用している。このコントローラは6+2フェーズのもので、Intel 7シリーズ世代のマザーボードで採用実績がある。
MOSFETはUBIQ Semiconductorの「QM3098M6」+「QM3092M6」の構成。CPU電源部以外のMOSFETもUBIQ製だった。あまり馴染みがない同社の名前だが、ハイエンドのRadeonやGeForceビデオカードの多くで同社のMOSFETが採用されており、それを踏まえると、本製品の電源部はさほど悪くない部品選別だと言える。
ただ、高負荷が続くとMOSFET付近はそれなりに熱くなるので、できればトップフロータイプの大型CPUクーラーでMOSFETをまとめて冷やすか、なんらかファンをつけて熱対策をしたほうが良さそうではある。
電源周りを含めすべてのコンデンサはアルミ個体コンデンサとなっている。メーカーは、おそらく中国・深センのFenghua Ruilong Technology製のもの。寿命や信頼性については未知数だが、同社のWebの紹介によれば月産1,500万~2,000万個クラスの製造規模となっているので、それなりに供給実績はありそうだ。
オーディオコーデックはRealtekの「ALC662」。24bit/96kHzの5.1ch DAC、20bit/96kHzの2ch×2 ADC内蔵しており、エントリーレベルとなる。Gigabit EthernetネットワークコントローラはRealtekの「RTL8111F」で、これも低価格マザーボードで採用実績が多い。
この世代のチップセットはUSB 3.0コントローラを備えていない。そのため本製品もVIAの4ポートUSBホストコントローラ「VL805」を使って、USB 3.0機能を提供している。VL805は4ポートをサポートしているため、本製品は背面パネルに2ポート、ピンヘッダに2ポート用意している。ピンヘッダが背面パネル側にあるのは残念だが、このあたりは配線コストを抑えたのだろう。
メモリスロットは4基用意されているものの、LGA2011環境標準のクアッドチャネルではなくデュアルチャネル構成であった。筆者が試してみたところ、外側だけ装着してもPOSTせず、かならず内側のスロットから接続する必要があった。このため、メモリスロットはTトポロジーではなくデイジーチェーンで接続されている可能性がある。
SATAは合計4ポートだが、6Gbpsに対応したポートが1基のみで、残り3基は3Gbps留まりとなる。足周りの“狭さ”は、この世代のチップセットの宿命とも言える。
Xeon E5-2680 v2は、40レーンものPCI Expressバスを備えているのだが、本製品の拡張スロットはPCI Express x16が1基、同x1が2基。せっかくの多レーンを活かせないのはやや残念だが、格安マザーボードに複数のPCI Expressを要求するのは贅沢だろう。まあ、ビデオカード1枚の構成+アルファ程度なら問題ない。
意外に思われるかもしれないが、筆者が一番気に入ったのはPCI Express x16スロット。拡張カードの抜け防止のツメが、カードの挿入で自動で留まるタイプではなく、手動でスライドしなければならないものだからだ。
ビデオカードの挿し替えや、ビデオカードに隠れたSATAポートへのケーブル接続といったメンテナンス時、ツメが勝手に留まるタイプだと、大きなCPUクーラーをつけた場合、大変アクセスしにくくなる。CPUクーラーを外せばよいが、それだとグリスを塗り直さなければならないので手間だ。そこでCPUクーラーを外さずに作業すると、今度は留めのツメがなかなか外れず、勢い余ってヒートシンクで手を切ってしまい血だらけになること必至だったのだが、本製品では最初から留めないようにできるのがうれしい。
CPUソケットのリテンションやDDRメモリスロット、PCI Expressスロット、USBポート自体にはメーカーの刻印がないため、どこ製なのかわからない。とは言え、試してみた限りではまったく問題なく動作したので、頻繁に抜き差しをする人でもなければとくに問題になることはなさそうだ。
まとめると、コンデンサ以外は意外にもメジャーなパーツで固められており、安い割には比較的まともな作りであると言えよう。
なっちゃってX79
さて、このクラスの中国製マザーボード、淘宝網の製品紹介では「X79主板(マザーボード)H61芯片(チップセット)」やら「X79-B75芯片」やらの表記があるのだが、これはいったいどういうことか。チップセットのヒートシンクを外したさいの写真で“ピン”と来た読者は鋭い。そう、搭載されているチップセットが明らかにIntel X79 Expressではないのだ。
以下に、ASUSのIntel X79 Expressチップセット搭載マザーボード「P9X79 DELUXE」のチップセットの写真を再掲載するが、Intel X79 Expressはサブストレート上に逆コの字の金のパターンがある。一方本製品のチップセットの金のパターンは3つに分かれている。これは、Intel Z68 ExpressやIntel Z77 Expressチップセットに見られる特徴だ。
デバイスマネージャー上でも、USBコントローラとしては「Intel 6 Series/C200 Series」との記載があり、CPU-ZやSiSoftware Sandra上からは、「Intel Q65 Express」と認識された。ということで、本製品に搭載されていたチップセットは、Intel X79 Expressではなく、Intel Q65 Expressなのだ。
当然、今までのLGA2011マザーボードではこのような構成見たことがないので、「果たしてそんなことはできるのか?」と言われそうだが、Intelから示された公式のブロックダイアグラムを見る限り、さほど難しいことではないように思われる。下にIntel Q65 Expressに似た構成のIntel H67 Expressのブロックダイアグラムと、Intel X79 Expressのブロックダイアグラムを並べてみたのだが、違いはFDIぐらいで、CPUとチップセット間の接続は20GbpsのDMIで共通だ。よって、LGA2011のプロセッサを動作させられるかどうかは、(極論)BIOS次第といったところだろう。
おそらく本製品はBIOSでIntel Q65 ExpressとLGA2011の組み合わせを認識させられるようにしたものだと考えられる。本製品はSATA 6Gbpsポートが1基しかないが、これは明らかにIntel Q65 Expressの制限から来ているのだろう。多分、Intel Q65 Expressを上位のZ68やP67のように振る舞わせることはできないが、チップセットではDMIバスの接続先をとくに制限していないため、こういった構成が可能になったのだと思われる。
ASRockは以前に、Intel P67 Expressチップセット(LGA1155対応)を旧世代のLGA1156プロセッサに対応させた変態マザーボード「P67 Transformer」をリリースしていたが、このあたりも、Intel 6シリーズチップセットはDMIの接続先のCPUをとくに制限していないことを示唆している。
結果、このマザーボードは「なんちゃってX79マザーボード」なのだ。淘宝網ではこのようなIntel X79マザーボードを「山寨(ニセモノ・模造品の意味)板」と呼んだりするのだが、はっきり言ってなにか先立つ手本になるようなものがあるわけではないし、それどころかオリジナリティ溢れているので、「変態板」のほうがふさわしい気がする。
ちなみにXeon E5-2680 v2はデュアルプロセッサまでサポートしているし、PCI Expressを40レーンも持っているのだが、このマザーボードではそれらの機能が封印されることになる。デュアルプロセッサに関しては中古のマザーボードを買うしかないと思うが、マルチグラフィックスを使いたければこのあたりも用意されている。
邪道すぎるCPUクーラーリテンション
マザーボードだけでもかなりの変態度が高いのだが、その度合いをさらに高めるのが、製品に付属していたプラスチック製のリテンションだ。この形を見て何に使うのか一発でわかった読者はかなりのPC自作マニアだとお見受けするが、そう、AMDのレバー式CPUクーラーを留めるためのリテンションなのだ。
IntelのCPUにAMDのクーラーをつけられちゃったら、変態どころの話ではなく邪道だ。変態チップセットのバカ安いマザーボードと、本来お高いであろう10コアのXeonを組み合わせ、自作erなら家に1つや2つぐらいは転がっているであろうAMD用クーラーを取り付ける。それを側面アクリルのケースに組み入れ、中途半端な自作PCの知識を持った人に、AMDスタイルと圧倒的なマルチスレッド性能を見せびらかし、清々しい顔で「つい先日、Ryzenで組んだんだ(キラッ」と嘘をつく。
--邪道だ。邪道すぎる。だがそれに憧れたユーザーがRyzenを買うのなら、それもまたいい話ではあるような気がする--と、妄想半分に話が進んでしまったが、じつはこのリテンション、AMDのリファレンスCPUクーラーを取り付けられない(涙)。AMDリファレンスクーラーはベース部が広く、このリテンションのフレームに当たって装着できないのだ。
このリテンションに取り付けられるのは、ベース部が狭く、ヒートパイプで上部のフィンに熱を運ぶタイプのCPUクーラーに限られると思われる。編集部にあったサイズの「兜2」なら取り付けられたのだが、兜2はそもそも標準でLGA2011をサポートしているのであまり意味はない。サイズの初代「兜」や「忍者」、「鎌アングル」、「刀」シリーズや、Zalmanの「CNPS9500」、「CNPS9700」シリーズなら、再び日の目を見られるかもしれない。
ちなみに同リテンションがユニークなのは、斜めにもツメがついている点。よって、CPUクーラーおよびリテンションの装着方向によっては、斜め上に吹き上げたりできる。ただ、本製品のファンのピンヘッダは2基だけとなっており、うち1基はPWM制御対応の4ピン、1基は回転数固定の3ピンである。冷却に関しては別途考慮する必要あると言えそうだ。
まともすぎるBIOS
「安い物なんて、どうせ見た目がまともでも中身を伴ってないでしょ」。言わんとしていることはわかります。ところがこのマザーボード、意外にも(中身である)BIOSもなんとかなっちゃっているのである。
項目1つ1つに関しての詳細は説明を省くが、ちゃんとEIST(Enhanced Intel Speedstep Technology)に対応していて、負荷に応じたCPUのクロック制御プランを用意しているあたりから、PCI ExpressバスやSATAポートの詳細の設定、温度に応じたPWMファンの制御といったあたりまで用意されている。
唯一筆者が試してダメだったのがS3サスペンドで、Windows 10上からサスペンドに入ることはできたが、復帰しても画面が暗いままであった。まあ、古いマザーボードでS3サスペンドが不安定なのは、筆者的に何度も経験しており、トラブルシューティングについては若干疲弊気味だ。
とは言え、本製品はLGA2011マザーボードにしては珍しく起動が速いので、電源オン/オフでもさほど気にならない。おそらく、Intel Q65を使っているのと、Intel Management Engine(Intel ME)周りの実装がバッサリ切り捨てられているためだろう。OS上からもIntel MEが見えず、ドライバがインストールされることもないようだ。
ちなみに、今回使用したXeon E5-2680 v2ではCPUのオーバークロックの設定がないが、筆者に先んじてこのなんちゃってX79マザーボードを入手したロシアのフォーラムによると、Core i7やXeon E5-1xxxシリーズではきちんと表示され、非公式(?)パッチを当てれば39倍という制限も突破できるのだという。
ただ、メモリクロックに関してはDDR3-1866まで引き上げることはできる。筆者が試してみたところ、少なくともHynixのCFRチップを使ったメモリでは、安定してDDR3-1866で動作させることができた。
フルスペックのXeon E5-2680 v2
Ivy Bridge世代のCPUの詳細については、過去の後藤弘茂氏に記事を参照していただきたいが、ざっくりおさらいすると、Ivy Bridge世代のハイパフォーマンスモデルは、“Ivytown”と呼ばれ、Ivy Bridge-E(デスクトップ向け)、Ivy Bridge-EP(2/4ソケット向け)、Ivy Bridge-EX(8ソケット向け)の3種類が用意されている。
Xeon E5-2680 v2は、このうち「Ivy Bridge-EP」に属するモデルとなっている。Ivytownでは、6コア、10コア、15コアの3種類のダイが用意されているが、Xeon E5-2680 v2は10コアを利用。Ivy Bridge-EPの最大Turbo Boostクロックは、最大で4GHzに達する(E5-2687W)が、これは8コアモデルであり、10コアモデルは3.6GHz(E5-2680 v2/E5-2690 v2)が最高なので、ほぼフルスペックダイのモデルとなるわけだ。
Xeon E5 v2には15コアのラインナップがなく、12コアにとどまる。15コア版ダイにあって10コア版ダイにない機能といえば、リングバスの切り替え機能(参考記事:Intelの15コアCPU「Ivytown」の3リングバス)となる。じつは筆者はこの機能に興味があったのだが、残念ながら今回検証はできない。とは言え、やはり3つのコア無効にされているダイより、無効になっているものがないダイのほうが気持ちいい。
Xeon E5-2680 v2はベースクロック2.8GHz、Turbo Boostクロック3.6GHzで動作。リプレースもととなるA10-6800Kがベース4.1GHz、Turboクロック4.4GHzなので、かなり低い印象は否めないが、IPC(クロックあたりの命令実行数)はXeonのほうが上であるため、まったく問題ない。というより、3GHzちょっとあれば、そこらへんの普通の3Dゲームもストレスなく動作するはずだ。
とりあえずマザーボードに装着して軽くベンチを回してみたが、Ryzen 7 1700と比肩する性能であった。Ryzen 7 1700はマルチスレッド時の効率が良いので、8コアでも10コアのXeon E5-2680 v2に近い性能が出るのだが、シングルスレッド性能についてはトントンと言ったところ。クロックも似たようなものなので、はっきり言ってRyzenにはもうちょっと頑張ってほしかった。
Cinebench 15なども測ってみたが、これもRyzen 7 1700にやや劣る程度だった。しかし、Haswell世代のコンシューマ向け最上位であるCore i7-5960Xよりは高いスコアが出ているので、5年前のCPUが今でも通用する仕様だとはっきり分かった格好である。
Xeon E5-2680 v2はAVX2命令やAVX-512命令などをサポートしておらず、これらの命令を活用する新しいアプリケーションでは性能が振るわない可能性がある。とは言え、ゲームを中心とした一般用途においてはそのような話はあまり聞かれないし、いずれにしても個人で使う分には満足できる性能だ。
ちなみにXeonというと「どうせ爆熱+爆音でしょ?」と言われそうだが、Xeon E5-2680 v2はTDPが115Wと、同じ10コアのCore i9-7900Xと比較しておとなしい。筆者は、90mm角ファンを利用したThermalrightの小型サイドフローCPUクーラー「TRUE Spirit 90M Rev.A」を使ってみた(なお、製品本来のリテンションはLGA2011非対応だが、筆者が別途持っているMacho Rev.Bのリテンションを用いて装着した)が、OCCTのLinpack(AVX利用)負荷では55℃に届かなかった。Xeonはオーバークロックができないので、このクラスのCPUクーラーで十分だ。消費電力もLinpack時で155Wと、べらぼうに高いわけではない。
複数のゲーム放置に最適?
ちなみに、前編で「PUBG用」と書いた10コアのXeon+廉価X79マザーボードだが、もう1つ販売業者が推奨している使いかたが、複数のオンラインゲームの「一括放置」だ。
一部オンラインゲームでは、プレイヤーが操作せずにオンラインのまま放置させておくことができる。たとえば、2001年に登場したMMOPRG「ラグナロクオンライン」や「ファイナルファンタジーXI」あたりは、不用品を指定価格で出しておき、他プレイヤーが自プレイヤーを調べたときに自由に買えるようにする「バザー」と呼ばれる機能を実装していたが、自プレイヤーがオンラインにならないと購入されないので、バザーを出したまま放置したり寝たりする「寝バザ」が当たり前だった。
この機能(というか単なる使いかただが)は寝ているあいだにプレイヤーが金銭を得るだけであったが、2006年前後になってくると、一部のゲームでは自動で(自プレイヤーより弱めの)周囲の敵を倒してレベルアップをする機能を実装を実装するようになる。有名なところでは「グラナド・エスパダ」あたりだろうか。PCのみならず、一部スマートフォンのMMORPGでも同様の機能が実装されていたりする。
さらに2015年に登場した「黒い砂漠」では、ついに「放置プレイ」をある程度前提になってくるシステムになった。たとえば川辺や海辺での「釣り」は、プレイヤーが自ら操作することも可能だが、バッグに空きがあるかぎり自動で釣ることが可能。馬は走らせておけばレベルが上がるが、これもプレイヤーがあらかじめ指定のルートを作って、オートランで周回させておくことで、自動で馬を育成できる……といった具合だ。これらはプレイヤーが自らの手で操作すると、途方もない時間がかかる。しかも、黒い砂漠は、ゲーム画面を最小化しておけばGPUやCPUリソースをほとんど消費しない機能が実装されていたりする。
さらに、Webブラウザゲームでも放置が少なくない。例を挙げると、「艦隊これくしょん」も修理のあいだはほぼ放置、一世を風靡した「Cookie Clicker」も放置の時間が長い。そして中国では、放置を前提としたゲームが多数登場しているようだ。
とは言え、複数のゲームを同時起動して同時に放置するのは、4コア環境では限度がある。10コアのCPUなら複数のゲームを安定して放置でき、効率的にレベルアップが目指せる、というのが販売業者らのメッセージのようである。
古いファイナルファンタジーXIに関しては、ほかのゲームと同時起動しようとすると「DirectXを初期化できませんでした」といったエラーメッセージが出て起動できない。しかし比較的近代的な3Dゲームなら、複数起動できるものもあるようだ。よって、一括放置はもちろんのことだが、「こっちをやっているあいだはほかのものを放置」といった効率的なプレイも、10コアXeonなら可能になるわけだ。
長時間放置となると気になるのは消費電力だが、筆者の環境(Corsair CX430M、メモリ8GB、GeForce GTX 950、Crucial C400 256GB+WD Black2)で黒い砂漠を最小化して放置した場合60W前後だった。メインストリームのプラットフォームと比較してやや高いが、24時間フルで放置しても月2、3百円程度の差なので、さほど目くじらを立てるほどでもないだろう。
多コアが当たり前の世界に
筆者はいままで少なくともビデオカードで3回、初期不良に当たっているので、「今回も初期不良にあたって動作しなかったりCPUが燃えたりしたら、サポートとか返品とか記事のネタが増えるなぁ」と期待していたのだが、見事にその期待を裏切る買い物となった。もうしばらく安定性を検証して、大丈夫そうなら業務用PCに置き換える予定だ。
IntelはSkylake世代で、コンシューマ向けチップセットでXeonを使えることを排除し、さらに上位のXeon Wでは、Registeredメモリ以外も排除したのだが、意外にもこういった“なんちゃってX79マザー背景があるような気がする。変態を好む自作erにとって、いささか残念な話ではある。
よくよく考えてみれば、処理の並列化による性能向上の限度を示したアムダールの法則こそが、長らく4コアをメインストリームに据えさせる要因となり、それがユーザーの使いかたを制限してきたのかもしれない。だが、たとえ1つの処理が並列化できなくとも、複数の処理を並列化するのはユーザーの自由だ。Ryzenの登場によって、この制限がついに解放されたと言ってもいい。
人生の時間は有限だ。有限だからこそ、無限のプロセッサパワーを欲すのだ。10コアのXeonを使いながら、次期のメインストリーム向けx86プロセッサが、ユーザーを16コアや32コアといった新境地に連れて行ってくれることを強く望むのである。