■後藤弘茂のWeekly海外ニュース■
AMDは台湾で開催されているCOMPUTEXに合わせて、6コアのサーバー向けCPU「Istanbul(イスタンブール)」を正式発表。また、Istanbulの製造を行なうGLOBALFOUNDRIESは、Istanbulのウェハを公開した。Istanbulは、AMDがFabをGLOBALFOUNDRIESへとスピンアウトしてから初めての新CPUとなる。つまり、AMDの分社体制の試金石がIstanbulだ。
AMDは、今年(2009年)後半に投入する予定だったIstanbulを2四半期前倒しして発表した。
COMPUTEXで公開したIstanbulのウェハ | Istanbulの概要 |
上の写真はGLOBALFOUNDRIESがCOMPUTEXで公開したIstanbulのウェハだ。300mmウェハ上でIstanbulのダイは縦に13個分以上、横に18個以上が配置されている。ダイサイズ(半導体本体の面積)は360平方mm台だと推定される。以前このコラムで予想したものより少し小さいが、258平方mmの4-core「Shanghai(シャンハイ)」を大きく超える。AMDにとって新しいダイサイズのセグメントであることがわかる。
下はAMD CPUのダイサイズの移行をチャート化したものだ。AMDは45nmプロセス世代では4つの異なるダイ(半導体本体)の展開を行なうと予想される。それぞれが、MPサーバーをターゲットにした6-core+6MB L3のIstanbul、ボリュームサーバーとパフォーマンスデスクトップの4-core+6MB L3のShanghai/Denebなど、メインストリームデスクトップの4-coreでL3レスのPropusなど、バリューデスクトップの2-coreのRegorなど。後ろの2つのダイサイズは推定で、これより大きい可能性もある。
ポイントは、ダイの階層がIntel並に厚くなってきたことだ。一目瞭然のように、上へ上へと、最も大きなダイのCPUのサイズが、ますます大きくなっている。AMDがサーバー市場に注力していることが明瞭にわかる。
AMD CPUダイサイズ移行図 |
6コアと4コアの市場ターゲット | Xeon 55xxとの比較 |
●MPサーバー向け機能を強化
機能面でも、Istanbul世代ではShanghaiに引き続き、サーバーに向けて強化されている。その1つは、キャッシュのProbeトラフィックを低減する「Probe Filtering」技術である『HT(HyperTransport) Assist』の実装。マルチプロセッサ構成では、キャッシュ間のコヒーレンシのために、他のCPUのキャッシュをチェックするProbeを行なう。HT Assistでは、CPUがシステム上のキャッシュのディレクトリを持ち、それによって不要なProbeトラフィックを削減する。
このアプローチ自体は、既存の技術で、AMDはこれまでも実装をアナウンスして来た。今回は、キャッシュディレクトリがL3を1MB消費して実装されることが明らかになった。また、HT AssistによってProbeトラフィックを軽減した結果、プロセッサ間のメモリ転送の帯域が最大60%アップすることも明らかにされた。実効帯域はHT Assistがない場合は25.5GB/secであるのに、HT Assistによって最大41.5GB/secに増えるという。こうした機能拡張からも、Istanbul世代がサーバーに向けて最適化された設計であることがわかる。
HyperTransport Assistでスループットを向上 | HP Assistの概要 |
●ダイに合わせて価格も高い
下は「Barcelona(バルセロナ)」以降の、AMDのハイエンドCPUのダイ(半導体本体)を比較した図だ。Istanbulのダイサイズを、今回の発表を元に微調整してある。その下は、AMDのCPUとGPUのダイサイズを比較したチャートだ。CPUとGPUともに、同じセグメントの製品は、同程度のダイサイズだ。AMDの現在のダイサイズ戦略が、CPUとGPUの両方で一貫していることがわかる。
K10のダイ比較 |
GPUとCPUのダイサイズ比較 |
Istanbulの価格戦略は、それなりに強気だ。ダイの大きなMPサーバーであるため、製造コストが高いことも理由の1つだ。Istanbulは、大規模な構成向けの8000番台だけでなく、2wayをメインターゲットとした2000番台でも提供されるが、こちらも価格はやや上がる。また、AMDはサーバーのエネルギー消費の細かなスペックを出しており、シングルコアに対して6コアが電力効率の面で飛躍的に高いことをうたっている。
2009年6月のOpteronの価格帯 | 各世代のOpteronの性能比較 |