2014年9月2日

2014年9月1日

2014年8月30日


後藤弘茂のWeekly海外ニュース

2011年までが明らかにされた
AMDのサーバーCPUロードマップ



●Bulldozer世代までのサーバーCPUが明らかに

 AMDはサーバーCPUロードマップを更新した。6コアの「Istanbul(イスタンブール)」が第4四半期から6月へと前倒しになり、2011年の「Bulldozer(ブルドーザ)」アーキテクチャのサーバーCPUのコードネーム「Interlagos(インテルラゴス)」「Valencia(バレンシア)」が明らかにされた。また、2010年以降のサーバーCPUのソケットが、4チャネルDDR3の「G34」と2チャネルDDR3の「C32」の2本立てになることも明かされた。

 Istanbulは4コアの「Shanghai(シャンハイ)」と同じ45nmプロセスで、CPUコアを2個足した6CPUコアのAMDのハイエンドCPUだ。今回、AMDは4コアから6コアへの拡張品の設計を、開発リソースがIntelより少ないにもかかわらず短時間で仕上げることができた。このことは、AMDがK10とGriffin(グリフィン)から採用したモジュラー設計のアプローチがうまく機能していることを示している。

 Istanbulでは、CPUコアを2個(50%)増やしたことで、同じ消費電力の4コアよりも30%のパフォーマンスアップが得られるとAMDでは説明する。従来と同じプラットフォーム(同じソケット、同じ熱設計)に、Istanbulを載せれば性能が上がるというシームレスなソリューションだ。ユーザーは、チップの違いを意識せずに、性能アップを手にできる。

Istanbulの概要 Istanbulの性能と消費電力 今後のロードマップ

 ただし、Istanbulのダイ(半導体本体)をよく見ると、この新しいCPUがこれまでとは大きく異なり、AMDのサーバーCPU戦略の大きな転換点であることがよくわかる。従来のAMDサーバーCPUは、デスクトップCPUと共通で、CPUのダイサイズ(半導体本体の面積)もPC向けサイズだった。しかし、Istanbulでは、単に2つのCPUコアを加えただけでなく、非CPUコア(un-core)部分がより肥大化し、チップ全体がかなり大きくなっていることがわかる。チップ自体は、Shanghaiとはかなり異なり、サーバーにより最適化されている。

AMDのG34プラットフォーム

●CPUが肥大化する6コアのIstanbul

 IstanbulとShanghaiを比較して、その非コア部分の違いが明瞭にわかるのは、6個のCPUコアとL3ブロックに挟まれたチップ中央の細長いノースブリッジ部分のサイズだ。クロスバスイッチを含むこの部分は、Istanbulでぐっと大きくなっている。IstanbulとShanghaiのCPUコアが同サイズだとすれば、Istanbulのノースブリッジのシステムロジック部分はShanghaiの約1.6倍の面積となっている。ダイサイズを食う機能的な強化がかなりなされていることが推定される。

K10のダイ比較

 また、I/O周りの配置も変わっている。目立つのは、ダイ中央の上下にこれまでなかったブロックが2つ新たに加わっていることだ。図の中でクエスチョンマークをつけてあるのがそれだ。このブロックは、チップのエッジに沿って細長いことから、インターフェイスのPHY(物理層)である可能性が高い。しかし、HyperTransport PHYではなさそうだ。4リンクのHyperTransportのPHYは、65nmの「Barcelona(バルセロナ)」世代からダイの上下と右端のL3キャッシュの右に配置されているように見える。位置的には、従来のBarcelonaやShanghaiで、低速I/OのPHYが配置されている部分だ。

●AMD CPUとしてはこれまでにない巨大サイズ

 この謎ブロックの正体はまだわからないが、こうした非コア部分のエリアの増大のため、Istanbulのダイは巨大になっている。その大きさは、ダイ写真をShanghaiと並べるとよくわかる。下の図は、IstanbulとShanghaiのダイ写真を、CPUコアサイズを揃えて並べたものだ。一番上がIstanbulで、その下がShanghai、下の2つのダイは廉価版K10系CPUの推定ダイだ。相対的にIstanbulのサイズが推定できる。

K10のダイサイズ推定

 一見してわかるように、Istanbulのダイは、258平方mmのShanghaiよりかなり大きい。ラフに言えば、CPUコアの増加と同じような比率で非コア部分が増えている。Istanbulのダイの中でCPUコアが占める比率は約1/3強で、ShanghaiのCPUコア面積比率とほぼ同じだ。ダイレイアウトを見る限り、計算上は400平方mmに迫る大きさだ。

 Istanbulではダイ上に空きエリアと推定される部分が見られるため、実際にはIstanbulチップはもっとシュリンクすることも可能かもしれないが、現状のダイ写真ではサイズは大きい。AMDのCPUの歴史の中で、飛び抜けて大きなサイズのCPUだ。

 AMDは、これまでハイエンドデスクトップCPUとサーバーCPUのダイ(半導体本体)を共通化してきた。AMDはダイの大きなサーバー向けCPUの計画を何度か立てたものの、いずれもプランは流れてしまった。基本的には、同じダイからサーバーCPUとハイエンドデスクトップCPU(メインストリームデスクトップCPUの一部も)を派生させていた。例えば、45nm世代ならOpteronのShanghaiとPhenomの「Deneb(デネブ)」は同じ設計から派生している。

 そのため、AMDの場合は、サーバーCPUと言っても、ダイサイズは大きくても200平方mm台のデスクトップCPUクラスだった。Intelの区分で言えばボリュームサーバークラスのCPUのダイだ。下のAMD CPUのダイサイズのチャートを見ると、これまでのAMDのダイサイズの流れがわかる。半導体チップ的な視点で言えば、AMDはこれまでサーバーを明確にターゲットとしたチップを作ってこなかった。それだけ、サーバー市場で高価なCPUを売る自信がなかったのかも知れない。

 Istanbulからその戦略を切り替えたことは、AMDがそれだけサーバーCPUに集中することを意味している。Istanbulは、Shanghaiまでのダイとは異なり、最初からサーバーをターゲットとして設計されており、デスクトップCPUとして発売することは難しいダイサイズだ。無理矢理デスクトップに出すこともできるが、望ましくはないだろう。AMDのサーバー戦略が、新しい段階に入ったことを象徴するCPUと言えそうだ。

●サーバー向けCPUがデスクトップ向けCPUから分化して行く

 大きなダイサイズは、より高い製造コストを意味する。AMDは、それでも充分に利益を維持できるだけ、ハイエンドサーバー市場で成功できる自信を持っているようだ。もっとも、ダイが大型化する分、Istanbulでは1枚のウエーハから採れるチップ数は減るが、マルチコア化によって歩留まりの低下は止められる。ダイ上のCPUコアとキャッシュSRAMエリアは、欠陥を含む部分をディセーブル(無効)にして、CPUコアとキャッシュ量の少ないバージョンとして出荷が可能だからだ。

AMD CPUのダイサイズ移行図

 ただし、IntelのハイエンドサーバーCPUと較べると、これでもまだサイズは小さい。例えば、Intelで同じ45nmプロセスの6コア製品である「Xeon 7400シリーズ(Dunnington:ダニングトン)」のダイサイズは503.2平方mmだからだ。とはいえ、IstanbulのサイズがデスクトップCPUのサイズではなく、IntelのMP(Multi-Processor)サーバーCPUと同様に、サーバーに特化したCPUのダイサイズであることは明らかだ。

 Istanbulのダイが示唆しているのは、AMDがPCとサーバーそれぞれの市場向けのチップを分離し始めたことだ。おそらく、来年(2010年)以降は、サーバーは市場に特化したダイになり、PC向けCPUの大半はサーバーとは別ダイになって行くだろう。さらに、2011年から先の世代では、デスクトップ系CPUに統合される機能もサーバー系CPUとは大きく異なるようになり、分化が進んで行くと推定される。

 来年(2010年)からは、パフォーマンスサーバーには、MCM(Multi-Chip Module)技術で2個のダイを1パッケージに封止したデュアルダイの12コアCPU「Magny-Cours(マニクール)」も投入する。サーバーへの特殊化は、急ピッチに進んで行くことになりそうだ。こうした、AMDのCPU分化の兆しが見えてきたという意味で、Istanbulは分岐点のCPUと言える。

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