Hothotレビュー
日本HP「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」
~Beats Audioコラボレーションの液晶一体型デスクトップ
(2014/2/24 06:00)
日本ヒューレット・パッカード(日本HPは)は、液晶一体型デスクトップの新モデル「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」を発売した。製品名からも分かるように、オーディオブランド「Beats Audeo」とのコラボレーションにより、高音質なサウンド再生能力を備えている。また、標準でタッチパネルを搭載し、机の上に設置しても楽な体勢でタッチ操作できるように、手前に引き寄せつつ、水平まで液晶面の角度を調節できる点も特徴となっている。価格はオープンプライス、実売価格は142,000円前後だ。
鮮やかな赤が目立つ本体デザイン
「HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE」(以下、ENVY Recline)は、日本HPが発売する液晶一体型PCシリーズの中で、最上位に位置付けられる製品だ。これまで日本HPが発売してきた液晶一体型PCは、本体背面に開閉型のスタンドを備える、いわゆるフォトフレームスタイルに近いデザインの製品が中心だった。それに対しENVY Reclineは、より自由に液晶面の角度の調節が可能な高機能スタンドを備える、液晶ディスプレイに近いデザインの製品となっている。
本体デザインは、液晶一体型PCとして比較的オーソドックスなものとなっている。カラーは、ブラックを基調としつつ、正面下部のHPロゴ、スタンドの側面や背面部分に鮮やかな赤を配色することで、落ち着いた中にも斬新さを感じさせるものとなっている。ENVY Reclineは、オーディオブランド「Beats Audio」とコラボレーションしていることもあり、Beats Audioのブランドカラーの赤を取り入れているわけだが、地味な印象の多い液晶一体型PCが多い中で、この配色はなかなか好印象だ。
本体サイズは559.2×107.95~265.2×454mm(幅×奥行き×高さ)。液晶左右ベゼル部分の幅は極端な狭額縁というわけではないものの、23型液晶を搭載する液晶一体型PCとしては、標準的なサイズといえる。重量は約12.8kgとなる。
液晶面の角度を自在に調整可能
ENVY Reclineで、フォトスタンド型ではなく、液晶ディスプレイに近いスタンドを採用しているのには理由がある。それは、自然な体勢で快適な操作を可能にするために、液晶面の角度を自由に調節できる機構を実現しているからだ。
ENVY Reclineのスタンドは、「リクライニング・スタンド」と呼ばれている。背面のヒンジは、本体側とスタンド側それぞれに回転機構を備えることで、液晶面の角度や高さを調節できる構造となっている。本体側のヒンジは120度以上回転するようになっており、水平を超え、後方にまで倒すことが可能。それに、スタンド側の回転機構と合わせて、液晶面の角度や高さを自在に調節可能としている。基本的には、液晶の角度を、ほぼ垂直な状態から水平な状態まで、自在に変更できると考えていい。
この液晶面の角度調整機構にはもう1つ利点がある。それは、液晶面を簡単に手前に引き出せるという点だ。通常液晶一体型PCを設置する場合には、手前にキーボードやマウスを置いたり、書類を開けるスペースを確保するのが普通だ。そのため、液晶面は机の比較的後方に位置することになる。だが、タッチ操作のみで使いたい場合には、液晶面は手前にあった方が快適だ。ENVY Reclineでは、通常のデスクトップPCとして利用する場合には液晶面を後方に、またタッチ中心で利用する場合には、液晶面を倒しつつ、手前に引き出して快適な操作性を実現することが可能となる。実際に、楽な姿勢でWebページを閲覧したり、タッチ操作のゲームを楽しむ場合など、このヒンジ機構による自在な液晶面の角度と位置の調節機構が非常に役立つと感じた。
液晶面の角度や位置の調整に、それほど強い力は不要。また、液晶面のぐらつきもなく、強度に不安を感じることもない。
23型フルHD液晶を搭載
液晶は、1,920×1,080ドット表示対応の23型パネルを採用している。最近では、ノートPCやタブレットを中心に、フルHD超の超高解像度液晶を採用する製品が増えているが、液晶一体型PCではまだ採用例が少なく、ENVY Reclineの価格帯を考えても、フルHD表示対応で大きな不満はない。
パネル表面は光沢処理となっており、外光の映り込みが激しい点は気になるものの、発色は十分に鮮やかだ。パネルの種類はIPS方式のため、視野角が広く、液晶の角度を大きく変更しても色合いの変化はほとんど感じられない。
発色は、標準設定では、全体的にやや青みの強い発色となっている。これは、標準設定では色温度がやや高めに設定されているためだ。標準で添付されている表示設定ツールを利用すれば、色温度の変更が行なえるため、自然な色合いを再現することも容易だ。また、明るさやコントラスト、色温度を用途に合わせて切り替えるプリセット機能も用意。ゲーム、動画、テキストなど、利用シーンに応じた表示設定の切り替えが可能な点は、一般的な液晶ディスプレイに近い使い勝手を実現するという意味でも、歓迎できる。
液晶前面には、10点マルチタッチ対応の静電容量方式タッチパネルを搭載する。タッチの反応は申し分なく、軽快な操作が可能だった。ただし、表面と液晶パネルの距離がやや離れており、指と液晶部分との視差がやや大きいと感じる点は少々気になった。
Beats Audioブランドの4スピーカーシステムを内蔵
ENVY Reclineの特徴の1つが、Beats Audioとのコラボレーションにより、高音質なサウンド機能を搭載している点だ。Beats Audioは、ヘッドフォン接続時だけでなく、内蔵スピーカでもしっかり効果を発揮する。
ENVY Reclineの内蔵スピーカーは、「クアッドスピーカー」と呼ばれる4ユニットのステレオスピーカーで、前面液晶下部に搭載している。一般的な液晶一体型PCの内蔵スピーカーの再生音は、ユニットが小さいことなどもあり、どうしても低音が弱く、全体的にこもったような音になることが多い。しかし、ENVY Reclineのクアッドスピーカーは、そういった印象は皆無だ。サブウーファーは非搭載ながら、しっかりとした低音が再生されるのはもちろん、中音域から高音域まで、クリアで伸びのあるサウンドが再生される。Beats Audioによる補正もあるが、非常に高音質で、よほどサウンドにこだわりがある場合を除き、外付けスピーカーは不要と言えそうだ。
HDMI入力を備え外部映像機器のディスプレイにも使える
ENVY Reclineの基本スペックは、日本HPの液晶一体型PCハイエンドモデルと言うこともあり、なかなか充実している。
CPUは、Core i5-4570Tを採用。液晶一体型PCでは、モバイル向けプラットフォームを採用するものが多くなっているが、このプロセッサはデスクトップ向けの第4世代Core i5で、TDPが35Wの省電力モデルとなる。2コア4スレッドではあるが、ターボ・ブースト時の最大クロックが3.6GHzと、モバイル向けCoreプロセッサに比べて高クロックで動作するため、処理能力という点では優位となる。チップセットはIntel H87 Expressを採用。メインメモリは標準で8GB(SO-DIMM×1枚)搭載。メモリスロットのSO-DIMMスロットは2本用意されており、最大で16GBまで増設が可能だ。
グラフィックス機能は、CPU内蔵のIntel HD Graphics 4600に加え、外部GPUとしてNVIDIAのGeForce GT 730Aも標準搭載する。エントリークラスのGPUのため、3D描画能力はそれほど高いわけではないものの、統合GPUよりは描画能力が優れるため、カジュアル3Dゲームも快適にプレイできる。
内蔵ストレージは、容量1TB、キャッシュ用フラッシュメモリを8GB搭載するハイブリッドHDDを採用。光学式ドライブは搭載せず、USB接続などの外付けドライブを利用することになる。無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANと、Bluetooth 4.0を標準搭載する。
側面のポートは、本体側面とスタンド部の左右側面部に配置されている。スタンド部には、左側に電源コネクタ、右側にサブウーファ用の音声出力端子、USB 2.0×2、Gigabit Ethernetポートを配置。また、本体側には、右側面にUSB 3.0×2ポートを備える。
ところで、本体左側面にはHDMI端子とヘッドフォン出力を備えるが、このHDMI端子は出力ではなく入力ポートとなっている。つまり、ゲーム機などの各種映像機器を接続し、ENVY Reclineをディスプレイとして利用可能というわけだ。PCと入力映像は、本体下部左側に用意されているボタンを押すことで切り替えが可能。大型の液晶一体型PCで外部映像機器を接続し利用できるなら、別途ディスプレイを用意する必要がなく、省スペース化にもつながる。そういった意味で、HDMI入力を標準で備える点は嬉しい。ただし、PCの電源が入っている状態でなければHDMI入力が利用できない点は少々残念だ。
本体背面には、比較的簡単に外せる蓋があり、この蓋を開けるとメモリスロットやHDDベイにアクセスできる。液晶一体型PCながら、メインメモリの増設や内蔵ストレージの交換が簡単に行なえる点も大きな特徴と言える。
デスクトップPCとしてトップクラスではないが性能はまずまず
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.204」「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」の6種類。比較用として、日本HPのノートPC最上位モデル「HP ENVY 17-j100 Leap Motion SE/CT」と、NECの「LaVie L LL850/MS」の結果も加えてある。
HP ENVY Recline 23-m240jp Beats SE | HP ENVY 17-j100 Leap Motion SE/CT | LaVie L LL850/MS | |
---|---|---|---|
CPU | Core i5-4570T(2.90/3.60GHz) | Core i7-4702MQ(2.20/3.20GHz) | Core i7-4700MQ(2.40/3.40GHz) |
チップセット | Intel H87 Express | Intel HM87 Express | Inte HM87 Express |
ビデオチップ | Inte HD Graphics 4600 GeForce GT 730A | Inte HD Graphics 4600 GeForce GT 750M | Intel HD Graphics 4600 |
メモリ | PC3-12800 DDR3 SDRAM 8GB×1 | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB×1 | PC3-12800 DDR3L SDRAM 8GB×1 |
ストレージ | 1TB SSHD | 1TB HDD | 1TH Hybrid HDD |
OS | Windows 8.1 | Windows 8.1 | Windows 8 |
PCMark 8 | |||
Home Accelarated 3.0 | 2735 | - | - |
Creative accelarated 3.0 | 3324 | - | - |
Work 2.0 | 3621 | - | - |
Storage | 2960 | - | - |
PCMark 7 v1.4.0 | |||
PCMark score | 4038 | 2983 | 4887 |
Lightweight score | 2358 | 1428 | 3179 |
Productivity score | 1849 | 1008 | 2866 |
Entertainment score | 3218 | 2958 | 3800 |
Creativity score | 7191 | 5361 | 7716 |
Computation score | 14992 | 14375 | 15041 |
System storage score | 3103 | 1481 | 4377 |
Raw system storage score | 1229 | 317 | - |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 11413 | 11843 | 12763 |
Memory Score | 8058 | 8352 | 8433 |
Graphics Score | 3587 | 4685 | 3053 |
HDD Score | 10222 | 5223 | 8000 |
3DMark Professional Edition v1.1.0 | |||
Ice Storm | 54051 | 50166 | 34669 |
Graphics Score | 62284 | 56458 | 33942 |
Physics Score | 36956 | 36019 | 37482 |
Cloud Gate | 5799 | 7631 | 5228 |
Graphics Score | 7348 | 9463 | 5107 |
Physics Score | 3337 | 4550 | 5703 |
Fire Strike | 1032 | 1496 | 636 |
Graphics Score | 1120 | 1565 | 669 |
Physics Score | 4839 | 5148 | 7666 |
3DMark06 Build 1.2.0 1901 | |||
3DMark Score | 9344 | 12857 | 5621 |
SM2.0 Score | 3774 | 5172 | 1768 |
HDR/SM3.0 Score | 3517 | 5005 | 2250 |
CPU Score | 4364 | 5477 | 6934 |
ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||
1,280×720ドット | 3783 | 5699 | - |
結果を見ると、搭載プロセッサはハイエンドクラスではないものの、デスクトップ向けのプロセッサを搭載していることもあり、スコアの多くが比較用のハイエンドノートPCの結果を上回っている。これは、モバイル向けプラットフォームを採用する製品の多い液晶一体型PCの中では、大きな優位点と言えそうだ。なお、今回の試用機では、メインメモリはシングルチャネル動作だったため、もう1枚メモリモジュールを追加してデュアルチャネル動作にすると、さらにスコアが上昇するものと思われる。
また、3D描画能力の結果も、まずまずのスコアとなっている。外部GPUはエントリークラスのため、それほど高性能というわけではなく、テストによってはGeForce GT 750M搭載のHP ENVY 17-j100よりも低いスコアとなっている。それでも、カジュアル3Dゲームなら十分快適にプレイできるだけの描画能力は備わっていると言っていいだろう。
AV性能重視の液晶一体型PCとしておすすめ
ENVY Reclineは、日本HPとして最上位の液晶一体型PCだが、液晶面の角度調節の自由度の高さや、優れたデザイン性、高音質スピーカ搭載など、なかなか完成度の高い製品に仕上がっている。性能的には、さすがにゲーミングPCに匹敵するほどではないものの、デスクトップ向けプラットフォーム採用によって、他の液晶一体型PCに対して余裕がある。また、HDMI入力により外部映像機器を接続して利用できるという点も、活用の幅を拡げるという意味で嬉しい部分だ。
国内メーカー製の製品と比べると、TV機能がないなど、機能面で劣る部分もある。それでも、14万円ほどという価格は絶妙で、コストパフォーマンスは十分に優れる。家庭で利用するメインPCとしてはもちろん、この春よりひとり暮らしを始める新入学生や新社会人にもおすすめの製品だ。