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レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」

~世界最軽量を実現した14型Ultrabook

レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」
発売中

価格:オープンプライス

 レノボ・ジャパンから登場した「新しいThinkPad X1 Carbon」は、14型液晶を搭載したUltrabookである。製品名からも分かるように、2012年6月に発表された「ThinkPad X1 Carbon」および2013年1月に発表された「ThinkPad X1 Carbon Touch」の後継となる製品だ。ここでは、新ThinkPad X1 Carbonと呼ぶことにするが、個人的には「新しい○○○」という製品名は、旧モデルと紛らわしく、あまりスマートな名前とも思えないのでやめて欲しい。それはともかく、新ThinkPad X1 Carbonは、2,560×1,440ドット(WQHD)のIPS液晶の搭載が可能になったことや「Adaptiveキーボード」を採用したことなど、確かに「新しい」製品へと進化している。

 今回は、新ThinkPad X1 Carbonを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とはパフォーマンスや細部の仕上げなどが異なる可能性がある。

最軽量構成時に約1.28kgを実現

 新ThinkPad X1 Carbonは、14型液晶を搭載したUltrabookである。製品名の通り筐体にカーボン素材を採用し、薄型軽量化と高い剛性を両立している。本体のサイズは、約331×227.1×13.9~18.46mm(幅×奥行き×高さ、WQHDマルチタッチ液晶搭載時)とスリムで、重量は約1.43kg(WQHDマルチタッチ液晶搭載時)と軽い。液晶としてマルチタッチ非対応のHD+(1,600×900ドット)液晶やWQHD液晶を搭載することも可能であり、マルチタッチ非対応のHD+液晶搭載時の重量は約1.34kg、マルチタッチ非対応のWQHD液晶搭載時の重量は約1.28kgとなる。ボディのデザインも美しく、質感も高い。

 新ThinkPad X1 Carbonは、PCとしての基本性能も大きく強化されており、CPUとして開発コードネーム「Haswell」こと第4世代Coreプロセッサを採用するほか、液晶ディスプレイは先述の通り、2,560×1,440ドット(WQHD)の10点マルチタッチ対応14型IPS液晶を搭載する。直販では2種類のベースモデルが用意されており、上位モデルはCPUにCore i7-4600U(2.1GHz)を、下位モデルはCore i5-4200U(1.6GHz)を搭載する。メモリは両モデルとも8GB実装しており、ストレージは上位モデルが256GB、下位モデルが128GBのSSDを搭載する。ここでは、上位モデルを試用した。OSは、Window 8.1 Pro 64bitがプリインストールされている。

新しいThinkPad X1 Carbonの上面。ThinkPadらしいシンプルなデザインだ
新しいThinkPad X1 Carbonの底面。メモリ増設やバッテリ交換などはできない
液晶のヒンジは180度開くことができる
試用機の重量は実測で1,400gであった

2,560×1,440ドットのWQHD IPS液晶を搭載

 新ThinkPad X1 Carbonの強化点の中でも、特に注目したいのが、ディスプレイに2,560×1,440ドットのWQHD IPS液晶の選択が可能なことだ(店頭モデルは2モデルともWQHD IPS液晶を搭載)。旧ThinkPad X1 CarbonのHD+液晶に比べて、一度に表示できる情報量は2.56倍にもなる。

 IPS液晶は、視野角が広く、色再現性も優れているため、正確な色表現が求められる分野にも適している。また、非光沢タイプなので、外光の映り込みも少なく、長時間使っていても目の疲れが少ない。店頭モデルの液晶は10点マルチタッチ対応で、Windows 8.1のタッチUIも快適だ。液晶上部には、720p対応のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。

ディスプレイとして14型WQHD IPS液晶を搭載。IPS液晶なので視野角が広く、色再現性も優れている
液晶上部に720pWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる

ファンクションキーが動的に変わるAdaptiveキーボードを採用

 新ThinkPad X1 Carbonは、Adaptiveキーボードと呼ばれる、新設計のキーボードを採用していることも特徴だ。旧ThinkPad X1 Carbonでは、アイソレーションタイプの6列キーボードが採用されていたが、新ThinkPad X1 CarbonのAdaptiveキーボードは、5列の物理キーボードの上にタッチパネルキーボードという構成になっている。

 このタッチパネルキーボードは、機能が固定されているのではなく動的に機能を変更できることがウリだ。現在、どの機能が割り当てられているかは、タッチパネルのアイコンの点灯によって知ることができる。Adaptiveキーボードのモードは、タッチパネルの一番左のキーをタッチすることで、「ホームモード」、「Webブラウザモード」、「Web会議モード」、「ファンクションモード」の順で切り替えられるほか、特定のアプリケーションを起動したら、モードを自動的に変更することもできる。例えば、Internet Explorerを起動したらWebブラウザモードに、Skypeを起動したらWeb会議モードにすることも可能だ。

 モードやアプリケーションの指定は、Adaptiveキーボード設定ユーティリティによって行なうことができる。さらに、液晶を180度開くことで「レイフラットモード」に自動的に移行する。レイフラットモードでは、表示を180度回転させる機能が割り当てられるので、対面の相手に液晶を見せてプレゼンする場合に便利だ。

 Adaptiveキーボードの使い勝手だが、タッチパネルキーは思ったよりも使いやすかった。だが、物理キーの配列が一部変則的なことに戸惑った。例えば、「半角/全角」キーは、従来の6列キーボードでは上から2列目にあるのだが、Adaptiveキーボードでは「Tab」キーと上下が入れ替わり、3列目に配置されている。そのほか、「Delete」キーが「BackSpace」キーの左側に配置されていたり、「\」キーが最下段に配置されているなど、従来のキーボードに慣れている人は、慣れるまで戸惑いそうだ。

 キーピッチは約19.5mmと広く、キーストロークも十分確保されているため、キータッチ自体は良好だ。また、キーボードにはバックライトが搭載されており、消灯した飛行機の中など、暗い場所でもミスタイプを防げる。バックライトの輝度は2段階に調整が可能だ。

 ポインティングデバイスとしては、スティック状のトラックポイントとパッドタイプのトラックパッドの2種類を搭載している。旧ThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイント用クリックボタンがパッドの上部に配置されていたが、新ThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイント用クリックボタンが省略され、パッド自体をクリックボタンとして使うようになった。こちらも従来のトラックポイント操作に慣れている人はやや戸惑うかもしれない。

 また、内蔵Webカメラを利用したジェスチャー操作にも対応しており、手を振ったり、握って上下に動かすことで、ページの移動や音量調整などが可能だ。

キーボードの配列が大きく変更され、物理キーは5列になり、その上に動的に機能を変更できるタッチパネル式の「Adaptiveキーボード」が搭載されている。BackSpaceキーや半角/全角キーなどの配置がやや変則的だ
キーボードにはバックライトが搭載されており、暗いところでもミスタイプを防げる。バックライトの輝度は2段階に調整が可能
ポインティングデバイスとして、トラックポイントとトラックパッドの2種類を搭載。トラックポイントのクリックボタンが省略され、パッドをボタンとして使うようになった
Adaptiveキーボードは5種類のモードが用意されており、左端の「Fn」をタッチするごとにモードが変わる。これは「ホームモード」で、アプリケーションの切替や画面切り取りツールの起動などが可能
こちらはWebブラウズ時に便利な「Webブラウザモード」
こちらはWeb会議時に便利な「Web会議モード」。マイクやカメラに関する設定が可能
こちらは通常のファンクションキーとして使える「ファンクションモード」
Adapitveキーボードの設定ユーティリティ
内蔵カメラを利用したジェスチャー操作も可能
【動画】Homeモードでアプリケーションを切り替えているところ
液晶を180度開くと、自動的に「レイフラットモード」になる。レイフラットモードでは、画面の反転機能などが割り当てられる

Ultrabookとしてはインターフェイス類も充実

 新ThinkPad X1 Carbonは、Ultrabookとしてはインターフェイスも充実している。USB 3.0×2(うち1つはPowered USB 3.0)、HDMI出力、Mini DisplayPort、マイク/ヘッドフォン端子を備えているほか、有線LANも搭載している。ただし、有線LANの端子は専用形状なので、付属の変換アダプタによってRJ-45に変換される。また、電源コネクタは、「Lenovo OneLink」と呼ばれる独自端子と兼用になっており、右側のカバーを外すことで、Lenovo OneLink端子として利用できる。Lenovo OneLink端子は、USB 3.0とディスプレイ出力、電源コネクタを1つにまとめた端子であり、ケーブルを1本接続するだけで、Lenvo OneLink対応ドッキングステーションを利用できることが利点だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0をサポートする。ただし、SDカードスロットなどは用意されていない。

 また、キーボード右側にはスライド式の指紋センサーが搭載されており、指紋認証によるログオンなどが可能だ。

左側面には、電源コネクタ、HDMI出力、Mini DisplayPort、USB 3.0、マイク/ヘッドフォン端子が用意されている
左側面の端子部分のアップ。電源コネクタは、Lenovo OneLink端子と兼用になっており、コネクタの右にあるカバーを外すことでLenovo OneLink端子として利用できる
右側面には、USB 3.0と有線LANが用意されている。有線LANの端子は専用形状なので、付属の変換アダプタ経由で利用する
右側面の端子部分のアップ
キーボード右側にスライド式の指紋センサーを搭載している
有線LAN端子をRJ-45に変換するネットワークアダプタが付属する
ネットワークアダプターを接続したところ

バッテリ駆動時間にも満足できる

 ほかのUltrabookと同じく、バッテリの交換はできないが、今回試用したCore i7搭載モデルの公称バッテリ駆動時間は約11.1時間(Core i5搭載モデルでは約14.3時間)と長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、7時間39分という結果になった。無線LAN常時オンで、これだけ持てば十分満足できる。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ。

ACアダプタもコンパクトで軽い
ACアダプタの出力は65Wである
ACアダプタの重量は実測で297gであった

Ultrabookとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3a」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Tap 11」、「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」の値も掲載した。

新しいThinkPad X1 CarbonVAIO Tap 11VAIO Pro 11Let'snote LX3
CPUCore i7-4600U(2.1GHz)Pentium 3560Y(1.2GHz)Core i5-4200U(1.6GHz)Core i7-4500U(1.8GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4400Intel HD GraphicsIntel HD Graphics 4400Intel HD Graphics 4400
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/AN/A
CPU Score9802370978649379
Memory Score9851376299788599
Graphics Score2706183421443302
HDD Score56273475325512256040
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score1593456871288115540
Memories Score8842481471068493
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailed
Gaming Score109575483702511030
Music Score1373270921574418077
Communications Score1967565461493417972
Productivity Score1961585631620921503
HDD Score50926482285078447907
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score1461853711194414111
Memories Score8244458169948104
TV and Movie ScoreFailedFailedFailedFailed
Gaming Score9269458875549699
Music Score1570668171496216543
Communications Score1780659951350816043
Productivity Score1759083361532519719
HDD Score46669491865115748117
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score5294300640165310
Lightweight score3632210248925789
Productivity score2695150638354724
Entertainment score3824193426453816
Creativity score10006432383129986
Computation score184434513997016901
System storage score5339518353175491
Raw system storage score5344488656796121
3DMark
Ice Storm42672155272731244155
Cloud Gate4522170734614900
Fire Strike604237469721
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質1621695未計測1580
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)1635716未計測1598
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)23141031未計測1894
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)34711445未計測3350
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)34731448未計測3279
CrsytalDiskMark 3.0.3a
シーケンシャルリード510.5MB/sec未計測未計測未計測
シーケンシャルライト252.2MB/sec未計測未計測未計測
512Kランダムリード427.8MB/sec未計測未計測未計測
512Kランダムライト250.1MB/sec未計測未計測未計測
4Kランダムリード31.42MB/sec未計測未計測未計測
4Kランダムライト102.5MB/sec未計測未計測未計測
4K QD32ランダムリード382.9MB/sec未計測未計測未計測
4K QD32ランダムライト224.4MB/sec未計測未計測未計測
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード517.5MB/sec487.2MB/sec481.2MB/sec513.8MB/sec
シーケンシャルライト253.4MB/sec156.4MB/sec139.3MB/sec455.1MB/sec
512Kランダムリード432.0MB/sec366.9MB/sec419.4MB/sec454.6MB/sec
512Kランダムライト228.0MB/sec142.3MB/sec140.7MB/sec444.9MB/sec
4Kランダムリード32.00MB/sec20.53MB/sec33.36MB/sec24.57MB/sec
4Kランダムライト100.5MB/sec54.06MB/sec99.30MB/sec56.09MB/sec
BBench
標準バッテリ7時間39分6時間13分8時間5分19時間16分

 結果は上の表に示した通りで、PCMark05のCPU Scoreは、Core i7-4500Uを搭載したLet'snote LX3よりも5%ほど高い。そのほかの結果も、Let'snote LX3とほぼ同等か上回っているものが多い。CrystalDiskMark 3.0.3aの結果も優秀であり、シーケンシャルリードは510.5MB/secを記録している。Ultrabookとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現していると言って良いだろう。

ビジネス向けUltrabookとしての完成度は高い

 新ThinkPad X1 Carbonは、薄くて軽くて高性能という、Ultrabookとしての理想を目指した製品であり、その完成度は高い。WQHD液晶の搭載は、表計算ソフトなどの作業効率を高めることができ、物理キーの配置にやや納得がいかないところはあるが、Adaptiveキーボードの採用も先進的といえる。有線LANの搭載やLenovo OneLink端子によるドッキングステーションの利便性向上など、ビジネス用途に適した製品である。価格が高めなのが難点だが、信頼性や耐久性も高いため、安心して持ち歩ける。出張や営業などで外出する機会が多い人にお勧めしたい。

(石井 英男)