Hothotレビュー
レノボ・ジャパン「新しいThinkPad X1 Carbon」
~世界最軽量を実現した14型Ultrabook
(2014/2/19 06:00)
レノボ・ジャパンから登場した「新しいThinkPad X1 Carbon」は、14型液晶を搭載したUltrabookである。製品名からも分かるように、2012年6月に発表された「ThinkPad X1 Carbon」および2013年1月に発表された「ThinkPad X1 Carbon Touch」の後継となる製品だ。ここでは、新ThinkPad X1 Carbonと呼ぶことにするが、個人的には「新しい○○○」という製品名は、旧モデルと紛らわしく、あまりスマートな名前とも思えないのでやめて欲しい。それはともかく、新ThinkPad X1 Carbonは、2,560×1,440ドット(WQHD)のIPS液晶の搭載が可能になったことや「Adaptiveキーボード」を採用したことなど、確かに「新しい」製品へと進化している。
今回は、新ThinkPad X1 Carbonを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とはパフォーマンスや細部の仕上げなどが異なる可能性がある。
最軽量構成時に約1.28kgを実現
新ThinkPad X1 Carbonは、14型液晶を搭載したUltrabookである。製品名の通り筐体にカーボン素材を採用し、薄型軽量化と高い剛性を両立している。本体のサイズは、約331×227.1×13.9~18.46mm(幅×奥行き×高さ、WQHDマルチタッチ液晶搭載時)とスリムで、重量は約1.43kg(WQHDマルチタッチ液晶搭載時)と軽い。液晶としてマルチタッチ非対応のHD+(1,600×900ドット)液晶やWQHD液晶を搭載することも可能であり、マルチタッチ非対応のHD+液晶搭載時の重量は約1.34kg、マルチタッチ非対応のWQHD液晶搭載時の重量は約1.28kgとなる。ボディのデザインも美しく、質感も高い。
新ThinkPad X1 Carbonは、PCとしての基本性能も大きく強化されており、CPUとして開発コードネーム「Haswell」こと第4世代Coreプロセッサを採用するほか、液晶ディスプレイは先述の通り、2,560×1,440ドット(WQHD)の10点マルチタッチ対応14型IPS液晶を搭載する。直販では2種類のベースモデルが用意されており、上位モデルはCPUにCore i7-4600U(2.1GHz)を、下位モデルはCore i5-4200U(1.6GHz)を搭載する。メモリは両モデルとも8GB実装しており、ストレージは上位モデルが256GB、下位モデルが128GBのSSDを搭載する。ここでは、上位モデルを試用した。OSは、Window 8.1 Pro 64bitがプリインストールされている。
2,560×1,440ドットのWQHD IPS液晶を搭載
新ThinkPad X1 Carbonの強化点の中でも、特に注目したいのが、ディスプレイに2,560×1,440ドットのWQHD IPS液晶の選択が可能なことだ(店頭モデルは2モデルともWQHD IPS液晶を搭載)。旧ThinkPad X1 CarbonのHD+液晶に比べて、一度に表示できる情報量は2.56倍にもなる。
IPS液晶は、視野角が広く、色再現性も優れているため、正確な色表現が求められる分野にも適している。また、非光沢タイプなので、外光の映り込みも少なく、長時間使っていても目の疲れが少ない。店頭モデルの液晶は10点マルチタッチ対応で、Windows 8.1のタッチUIも快適だ。液晶上部には、720p対応のWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
ファンクションキーが動的に変わるAdaptiveキーボードを採用
新ThinkPad X1 Carbonは、Adaptiveキーボードと呼ばれる、新設計のキーボードを採用していることも特徴だ。旧ThinkPad X1 Carbonでは、アイソレーションタイプの6列キーボードが採用されていたが、新ThinkPad X1 CarbonのAdaptiveキーボードは、5列の物理キーボードの上にタッチパネルキーボードという構成になっている。
このタッチパネルキーボードは、機能が固定されているのではなく動的に機能を変更できることがウリだ。現在、どの機能が割り当てられているかは、タッチパネルのアイコンの点灯によって知ることができる。Adaptiveキーボードのモードは、タッチパネルの一番左のキーをタッチすることで、「ホームモード」、「Webブラウザモード」、「Web会議モード」、「ファンクションモード」の順で切り替えられるほか、特定のアプリケーションを起動したら、モードを自動的に変更することもできる。例えば、Internet Explorerを起動したらWebブラウザモードに、Skypeを起動したらWeb会議モードにすることも可能だ。
モードやアプリケーションの指定は、Adaptiveキーボード設定ユーティリティによって行なうことができる。さらに、液晶を180度開くことで「レイフラットモード」に自動的に移行する。レイフラットモードでは、表示を180度回転させる機能が割り当てられるので、対面の相手に液晶を見せてプレゼンする場合に便利だ。
Adaptiveキーボードの使い勝手だが、タッチパネルキーは思ったよりも使いやすかった。だが、物理キーの配列が一部変則的なことに戸惑った。例えば、「半角/全角」キーは、従来の6列キーボードでは上から2列目にあるのだが、Adaptiveキーボードでは「Tab」キーと上下が入れ替わり、3列目に配置されている。そのほか、「Delete」キーが「BackSpace」キーの左側に配置されていたり、「\」キーが最下段に配置されているなど、従来のキーボードに慣れている人は、慣れるまで戸惑いそうだ。
キーピッチは約19.5mmと広く、キーストロークも十分確保されているため、キータッチ自体は良好だ。また、キーボードにはバックライトが搭載されており、消灯した飛行機の中など、暗い場所でもミスタイプを防げる。バックライトの輝度は2段階に調整が可能だ。
ポインティングデバイスとしては、スティック状のトラックポイントとパッドタイプのトラックパッドの2種類を搭載している。旧ThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイント用クリックボタンがパッドの上部に配置されていたが、新ThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイント用クリックボタンが省略され、パッド自体をクリックボタンとして使うようになった。こちらも従来のトラックポイント操作に慣れている人はやや戸惑うかもしれない。
また、内蔵Webカメラを利用したジェスチャー操作にも対応しており、手を振ったり、握って上下に動かすことで、ページの移動や音量調整などが可能だ。
Ultrabookとしてはインターフェイス類も充実
新ThinkPad X1 Carbonは、Ultrabookとしてはインターフェイスも充実している。USB 3.0×2(うち1つはPowered USB 3.0)、HDMI出力、Mini DisplayPort、マイク/ヘッドフォン端子を備えているほか、有線LANも搭載している。ただし、有線LANの端子は専用形状なので、付属の変換アダプタによってRJ-45に変換される。また、電源コネクタは、「Lenovo OneLink」と呼ばれる独自端子と兼用になっており、右側のカバーを外すことで、Lenovo OneLink端子として利用できる。Lenovo OneLink端子は、USB 3.0とディスプレイ出力、電源コネクタを1つにまとめた端子であり、ケーブルを1本接続するだけで、Lenvo OneLink対応ドッキングステーションを利用できることが利点だ。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0をサポートする。ただし、SDカードスロットなどは用意されていない。
また、キーボード右側にはスライド式の指紋センサーが搭載されており、指紋認証によるログオンなどが可能だ。
バッテリ駆動時間にも満足できる
ほかのUltrabookと同じく、バッテリの交換はできないが、今回試用したCore i7搭載モデルの公称バッテリ駆動時間は約11.1時間(Core i5搭載モデルでは約14.3時間)と長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、7時間39分という結果になった。無線LAN常時オンで、これだけ持てば十分満足できる。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優秀だ。
Ultrabookとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3a」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Tap 11」、「VAIO Pro 11」、パナソニック「Let'snote LX3」の値も掲載した。
新しいThinkPad X1 Carbon | VAIO Tap 11 | VAIO Pro 11 | Let'snote LX3 | |
CPU | Core i7-4600U(2.1GHz) | Pentium 3560Y(1.2GHz) | Core i5-4200U(1.6GHz) | Core i7-4500U(1.8GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 9802 | 3709 | 7864 | 9379 |
Memory Score | 9851 | 3762 | 9978 | 8599 |
Graphics Score | 2706 | 1834 | 2144 | 3302 |
HDD Score | 56273 | 47532 | 55122 | 56040 |
PCMark Vantage 64bit | ||||
PCMark Score | 15934 | 5687 | 12881 | 15540 |
Memories Score | 8842 | 4814 | 7106 | 8493 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 10957 | 5483 | 7025 | 11030 |
Music Score | 13732 | 7092 | 15744 | 18077 |
Communications Score | 19675 | 6546 | 14934 | 17972 |
Productivity Score | 19615 | 8563 | 16209 | 21503 |
HDD Score | 50926 | 48228 | 50784 | 47907 |
PCMark Vantage 32bit | ||||
PCMark Score | 14618 | 5371 | 11944 | 14111 |
Memories Score | 8244 | 4581 | 6994 | 8104 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 9269 | 4588 | 7554 | 9699 |
Music Score | 15706 | 6817 | 14962 | 16543 |
Communications Score | 17806 | 5995 | 13508 | 16043 |
Productivity Score | 17590 | 8336 | 15325 | 19719 |
HDD Score | 46669 | 49186 | 51157 | 48117 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||||
PCMark score | 5294 | 3006 | 4016 | 5310 |
Lightweight score | 3632 | 2102 | 4892 | 5789 |
Productivity score | 2695 | 1506 | 3835 | 4724 |
Entertainment score | 3824 | 1934 | 2645 | 3816 |
Creativity score | 10006 | 4323 | 8312 | 9986 |
Computation score | 18443 | 4513 | 9970 | 16901 |
System storage score | 5339 | 5183 | 5317 | 5491 |
Raw system storage score | 5344 | 4886 | 5679 | 6121 |
3DMark | ||||
Ice Storm | 42672 | 15527 | 27312 | 44155 |
Cloud Gate | 4522 | 1707 | 3461 | 4900 |
Fire Strike | 604 | 237 | 469 | 721 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | ||||
1,280×720ドット 最高品質 | 1621 | 695 | 未計測 | 1580 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1635 | 716 | 未計測 | 1598 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2314 | 1031 | 未計測 | 1894 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3471 | 1445 | 未計測 | 3350 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3473 | 1448 | 未計測 | 3279 |
CrsytalDiskMark 3.0.3a | ||||
シーケンシャルリード | 510.5MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
シーケンシャルライト | 252.2MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
512Kランダムリード | 427.8MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
512Kランダムライト | 250.1MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムリード | 31.42MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムライト | 102.5MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4K QD32ランダムリード | 382.9MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
4K QD32ランダムライト | 224.4MB/sec | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 517.5MB/sec | 487.2MB/sec | 481.2MB/sec | 513.8MB/sec |
シーケンシャルライト | 253.4MB/sec | 156.4MB/sec | 139.3MB/sec | 455.1MB/sec |
512Kランダムリード | 432.0MB/sec | 366.9MB/sec | 419.4MB/sec | 454.6MB/sec |
512Kランダムライト | 228.0MB/sec | 142.3MB/sec | 140.7MB/sec | 444.9MB/sec |
4Kランダムリード | 32.00MB/sec | 20.53MB/sec | 33.36MB/sec | 24.57MB/sec |
4Kランダムライト | 100.5MB/sec | 54.06MB/sec | 99.30MB/sec | 56.09MB/sec |
BBench | ||||
標準バッテリ | 7時間39分 | 6時間13分 | 8時間5分 | 19時間16分 |
結果は上の表に示した通りで、PCMark05のCPU Scoreは、Core i7-4500Uを搭載したLet'snote LX3よりも5%ほど高い。そのほかの結果も、Let'snote LX3とほぼ同等か上回っているものが多い。CrystalDiskMark 3.0.3aの結果も優秀であり、シーケンシャルリードは510.5MB/secを記録している。Ultrabookとしてはトップクラスのパフォーマンスを実現していると言って良いだろう。
ビジネス向けUltrabookとしての完成度は高い
新ThinkPad X1 Carbonは、薄くて軽くて高性能という、Ultrabookとしての理想を目指した製品であり、その完成度は高い。WQHD液晶の搭載は、表計算ソフトなどの作業効率を高めることができ、物理キーの配置にやや納得がいかないところはあるが、Adaptiveキーボードの採用も先進的といえる。有線LANの搭載やLenovo OneLink端子によるドッキングステーションの利便性向上など、ビジネス用途に適した製品である。価格が高めなのが難点だが、信頼性や耐久性も高いため、安心して持ち歩ける。出張や営業などで外出する機会が多い人にお勧めしたい。