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すべてが新しい「Core Ultra 200S」をベンチマーク。Ryzenとの勝負の行方は?
2024年10月25日 00:00
Arrow Lakeの名で知られるIntelの新世代デスクトップ向けCPU「Core Ultra 200Sシリーズ」が、10月25日(日本時間)に発売される。
この発売に先立ち、最上位モデルの「Core Ultra 9 285K」とエントリーモデルの「Core Ultra 5 245K」をテストする機会が得られたので、Intelの新世代CPUの性能をベンチマークテストで確かめてみた。
設計を刷新したIntelの新世代デスクトップ向けCPU
Core Ultra 200Sシリーズは、開発コードネーム「Arrow Lake-S」で知られるIntelの新世代デスクトップ向けCPU。モバイル向けの初代Core Ultra「Meteor Lake」で採用されたタイルアーキテクチャを踏襲しつつ、TSMC N3Bプロセスで製造したコンピュートタイルに、Lion Cove(Pコア)とSkymont(Eコア)というIntel最新のCPUアーキテクチャを導入した。
そのほかの機能として、Xe-LPG世代のGPUコアや最大13TOPSの性能を備えるNPU3世代のNPU、Thunderbolt 4コントローラなどを搭載。IOタイルのPCIeコントローラはGPU用にPCIe 5.0 x16、SSD接続用にPCIe 5.0 x4とPCIe 4.0 x4の合計24レーンを提供できる。また、メモリコントローラは標準でDDR5-6400に対応している。
従来のデスクトップ向けCPUである14世代Core(Raptor Lake-S Refresh)から設計を一新したCore Ultra 200Sシリーズでは、新CPUソケットのLGA1851が導入された。これにより従来のLGA1700との互換性はなくなったが、CPUクーラーの固定方法に関してはLGA1700から変更されていない。
今回テストするCPUは、Core Ultra 200Sシリーズの最上位モデルにして8基のPコアと16基のEコアを備える24コア/24スレッドCPU「Core Ultra 9 285K」と、6基のPコアと8基のEコアを備える14コア/14スレッドCPU「Core Ultra 5 245K」。Core Ultra 200Sシリーズが採用するPコアのLion Coveは、一律でHyper-Threadingに非対応なのでCPUコア数とスレッド数が一致している。
両モデルとも電力指標のPBPは125Wで、MTPは上位のCore Ultra 9 285Kが250W、下位のCore Ultra 5 245Kは159Wに設定されている。CPUコアを擁するコンピュートタイルの違いを除けば、iGPUの動作クロックに差がある程度でアンコア機能はかなり近いものとなっている。
【表1】Core Ultra 200S シリーズの主なスペック | |||
---|---|---|---|
モデルナンバー | Core Ultra 9 285K | Core Ultra 7 265K | Core Ultra 5 245K |
開発コードネーム | Arrow Lake-S | Arrow Lake-S | Arrow Lake-S |
CPUアーキテクチャ | Lion Cove + Skymont | Lion Cove + Skymont | Lion Cove + Skymont |
製造プロセス(CPU) | TSMC N3B | TSMC N3B | TSMC N3B |
Pコア数 | 8 | 8 | 6 |
Eコア数 | 16 | 12 | 8 |
CPUスレッド数 | 24 | 20 | 14 |
L2キャッシュ | 40MB | 36MB | 26MB |
L3キャッシュ | 36MB | 30MB | 24MB |
ベースクロック(Pコア/Eコア) | 3.7GHz/3.2GHz | 3.9GHz/3.3GHz | 4.2GHz/3.6GHz |
最大ブーストクロック(Pコア/Eコア) | 5.7GHz/4.6GHz | 5.5GHz/4.6GHz | 5.2GHz/4.6GHz |
iGPU | Intel Graphics | Intel Graphics | Intel Graphics |
iGPUアーキテクチャ | Xe-LPG | Xe-LPG | Xe-LPG |
GPUコア数 | Xeコア=4基 | Xeコア=4基 | Xeコア=4基 |
GPUクロック | 2,000MHz | 2,000MHz | 1,900MHz |
NPU | Intel AI Boost (NPU3) | Intel AI Boost (NPU3) | Intel AI Boost (NPU3) |
NPUピーク性能 | 13 TOPS | 13 TOPS | 13 TOPS |
対応メモリ | DDR5-6400 | DDR5-6400 | DDR5-6400 |
PCI Express | PCIe 5.0 x20 + PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x20 + PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x20 + PCIe 4.0 x4 |
PBP | 125W | 125W | 125W |
MTP | 250W | 250W | 159W |
TjMax | 105℃ | 105℃ | 105℃ |
対応ソケット | LGA1851 | LGA1851 | LGA1851 |
LGA1851対応マザーボード「ASRock Z890 Nova WiFi」
LGA1700と互換性のない新CPUソケット「LGA1851」を採用するCore Ultra 200Sシリーズには、同CPUソケットを搭載したマザーボードが必要だ。
今回は、ASRockより借用したIntel Z890チップセット搭載マザーボード「Z890 Nova WiFi」を使用してCore Ultra 9 285KとCore Ultra 5 245Kのテストを行なう。
Z890 Nova WiFiはASRockのゲーミングブランド「Phantom Gamingシリーズ」の最上位モデルに与えられるNovaを冠したマザーボード。CPU用として110A対応SPSを使用した20フェーズの電源回路を搭載しており、250WのMTPが設定されたCore Ultra 9 285Kの性能を引き出すのに十分な能力を備えている。
テスト環境と比較用CPU
Core Ultra 200Sシリーズの比較用CPUには、一世代前のハイエンドCPUである「Core i9-14900K」と、AMDのハイエンドCPU「Ryzen 9 9950X」、現在最強のゲーミングCPUのひとつである「Ryzen 7 7800X3D」を用意した。
テスト環境や設定などは以下の表の通り。動作リミットについては各CPUの標準設定を適用しており、メモリについても原則として各CPUがサポートする最大メモリスピードに設定しているのだが、今回DDR5-6400対応メモリを用意できなかったため、Core Ultra 200Sシリーズについては最大対応スピードより低いDDR5-5600メモリを使用している。
【表2】テスト環境 | |||||
---|---|---|---|---|---|
CPU | Core Ultra 9 285K | Core Ultra 5 245K | Core i9-14900K | Ryzen 9 9950X | Ryzen 7 7800X3D |
コア数/スレッド数 | 8P+16E/24T | 6P+8E/14T | 8P+16E/32T | 16C/32T | 8C/16T |
L2キャッシュ | 40MB | 26MB | 32MB | 16MB | 8MB |
L3キャッシュ | 36MB | 24MB | 36MB | 64MB | 96MB |
CPU電力リミット | PL1=PL2=250W | PL1=PL2=159W | PL1=PL2=253W | PPT=200W | PPT=162W |
CPU電流リミット | IccMAX=347A | IccMAX=242A | IccMAX=400A | TDC=160A、EDC=225A | TDC=120A、EDC=180A |
CPU温度リミット | 105℃ | 105℃ | 100℃ | 95℃ | 89℃ |
マザーボード | ASRock Z890 Nova WiFi | ASRock Z790 Steel Legend WiFi | ASRock X670E Taichi | ||
BIOS | v2.02.ME01 | v18.01 | v3.08 | ||
メモリ | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-90、1.1V) | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V) | DDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V) | ||
メモリコントローラ | 1,400MHz | 1,400MHz | 1,400MHz | 2,800MHz | 2,600MHz |
Infinity Fabric | ─ | ─ | ─ | 2,000MHz | 2,000MHz |
CPUクーラー | ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB + ARCTIC P12 MAX (ファンスピード=100%) | ||||
ビデオカード | GeForce RTX 4090 Founders Edition (24GB) | ||||
GPUドライバ | GRD 560.81 (32.0.15.6081)、Resizable BAR=有効 | ||||
システム用SSD | Samsung 970 EVO PLUS (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | ||||
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) | ||||
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum) | ||||
OS | Windows 11 Pro 24H2 (build 26100.2033、VBS有効) | ||||
電源プラン | 高パフォーマンス | バランス | |||
計測 | HWiNFO64 Pro v8.12、ラトックシステム RS-BTWATTCH2 | ||||
室温 | 約25℃ |
Core Ultra 200Sシリーズの電源プランは「高パフォーマンス」に設定
先のテスト環境に記載しているのだが、Core Ultra 200SシリーズのみWindowsの電源プランを「高パフォーマンス」に設定している。
これはIntelからの勧告に従って変更したものだが、Windows 11 24H2を用いる今回のテスト環境において標準の電源プランである「バランス」が選択されている場合、高パフォーマンスの結果より2~3割程度低いスコアが計測されるテストや、酷いものでは半分以下にまで落ち込む結果が確認された。なお、Windows 11 23H2においてもある程度の2割程度の性能低下が発生していた。
Intelはこの原因を調査中としているが、発売直前のテストにおいてCore Ultra 200Sシリーズ搭載電源プランの「高パフォーマンス」への設定変更は必須と言える。発売直後に改善される見込みは薄いため、購入後に期待通りの性能が発揮できない場合、まず電源プランの変更を行なうべきだ。
率直なところ、標準設定でまともにパフォーマンスが発揮できないという現状はかなり厳しいものと言わざるを得ない。早急に動作の改善を期待したいところだ。
ベンチマーク結果
今回実施したベンチマークテストは以下の通り。
- Cinebench 2024
- Cinebench R23
- 3DMark
- Blender Benchmark
- やねうら王
- Adobe Camera Raw
- DaVinci Resolve 19
- HandBrake
- TMPGEnc Video Mastering Works 7
- PCMark 10 Extended
- PCMark 10 Application
- UL Procyon「Office Productivity Benchmark」
- UL Procyon「Photo Editing Benchmark」
- MicroBenchX
- AIDA64 Cache & Memory Benchmark
- ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
- Forza Horizon 5
- オーバーウォッチ 2
- フォートナイト
- エーペックスレジェンズ
- サイバーパンク2077
- モンスターハンターライズ:サンブレイク
- Microsoft Flight Simulator
Cinebench 2024
Cinebench 2024では、CPU性能を計測する「CPU (Multi Core)」と「CPU (Single Core)」を実行した。
マルチスレッド性能を計測するCPU (Multi Core)では、Core Ultra 9 285Kが全体ベストの「2,330」を記録し、Core Ultra 5 245Kを約66%、Core i9-14900Kを約10%、Ryzen 9 9950Xを約14%、Ryzen 7 7800X3Dを約137%上回った。
シングルスレッド性能を計測するCPU (Single Core)でも、「145」を記録したCore Ultra 9 285Kが全体ベストで、Core Ultra 5 245Kを約11%、Core i9-14900Kを約8%、Ryzen 9 9950Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約31%上回った。
Cinebench R23
Cinebench R23では、マルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」でCore Ultra 9 285Kが全体ベストの「41,708」を記録し、Core Ultra 5 245Kを約68%、Core i9-14900Kを約8%、Ryzen 9 9950Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約134%上回った。
「CPU (Single Core)」での全体ベストも「2,374」を記録したCore Ultra 9 285Kで、Core Ultra 5 245Kを約10%、Core i9-14900Kを約4%、Ryzen 9 9950Xを約5%、Ryzen 7 7800X3Dを約31%上回った。
3DMark「CPU Profile」
3DMarkのCPUベンチマーク「CPU Profile」は、CPU性能をスレッド数毎に計測するベンチマークテスト。
Core Ultra 9 285Kは、16スレッド時にRyzen 9 9950Xを約8%下回ったが、それ以外の条件では全体ベストを記録。Core Ultra 5 245Kを8~46%、Core i9-14900Kを8~34%、Ryzen 9 9950Xを5~11%、Ryzen 7 7800X3Dを40~123%上回った。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkでは、CPUテストを実行してレンダリング速度(Samples per Minutes)を計測した。
Core Ultra 9 285KはRyzen 9 9950Xに次ぐ2番手のスコアを記録しており、Core Ultra 5 245Kを76~81%、Core i9-14900Kを10~22%、Ryzen 7 7800X3Dを110~125%上回った。
やねうら王
将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。
マルチスレッドテストでは、Core Ultra 9 285KがRyzen 9 9950Xを約7%下回り全体2番手となっており、Core Ultra 5 245Kを約67%、Core i9-14900Kを約9%、Ryzen 7 7800X3Dを約111%上回った。
一方、シングルスレッドテストでのCore Ultra 9 285Kは、Ryzen 9 9950Xを約5%、Core i9-14900Kを約2%下回る3番手のスコアとなっており、Core Ultra 5 245Kを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約19%上回った。
Adobe Camera Raw「RAW現像」
Adobe Camera Rawにて、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに現像するのに掛かった時間を測定。その処理速度(fps)を比較した。
Core Ultra 9 285Kが全体ベストの「7.28fps」を記録し、Core Ultra 5 245Kを約18%、Core i9-14900Kを約14%、Ryzen 9 9950Xを約18%、Ryzen 7 7800X3Dを約61%上回った。
DaVinci Resolve 18
DaVinci Resolve 19では、カメラで撮影した2160p60(4K60p)動画を素材として作成した約60秒の動画を、YouTube向けプリセットで1080p60と2160p60に書き出した際の処理速度を計測した。
GPUとそのメディアエンジンへの依存度が高いテストだが、なぜかCore Ultra 200Sシリーズはほかの環境を15%ほど下回る速度となっている。
HandBrake
HandBrakeでは、約60秒の2160p60(4K60p)動画を「Creator」プリセットで1080pと2160pにエンコードしたさいの速度を計測した。
Core Ultra 9 285Kは1080pと2160pの両方で最速を記録しており、Core Ultra 5 245Kを51~55%、Core i9-14900Kを14~16%、Ryzen 9 9950Xを4~5%、Ryzen 7 7800X3Dを82~85%上回った。
TMPGEnc Video Mastering Works 7
TMPGEnc Video Mastering Works 7では、ソフトウェアエンコーダのx264とx265を使用して、約60秒の2160p60(4K60p)動画をエンコードしたさいの速度を計測した。
Core Ultra 9 285Kはx265への変換でRyzen 9 9950Xを約5%下回ったが、x264では逆に6%上回った。そのほかのCPUに対しては、Core Ultra 5 245Kを55~64%、Core i9-14900Kを10~18%、Ryzen 7 7800X3Dを104~106%上回った。
PCMark 10
PCMark 10標準のテストの中でもっとも詳細な「PCMark 10 Extended」を実行した結果が以下のグラフ。
Core Ultra 200Sシリーズはスコアが伸びておらず、Core Ultra 9 285Kの総合スコアはRyzen 9 9950Xを約10%、Core i9-14900Kを約1%下回る全体3番手となっており、Core Ultra 5 245Kを約4%、Ryzen 7 7800X3Dを約2%上回った。
PCMark 10 Application
Microsoft OfficeやWebブラウザのEdgeを使ってパフォーマンスの計測を行なう「PCMark 10 Application」の実行結果が以下のグラフ。
Core Ultra 9 285Kが総合スコアで全体ベストの「19,134」を記録し、Core Ultra 5 245Kを約9%、Core i9-14900Kを約9%、Ryzen 9 9950Xを約2%、Ryzen 7 7800X3Dを約15%上回った。
UL Procyon「Office Productivity Benchmark」
Microsoft Officeを使ってパフォーマンスの計測を行なうUL Procyon「Office Productivity Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。
Core Ultra 9 285KはRyzen 9 9950Xとほぼ同等のスコアを記録しており、Core Ultra 5 245Kを約8%、Core i9-14900Kを約3%、Ryzen 7 7800X3Dを約15%上回った。
UL Procyon「Photo Editing Benchmark」
Adobeの画像編集系ソフト(Photoshop、Lightroom Classic)を使ってパフォーマンスの計測を行なうUL Procyon「Photo Editing Benchmark」を実行した結果が以下のグラフ。
Core Ultra 9 285KはRyzen 9 9950Xを約9%下回る全体2番手のスコアを記録しており、Core Ultra 5 245Kを約9%、Core i9-14900Kを約1%、Ryzen 7 7800X3Dを約4%上回った。
CPUコア間のレイテンシ
MicroBenchXの「C2CLatency」でCPUコア間のレイテンシを計測した結果が以下のグラフとマトリックス表だ。
Core Ultra 200Sシリーズは、4基のEコアをひとまとめにしているEコアモジュール内でのレイテンシが低い様子がみてとれる。
なお、Core Ultra 200SシリーズはWindowsの電源プランを「バランス」に設定した場合、Eコアモジュール内以外のコア間レイテンシが数倍に増加することを確認している。詳細は不明だが、このあたりに「高パフォーマンス」以外の電源プランでパフォーマンスが低下する一因があるのかもしれない。
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「メインメモリ性能」
AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。
Core Ultra 9 285Kのメモリ帯域幅は、同じDDR5-5600メモリを搭載するCore i9-14900KやRyzen 9 9950Xを上回っているが、レイテンシに関しては2割ほど増加していることが確認できる。
AIDA64 Cache & Memory Benchmark「キャッシュ性能」
AIDA64 Cache & Memory Benchmarkで、CPUが備えるキャッシュメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフ。
正確に測定できているのかに若干の疑問はあるものの、Core Ultra 9 285Kのキャッシュ帯域幅をCore i9-14900Kと比較した場合、L1キャッシュは同等かそれ以上の帯域幅を記録し、L3キャッシュに関しては帯域幅が大幅に増加していることが確認できる一方、L2キャッシュの帯域幅はCore i9-14900Kを大きく下回っている。
レイテンシについては帯域幅ほど極端な結果にはなっていないが、Core i9-14900Kより若干レイテンシが増加している様子を確認できる。
3DMark
3DMarkでは「Speed Way」、「Steel Nomad」、「Port Royal」、「Solar Bay」、「Wild Life」を実行した。
3DMarkではスコアが横並びとなっているテストがほとんどで、明確なスコア差が生じたのはGPU負荷が低いWild Life(無印)のみだ。
Wild Lifeで全体ベストを記録したのは「179,530」を記録したCore Ultra 9 285Kで、Core Ultra 5 245Kを約1%、Core i9-14900Kを約9%、Ryzen 9 9950Xを約9%、Ryzen 7 7800X3Dを約27%上回った。
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、グラフィックスプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。なお動的解像度(DLSS/FSR)については無効にしている。
ここではCore Ultra 200Sシリーズが下位に沈んでおり、Core Ultra 9 285KはCore Ultra 5 245Kを4~23%上回ったものの、Core i9-14900Kを3~8%、Ryzen 9 9950Xを1~6%、Ryzen 7 7800X3Dを4~19%下回っている。
Forza Horizon 5
Forza Horizon 5ではゲーム内ベンチマークモードを使用して、グラフィックスプリセット「エクストリーム」で3つの画面解像度をテストしたほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「中」に落とした高fps設定でのテストを行なった。
Core Ultra 9 285Kが記録した平均フレームレートは全体3番手となっており、Core Ultra 5 245Kを2~16%、Core i9-14900Kを0~11%上回る一方、Ryzen 9 9950Xを1~4%、Ryzen 7 7800X3Dを1~14%下回った。
オーバーウォッチ 2
オーバーウォッチ 2では、グラフィックスプリセットを「エピック」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のレンダースケールは100%で、最大フレームレートは600fps。
ほとんどのCPUが横並びとなっている4K/2160pの結果を除けば、Core Ultra 9 285KはCore Ultra 5 245Kを4~25%上回ったものの全体4番手の結果となっており、Core i9-14900Kを1~2%、Ryzen 9 9950Xを1~4%、Ryzen 7 7800X3Dを2~5%下回った。
フォートナイト
フォートナイトでは、NaniteおよびLumenを無効にした上でグラフィックスプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「中」に落とした高fps設定での計測も行なった。テスト時のグラフィックススAPIはDirectX 12で、3D解像度は全条件で100%に設定している。
Core Ultra 9 285KはフルHD/1080pでCore i9-14900Kを約4%上回ったものの、他の条件では3~5%下回っており、Ryzen 9 9950Xを1~44%、Ryzen 7 7800X3Dを3~28%下回った。
エーペックスレジェンズ
エーペックスレジェンズでは、グラフィックス設定をできる限り高く設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックススAPIはDirectX 11で、最大フレームレートは300fps。
ここではCPU性能差がほとんどフレームレートに反映されていないのだが、Core Ultra 9 285Kのみテスト中にカクツキ(スタッタリング)がやや多めに発生したことで、平均フレームレートが他のCPUより若干低めになっている。
サイバーパンク2077
サイバーパンク2077では、グラフィックスプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。なお、テスト時はGeForce RTX 4090がサポートするDLSS 3のフレーム生成を有効化しているほか、DLSS超解像のプリセットをフルHD/1080pとWQHD/1440pで「クオリティ」、4K/2160pで「パフォーマンス」に設定している。
Core Ultra 9 285Kのパフォーマンスは比較用CPUを下回っており、特にGPU負荷の軽くなるフルHD/1080pではCore i9-14900Kを約17%、Ryzen 9 9950Xを約15%、Ryzen 7 7800X3Dを約21%も下回っている。
モンスターハンターライズ:サンブレイク
モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックスプリセットを「高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。
Core Ultra 9 285Kは、GPU負荷の低くなるフルHD/1080pとWQHD/1440pで285fps前後のフレームレートを記録し、Core Ultra 5 245Kを22~28%、Ryzen 9 9950Xを3~6%上回ったが、Core i9-14900Kを1~5%、Ryzen 7 7800X3Dを約2%下回った。
Microsoft Flight Simulator
Microsoft Flight Simulatorでは、グラフィックスプリセットを「ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「ミドル」に落とした高fps設定でも平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックススAPIはDirectX 12で、アンチエイリアスを「DLSS/DLAA」、DLSSフレーム生成を「有効」に設定している。
3D V-Cacheの効果でRyzen 7 7800X3Dが圧倒的なフレームレートを記録する一方、Core Ultra 9 285Kはブービーに沈んでおり、Core Ultra 5 245Kを5~12%上回ったものの、Core i9-14900Kを2~5%、Ryzen 9 9950Xを3~6%、Ryzen 7 7800X3Dを21~26%下回った。
消費電力とワットパフォーマンス
ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力とベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測。また、ベンチマークスコアを平均消費電力で割ることで求めたワットパフォーマンスを比較した。
以下のグラフはアイドル時の最小消費電力とCPUベンチマーク実行中の消費電力をまとめたもの。
アイドル時消費電力についてはCore Ultra 9 285Kが77.8W、Core Ultra 5 245Kが75.3Wで、もっとも低かったCore i9-14900Kの74.3Wより若干高いものの、X670Eマザーで100Wを超えているRyzen 9 9950XやRyzen 7 7800X3Dよりは明確に低い数値となっている。
CPUベンチマーク実行中の平均消費電力はCore Ultra 9 285Kが361.2~389.2W、Core Ultra 5 245Kが229.9~317.4W。GPUを活用するPhotoshopのRAW変換を除いた場合、Core Ultra 9 285Kの平均消費電力はRyzen 9 9950Xより高く、比較製品中最大のCore i9-14900Kより低い。
ワットパフォーマンスをみてみると、Core Ultra 9 285KのワットパフォーマンスはCore i9-14900K比で119~137%となっており、CPUの電力効率が明らかに改善されている様子が確認できる。いくつかのテストではRyzen 9 9950Xをも上回っており、製造プロセスとアーキテクチャの刷新が電力効率向上に寄与していることがうかがえる。
ゲームベンチマーク実行中の平均消費電力は、Core Ultra 9 285Kが343.1~560.6W、Core Ultra 5 245Kが301.3~564.3Wで、Core Ultra 9 285KはここでもCore i9-14900Kとおおむね同等以上と言えるワットパフォーマンスを発揮している。
ただ、Core i9-14900K比で111%のワットパフォーマンスを記録したFF14ベンチマーク(フルHD/1080p)では、ベンチマークスコア自体は約8%ほど下回っている。単純にCPU消費電力が減少しただけでなく、十分な性能を発揮できなかったことで稼働率とクロックが低下したGPUの電力効率上昇が影響している可能性もあるので、ワットパフォーマンスのみの優劣で評価するべきではない。
Cinebench 2024実行中のモニタリングデータ
HWiNFO64 Proを使って計測したCinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約25℃。
Core Ultra 9 285KのCPU温度は平均83.2℃(最大91.0℃)で、CPU消費電力は平均223.9W(最大260.6W)。いずれもリミット値である105℃や250Wに張り付くような動作にはなっておらず、Pコア平均5,271MHz、Eコア平均4,587MHzで動作していた。
Core Ultra 5 245KのCPU温度は平均62.0℃(最大66.0℃)で、CPU消費電力は平均127.1W(最大146.5W)。こちらもリミット値である105℃や159Wには達しておらず、Pコア平均4,988MHz、Eコア平均4,601MHzで動作していた。
FF14ベンチマーク実行中のモニタリングデータ
HWiNFO64 Proを使って計測した「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(フルHD/1080p、最高品質)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約25℃。
Core Ultra 9 285KのCPU温度は平均49.2℃(最大57.0℃)で、CPU消費電力は平均54.1W(最大97.1W)。この時のCPUコアはPコア平均4,929MHz(最大5,401MHz)、Eコア平均4,587MHz(最大4,601)で動作していた。
一方、Core Ultra 5 245KのCPU温度は平均43.8℃(最大61.0℃)で、CPU消費電力は平均45.3W(最大137.0W)。この時のCPUコアはPコア平均4,901MHz(最大5,001MHz)、Eコア平均4,564MHz(最大4,601)で動作していた。
Core Ultra 200Sシリーズは、FF14ベンチマーク実行中の平均CPU消費電力がかなり低いものとなっているが、問題は実際のパフォーマンスが比較用CPUより低いものとなっている点だ。もう少し消費電力を増やしてでもパフォーマンスを稼いでほしいところだ。
GPU使用時のパフォーマンスをチェック
最後に、CPUに統合されているGPU(iGPU)のパフォーマンスをチェックする。
テストに使用する機材は以下の通りで、基本的には先のベンチマーク環境を流用している。
【表3】iGPUテスト環境 | |||||
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CPU | Core Ultra 9 285K | Core Ultra 5 245K | Core i9-14900K | Ryzen 9 9950X | Ryzen 7 7800X3D |
コア数/スレッド数 | 8P+16E/24T | 6P+8E/14T | 8P+16E/32T | 16C/32T | 8C/16T |
L2キャッシュ | 40MB | 26MB | 32MB | 16MB | 8MB |
L3キャッシュ | 36MB | 24MB | 36MB | 64MB | 96MB |
CPU電力リミット | PL1=PL2=250W | PL1=PL2=159W | PL1=PL2=253W | PPT=200W | PPT=162W |
CPU電流リミット | IccMAX=347A | IccMAX=242A | IccMAX=400A | TDC=160A、EDC=225A | TDC=120A、EDC=180A |
CPU温度リミット | 105℃ | 105℃ | 100℃ | 95℃ | 89℃ |
内蔵GPU | Intel Graphics | Intel Graphics | UHD Graphics 770 | Radeon Graphics | Radeon Graphics |
GPUクロック | 2,000MHz | 1,900MHz | 1,650MHz | 2,200MHz | 2,200MHz |
GPUドライバ | 32.0.101.5869 | 32.0.101.6078 | Adrenaline 24.9.1 (32.0.12011.1036) | ||
マザーボード | ASRock Z890 Nova WiFi | ASRock Z790 Steel Legend WiFi | ASRock X670E Taichi | ||
BIOS | v2.02.ME01 | v18.01 | v3.08 | ||
メモリ | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V) | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V) | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V) | ||
メモリコントローラ | 1,400MHz | 1,400MHz | 1,400MHz | 2,800MHz | 2,600MHz |
Infinity Fabric | ─ | ─ | ─ | 2,000MHz | 2,000MHz |
CPUクーラー | ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB + ARCTIC P12 MAX (ファンスピード=100%) | ||||
システム用SSD | Samsung 970 EVO PLUS (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | ||||
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) | ||||
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum) | ||||
OS | Windows 11 Pro 24H2 (build 26100.2033、VBS有効) | ||||
電源プラン | 高パフォーマンス | バランス | |||
室温 | 約25℃ |
Core Ultra 9 285KとCore Ultra 5 245Kが搭載するiGPU「Intel Graphics」は、Xe-LPGアーキテクチャを採用する4コアGPU。先日発売されたLunar LakeことCore Ultra 200VシリーズのXe2アーキテクチャ採用GPUより設計が古くコアも小規模なものだが、Core i9-14900KやRyzen 9 9950Xに搭載されているiGPUコアに比べればかなり高い性能を備えていることが分かる。
それでもゲームをプレイするのに十分と言えるほどの性能はないが、GPUへの要求スペックが低いゲームであればある程度動かせるだけの性能は備えているようだ。
ポテンシャルは感じるものの、課題も多いIntelの新世代CPU
設計と製造プロセスを一新したCore Ultra 200Sシリーズは、Cinebenchなど一部のテストでCPU性能とワットパフォーマンスの進化を感じられる結果を示した。これはデスクトップPCの新調や自作を検討しているユーザーにとって歓迎できるものだろう。
ただ、そのパフォーマンスすら電源プランを「高パフォーマンス」に設定することで得られるものであり、標準の「バランス」設定で数割程度の性能低下が珍しくないというのはよろしくない。ゲームでのパフォーマンスも前世代に劣る結果が少なくないのも気がかりなところで、Intelは早急に動作の改善を図る必要がある。
CPU自体のポテンシャルの高さを感じられるだけに、万全とは言えない状態で発売を迎えるのは残念だ。今後どこまで動作やパフォーマンスが改善するのかは未知数であり、発売時点ではPCに詳しいパワーユーザー向けの製品となりそうだ。
設計が刷新されたCore Ultra 200Sを“KTU”加藤勝明さんがライブ配信で徹底解説。
「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 5 245K」に加えて「Core Ultra 7 265K」の性能評価も行なう予定です。