Hothotレビュー

5万円切りで高品質MR体験&Androidアプリ動作。コスパ重視のMeta Quest 3Sは間違いなくアリ

Meta「Meta Quest 3S」128GB版48,400円、256GB版64,900円

 Metaはエントリー向けのMRデバイス「Meta Quest 3S」を10月15日に発売した。本製品は昨年10月に発売されたMeta Quest 3の兄弟モデル。MR体験自体はほぼ同じ品質を保ちつつ、ディスプレイやレンズ、瞳孔間距離調整機構などを低コスト化。128GBモデルで5万円を切る入手しやすい価格を実現している。

 実機を借用したので、Meta Quest 3SおよびMeta Quest 3のスペック比較、MR体験の違い、ベンチマーク、そして最新コンテンツ情報などをお伝えしていこう。

低解像度ディスプレイの採用、深度センサーの省略などにより低価格を実現

 まずは基本スペックから解説しよう。「Meta Quest 3S」は、OSに「Android 12」をベースにした独自OS、プロセッサに「Qualcomm Snapdragon XR2 Gen 2」を採用。メモリは8GB、ストレージは128GBまたは256GBを搭載している。ストレージ容量の異なる2モデルが用意されており、128GB版が4万8,400円、256GB版が6万4,900円だ。

 これ以上の容量のモデルが欲しいのであれば、「Meta Quest 3」(以下Quest 3)の512GBモデル(8万1,4000円)を選択することになる。

 ディスプレイには片目あたり1,832×1,920ドットのLCDディスプレイ(773PPI、20PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz/120Hz、視野角水平96度/垂直90度、sRGB100%、フレネルレンズ、3位置IAD調整)を採用。

ディスプレイは片目あたり1,832×1,920ドットのLCDディスプレイ(773PPI、20PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz/120Hz、視野角水平96度/垂直90度、sRGB100%、フレネルレンズ、3位置IAD調整)。IAD調整は直接左右に動かす

 Quest 3が片目あたり2,064×2,208ドットのLCDディスプレイ(1,218PPI、25PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz/120Hz、視野角水平110度/垂直96度、sRGB100%、パンケーキレンズ、連続IAD調整)を搭載。ディスプレイパネルとレンズ、そしてIAD(Inter-Axial Distance、光軸間距離)調整機構で差別化されているわけだ。

 カメラ(センサー)は、RGBカメラ×2、VGAセンサー×4、LEDフラッドライト×2を搭載。深度センサーは搭載されていない。外界のパススルー映像はRGBカメラで取り入れ、手やコントローラのインサイドアウトトラッキングや、3D空間内での装着者の動きや位置はVGAセンサーで検出する。深度センサーの代わりに搭載されたLEDフラッドライトは、さまざまな環境や光量でジェスチャーコントロールの精度を高めるために使用される。

カメラ(センサー)は、RGBカメラ×2、VGAセンサー×4(内2つは左右側面)、LEDフラッドライト×2を配置
左上の小さい穴は環境光センサー、右上はRGBカメラ、左下はLEDフラッドライト、右下はVGAセンサー。VGAセンサーは左右側面にも搭載されている

 ワイヤレス通信はWi-Fi 6EとBluetooth(バージョンは非公表)。データ通信と充電用にUSB Type-Cを搭載している点はQuest 3と同じだが、Quest 3Sでは3.5mmオーディオジャックが省略されている。イヤフォンを利用したい場合には、Bluetooth経由、もしくはUSB Type-C経由で接続する必要がある。コストカットのためとはいえ、3.5mmオーディオジャックが省かれたことは意見が分かれそうだ。

 コントローラはQuest 3と同じ「Touch Plusコントローラー」が同梱。また、電源アダプタ、眼鏡スペーサー、説明書類(クイックスタートガイド、安全および保証ガイド)が付属する。

 本体サイズは実測195×147×105mm、重量は514g。4,324mAhのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は平均的な利用方法でQuest 3より0.3時間長い2.5時間と謳われている。解像度の低いディスプレイパネルを搭載し、深度センサーが省略されていることなどにより、少ないバッテリ容量でも長時間駆動を実現している可能性がある。

本体上面
本体下面にはボリュームボタンとアクションボタンを配置。アクションボタンではパススルーのオン/オフを切り替えられる
左側面にはUSB Type-C端子、電源ボタンを配置。両側面下部にあるのはVGAセンサー
標準ヘッドストラップの構造はQuest 3と同じ
アームの両内側にはステレオスピーカーを配置
「Touch Plusコントローラー」には、上面にサムスティック、メニュー/Metaボタン、AB/XYボタン、下面にはトリガーボタン、両内側にはグリップボタンを用意
電池は単3形アルカリ電池(Heybright製が同梱)を使用
製品パッケージ
パッケージには、本体、「Touch Plusコントローラー」、電源アダプタ、USB Type-Cケーブル、眼鏡スペーサー、説明書類(クイックスタートガイド、安全および保証ガイド)が同梱
眼鏡スペーサー
本体の重量は実測514g
「Touch Plusコントローラー」の重量は実測125.3g
USB Type-Cケーブルの長さは実測100cm
ACアダプタの仕様は入力100-240V/0.5A、出力5V/3A、9V/2A、容量18W
【表】Meta Quest 3Sのスペック
Meta Quest 3SMeta Quest 3
発表日2024年9月25日2023年9月28日
発売日2024年10月15日2023年10月10日
価格128GB : 4万8,400円
256GB : 6万4,900円
128GB : 7万4,800円→6万9,300円
512GB : 9万6,800円→8万1,400円
ハードウェアPC不要、PCと接続可能PC不要、PCと接続可能
カメラ、センサー構成RGBカメラ×2、VGAセンサー×4、LEDフラッドライト×2RGBセンサー×2、VGAセンサー×4、深度センサー
複合現実(MR)4MP RGB、18PPD(Quest 2の4.5倍の解像度、色鮮やかさ、ソフトウェアデプスが向上)4MP RGB、18PPD(Quest 2の4.5倍の解像度、色鮮やかさ、ソフトウェアデプスが向上)
トラッキング6DoF6DoF
OSAndroid 12Android 12
SoCSnapdragon XR2 Gen 2Snapdragon XR2 Gen 2
GPUAdreno 740Adreno 740
RAM8GB8GB
ストレージ128GB、256GB128GB、512GB
ディスプレイ液晶ディスプレイ、片目あたり1,832×1,920ドット、773PPI、20PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz/120Hz、視野角水平96度/垂直90度、sRGB100%、フレネルレンズ、3位置IAD調整液晶ディスプレイ、片目あたり2,064×2,208ドット、1,218PPI、25PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz/120Hz、視野角水平110度/垂直96度、sRGB100%、パンケーキレンズ、連続IAD調整
IPD実測58~68mm58~68mm
オーディオステレオスピーカーステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック
無線通信Wi-Fi 6E、BluetoothWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2
端子USB Type-CUSB Type-C
コントローラ2本、サイズ : 126×67×43mm、重量 : 実測125.3g、電源 : 単3電池×22本、サイズ : 126×67×43mm、重量 : 実測125.3g、電源 : 単3電池×2
サイズ実測195×147×105mm184×160×98mm
重量514g515g
バッテリ容量4,324mAh5,060mAh
バッテリ駆動時間平均的な利用方法で2.5時間平均的な利用方法で2.2時間
充電時間非公表約2.3時間

Quest 3SとQuest 3のMR体験に大きな差はない

 Quest 3SとQuest 3の主な違いを箇条書きにすると、下記のようになる。

  • 深度センサーの有無(3Sは非搭載)
  • ディスプレイ解像度(3Sは1,832×1,920ドット、3は2,064×2,208ドット)
  • 視野角(3Sは水平96度/垂直90度、3は水平110度/垂直96度)
  • レンズの種類(3Sがフレネル、3がパンケーキ)
  • IAD調整(3Sが3段階、3は無段階)
  • 3.5mmオーディオジャックの有無(3Sは非搭載)
  • バッテリ容量(3Sは4,324mAh、3は5,060mAh)
  • バッテリ駆動時間(3Sは2.5時間、3は2.2時間)

 今回、Quest 3SとQuest 3を交互に使ってみたが、MR体験自体に大きな差はないというのが率直な感想だ。まず解像度の違いについてはゲーム系のVRコンテンツをプレイしているかぎりは、ほぼ違いに気づかないレベルだ。3Dグラフィックが高速に動いている状態では、あえて見ようとしなければグラフィックのジャギーや、液晶パネルの格子模様などは気にならないと感じた。

このようなゲーム画面が動いていれば解像度の差は気にならない

 ただし、ブラウザなどに文字を表示していると、どうしても文字の精細さには違いを感じる。個人的には、「リモートデスクトップ」アプリなどで、WindowsやMacのデスクトップ画面を表示するのであれば、Quest 3を強くおすすめする。

Quest 3Sの実際のディスプレイでは、ブラウザの文字などはややボケて見える

 ディスプレイの画質面で解像度以上に気になったのが、レンズの種類による見え方の違い。3Sのフレネルレンズでは周辺部がややぼやけてしまうので、目だけで上下左右の端に視線を向けると、表示されている映像が二重に見えてしまう。

 対象に頭ごと向ければ済む話だが、可能であれば実機で周辺部の見え方を比べておいたほうがいい。ちなみに、視野角もスペック上の違いはあるが、こちらについてはあまり気にならなかった。

左がフレネルレンズを採用したQuest 3S、右がパンケーキレンズを採用したQuest 3。このまま同じように見えるわけではないが、Quest 3Sは周辺部がぼやけて見える

 IAD調整は無段階、かつヘッドセット下のダイヤルで動かせるQuest 3のほうが機能性は高い。しかし、Quest 3Sの3段階は大雑把だが悩まなくて済むし、何度も調整するものでもない。Quest 3Sの3位置IAD調整はエントリー機には適切だ。

3位置IAD調整は指で直接動かす。ヘッドセットの付け外しは必要だが単純明快だ

 結構差が出ると考えていたのが深度センサーの有無。しかし予想がいい意味ではずれて、あえて照明を少し暗くしても部屋の境界線をしっかりと認識できたし、暗い状態のままで両手の表裏をひっくり返したり、指をバラバラに動かしても正常に反映された。

 もっと部屋が暗かったり、広かったりすれば結果が違う可能性はある。しかし、室内灯をつけた8~10畳ぐらいの部屋であれば、境界線の認識、両手でのジェスチャーなどの正確性は、Quest 3SとQuest 3でほぼ違いはないと思われる。

深度センサーの代わりにLEDフラッドライトを搭載したQuest 3Sでも、暗い部屋で境界線を作成し、手のひらの動きも認識できた

処理速度はほぼ同等、ただしGPUスコアはQuest 3Sが上回った

 後述するがQuest 3S、Quest 3にはAndroidアプリをインストール可能だ。そこで今回、両モデルでベンチマーク「AnTuTu Benchmark V10.3.3」を実行したところ、ほぼ同等のスコアとなった。

 GPUについてはQuest 3SがQuest 3の約106%相当のスコアを記録しているが、これはQuest 3Sが片目あたり1,832×1,920ドット、Quest 3が片目あたり2,064×2,208ドットのディスプレイパネルを使用しており、Quest 3Sのほうがグラフィック描画にかかる負荷が低いためと思われる。いずれにしても処理速度という点では、両者にほぼ違いはないと言えよう。

「AnTuTu Benchmark V10.3.3」
Quest 3Sの計測結果
Quest 3の計測結果

最新コンテンツも続々リリース、Androidアプリもインストールできる

 最後にMeta Questシリーズの最新コンテンツ情報をお伝えしよう。Quest 3Sの発売に合わせて、「バットマン : アーカム・シャドウ」がリリースされる。新規にQuest 3S、Quest 3を購入したユーザーは無償で入手、プレイ可能だ。また「Meta Quest+」というサブスクリプションサービスの3カ月トライアルも用意されている。

「バットマン : アーカム・シャドウ」(7,800円)
バットマンの視点からガジェットや戦闘スタイルを駆使して、ゴッサム・シティを暗躍する犯罪者と戦う

 「機動戦士ガンダム」のTV放送から視聴していたガンダムファンの筆者としては見逃せないのが、「機動戦士ガンダム : 銀灰の幻影」。オリジナルストーリーを鑑賞しつつ、間に挟まれたインタラクティブゲームをプレイしていくという構成の作品だ。

 目の前にそびえるモビルスーツ、無重力空間で跳びはねる「ハロ」、魅力的なキャラクターたちをVR空間で目撃できるという体験はファンにはたまらない。とはいえ「機動戦士ガンダム 戦場の絆 VR PROTOTYPE Ver.」がQuest向けにリリースされることにも期待したい。

「機動戦士ガンダム : 銀灰の幻影」(2,800円)©創通・サンライズ
ストーリーモードでは大きく位置を移動することはできないが、ある程度近づいたり、しゃがんだりなど、異なる視点から鑑賞可能だ

 Meta Questシリーズには多くの魅力的なVR、MRコンテンツがリリースされているが、Androidアプリをインストール可能。筆者は今回、Androidスマホのファイル管理ソフトでアプリをバックアップ(APK化)して、そのファイルをPC経由でQuest 3Sの内部ストレージにコピー。その後、Metaストアから入手できる「Mobile VR Station」からAPKファイルをインストールした。すべての動作を確認したわけではないが、「DMMブックス」、「Kindle」、「audible」などのAndroidアプリが利用できた。

「DMMブックス」、「Kindle」、「audible」などのAndroidアプリを利用できた。ただ画面を横位置に変更する方法がわからなかった。ご存じの方がいればぜひ教えてほしい

 また「リモートデスクトップ」アプリを使えば、Windows、Macなどのデスクトップ画面を表示できる。MR空間でPC、Android、Meta Quest用アプリを混在して利用できるわけだ。品質や操作感は「Apple Vision Pro」におよばないが、ゲームコンテンツの豊富さ、自由度の高さという点は、Meta Questシリーズの大きなアドバンテージだと言える。

「リモートデスクトップ」アプリを使用すれば、大きな画面で作業できる。ただしやや遅延が大きい。ほかのリモートデスクトップ関連アプリも試してみたい

ゲーム系のMR、VRコンテンツ目的なのであれば、非常にコスパの高いエントリー機

「Meta Quest 3S」はエントリー向けのMRデバイス。高価なパーツを置き換えることで、128GBモデルで5万円を切る価格を実現している。深度センサーを搭載しておらず、ディスプレイ解像度や視野角、レンズの種類、IAD調整などはQuest 3より割り切られているが、MR体験自体に大きな差はない。

 「リモートデスクトップ」アプリの利用頻度が多いのであればQuest 3をおすすめするが、主にゲーム系のVRコンテンツ目的なのであれば、非常にコスパの高いエントリー機と言えよう。