Hothotレビュー
Zen 5採用の最新鋭CPU「Ryzen 7 9700X/5 9600X」の実力を試す
2024年8月7日 22:00
AMDの新世代デスクトップ向けCPU「Ryzen 9000」シリーズの第1弾として、ミドルレンジモデルの「Ryzen 7 9700X」と「Ryzen 5 9600X」が8月10日に発売される。価格はRyzen 7 9700Xが7万800円、Ryzen 5 9600Xが5万4,800円だ。
発売に先立って、両CPUをテストする機会を得られたので、従来モデルであるRyzen 7 7700XおよびRyzen 7 7800X3Dとの比較を通して、Zen 5アーキテクチャを採用する最新鋭デスクトップ向けCPUの性能を確かめてみた。
Zen 5世代のデスクトップ向けミドルレンジCPU
Ryzen 9000シリーズの第1弾製品として8月8日に発売されるRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは、CPUアーキテクチャにZen 5を採用したミドルレンジCPU。
上位のRyzen 7 9700Xは8コア/16スレッドCPUで、Ryzen 5 9600Xは6コア/12スレッドCPUだ。対応CPUソケットはSocket AM5で、対応BIOSを導入すれば既存のSocket AM5対応マザーボードで利用できる。
Ryzen 9000シリーズはCPUコアとI/O機能を別のダイで実装するチップレットアーキテクチャを採用しており、CPUコアやキャッシュメモリを備えるCPUダイ(CCD)はTSMC 4nm FinFETプロセス、メモリコントローラやiGPUなどアンコア機能を集約したI/Oダイ(IOD)はTSMC 6nm FinFETプロセスで製造されている。
従来のRyzen 7000シリーズと比較すると、CCDはアーキテクチャをZen 4からZen 5に刷新したうえで5nmから4nmに微細化された一方、IODは機能的にはほぼ同等で製造プロセスも変更されていない。
IODの主な機能を確認しておくと、GPUコアはRDNA 2ベースのRadeon Graphics、PCIeは接続用の4レーンを含む合計28レーンで、これらはRyzen 7000シリーズと同等だ。強化されたのはメモリコントローラで、従来よりも高速なDDR5-5600メモリをサポートした。
Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xの主な機能をRyzen 7000シリーズの同格モデルと比較したものが以下の表だ。アーキテクチャや製造プロセスの変更以外で目立つのがTDPの引き下げで、従来モデルが105Wだったのに対してRyzen 9000シリーズのミドルレンジモデルは65Wに低下、これに伴い標準の電力リミット(PPT)も142Wから88Wに低下した。
AMDのTDPはベースクロック時の最大熱出力を意味しているため、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xのベースクロックは従来モデルより低くなっている。最大ブーストクロックは従来モデルを上回っているが、88Wの電力リミットでどこまで高クロックを維持できるのかにも注目したい。
モデルナンバー | Ryzen 7 9700X | Ryzen 5 9600X | Ryzen 7 7700X | Ryzen 5 7600X |
---|---|---|---|---|
CPUアーキテクチャ | Zen 5 | Zen 5 | Zen 4 | Zen 4 |
製造プロセス | CCD=4nm、IOD=6nm | CCD=4nm、IOD=6nm | CCD=5nm、IOD=6nm | CCD=5nm、IOD=6nm |
チップレット構成 | CCD+IOD | CCD+IOD | CCD+IOD | CCD+IOD |
CPUコア数 | 8 | 6 | 8 | 6 |
CPUスレッド数 | 16 | 12 | 16 | 12 |
L1キャッシュ | 640KB | 480KB | 512KB | 384KB |
L2キャッシュ | 8MB | 6MB | 8MB | 6MB |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB | 32MB | 32MB |
ベースクロック | 3.8GHz | 3.9GHz | 4.5GHz | 4.7GHz |
最大ブーストクロック | 5.5GHz | 5.4GHz | 5.4GHz | 5.3GHz |
CPU内蔵GPU(iGPU) | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics |
iGPUコア数 | 2 | 2 | 2 | 2 |
iGPUクロック | 2,200MHz | 2,200MHz | 2,200MHz | 2,200MHz |
対応メモリ | DDR5-5600 | DDR5-5600 | DDR5-5200 | DDR5-5200 |
PCI Express | PCIe 5.0 x28 | PCIe 5.0 x28 | PCIe 5.0 x28 | PCIe 5.0 x28 |
TDP | 65W | 65W | 105W | 105W |
PPT | 88W | 88W | 142W | 142W |
TjMax | 95℃ | 95℃ | 95℃ | 95℃ |
対応ソケット | Socket AM5 | Socket AM5 | Socket AM5 | Socket AM5 |
テスト環境と比較用CPU
今回、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xの比較用として、Zen 4アーキテクチャを採用するRyzen 7000シリーズの8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 7700X」と、現在最強のゲーミングCPUの一つとして知られるZen 4世代の8コア/16スレッドCPU「Ryzen 7 7800X3D」を用意した。
これらのCPUをX670Eチップセットを搭載するSocket AM5対応マザーボード「ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO」に搭載してテストする。
マザーボードにはレビュアー向けに提供されたAGESA 1.2.0.0ab対応版BIOS「v2201」を導入、メモリはJEDEC準拠のスタンダードメモリを各CPUの最大対応メモリクロックに設定して使用する。その他の機材や条件については以下の表の通り。
CPU | Ryzen 7 9700X | Ryzen 5 9600X | Ryzen 7 7700X | Ryzen 7 7800X3D |
---|---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 8C/16T | 6C/12T | 8C/16T | 8C/16T |
L2キャッシュ | 8MB | 6MB | 8MB | 8MB |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB | 32MB | 96MB |
CPU電力リミット | PPT=88W | PPT=88W | PPT=142W | PPT=162W |
CPU電流リミット | TDC=75A、EDC=150A | TDC=75A、EDC=150A | TDC=110A、EDC=170A | TDC=120A、EDC=180A |
CPU温度リミット | 95℃ | 95℃ | 95℃ | 89℃ |
マザーボード | ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO (BIOS=v2201) | |||
メモリ | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-90、1.1V) | DDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-84、1.1V) | ||
CPUクーラー | ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB + ARCTIC P12 MAX (ファンスピード=100%) | |||
ビデオカード | GeForce RTX 4080 Founders Edition (16GB) | |||
GPUドライバ | GRD 560.70 (32.0.15.6070)、Resizable BAR=有効 | |||
システム用SSD | Samsung 970 EVO PLUS 500GB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | |||
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) | |||
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum) | |||
OS | Windows 11 Pro 23H2 (build 22631.3958、VBS有効) | |||
電源プラン | バランス | |||
計測 | HWiNFO64 Pro v8.06、ラトックシステム RS-BTWATTCH2 | |||
室温 | 約26℃ |
ベンチマーク結果
今回実施したベンチマークテストは、「Cinebench 2024」、「Cinebench R23」、「3DMark」、「Blender Benchmark」、「やねうら王」、「Adobe Camera Raw」、「DaVinci Resolve 18」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra 20/21」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」、「オーバーウォッチ 2」、「フォートナイト」、「エーペックスレジェンズ」、「サイバーパンク2077」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」、「Microsoft Flight Simulator」。
Cinebench 2024
Cinebench 2024では、CPU性能を計測する「CPU (Multi Core)」と「CPU (Single Core)」を実行した。
マルチスレッド性能を計測するCPU (Multi Core)では、Ryzen 7 9700Xが全体ベストの「1,164」を記録し、Ryzen 5 9600Xを約28%、Ryzen 7 7700Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約10%上回った。
シングルスレッド性能を計測するCPU (Single Core)でも、Ryzen 7 9700Xが全体ベストの「131」を記録し、Ryzen 5 9600Xを約2%、Ryzen 7 7700Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約16%上回った。ここではRyzen 5 9600Xが2番手となる129を記録して従来のRyzen 7を10%以上も上回っており、Zen 5アーキテクチャの採用がコア当たりの性能を大きく引き上げていることが確認できる。
Cinebench R23
Cinebench R23では、マルチスレッド性能を計測する「CPU (Multi Core)」でRyzen 7 9700Xが全体ベストの「21,196」を記録し、Ryzen 5 9600Xを約25%、Ryzen 7 7700Xを約8%、Ryzen 7 7800X3Dを約17%上回った。
Ryzen 7 9700XはCPU(Single Core)でも全体ベストとなる「2,209」を記録しており、2番手の「2,179」を記録したRyzen 5 9600Xを約1%、Ryzen 7 7700Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約22%上回った。
3DMark「CPU Profile」
3DMarkのCPUベンチマーク「CPU Profile」は、CPU性能をスレッド数毎に計測するベンチマークテスト。
ここでもRyzen 7 9700Xがすべての条件で全体ベストを記録しており、Ryzen 5 9600Xを0.3~24%、Ryzen 7 7700Xを5~18%、Ryzen 7 7800X3Dを18~30%上回った。
他のCPUに対してコア数で劣るRyzen 5 9600Xは8スレッド以上で3番手以下に沈んでいるが、4スレッド以下の条件ではRyzen 7 9600Xに肉薄し、従来のRyzen 7を明確に上回るスコアを記録している。これも、コアあたりの性能に優れるZen 5の特性があらわれた結果だ。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkでは、CPUテストを実行してレンダリング速度(Samples per Minutes)を計測した。
マルチスレッド性能が問われるこのテストにおいて全体ベストを獲得したのはRyzen 7 9700Xで、Ryzen 5 9600Xを29~31%、Ryzen 7 7700Xを7~10%、Ryzen 7 7800X3Dを9~13%上回った。
やねうら王
将棋ソフトの「やねうら王」では、ベンチマーク機能を利用してマルチスレッドテストとシングルスレッドテストを実行した。
マルチスレッドテストでは、Ryzen 7 9700Xが全体ベストの「18,938kNPS」を記録し、Ryzen 5 9600Xを約21%、Ryzen 7 7700Xを約3%、Ryzen 7 7800X3Dを約12%上回った。
一方、シングルスレッドテストで全体ベストを記録したのはRyzen 5 9600Xの「2,160kNPS」で、Ryzen 7 9700Xはほぼ同等の「2,145kNPS」だった。Ryzen 5 9600XはRyzen 7 7700Xを約12%、Ryzen 7 7800X3Dを約21%上回っている。
Adobe Camera Raw「RAW現像」
Adobe Camera Rawにて、デジタルカメラで撮影した2,400万画素のRAWファイル100枚をJPEGファイルに現像するのに掛かった時間を測定。その処理速度(fps)を比較した。
Ryzen 7 9700Xの処理速度は全体ベストの「4.76fps」で、Ryzen 5 9600Xを約14%、Ryzen 7 7700Xを約5%、Ryzen 7 7800X3Dを約7%上回った。
DaVinci Resolve 18
DaVinci Resolve 18では、カメラで撮影した2160p60(4K60p)動画を素材として作成した約60秒の動画を、YouTube向けプリセットで1080p60と2160p60に書き出した際の処理速度を計測した。
Ryzen 7 9700Xのレンダリング速度は1080pと2160pの両方で全体ベストを記録しており、Ryzen 5 9600Xを20~26%、Ryzen 7 7700Xを約4%、Ryzen 7 7800X3Dを2~8%上回った。
HandBrake
HandBrakeでは、約60秒の2160p60(4K60p)動画を「Creator」プリセットで1080pと2160pにエンコードした際の速度を計測した。
Ryzen 7 9700Xは2160pへのエンコードではRyzen 7 7700Xを約1%上回って全体ベストを獲得しているが、1080pへの変換では逆にRyzen 7 7700Xを約3%下回って全体2番手となっている。実時間ではどちらも1秒差でしかないので、ほぼ同等と言ってもいい結果ではある。
その他のCPUとの比較では、Ryzen 7 9700XはRyzen 5 9600Xを18~22%、Ryzen 7 7800X3Dを約5%上回った。
TMPGEnc Video Mastering Works 7
TMPGEnc Video Mastering Works 7では、ソフトウェアエンコーダのx264とx265を使用して、約60秒の2160p60(4K60p)動画を1080pと2160pにエンコードした際の速度を計測した。
x264を用いたH.264形式へのエンコードでは、Ryzen 7 9700Xが1080pへのエンコードでRyzen 7 7700Xを約2%下回る速度を記録して全体2番手となっており、2160pへのエンコードではRyzen 7 7700Xを約2%上回って全体ベストを記録している。また、Ryzen 7 9700XはRyzen 5 9600Xを23~26%、Ryzen 7 7800X3Dを約5%上回った。
x265を用いたH.265形式へのエンコードでは、1080pと2160pの両方でRyzen 7 9700Xが全体2ベストを記録。Ryzen 5 9600Xを14~16%、Ryzen 7 7700Xを約7%、Ryzen 7 7800X3Dを約15%上回った。
PCMark 10
PCMark 10では、もっともテスト項目の多い「PCMark 10 Extended」でスコアを計測した。
Ryzen 7 9700Xの総合スコア(PCMark 10 Score)は「14,595」で全体ベストを記録。Ryzen 5 9600Xを約3%、Ryzen 7 7700Xを約3%、Ryzen 7 7800X3Dを約8%上回った。
SiSoftware Sandra 20/21「CPUベンチマーク」
SiSoftware Sandra 20/21のCPUテストから、「プロセッサの性能」と「マルチメディア処理」の結果を紹介する。
CPUの演算性能を計測する「プロセッサの性能」において、Ryzen 7 9700XはDhrystoneでRyzen 7 7700Xを約2%下回る全体2番手のスコアを記録し、Whetstoneでは逆にRyzen 7 7700Xを約2%上回るスコアで全体ベストを記録した。また、Ryzen 7 9700XはRyzen 5 7600Xを26~30%、Ryzen 7 7800X3Dを11~16%上回った。
「マルチメディア処理」ではRyzen 9000シリーズがRyzen 7000シリーズを圧倒しており、Ryzen 7 9700XはRyzen 7 7700Xを35~92%、Ryzen 7 7800X3Dを47~111%の大差で上回った。また、CPUコア数で劣るRyzen 5 9600XもRyzen 7 7700Xを7~42%、Ryzen 7 7800X3Dを17~55%も上回っている。
Ryzen 9000シリーズで採用されたZen 5アーキテクチャではAVX-512のスループットが最大2倍になったとされており、AVX-512命令を活用するSandraの「マルチメディア処理」でその効果が発揮された格好だ。
SiSoftware Sandra 20/21「メモリベンチマーク」
SiSoftware Sandra 20/21で、メインメモリの帯域幅とレイテンシを計測した結果が以下のグラフだ。
対応メモリがDDR5-5600に高速化したRyzen 9000シリーズの強みがみられるはずのテストだが、Ryzen 7 9700Xのメモリ帯域幅は47.86GB/sで、DDR5-5200メモリで49.74GB/sを記録したRyzen 7 7700Xを約4%下回った。
また、レイテンシについても、Ryzen 7 7700Xの「69.4ナノ秒」に対して、Ryzen 7 9700Xは「77.9ナノ秒」で約12%ほどレイテンシが増加している。
これは、DDR5-5600メモリを搭載したRyzen 9000シリーズにおいて、CPU内蔵メモリコントローラの動作クロック「UCLK」と、メインメモリの動作クロック「MCLK」の比率が「1:2」に設定されていることが影響している。
この設定により、Ryzen 9000シリーズのUCLKはDDR5-5600メモリの動作クロックである2,800MHzの半分となる1,400MHzになっているのに対し、DDR5-5200メモリを搭載するRyzen 7000シリーズのUCLK:MCLK比は「1:1」に設定されているためUCLKは2,600MHzとなっている。この内蔵メモリコントローラのクロック差が帯域の低下とレイテンシ増加を引き起こしている。
AMDのレビュアーズガイドによれば、Ryzen 9000シリーズのメモリコントローラは3,000MHz(DDR5-6000)を超えるとUCLKとMCLKの比率を「1:2」に設定するとしているが、今回の機材ではDDR5-5600の時点で「1:2」の比率が適用されている。これが意図しない動作であるなら、次のBIOS更新で修正されることを期待したい。
なお、Ryzen 7 9700XのUCLK:MCLK比率を手動で「1:1」に設定してテストしてみたところ、メモリ帯域幅は「50.08GB/s」、レイテンシは「72.2ナノ秒」を記録した。「1:2」設定時より改善しているのは確かだが、Ryzen 7000シリーズより大幅にメモリアクセス性能が向上するとまでは言えない程度の数値だ。
SiSoftware Sandra 20/21「キャッシュベンチマーク」
CPUが内蔵するキャッシュのレイテンシや帯域幅を測定した結果が以下のグラフだ。
Ryzen 9000シリーズのL1/L2キャッシュは、Zen 4世代のRyzen 7000シリーズを大きく上回る帯域幅を記録している。Zen 5アーキテクチャではL1/L2キャッシュの帯域幅も最大2倍に引き上げたとしており、その改良の効果が計測された結果と言える。
レイテンシの計測結果をみると、L3キャッシュ領域(主に16~32MB)のレイテンシが低下している様子が確認できる。Zen 5ではキャッシュの性能が全体的に向上しているようだ。
3DMark
3DMarkでは「Speed Way」、「Steel Nomad」、「Port Royal」、「Solar Bay」、「Wild Life」を実行した。
3DMarkのテスト結果は比較したCPUの結果が横並びとなっているものがほとんどで、今回実行したテストの中で明確なスコア差が生じたのは、GPU負荷が低く比較的古いテストであるWild Life(無印)のみだ。
Wild Lifeで全体ベストを記録したのはRyzen 5 9600Xで、Ryzen 7 9700Xを約2%、Ryzen 7 7700Xを約5%、Ryzen 7 7800X3Dを約10%上回った。
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、グラフィックスプリセットを「最高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。なお動的解像度(DLSS/FSR)については無効にしている。
メモリやキャッシュ性能がボトルネックになりやすいこのベンチマークでは、WQHD/1440p以下の画面解像度でRyzen 7 7800X3Dが傑出したスコアを記録しており、Ryzen 9000シリーズの2製品がほぼ同等のスコアでそれに続く形となっている。結果、WQHD/1440p以下でのRyzen 7 9700XはRyzen 7 7800X3Dを16~17%下回る一方、Ryzen 7 7700Xを1~5%上回った。
なお、GPU性能のボトルネックが支配的になる4K/2160pになるとCPU性能の差はパフォーマンスに反映されなくなっており、4つのCPUがほぼ横並びとなっている。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、グラフィックスプリセットを「高品質」に設定して、3つの画面解像度でスコアと平均フレームレートを計測した。
4K/2160pになると4つのCPUのスコアはほぼ横並びとなっているが、WQHD/1440p以下でのRyzen 9 9700XはRyzen 7 7800X3Dに次ぐ全体2番手のスコアを記録しており、Ryzen 7 7800X3Dを1~5%下回り、Ryzen 5 9600Xを2~5%、Ryzen 7 7700Xを2~3%上回った。
Forza Horizon 5
Forza Horizon 5ではゲーム内ベンチマークモードを使用して、グラフィックスプリセット「エクストリーム」で3つの画面解像度をテストしたほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「中」に落とした高fps設定でのテストを行なった。
Ryzen 9000シリーズはグラフィックスプリセット「エクストリーム」ではRyzen 7 7800X3Dに迫るパフォーマンスを発揮しており、平均フレームレートが190fps程度になるフルHD/1080pでもRyzen 7 7800X3Dに肉薄している。
Ryzen 7 7800X3Dの平均フレームレートが315fpsに達する高fps設定になると、Ryzen 7 9700Xが約7%、Ryzen 5 9600Xは約12%、それぞれRyzen 7 7800X3Dを下回っているが、Forza Horizon 5で現行のハイエンドGPUの性能を十分に引き出せていると言って良い結果だ。
オーバーウォッチ 2
オーバーウォッチ 2では、グラフィックスプリセットを「エピック」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のレンダースケールは100%で、最大フレームレートは600fps。
Ryzen 9000シリーズの2製品はおおむね同程度のフレームレートを記録しており、WQHD/1440p以下ではRyzen 7 7800X3Dを1~2%ほど下回り、Ryzen 7 7700Xを1~4%ほど上回った。4K/2160pではGPUのボトルネックが顕著となるため、4つのCPUのフレームレートはほぼ横並びとなっている。
フォートナイト
フォートナイトでは、NaniteおよびLumenを無効にした上でグラフィックスプリセットを「最高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「中」に落とした高fps設定での計測も行なった。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は全条件で100%に設定している。
グラフィックスプリセット「最高」では、WQHD/1440p以上で4つのCPUが横並びの結果となっている。平均フレームレートが200fpsを超えるフルHD/1080pにおいて、Ryzen 7 9700XはRyzen 7 7800X3Dを約2%下回り、Ryzen 5 9600Xを約2%、Ryzen 7 7700Xを約3%上回った。
高fps設定では平均352fpsを記録したRyzen 7 7800X3Dが傑出しており、Ryzen 9 9700Xはそれを約13%下回る平均307.8fpsで全体2番手につけており、293fps前後で並んでいるRyzen 5 9600XとRyzen 7 7700Xを約5%上回った。
エーペックスレジェンズ
エーペックスレジェンズでは、グラフィックス設定をできる限り高く設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 11で、最大フレームレートは300fps。
4つのCPUの平均フレームレートはほぼ横並びとなっているが、細かいことを言えばWQHD/1440p以上でRyzen 5 9600Xがやや低い数値となっている。とはいえ、フルHD/1080pではいずれのCPUも上限の300fpsに近いフレームレートを記録していることを考えれば、いずれのCPUもエーペックスレジェンズをプレイするのに十分な性能を備えていると言って良さそうだ。
サイバーパンク2077
サイバーパンク2077では、グラフィックスプリセットを「レイトレーシング:ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。なお、テスト時はGeForce RTX 4080がサポートするDLSS 3のフレーム生成を有効化しているほか、DLSS超解像のプリセットをフルHD/1080pとWQHD/1440pで「クオリティ」、4K/2160pで「パフォーマンス」に設定している。
WQHD/1440p以上ではGPUのボトルネックが支配的になるためほぼ横並びの結果となっているが、フルHDではRyzen 9 9700Xが全体2番手となる「218.36fps」を記録。全体ベストのRyzen 7 7800X3Dを約4%下回り、Ryzen 5 9600Xを約6%、Ryzen 7 7700Xを約3%上回った。
モンスターハンターライズ:サンブレイク
モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックスプリセットを「高」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測した。
4K/2160pではGPUのボトルネックによってほぼ横並びの結果となっているが、WQHD/1440p以下ではRyzen 7 7800X3Dが290fps前後という傑出した平均フレームレートで全体ベストを記録しており、Ryzen 9000シリーズの2製品が260fps前後でそれに続いている。
なお、WQHD/1440p以下でのRyzen 9000シリーズ2製品は、220fps前後で頭打ちとなったRyzen 7 7700Xを16~21%も上回っている。3D V-Cacheの効果には及ばないまでも、Zen 4からZen 5への進化がCPUのゲーミング性能をかなり高めていることがうかがえる結果だ。
Microsoft Flight Simulator
Microsoft Flight Simulatorでは、グラフィックスプリセットを「ウルトラ」に設定して、3つの画面解像度で平均フレームレートを計測したほか、フルHD/1080pでグラフィックスプリセットを「ミドル」に落とした高fps設定でも平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、アンチエイリアスを「DLSS/DLAA」、DLSSフレーム生成を「有効」に設定している。
3D V-Cacheの効果が大きいタイトルとして知られるMicrosoft Flight Simulatorでは、GPUのボトルネックが支配的な4K/2160pではほぼ横並びの結果となっているものの、WQHD/1440p以下や高fps設定ではRyzen 7 7800X3Dが傑出した平均フレームレートを記録している。
Ryzen 7 9700Xはグラフィックスプリセット「ウルトラ」でRyzen 5 9600Xとほぼ同等のフレームレートとなっており、Ryzen 7 7800X3Dを27~28%下回り、Ryzen 7 7700Xを2~5%上回った。一方、グラフィックスプリセット「ミドル」では、Ryzen 7 7800X3Dを約24%下回り、Ryzen 5 9600Xを約2%、Ryzen 7 7700Xを約6%上回って全体2番手となっている。
CPUベンチマーク実行中のシステム消費電力とワットパフォーマンス
ラトックシステムのワットチェッカー「RS-BTWATTCH2」を使用して、アイドル時の最小消費電力と、CPUベンチマーク実行中の平均消費電力と最大消費電力を計測した結果を紹介しよう。
アイドル時消費電力はRyzen 7 9700Xが82.2W、Ryzen 5 9600Xが81.1Wを記録しており、90W前後を記録したRyzen 7 7700XとRyzen 7 7800X3Dより明確に低い数値となっている。この消費電力低下にはRyzen 9000シリーズのメモリコントローラがUCLK:MCLK比「1:2」で動作していることも影響しており、Ryzen 7 9700Xを「1:1」設定で動作させた場合のアイドル時消費電力は「86.7W」に上昇した。
CPUベンチマーク実行中の平均消費電力はRyzen 7 9700Xが184.2~228.0W、Ryzen 5 9600Xが182.9~221.3W。最小はRyzen 7 7800X3Dの165.5~208.0Wだが、Ryzen 7 7700Xの229.2~262.8Wより明らかに低い数値となっている。また、Ryzen 5 9600Xの消費電力がRyzen 7 9700Xとほぼ同等である様子から、両CPUの消費電力は88Wの電力リミット(PPT)によって制限されている状況にあることがうかがえる結果でもある。
ベンチマークスコアをシステムの平均消費電力で割ることで求めた「ワットパフォーマンス」を、Ryzen 7 7700Xを基準に指数化したものが以下のグラフだ。
Ryzen 7 9700XのワットパフォーマンスはRyzen 7 7700X比で121~141%となっており、これは同様に124~137%を記録したRyzen 7 7800X3Dと並んで、今回比較したCPUの中で最高クラスのワットパフォーマンスだ。
一方、コア数が少ないながらもRyzen 7 9700Xと同程度の電力を消費していたRyzen 5 9600Xは、Ryzen 7 7700X比で103~125%のワットパフォーマンスを記録。コア数が少ないCPUでマルチスレッド処理を実行した際のワットパフォーマンスは低くなりやすいのだが、それでもRyzen 7 7700Xを凌駕しているのは大したものだ。
ゲームベンチマーク実行中のシステム消費電力とワットパフォーマンス
CPUベンチマークと同様に、ゲームベンチマーク実行中の消費電力を計測した結果をまとめたものが以下のグラフだ。
Ryzen 7 9700Xの平均消費電力は342.1~436.9Wで、Ryzen 5 7600Xは334.8~424.1Wだった。消費電力の大部分はGPUであるGeForce RTX 4080が消費しており、CPUボトルネックが軽くなるとGPU消費電力が増加することも影響するため、CPUベンチマークほどRyzen 9000シリーズの省電力性は目立っていない。
ワットパフォーマンスをRyzen 7 7700Xを基準に指数化したものが以下のグラフ。Ryzen 7 9700XのワットパフォーマンスはRyzen 7 7700X比で100~105%、Ryzen 5 9600Xは102~107%を記録した。
システム消費電力の計測結果やベンチマークスコアも大差ない結果となっているものが多かったこともあり、ワットパフォーマンスも全体的に大差ないものとなっている。例外と言えるのが、Ryzen 7 7800X3DのファイナルファンタジーXIVベンチマークの結果で、これは3D V-Cacheの効果でRyzen 7 7700Xを約29%も上回るスコアを記録したことが高いワットパフォーマンスにつながっている。
Cinebench 2024実行中のモニタリングデータ
HWiNFO64 Proを使って計測したCinebench 2024「CPU (Multi Core)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約26℃。
Ryzen 7 9700XのCPU温度は平均62.8℃(最大64.5℃)で、CPU消費電力は平均88.0W(最大88.1W)を記録。この時のCPUクロックは平均4,990MHz(最大5,230MHz)となっており、CPU消費電力が88Wに達したことで電力リミットスロットリングが動作している。
一方、Ryzen 5 9600XのCPU温度は平均65.1℃(最大67.5℃)で、CPU消費電力は平均88.0W(最大88.1W)を記録。CPUクロックは平均5,158MHz(最大5,377MHz)となっており、こちらもCPU消費電力が88Wに達したことで電力リミットスロットリングが動作している。
Ryzen 9000シリーズが電力リミットスロットリングによって最大クロックを制限されているのに対し、Ryzen 7 7700XとRyzen 7 7800X3Dでは温度リミットや電力リミットによるスロットリングは動作していない。
Ryzen 7 7700Xは平均119.1W(最大124.3W)の電力を消費しながら平均5,187MHzの高クロック動作を実現し、ブーストクロックが低く設定されているRyzen 7 7800X3Dは平均4,827MHzという控え目なCPUクロックによって平均80.0W(最大81.4W)という低消費電力動作を実現している。
FF14ベンチマーク実行中のモニタリングデータ
HWiNFO64 Proを使って計測した「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク(フルHD/1080p、最高品質)」実行中のモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフ。テスト時の室温は約26℃。
Ryzen 7 9700XのCPU温度は平均55.7℃(最大63.1℃)で、CPU消費電力は平均69.5W(最大88.8W)を記録。CPUクロックは平均5,355MHz(最大5,515MHz)だった。
Ryzen 5 9600XのCPU温度は平均53.1℃(最大61.1℃)で、CPU消費電力は平均60.3W(最大73.6W)を記録。CPUクロックは平均5,365MHz(最大5,440MHz)だった。
Ryzen 7 9700Xは電力リミットが動作した瞬間があったようだが、Ryzen 5 9600Xに関しては電力リミットも温度リミットも動作していない。Cinebench実行中のモニタリングデータからも分かるように、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは省電力で低発熱なCPUとして設計されており、冷却に関しても比較的容易なCPUであると言えるだろう。
iGPU使用時のパフォーマンスをチェック
最後に、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600XのIODに統合されている内蔵GPU(iGPU)のパフォーマンスをチェックする。
Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600XのiGPUドライバには、レビュアー向けに提供された「Adrenaline 24.10.24」を使用している。その他の機材は以下の通り。
CPU | Ryzen 7 9700X | Ryzen 5 9600X | Ryzen 7 7700X | Ryzen 7 7800X3D |
---|---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 8C/16T | 6C/12T | 8C/16T | 8C/16T |
L2キャッシュ | 8MB | 6MB | 8MB | 8MB |
L3キャッシュ | 32MB | 32MB | 32MB | 96MB |
CPU電力リミット | PPT=88W | PPT=88W | PPT=142W | PPT=162W |
CPU電流リミット | TDC=75A、EDC=150A | TDC=75A、EDC=150A | TDC=110A、EDC=170A | TDC=120A、EDC=180A |
CPU温度リミット | 95℃ | 95℃ | 95℃ | 89℃ |
iGPU | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics | Radeon Graphics |
GPUクロック | 2,200MHz | 2,200MHz | 2,200MHz | 2,200MHz |
GPUドライバ | Adrenaline 24.10.24 (32.0.11024.2) | Adrenaline 24.7.1 (32.0.11029.1008) | ||
マザーボード | ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO (BIOS=v2201) | |||
メモリ | DDR5-5600 16GB×2 (2ch、46-45-45-89、1.1V) | DDR5-5200 16GB×2 (2ch、42-42-42-83、1.1V) | ||
CPUクーラー | ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB + ARCTIC P12 MAX (ファンスピード=100%) | |||
システム用SSD | Samsung 970 EVO PLUS 500GB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | |||
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/USB 10Gbps) | |||
電源 | 玄人志向 KRPW-PA1200W/92+ (1,200W/80PLUS Platinum) | |||
OS | Windows 11 Pro 23H2 (build 22631.3958、VBS有効) | |||
電源プラン | バランス | |||
室温 | 約26℃ |
Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xが備えるiGPU「Radeon Graphics」は、Ryzen 7000シリーズに内蔵されていたものと同じRDNA 2ベースの2コアGPUだ。
メインメモリをVRAMとして利用する関係上、メインメモリやメモリコントローラの動作クロック、ドライバの違いがパフォーマンスに多少影響している様子もみられるが、あくまで最低限の画面出力機能を期待するためのGPUという評価に変わりはない。
より扱いやすくなった新世代RyzenのミドルレンジCPU
AMDの新たなデスクトップ向けCPUとしてミドルレンジを担うRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは、Zen 5アーキテクチャの採用とTDPの引き下げによって、省電力かつ発熱の少ないCPUとして完成されており、従来のRyzen 7000シリーズを凌駕する性能を実現しながらもより扱いやすいCPUとなっている。
ゲーミング性能に関しては、Zen 5世代のCPUコアでも3D V-Cacheを備えるRyzen 7 7800X3Dに及ばないものの、Ryzen 9000シリーズも決してゲーミング性能が悪いわけではない。あくまで価格次第ではあるが、Ryzen 5 9600XはミドルレンジGPUと組み合わせるのに好適なCPUになり得る性能を備えている。
Zen 5世代の優れたCPU性能を控えめな消費電力と発熱で得られるRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xは、Socket AM4をはじめとする旧世代プラットフォームからの乗り換えを検討しているユーザーにも扱いやすく選びやすいCPUだ。省電力化したことで安価なマザーボードとの組み合わせやすくなった点も両CPUの魅力なので、CPU単体の価格だけでなく、マザーボードやメモリなども含めて検討してみると良いだろう。
デスクトップCPUの新たなステージを切りひらく、Ryzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xをライブ配信で解説します。仕様、特徴、対応マザーボード情報から、気になるベンチマーク結果(この記事とは別のテストを多数実施)、いち早い実機動作デモなどをお届けします。