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Pixel 8とPixel 8 Proレビュー。カメラやAI処理がどこまで進化した?
2023年10月12日 02:00
Googleから、スマートフォンPixelシリーズの最新モデル「Google Pixel 8」および「Google Pixel 8 Pro」が登場した。今回、発売前にいち早く実機を試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。なお、試用機はファームウェアやアプリなど製品版とは異なる部分が残されている可能性がある。同時にベンチマークテストも行なえなかったため、その点はご了承願いたい。
シリーズおなじみのデザインコンセプトを継承
まずはじめにPixel 8およびPixel 8 Proの外観を見ていこう。
Pixel 8シリーズのデザインは、リサイクルアルミニウムの側面フレームと背面ガラス、そして背面上部の帯状に突起したカメラユニット「Pixelカメラバー」など、Pixel 6シリーズより採用されたデザインを継承している。
このデザインを採用して3代目となるが、当初こそやや奇抜なデザインという受け止めもあったが、現在ではPixelシリーズの普及率が高まってきたこともあり、ひと目見てPixelシリーズと分かる特徴的なデザインに成長したと言っていいだろう。
ただ、従来モデルのPixel 7シリーズと見比べると、わずかではあるがデザインが変更されている点も見受けられる。
その1つが角の曲線で、Pixel 8シリーズでは角の曲線が従来と比べてかなりなだらかとなった。実際にPixel 7シリーズと並べるとその違いがよく分かる。とはいえ、デザイン性を大きく変えるようなものではないだろう。
また、Pixelカメラバーのデザインもわずかに変更されている。Pixelカメラバーは全体がメタル素材でレンズ部分をくり抜いたデザインとなっている点はPixel 7シリーズと同じだが、レンズ部分のくり抜きがやや大きくなっている。
また、Pixel 7 Proでは3眼のうち超広角と広角で1つ、望遠で1つとくり抜きが2つあったのに対し、Pixel 8 Proでは3眼レンズ全てが1つのくり抜きとなった。このあたりもそこまで大きな違いというわけではないものの、横に並べると見た目の印象の違いを実感できる。
側面およびPixelカメラバーの金属素材には、100%リサイクルアルミニウムを採用。またディスプレイ面と背面のガラスにはCorning製強化ガラスを採用する。なおPixel 8では「Gorilla Glass Victus」を、Pixel 8 Proでは「Gorilla Glass Victus 2」を採用と、利用する強化ガラスは異なるものとなっている。
メタルフレームはPixel 8がマット処理、Pixel 8 Proが光沢処理となっているのに対し、背面ガラスはPixel 8が光沢処理、Pixel 8 Proがマット処理となっている。いずれのモデルもメタルフレームと背面ガラスを異なる質感とすることで、その対比がよりはっきり感じられるようになっている。
カラーは、Pixel 8がObsidian、Hazel、Roseの3色、Pixel 8 ProがObsidian、Porcelain、Bayの3色をそれぞれ用意。今回の試用機は、Pixel 8がHazel、Pixel 8 ProがObsidianだった。Pixel 8は背面ガラスが光沢処理のため指紋の痕が気になるかもしれないが、今回試用した限りでは指紋の痕はほとんど気にならなかった。今回試用したHazel以外のカラーでも同様かは分からないものの、この点はありがたく感じる。なおPixel 8 Proは背面ガラスがマット処理のため、指紋のあとはもともと目立ちにくい。
双方ともメタルフレーム、背面ガラスとも非常になめらかな手触りで、従来同様に滑りやすい印象。テーブルに置く場合でも、わずかな角度で滑ってしまうため、できればケースの装着をお勧めしたい。
Pixel 8は小さく軽くなった
サイズは、Pixel 8が70.8×150.5×8.9mm、Pixel 8 Proが76.5×162.6×8.8mmとなる。双方を横に並べてみると、Pixel 8の小ささが際立つことが分かる。また、実際に手に持ってみても、Pixel 8は小さく持ちやすい印象だ。
Pixel 7はサイズが73.2×155.6×8.7mmだったため、Pixel 8は厚さが0.2mm増えている反面、幅は2.4mm、奥行きは5.1mm短くなっている。この小型化は、ディスプレイサイズが6.2型に小型化されたことと、ディスプレイ周囲のベゼル幅を狭くすることで実現している。
重量も公称で187g、試用機の実測(物理SIM未装着)187.1gと、197gだったPixel 7より10g軽くなった。もちろんこれでも特別軽いというわけではないが、10gといえどもPixel 7と持ち比べるとかなり軽くなったと実感できる。サイズの小型化と合わせて、大いに歓迎できる。
対するPixel 8 Proは、Pixel 7 Proとの比較で幅が0.1mm、奥行きが0.3mm、厚さが0.1mmそれぞれ短くなっているものの、横に並べてもほとんど違いを実感できない程度だ。
重量は公称で213gと、Pixel 7 Proより1g重い。試用機の実測(物理SIM未装着)でも213gだった。わずかに重くなってはいるが、実際に持ち比べても違いは分からない。そのため、サイズ、重量ともPixel 7 Proからほぼ変更がないと考えていい。
第3世代独自SoC「Tensor G3」採用
Pixel 6シリーズ以降のPixelでは、SoCにGoogle独自の「Tensor」を採用しているが、Pixel 8シリーズではその第3世代モデルとなる「Tensor G3」を採用している。
Tensor G3ではCPUコアにArmの最新世代CPUであるArmv9を採用。またGPUやISP、機械学習用プロセッサ「TPU(Tensor Processing Unit)」も強化されているという。
Googleは、Tensor G3の詳細を公表していないため、具体的な仕様については不明だ。ただPixel 6に採用された初代Tensor「Tensor G1」と比べると、AI処理能力が2倍以上に向上。また生成AIモデルはPixel 7搭載の「Tensor G2」と比べて150倍規模の処理が可能になっているという。こういったSoCの進化によって、後ほど紹介する新たなAI機能がPixel 8には搭載されている。
このほかのPixel 8シリーズの主な仕様は、以下の表にまとめたとおり。
Pixel 8およびPixel 8 Proの主な仕様 | ||
---|---|---|
Pixel 8 | Pixel 8 Pro | |
SoC | Google Tensor G3 | |
メモリ | 8GB LPDDR5X | 12GB LPDDR5X |
内蔵ストレージ | 128GB/256GB UFS3.1 | 128GB/256GB/512GB UFS3.1 |
セキュリティチップ | Titan M2 | |
OS | Android 14 | |
更新 | 7年間のOS/セキュリティ/Feature Dropアップデート | |
ディスプレイ | 6.2型有機EL「Actua display」、1,080×2,400ドット、アスペクト比20:9、HDR、コントラスト比100万:1、リフレッシュレート最大120Hz、輝度最大1,400cd/平方m、ピーク時最大2,000cd/平方m | 6.7型LTPO有機EL「Super Actua display」、1,344×2,992ドット、アスペクト比20:9、HDR、コントラスト比100万:1、リフレッシュレート最大120Hz(1~120Hz可変)、輝度最大1,600cd/平方m、ピーク時最大2,400cd/平方m |
背面カメラ | 超広角:F値2.2、画角125.8度、1,200万画素センサー(ピクセルピッチ1.25μm) 広角:F値1.68、画角82度、5,000万画素 1/1.31型Octa PD Quad Bayerセンサー(ピクセルピッチ1.2μm)、光学式手ブレ補正 | 超広角:F値1.95、画角125.5度、4,800万画素Quad PDセンサー(ピクセルピッチ0.8μm) 広角:F値1.68、画角82度、5,000万画素 1/1.31型Octa PD Quad Bayerセンサー(ピクセルピッチ1.2μm)、光学式手ブレ補正 望遠:F値3.5、画角21.8度、4,800万画素 Quad PDセンサー(ピクセルピッチ0.7μm)、光学式手ブレ補正 |
前面カメラ | F値2.2、画角95度、1,050万画素Quad PDセンサー(ピクセルピッチ1.22μm)、固定フォーカス | F値2.2、画角95度、1,050万画素Quad PDセンサー(ピクセルピッチ1.22μm)、オートフォーカス |
モバイル通信 | 5G Sub-6:n1/2/3/5/7/8/12/20/25/28/ 30/38/40/41/66/ 71/75/76/77/78/79 4G LTE:B1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/ 17/18/19/20/21/25/26 /28/30/32/38/39/40/ 41/42/46/48/66/71 3G:1/2/4/5/6/8/19 GSM:850/900/1,800/1,900MHz | 5G Sub-6:n1/2/3/5/7/8/12/ 20/25/28/30/38/40/ 41/66/71/77/78/79 5G ミリ波:n257 4G LTE:B1/2/3/4/5/7/8/12/ 13/14/17/18/19/20/21/25/ 26/28/30/38/39/40/ 41/42/48/66/71 3G:1/2/4/5/6/8/19 GSM:850/900/1,800/1,900MHz |
対応SIM | nanoSIM+eSIM | |
無線LAN | Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax、2×2) | |
Bluetooth | Bluetooth 5.3 | |
センサー | 近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、磁力センサー、気圧センサー | 近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、磁力センサー、気圧センサー、温度センサー |
おサイフケータイ | 対応 | |
防水・防塵 | IP68 | |
生体認証性能 | ディスプレイ埋め込み型指紋認証センサー、顔認証 | |
外部ポート | USB 3.1 Type-C | |
バッテリ容量 | 4,355mAh | 5,000mAh |
ワイヤレス充電 | 対応(Qi準拠)、最大18W | 対応(Qi準拠)、最大23W |
サイズ | 73.2×155.6×8.7mm | 76.6×162.9×8.9mm |
重量 | 187g | 213g |
カラー | Obsidian、Hazel、Rose | Obsidian、Porcelain、Bay |
RAM容量はPixel 8が8GB、Pixel 8 Proが12GBと従来モデル同様。内蔵ストレージ容量は、Pixel 8が128GBまたは256GB、Pixel 8 Proが128GB/256GB/512GB。OSは、最新のAndroid 14を採用している。
モバイル通信は、いずれも5G通信に対応。ただしPixel 8はSub 6のみ、Pixel 8 ProはSub 6とミリ波に対応となる。Google直販モデルの対応チャネルは表に示しているとおりだ。
無線LANはWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax、2×2)準拠、BluetoothはBluetooth 5.3準拠となる。Pixel 8 Proのみ超広帯域無線チップ(UWB)を搭載する点も従来同様だ。
生体認証機能は、いずれもディスプレイ内蔵型の指紋認証センサーと顔認証に対応。ただ、Pixel 7シリーズでは顔認証はロック解除にしか利用できなかったが、Pixel 8シリーズでは2D前面カメラを利用するものの、より高精度な認証が可能となっており、決済認証や銀行アプリなどでのログイン認証にも利用可能となった。
ポートは、いずれも下部側面にUSB 3.1準拠USB Type-Cを用意し、オーディオジャックは用意されない。物理SIMカード用トレイは左側面に用意され、Nano SIMを1枚装着可能。microSDカードなどの外部メモリは非対応。物理ボタンは右側面に用意され、こちらも従来同様に上から電源ボタン、ボリュームボタンの並びとなる。
センサー類は、近接センサー、環境光センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、磁力センサー、気圧センサーを搭載。そしてPixel 8 Proのみ新たに温度センサーを搭載。温度センサーは背面Pixelカメラバー内のLEDフラッシュ下部に搭載しており、-20℃~150℃の範囲で温度を計測できる。
このほか、NFC/FeliCaを搭載し、おサイフケータイをサポートする。防水防塵性能は、従来同様にIP68準拠となる。
バッテリ容量は、Pixel 8が4,575mAh、Pixel 8 Proが5,050mAhと、いずれも従来よりもわずかに容量が増えた。別売のGoogle 30W USB-C充電器などの対応する充電器を利用し、約30分で50%の容量を充電できる急速充電に対応する点は同様。
また、Qi準拠のワイヤレス充電や、Qi対応機器を充電するバッテリシェアにも対応する。ワイヤレス充電に関しては、別売りのGoogle Pixel Stand(第2世代)を使用することで、Pixel 8では最大18W、Pixel 8 Proでは最大23Wの急速充電が可能。
パッケージの付属品は、USB 2.0準拠のUSB Type-CケーブルとUSB Type-A→Type-C変換コネクタ、各種インストラクションカードなど。充電器が付属しない点も従来同様だ。
そして重要な強化点となっているのがアップデート期間。Pixel 8シリーズではOSアップデート、セキュリティアップデート、Feature Dropのアップデートのいずれも7年となっている。セキュリティアップデートやFeature DropだけでなくOSアップデートも7年となっている点は、長期間利用したいユーザーにとってかなり心強いはずだ。
8 Proも平面ディスプレイを採用
Pixel 8のディスプレイは、1,080×2,400ドット表示対応の6.2型有機EL「Actua display」を採用。表示解像度は従来と同じだが、サイズがPixel 7の6.3型から6.2型に小型化されている。また、リフレッシュレートはPixel 7が最大90Hzまでの対応だったのに対し、Pixel 8では最大120Hzまで対応となり、よりなめらかな表示が可能となった。
このほか、コントラスト比が100万:1、HDR表示をサポートする点は従来同様だ。
対するPixel 8 Proのディスプレイは、1,344×2,992ドット表示対応の6.7型LTPO有機EL「Super Actua display」を採用。Pixel 7 Proと比べるとサイズは同じだが、表示解像度がやや減少している。コントラスト比が100万:1、HDR表示をサポートする点は従来同様。
リフレッシュレートはPixel 7 Proでは10~120Hzの間での自動調節だったのに対し、1~120Hzの間での自動調節へと強化。これにより、変化の少ない画面を表示している場面で、従来よりもより多く消費電力を低減できる。
そして、双方とも輝度が高められている点も大きな強化点。Pixel 8の輝度は最大1,400cd/平方m、ピーク時最大2,000cd/平方m。Pixel 8 Proでは、最大1,600cd/平方m、ピーク時最大2,400cd/平方mと、Pixel 8以上に輝度が高められている。これにより特に屋外での視認性が大きく高められている。
実際に、Pixel 8とPixel 8 Proの直射日光下での視認性をPixel 7 Proと比べてみたところ、Pixel 8およびPixel 8 Proのほうが圧倒的に画面の視認性が優れることを実感できた。これなら、屋外で画面表示が見づらいと感じる場面はかなり減少しそうだ。
ただし、ディスプレイで従来から気になる点は引き続き残されている。それは上部中央前面カメラ用のパンチホールだ。
Pixel 8シリーズではディスプレイベゼル幅がさらに狭められたことで、ディスプレイ外に前面カメラを配置することはほぼ不可能で、パンチホールによる搭載は仕方のない部分ではある。ただ、やはり映像コンテンツを表示する場面などで、その部分が抜け落ちてしまうのがどうしても気になってしまう。このあたりの改善には、透過型ディスプレイの高品質化などさらなる技術革新が必要そうではあるが、将来の改善を期待したい。
Pixel 8は2眼、Pixel 8 Proは3眼の背面カメラは仕様を強化
背面カメラは、Pixel 8が超広角と広角の2眼仕様、Pixel 8 Proが超広角、広角、5倍望遠の3眼仕様という点は従来同様。ただ、双方ともレンズや撮像素子が強化されている。
まずPixel 8。広角カメラは、レンズの画角は82度で光学式手ブレ補正機構を備え、撮像素子として5,000万画素の1/1.31型(ピクセルピッチ1.2μm)Octa PD Quad Bayerセンサーを採用する点は従来同様だが、レンズはF値が1.68と明るくなっている。広角レンズを利用したデジタルズームは最大8倍。
超広角カメラはレンズのF値が2.2で、撮像素子が1,200万画素センサー(ピクセルピッチ1.25μm)との組み合わせとなる点は従来同様だが、画角が125.8度に拡がっている。
続いてPixel 8 Pro。広角カメラの仕様はPixel 8と同じで、画角が82度でF値1.68、光学式手ブレ補正機構を備えるレンズと、5,000万画素の1/1.31型(ピクセルピッチ1.2μm)Octa PD Quad Bayerセンサーとの組み合わせ。
超広角カメラは、画角が125.5度、F値1.95とPixel 7 Proよりも画角が広く明るいレンズを採用。また撮像素子も4,800万画素(ピクセルピッチ0.8μm)のQuad PDセンサーへと強化されている。
そして望遠レンズ。倍率は5倍と従来同様だが、画角が21.8度となり、F値は2.8と明るくなっている。撮像素子は従来と同じ、4,800万画素(ピクセルピッチ0.7μm)Quad PDセンサーを採用する。デジタルズームの最大倍率は30倍と、こちらは従来同様だ。
前面カメラは、F値2.2、画角95度のレンズと、1,050万画素(ピクセルピッチ1.22μm)のDual PDセンサーを採用する点は、Pixel 8、Pixel 8 Proとも同じ。ただしPixel 8は固定フォーカスなのに対し、Pixel 8 Proはオートフォーカス対応となる。
以下に、Pixel 8とPixel 8 Proの背面カメラ各レンズおよびデジタルズームで撮影した画像を掲載する。これを見てもらうとよく分かると思うが、Pixel 8、Pixel 8 Proともにかなり高画質な写真が撮影できている。また、デジタルズーム時の写真もなかなかクリアだ。
デジタルズームについては、Pixel 7 Proもなかなか高画質ではあったが、Pixel 8 Proではさらに磨きがかかった印象。実際にPixel 7 Proの30倍デジタルズーム撮影と比べてみると、細かな部分がよりくっきり撮影できていることが分かる。このあたりはAI画像処理が強化されたためと考えていいだろう。
消しゴムマジックやボケ補正、夜景モード、長時間露光、アクションパン、トップショット、ポートレートモード、デュアル露出補正など、これまで用意されていた撮影機能や編集機能は、Pixel 8シリーズでももちろん利用できる。その上で、超広角カメラを利用し約3cmまで近付いてマクロ写真を撮影できるマクロフォーカスが、Pixel 8 ProだけでなくPixel 8でも利用可能となった。
またPixel 8 Proでは、マニュアル撮影が行なえる「プロ設定」モードと、撮像素子の画素をフルに活用して撮影する「高解像度の画像」撮影機能が新たに用意された。
プロ設定モードを利用すると、明るさ、シャドウ、ホワイトバランス、フォーカス、シャッタースピード、ISO感度をマニュアルで設定し撮影できる。UIはまだあまり洗練されていない印象で、少々操作が面倒と感じるものの、撮影の幅を拡げてくれるのは間違いないだろう。
高解像度の撮影では、約5,000万画素(8,160×6,144ドット)と、通常の撮影の約1,200万画素(4,080×3,072ドット)の4倍の解像度で写真を撮影できる。それも、超広角、広角、望遠の全レンズに対応。もちろんデジタルズーム時も同様だ。
以下に、同じ場所から通常と高解像度で撮影した写真を掲載するが、高解像度のほうがより精細な写真が撮影できている。ただその違いは大きく拡大して初めて分かる程度で、通常の解像度でも品質に大きな不満はない。
ただし、高解像度撮影時には1枚の写真を撮影するのに1秒弱の時間がかかる。そのため、素早く何度もシャッターを切る必要のない風景写真や静物を撮影する場合などでの利用が中心となるだろう。
高度なAI機能を活用した、新しい編集機能を搭載
Pixel 8シリーズで初めて対応するAI編集機能が、「音声消しゴムマジック」と「ベストテイク」だ。いずれも、Pixel 8、Pixel 8 Proの双方で利用できる。
音声消しゴムマジックは、動画の音声を解析し、人の声、環境音や雑音、音楽などを検出して指定した音を消す機能。フォトアプリから利用する編集機能として用意される。
せっかく動画を撮影したのに、周りの人の声が入ったり、緊急車両のサイレン音、自動車や鉄道などの走行音が入ってしまった、ということはよくある。そういった場合でも音声消しゴムマジックを利用すれば、撮影後に不要な音を消して、より魅力的な動画として保存できる。
また、音声消しゴムマジックはPixel 8シリーズで撮影した動画だけでなく、過去に撮影した動画に対しても利用できる。なお、音声消しゴムマジックで加工する動画はGoogleフォトに保存されている必要がある。
実際に、以下に音声消しゴムマジックでの修正前、修正後の動画を掲載する。こちらでは人の声を消しているが、修正後には人の声がほとんど聞こえなくなっているものの、ほかの音はクリアに残っていることが分かる。逆に、人の声だけ残してほかの音を消すこともできる。
ただし、人の声を消すと、全ての人の声が消えてしまう。特定の人の声だけ残し、他の人の声だけ消す、といったことはできない。音楽や環境音などについても同様で、同じ種類の音と判定されたものが一律消されることになる。
将来AI処理能力が高まれば、話者特定や楽器特定などが可能となり、指定した人の声や楽器の音のみを消す、といったことも可能になるだろう。それでも、現状でもなかなか便利に活用できるので、Pixel 8シリーズを手に入れたらぜひ試してみてもらいたい。
そしてベストテイク。こちらは、集合写真に写っている人の表情を解析し、全員がベストの表情になるように加工する機能だ。こちらもフォトアプリから利用する編集機能で、Pixel 8シリーズで撮影した写真だけでなく、過去に撮影した写真でも利用可能。
ベストテイクを利用するには、集合写真を複数枚撮影し、その写真をGoogleフォトに保存しておく必要がある。そして、フォトアプリの編集機能からベストテイクを選択すると、フォトに転送された写真から類似写真をピックアップし、写っている人の表情を検出。そして、全ての人のベストの表情をピックアップして合成することで、全員がベストの表情の集合写真として加工する。
実際にベストテイクの手順と加工前後の写真を掲載するが、そちらを見ると分かるように、加工による違和感も少なく、加工された写真のほうが良い集合写真に仕上がっていると感じる。
この技術自体は、悪用される可能性もある。ただ、少なくともベストテイクでは、顔認識によって同じ人の顔をピックアップして加工候補とするため、全くの別人の顔を上書きするといったことはできないようだ。そのため、比較的安心して利用できるだろう。
ベストテイクで出来上がった写真は加工されたもので、実際の瞬間を切り取ったものではない。ただ、家族や友人との記念写真のように、プライベートの写真であれば、より良い思い出を残せるという意味で、便利に活用できるのではないだろうか。
価格は上がったが、それに見合う機能を備えた魅力的なスマホ
今回は発売前の試用だったこともあって、ベンチマークテストは行なえず、また時間的に全ての機能をチェックできなかった。ただ、その範囲内でもPixel 8およびPixel 8 Proを試用して、その魅力はかなり実感できた。
大きく進化したと感じたのはやはりカメラまわりで、全体的に撮影クオリティが向上。そして、音声消しゴムマジックやベストテイクなど、機械学習を活用した編集機能もなかなか魅力的で、写真や動画の活用の幅が大きく拡がると感じる。
ハード面では、Pixel 7より小型軽量となったPixel 8の筐体や、Pixel 8 Proでも平面ディスプレイが採用されている点、ディスプレイの輝度が高められて直射日光下での視認性が高まっている点などが魅力と感じる。
性能面やバッテリ駆動時間については、今回の試用の範囲内でははっきり結論づけられない。とはいえ、少なくとも試用している間にアプリは非常に快適に利用できたし、1日外出して写真や動画を撮影したりしてもバッテリが尽きることはなかったため、こちらもフラッグシップモデルとして不満のない性能およびバッテリ駆動時間が確保されていると考えていい。
ただ、価格はPixel 8が11万2,900円から、Pixel 8 Proは15万9,900円からと、Pixel 7シリーズと比べてかなり高くなってしまった。近年の世界的な物価高騰と円安の進行もあって、仕方のない部分もある。
これまでPixelシリーズは、高性能ながら比較的手ごろな価格が魅力だったが、その”手ごろな価格”という点が失われたことで、従来よりもやや厳しい印象を受けるのは事実だ。とはいえ、競合スマホも価格は高騰しており、機能面などを比べてもPixel 8シリーズが特別高いということはなく、価格相応の魅力は十分備えていると言える。そのため、ファンはもちろんのこと、高性能かつ高品質カメラを搭載する最新フラッグシップスマホが欲しい人にお勧めしたい。
なお、Pixel 7シリーズなど指定スマートフォンの下取りによる値引やストアクレジットの還元により、どちらも実質3万9,800円から購入できるキャンペーンが2023年10月20日まで実施されている。なるべく安く手に入れたいという人はそのキャンペーンを利用したい。