Hothotレビュー
ついにここまで来たMR体験!「Meta Quest 3」のパススルー画質は3倍アップで歴代最強だった
2023年10月10日 00:00
Metaは9月27~28日に開催された第10回「Meta Connect」にて、複合現実(MR)に対応したメインストリーム向けヘッドセット「Meta Quest 3」を発表、同日より予約を開始した。発売日は10月10日で価格は128GBモデルが7万4,800円、512GBモデルが9万6,800円。
「Oculus Quest 2」が発売されたのが2019年5月、「Oculus Quest 2」(現Meta Quest 2)が登場したのが2020年10月。2022年10月に「Meta Quest Pro」がリリースされているとは言え、Quest 2の後継機としては3年ぶりの待望のニューモデルだ。
今回Metaより本製品の長期貸与を受けたので、Quest 2やQuest Proからどのような進化を遂げたのが実機レビューをお届けしよう。
Quest 2の2倍のグラフィック性能、Quest Proの3倍のパススルー画質を実現
Meta Quest 3はSoCに「Qualcomm Snapdragon XR2 Gen 2」を採用。メモリは8GB、ストレージは128GBまたは512GBを搭載している。Snapdragon XR2 Gen 2のCPU、GPUの詳細は不明だが、「Snapdragon 865」相当の「Snapdragon XR2 Gen 1」に対して、2倍以上のグラフィック性能を備え、また読み込み時間の短縮を実現していると謳われている。
ディスプレイは片目あたり2,064×2,208ドットの液晶ディスプレイ「Infinite Display」を搭載。リフレッシュレートは72Hz/80Hz/90Hz/120Hz、視野角水平110度/垂直96度。
レンズは同心円状の溝が刻まれた「フレネルレンズ」から「パンケーキレンズ」に変更され、40%スリムな光学デザインを実現。またシャープネスは中央部視野で25%、周辺部視野で70%向上。迷光や散乱光も大幅に低減しているとのことだ。
レンズの調節機構は2種類。「レンズ間隔ダイアル」ではIPD(瞳孔間距離)を53~75mmの範囲で、「奥行き調整ボタン」では目とレンズの距離を4段階で調整できる。一般的なサイズの眼鏡であれば装着したままで利用可能だ。
大きく進化したのがカメラ性能。2つのRGBカラーカメラ(18PPD、400万画素)と、深度センサーを搭載。Quest 2の約10倍、Quest Proの約3倍の解像度でフルカラーパススルーの複合現実(MR)を利用できる。ただしQuest Proに採用されていた、ヘッドセット内部の5つの赤外線センサーによるフェイス、アイトラッキングは省略されている。
無線通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 4.2に対応。有線端子はUSB Type-Cと3.5mmオーディオジャックを搭載している。
本体サイズは184×160×98mm、重量は515g。コントローラのサイズは126×67×43mm。5,060mAhのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は平均2.2時間だ。
Quest 3には多くのアクセサリが用意されている。特に「Meta Quest 3 接顔部&ヘッドストラップ」にはエレメンタルブルーとブラッドオレンジの2色が展開されている。カラバリを含めてアクセサリを豊富に用意していることから、Metaが本格普及を目指していることがうかがえる。
Meta Quest 3 | Meta Quest Pro | Meta Quest 2(旧Oculus Quest 2) | |
---|---|---|---|
発売日 | 2023年10月10日 | 2022年10月25日 | 2020年10月13日 |
価格 | 128GB:7万4,800円 512GB:9万6,800円 | 256GB:15万9,500円 | 64GB:3万7,180円(販売終了) 128GB:4万7,300円 256GB:5万3,900円 |
ハードウェア | PC不要、PCと接続可能 | PC不要、PCと接続可能 | PC不要、PCと接続可能 |
トラッキング | 6DoF | 6DoF、フェイストラッキング、アイトラッキング | 6DoF |
パススルー | 対応(4MP、18PPD。Quest 2の約10倍、Quest Proの約3倍の高解像度で体験できるフルカラーのMR) | 対応(1MP、8PPD。Quest 2の約4倍の高解像度で体験できるフルカラーのMR) | 対応(モノクロ) |
SoC | Snapdragon XR2 Gen 2 | Snapdragon XR2+ Gen1 | Snapdragon XR2 Gen 1 |
GPU | 不明 | 不明 | 不明 |
メモリ | 8GB | 12GB | 6GB |
ストレージ | 128GB、512GB | 256GB | 64GB、256GB |
ディスプレイ | 液晶ディスプレイ、片目あたり2,064×2,208ドット、1,218PPI、25PPD、リフレッシュレート72Hz/80Hz/90Hz/120Hz | 液晶ディスプレイ、片目あたり1,800×1,920ドット、1,058PPI、22PPD、リフレッシュレート72Hz/90Hz | 高速スイッチ液晶ディスプレイ、片目あたり1,832×1,920ドット、773ppi、20ppd、リフレッシュレート60Hz/72Hz/90Hz/120Hz(テスト機能) |
IPD | 58~71mm | 55~75mm | 58、63、68mmで調整 |
オーディオ | ステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック | ステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック | ステレオスピーカー、マイク、3.5mmオーディオジャック |
無線通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0以上 |
端子 | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
コントローラ | 2本、サイズ:126×67×43mm、重量:非公表、電源:単3電池×2 | 2本、サイズ:130×70×62mm、重量:153g、電源:充電式バッテリ | 2本、サイズ:90×120mm、重量:126g、電源:単3電池×2 |
サイズ | 184×160×98mm | 265×127×196mm | 191.5×102×295.5mm(ストラップ展開時) |
重量 | 515g | 722g | 503g |
バッテリ容量 | 5,060mAh | 5,348mAh | 3,640mAh |
バッテリ駆動時間 | 最大使用可能時間:平均2.2時間 | 約2.5時間 | ゲーム:約2時間、動画視聴:約3時間 |
充電時間 | 約2.3時間 | 約2時間 | 約2.5時間 |
Quest 3とQuest Proのパススルー画像の差は歴然としている
セットアップの流れについては基本的にQuest 2、Quest Proと変わらない。Quest 3を起動したらまずはWi-Fiネットワークに接続。その後、「Quest」アプリをインストールしたiOS、Android端末とペアリングすると、ソフトウェアのアップデートが実行される。
最後に、「Meta Questの安全に関するご注意」、「プライバシーに配慮した設計」、「Meta Questの改善のために追加データを共有しますか?」、「ジェスチャーコントロールをオンにする」について、同意・確認を済ませればセットアップは完了だ。
Quest 3にはQuest 2の約10倍、Quest Proの約3倍の2つのRGBカラーカメラ(18PPD、400万画素)が採用されている。今回Quest 3とQuest Proのパススルー画像を見比べてみたが、その差は歴然としている。解像感の違いは当然のことながら、Quest 3のパスルー画像のほうが色は正確で、また白飛びも抑えられている。特に現実空間のディスプレイ表示をかなり明瞭に見られることには驚かされた。
もちろん肉眼で見たときとはまだまだ大きな差はある。しかし、Quest 3をかぶったままでも、現実世界のディスプレイを必要に応じて確認する用途であれば十分こなせるはずだ。
今度は有機ELディスプレイを搭載したiPhoneの画面を見たら、白飛びしてしまっていた。しかし、輝度を少し下げると下の写真のようにハッキリと見える。小さな文字も問題なく読むことが可能だ。MR、VRゲームをプレイしている間にSNSやメールの内容を確認するぐらいなら十分実用的だ。
VRゲームプレイ時のグラフィックスをQuest 2とQuest 3で比較すると、片目あたりで1,832×1,920ドットから2,064×2,208ドットへと高精細化されているだけに、格子模様が見えにくくなっている。しかしそれは止まっている映像を凝視すれば分かるぐらいの違いで、実際にQuest用ゲームをプレイしていると気づかない程度だ。Quest 3で画質向上の恩恵を受けるためには、PC用VRコンテンツを選ぶべきだ。
一方、大きな差を感じたのはサウンド品質。Quest 2より再生音域の音量が40%向上しているとのことだが、数値以上の迫力を感じる。一度Quest 3でサウンドを聴くと、Quest 2では最大ボリュームでも物足りなくなるほどだ。とは言えそれだけ盛大に音洩れするわけである。公共交通機関でQuest 3を使う際にはイヤフォンは必須と言えよう。
ヘッドセット、コントローラトラッキング、ジェスチャーコントロールの精度は非常に高く感じられた。ただし、Quest Proの「Meta Quest Touch Proコントローラー」は「Snapdragon 662」を搭載し、3つのセンサーを内蔵しており、360度のフル可動域を実現している。「Meta Quest Touch Proコントローラー」で単体で購入できるので、より高い精度を求めるなら追加購入を検討しよう。
それにしてもQuest 3の画質が向上したパススルー映像と、正確なジェスチャーコントロールによる複合現実(MR)体験は本当に楽しい。現実空間に浮いているウィンドウはほとんどずれない。ウィンドウをつかめないことも数回あったが、これは慣れで解消できそうだ。どのような体験が可能なのかは、下記の動画でぜひ確認していただきたい。
Snapdragon XR2 Gen 2はSnapdragon XR2 Gen 1に対して、読み込み時間の短縮を実現していると謳われている。そこで、「Marvel's Iron Man VR」の起動時間で比較してみたところ、Quest 2は24秒87、Quest Proは22秒89、Quest 3は24秒18という結果になった。もっと大容量のデータを展開するようなゲームでなければ、読み込み時間においてSnapdragon XR2 Gen 2の優位性は表われないようだ。
高画質な複合現実(MR)体験を先取りできる魅力的なガジェットだ
Quest 3をQuest 2と比較すると、すべての面で進化していることは間違いない。Quest Proと比較しても、残念なのはフェイストラッキングとアイトラッキングが省略された点ぐらい。むしろ、パススルー画質が大幅に向上しているので複合現実(MR)の体験はQuest 3のほうが上だと思う。
Quest 3はQuest 2よりも価格は上がっている。しかし高画質な複合現実(MR)の体験を先取りできることを考えれば、非常に魅力的なガジェットだ。