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VAIOが目指した“愛される定番”。VAIO F14/F16の使い勝手は上位モデル並みか?
2023年3月29日 13:00
VAIOは、14型ノートPC「VAIO F14」、16型ノートPC「VAIO F16」を3月29日に発表した。発売は6月を予定しており、価格はカスタマイズモデルのF14が13万1,800円から、F16が13万6,800円からとなる。
両製品は最近のVAIOが力を入れている「スタンダードノートPC」。スペックありきのマシンではなく、本当の意味で使いやすく、安心で、高揚感を得られる「愛される定番」として企画・開発されたと謳われている。今回はベンチマークなども実施するが、特に使い勝手にスポットを当ててレビューしていこう。
CPUは第13世代(Raptor Lake)を採用しつつ、割り切ったスペック
VAIO F14とF16には、ネイビーブルー、サテンゴールド、ウォームホワイトの3色が用意されている。
おもなスペックは下表のとおり。
VAIO F14 | VAIO F16 | |
---|---|---|
OS | Windows 11 Home/Pro | |
CPU | Core i3-1315U/Core i5-1334U/Core i7-1355U | |
GPU | Intel Iris Xe Graphics | |
メモリ | 8GB/16GB/32GB(LPDDR4X) | |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB(PCIe Gen3 x4接続SSD) | |
ディスプレイ | 14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、16:9、60Hz、アンチグレア、ペン非対応、タッチ非対応) | 16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、142ppi、16:10、60Hz、アンチグレア、ペン非対応、タッチ非対応) |
ワイヤレス通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 | |
WWAN | - | |
インターフェイス | USB 3.1 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、USB 3.0×3、HDMI、Gigabit Ethernet、microSDカードスロット、3.5mmコンボジャック | |
カメラ | 92万画素(顔認証対応RGB+IRハイブリッドカメラ) | |
サウンド | ステレオスピーカー(Dolby Atmos対応) | |
バッテリ容量 | 51,150mWh | |
バッテリ駆動時間 | 約16時間 | |
本体サイズ | 322.9×221.5×19.5~19.7mm | 358.3×255.6×16.6~19.9mm |
重量 | 約1.34kg | 約1.65kg |
セキュリティ | 顔認証、指紋認証センサー一体型電源ボタン | |
オフィスアプリ | なし/Office Professional 2021/Office Home & Business 2021/Office Personal 2021 | |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、説明書類 | |
カラー | サテンゴールド/ウォームホワイト/ネイビーブルー |
VAIO Zと同じキーボードを採用、AIノイズキャンセリングは非常に強力
VAIO F14とF16はテンキーの有無という違いはあるが、どちらも「VAIO Z」で開発されたキーボードと同じパーツを採用している。
キーピッチが約19mm、キーストロークが約1.5mmという点も同様で、0.3mmの凹みを設けられたキートップ、おなじみのリフトアップヒンジ機構などにより快適なタイピングが可能だ。
またキートップは透明樹脂に、ベース塗装、ミドル塗装を施したうえで、レーザー印字により塗装を剥離して文字を印字し、最後にUV硬化塗装でコーティングされている。
耐指紋、防汚処理、刻印削れ抑止のために工程を重ねたキートップは、長期間利用しても購入したときの外観が維持される。
両機種の最も大きな違いはディスプレイ。F14は14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、16:9)、F16は16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、16:10)が採用されている。F16のほうが画面は大きく、比率も縦に長いので、前後の見通しがいい。筆者の好みは圧倒的にF16の16:10だ。
ただ「HWiNFO64 Pro」でディスプレイのシステム情報を確認したところ、F14にはシャープ製液晶パネル「LQ140M1JW61」、F16にはBOE製液晶パネル「NV160WUM-N46」が採用されていた。
さらにカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で色域を計測したところ、F14のsRGBカバー率は63.4%、sRGB比は63.5%、F16のsRGBカバー率は61.2%、sRGB比は61.6%と、F16のほうが色域は狭かった。ただ輝度はF16のほうが明らかに明るい。
いずれにしてもどちらのディスプレイも色域はかなり狭いので、色調整などのクリエイティブワークを行なうのであれば外部ディスプレイを用意することを強くおすすめする。
スピーカーは両機種ともに本体底面前部に内蔵されているが、同じYouTube動画を再生したときの音圧レベルはF14が82.6dB、F16が87.0dBと大きな開きがあった。
ただし両機種とも低音がかなり弱めだ。またF16は最大ボリュームにすると、音が少々甲高く感じられる。映画やミュージックビデオを大音量で楽しみたいのなら、外付けスピーカーやヘッドフォンなどを用意したほうがよいと思う。
Webカメラについては92万画素(顔認証対応RGB+IRハイブリッドカメラ、プライバシーシャッター付き)が搭載されている。
「VAIOの設定」の「カメラ設定」では、背景ぼかし、自動フレーミング、顔優先AE、逆光補正(自動)、逆光補正(固定)、ちらつき低減などの多彩な設定を利用できる。
92万画素ということで解像感はそれなりだが、顔優先AEを有効にすれば室内灯下でも明るく、自然な色で撮影が可能だ。
個人的にちょっと驚いたのがステレオマイクのAIノイズキャンセリング機能。内蔵Webカメラ&マイクで録画しながらキーボードを叩いてみたのだが、ちょっと音声がこもって聞き取りにくくなるものの、タイプ音がほとんど聞こえなくなった。
AIノイズキャンセリング機能が働いていないときには実用上十分なマイク音質を得られる。Web会議であれば自分が発言するときにはキーボードを叩かなければよいわけで、F14、F16のAIノイズキャンセリング機能はかなり有効な機能だ。
気になるベンチマークスコアは?
最後にパフォーマンスをチェックする。今回はCore i7-1355U、メモリ32GB、SSD 1TB(PCIe 3.0 x4接続)を搭載するF14とF16でベンチマークを実施。
比較対象には第12世代(Alder Lake)のCore i7-1255U、メモリ16GB、SSD 256GB(PCIe 3.0 x4接続)を搭載する「VAIO S13」を用意した。
VAIO F14 | VAIO F16 | VAIO S13 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-1355U (2P+8Eコア/12スレッド、最大5GHz) | Core i7-1355U (2P+8Eコア/12スレッド、最大5GHz) | Core i7-1255U (2P+8Eコア、12スレッド、最大4.7GHz) |
GPU | Intel Iris Xe Graphics | Intel Iris Xe Graphics | Intel Iris Xe Graphics |
メモリ | LPDDR4X SDRAM 32GB | LPDDR4X SDRAM 32GB | LPDDR4X SDRAM 16GB |
ストレ-ジ | 1TB PCIe 3.0 x4接続SSD | 1TB PCIe 3.0 x4接続SSD | 256GB PCIe 3.0 x4接続SSD |
ディスプレイ | 14型、1,920×1,080ドット(157ppi) | 16型、1,920×1200ドット(142ppi) | 13.3型、1,920×1,080ドット(166ppi) |
TDP | 15W | 15W | 15W |
OS | Windows 11 Pro | Windows 11 Pro | Windows 11 Pro |
サイズ | 322.9×221.5×19.5~19.7mm | 358.3×255.6×16.6~19.9mm | 305.8×215.1×14.4~18.4mm |
重量 | 約1.34kg | 約1.65kg | 約1.049kg |
まずCPU性能については、F14/F16はS13に対して「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)で約150~152%、CPU(Single Core)で約107~109%相当のスコアを記録している。S13がCore i7-1255U搭載機としてはスコアが低かったため、相対的に大きな差となってしまったようだ。
3Dグラフィックス性能については、F14/F16はS13に対して、「3DMark」のTime Spyで約106%、Fire Strikeで約111%、Night Raidで約121~123%相当のスコアを記録している。
同じ内蔵グラフィックス「Intel Iris Xe Graphics」であったとしても、S13のCPU性能が3Dグラフィックスベンチマークにも影響を与えたようだ。
ストレージ速度については3機種ともサムスン製のPCIe 3.0 x4接続SSDを搭載しているだけに、1M Q8T1 シーケンシャルライトと4K Q32T1 ランダムライトでF14/F16がS13を大きく上回ったが、ほかの項目についてはわずかな差に留まった。
2023年のニューモデルとしてはPCIe 4.0 x4接続のSSDを搭載してほしいと思わなくもないが、実性能に与える効果とコストを天秤にかけて、あえてPCIe 3.0 x4接続SSDを選んだことは理解できる。
総合ベンチマーク「PCMark 10」では、F14/F16はS13に対して、PCMark 10 Scoreで約112~113%相当のスコアを記録した。最も大きな差になったのはProductivityで約124%だ。
バッテリ駆動時間については条件を揃えられなかったためF14とF16のみでベンチマークを実施したが、ディスプレイ輝度と音量を50%に設定してYouTube動画を連続再生したところ、F14が9時間19分35秒、F16が8時間35分7秒動作した。
同じバッテリ容量でF14のほうがディスプレイは小さいぶん、F14のほうがバッテリ駆動時間は長くなった。とは言えいずれにしても、両機種ともにモバイルノートとして十分活躍できるだけのバッテリ駆動時間を備えている。
恩恵を受けられる性能、使い勝手に注力、まさに「愛される定番」に仕上げられている
F14、F16について総括すると、CPUは第13世代(Raptor Lake)を採用しつつも、SSDはPCIe 4.0 x4接続SSDが用意されず、かな文字なしキーボードが選べないなど、かなり割り切ったスペックだと感じられる。
しかしボディやキーボードの上質さなどはこれまでのVAIOならではのもので、総合的な使い勝手は高い。特にAIノイズキャンセリング機能は非常に気に入った。
派手さはないが、着実に恩恵を受けられる性能、使い勝手に注力されており、スタンダードPCとしてまさに「愛される定番」として仕上げられていると言えよう。