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VAIOが目指した“愛される定番”。VAIO F14/F16の使い勝手は上位モデル並みか?

VAIO F14(左)、VAIO F16(右)

 VAIOは、14型ノートPC「VAIO F14」、16型ノートPC「VAIO F16」を3月29日に発表した。発売は6月を予定しており、価格はカスタマイズモデルのF14が13万1,800円から、F16が13万6,800円からとなる。

 両製品は最近のVAIOが力を入れている「スタンダードノートPC」。スペックありきのマシンではなく、本当の意味で使いやすく、安心で、高揚感を得られる「愛される定番」として企画・開発されたと謳われている。今回はベンチマークなども実施するが、特に使い勝手にスポットを当ててレビューしていこう。

CPUは第13世代(Raptor Lake)を採用しつつ、割り切ったスペック

 VAIO F14とF16には、ネイビーブルー、サテンゴールド、ウォームホワイトの3色が用意されている。

VAIO F14(ネイビーブルー)
VAIO F16(サテンゴールド)

 おもなスペックは下表のとおり。

【表1】VAIO F14とF16のスペック
VAIO F14VAIO F16
OSWindows 11 Home/Pro
CPUCore i3-1315U/Core i5-1334U/Core i7-1355U
GPUIntel Iris Xe Graphics
メモリ8GB/16GB/32GB(LPDDR4X)
ストレージ256GB/512GB/1TB(PCIe Gen3 x4接続SSD)
ディスプレイ14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、157ppi、16:9、60Hz、アンチグレア、ペン非対応、タッチ非対応)16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、142ppi、16:10、60Hz、アンチグレア、ペン非対応、タッチ非対応)
ワイヤレス通信Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
WWAN
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、USB 3.0×3、HDMI、Gigabit Ethernet、microSDカードスロット、3.5mmコンボジャック
カメラ92万画素(顔認証対応RGB+IRハイブリッドカメラ)
サウンドステレオスピーカー(Dolby Atmos対応)
バッテリ容量51,150mWh
バッテリ駆動時間約16時間
本体サイズ322.9×221.5×19.5~19.7mm358.3×255.6×16.6~19.9mm
重量約1.34kg約1.65kg
セキュリティ顔認証、指紋認証センサー一体型電源ボタン
オフィスアプリなし/Office Professional 2021/Office Home & Business 2021/Office Personal 2021
同梱品ACアダプタ、電源ケーブル、説明書類
カラーサテンゴールド/ウォームホワイト/ネイビーブルー
本体天面。個人向けはネイビーブルー、サテンゴールド、ウォームホワイトの3色が、法人向けはダークメタルグレーが用意
本体底面は樹脂製。吸気口、放熱口などは設けられていない
ディスプレイはF14が14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、16:9)、F16が16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、16:10)を採用。壁紙は本体カラーと同じカラーが収録されている
パームレストはアルミ合金製。傷を防ぐ表面処理が施されている
本体前面と本体背面
右側面にはUSB 3.0 Type-A×2、HDMI、USB 3.1 Type-C(USB PD、DisplayPort対応)、Gigabit Ethernet。左側面にはセキュリティロックスロット、電源端子、USB 3.0、3.5mmコンボジャック、microSDカードスロットが配置されている
ディスプレイは最大180度まで展開できる
フットプリントはF14が322.9×221.5mm、F16が358.3×255.6mm。携帯性と画面サイズのどちらを選ぶかは悩ましい選択だ
厚みはF14が19.5~19.7mm、F16が16.6~19.9mm。端子の数、配置はまったく同じだ
F14はテンキーなしの87キー日本語キーボード、F16はテンキー付きの108キー日本語キーボード
F14の実測重量は1,300.5g
F16の実測重量は1,551g
パッケージには本体、ACアダプタ、電源ケーブル、説明書が同梱。本体カラーに合わせたオリジナルデザインのワイヤレスマウスは別売り
ACアダプタのコード長は実測150cm、電源ケーブルの長さは実測75cm
ACアダプタの型番は「VJ8AC19V82」。仕様は入力100-240V~1.5A、出力19V 3.42A、容量65W
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測220.6g
オプションで用意されるオリジナルデザインのワイヤレスマウスは静音ボタンを採用。重量は約60g(電池含まず)。天面にはキートップと同じくUVコートが施されている
Bluetooth経由の2チャンネルとUSBドングル(2.4GHz帯)経由を合わせて、3つのデバイスに接続可能。単3形乾電池1本でBluetooth接続時に約9カ月駆動すると謳われている。また電池の液漏れ防止回路を搭載しているとのことだ
「HWiNFO64 Pro」で取得したF14のシステムの概要

VAIO Zと同じキーボードを採用、AIノイズキャンセリングは非常に強力

 VAIO F14とF16はテンキーの有無という違いはあるが、どちらも「VAIO Z」で開発されたキーボードと同じパーツを採用している。

 キーピッチが約19mm、キーストロークが約1.5mmという点も同様で、0.3mmの凹みを設けられたキートップ、おなじみのリフトアップヒンジ機構などにより快適なタイピングが可能だ。

 またキートップは透明樹脂に、ベース塗装、ミドル塗装を施したうえで、レーザー印字により塗装を剥離して文字を印字し、最後にUV硬化塗装でコーティングされている。

 耐指紋、防汚処理、刻印削れ抑止のために工程を重ねたキートップは、長期間利用しても購入したときの外観が維持される。

F14のキーピッチは約19mm
F16のキーピッチも同じく約19mm
キーストロークは約1.5mm
VAIO製ノートPCでおなじみのリフトアップヒンジ機構を装備。キーボードに適度な傾斜がつき、パームレストの段差が小さくなり、さらに放熱の点でも有利だ
F14のタッチパッドは実測105×61mm
F16のタッチパッドは実測105×73mm。両機種ともパームリジェクションに対応する
電源ボタンは指紋認証センサー一体型。電源オフと休止状態でも、ワンプッシュでWindowsログオンの認証を実行できる

 両機種の最も大きな違いはディスプレイ。F14は14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、16:9)、F16は16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、16:10)が採用されている。F16のほうが画面は大きく、比率も縦に長いので、前後の見通しがいい。筆者の好みは圧倒的にF16の16:10だ。

 ただ「HWiNFO64 Pro」でディスプレイのシステム情報を確認したところ、F14にはシャープ製液晶パネル「LQ140M1JW61」、F16にはBOE製液晶パネル「NV160WUM-N46」が採用されていた。

 さらにカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で色域を計測したところ、F14のsRGBカバー率は63.4%、sRGB比は63.5%、F16のsRGBカバー率は61.2%、sRGB比は61.6%と、F16のほうが色域は狭かった。ただ輝度はF16のほうが明らかに明るい。

 いずれにしてもどちらのディスプレイも色域はかなり狭いので、色調整などのクリエイティブワークを行なうのであれば外部ディスプレイを用意することを強くおすすめする。

F14は14型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、16:9)、F16は16型WUXGA液晶(1,920×1,200ドット、16:10)。F16のほうが画面は大きく、比率も縦に長いので、前後の見通しがいい。なおこの写真はディスプレイの「拡大/縮小」設定を、F14は150%、F16は125%のデフォルトのままで撮影している
F14はシャープ製液晶パネル「LQ140M1JW61」、F16はBOE製液晶パネル「NV160WUM-N46」を採用。同じ画像を表示してもかなり色味が異なる
F14、F16ともに広視野角は謳われていないが実用上十分な視野角を備えている。また表面処理が非光沢なので映り込みはほとんど気にならない
F14のsRGBカバー率は63.4%、sRGB比は63.5%、Adobe RGBカバー率は47.1%、Adobe RGB比は47.1%、DCI-P3カバー率は46.8%、DCI-P3比は46.8%
F16のsRGBカバー率は61.2%、sRGB比は61.6%、Adobe RGBカバー率は45.6%、Adobe RGB比は45.6%、DCI-P3カバー率は45.4%、DCI-P3比は45.4%

 スピーカーは両機種ともに本体底面前部に内蔵されているが、同じYouTube動画を再生したときの音圧レベルはF14が82.6dB、F16が87.0dBと大きな開きがあった。

 ただし両機種とも低音がかなり弱めだ。またF16は最大ボリュームにすると、音が少々甲高く感じられる。映画やミュージックビデオを大音量で楽しみたいのなら、外付けスピーカーやヘッドフォンなどを用意したほうがよいと思う。

F14でYouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大82.6dB(50cmの距離で測定)
F16でYouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大87.0dB(50cmの距離で測定)

 Webカメラについては92万画素(顔認証対応RGB+IRハイブリッドカメラ、プライバシーシャッター付き)が搭載されている。

 「VAIOの設定」の「カメラ設定」では、背景ぼかし、自動フレーミング、顔優先AE、逆光補正(自動)、逆光補正(固定)、ちらつき低減などの多彩な設定を利用できる。

 92万画素ということで解像感はそれなりだが、顔優先AEを有効にすれば室内灯下でも明るく、自然な色で撮影が可能だ。

 個人的にちょっと驚いたのがステレオマイクのAIノイズキャンセリング機能。内蔵Webカメラ&マイクで録画しながらキーボードを叩いてみたのだが、ちょっと音声がこもって聞き取りにくくなるものの、タイプ音がほとんど聞こえなくなった。

 AIノイズキャンセリング機能が働いていないときには実用上十分なマイク音質を得られる。Web会議であれば自分が発言するときにはキーボードを叩かなければよいわけで、F14、F16のAIノイズキャンセリング機能はかなり有効な機能だ。

ディスプレイ上部には92万画素(顔認証対応RGB+IRハイブリッドカメラ、プライバシーシャッター付き)とステレオマイク(AIノイズキャンセリング対応)を内蔵
「VAIOの設定」の「カメラ設定」では、背景ぼかし、自動フレーミング、顔優先AE、逆光補正(自動)、逆光補正(固定)、ちらつき低減などを有効化できる
Windows 11の「カメラ」アプリでHDRオフで撮影。「顔優先AE」をオンにしているが、室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影できた
「背景ぼかし」を有効にして撮影。「VAIOの設定」で有効化すれば、すべてのアプリで自動的に適用される
AIノイズキャンセリングが働いているときはかなり音がこもるが、キーボードのタイピング音はほとんど聞こえない

気になるベンチマークスコアは?

 最後にパフォーマンスをチェックする。今回はCore i7-1355U、メモリ32GB、SSD 1TB(PCIe 3.0 x4接続)を搭載するF14とF16でベンチマークを実施。

 比較対象には第12世代(Alder Lake)のCore i7-1255U、メモリ16GB、SSD 256GB(PCIe 3.0 x4接続)を搭載する「VAIO S13」を用意した。

【表2】検証機の仕様
VAIO F14VAIO F16VAIO S13
CPUCore i7-1355U
(2P+8Eコア/12スレッド、最大5GHz)
Core i7-1355U
(2P+8Eコア/12スレッド、最大5GHz)
Core i7-1255U
(2P+8Eコア、12スレッド、最大4.7GHz)
GPUIntel Iris Xe GraphicsIntel Iris Xe GraphicsIntel Iris Xe Graphics
メモリLPDDR4X SDRAM 32GBLPDDR4X SDRAM 32GBLPDDR4X SDRAM 16GB
ストレ-ジ1TB PCIe 3.0 x4接続SSD1TB PCIe 3.0 x4接続SSD256GB PCIe 3.0 x4接続SSD
ディスプレイ14型、1,920×1,080ドット(157ppi)16型、1,920×1200ドット(142ppi)13.3型、1,920×1,080ドット(166ppi)
TDP15W15W15W
OSWindows 11 ProWindows 11 ProWindows 11 Pro
サイズ322.9×221.5×19.5~19.7mm358.3×255.6×16.6~19.9mm305.8×215.1×14.4~18.4mm
重量約1.34kg約1.65kg約1.049kg
F14、F16は放熱効率を考慮して、背面から吸気し、側面から排気するエアフローを採用。またほこりの詰まりにくい放熱フィンが使われている
ベンチマークは「VAIOの設定」の「電源・バッテリー→CPUとファン」で、電源接続時は「パフォーマンス優先」、バッテリ駆動時は「標準」に設定している

 まずCPU性能については、F14/F16はS13に対して「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)で約150~152%、CPU(Single Core)で約107~109%相当のスコアを記録している。S13がCore i7-1255U搭載機としてはスコアが低かったため、相対的に大きな差となってしまったようだ。

Cinebench R23.200
F14でCinebench R23を連続10分間実行中のCPU温度は最大94℃、平均76.05℃、クロック周波数は最大3,557.5MHz、平均2,357.33MHz
F16でCinebench R23を連続10分間実行中のCPU温度は最大96℃、平均71.46℃、クロック周波数は最大3,568MHz、平均2,352.2MHz
F14でCinebench R23実行中の消費電力は最大67.845W、平均47.91W、アイドル時の消費電力は平均8.24W

 3Dグラフィックス性能については、F14/F16はS13に対して、「3DMark」のTime Spyで約106%、Fire Strikeで約111%、Night Raidで約121~123%相当のスコアを記録している。

 同じ内蔵グラフィックス「Intel Iris Xe Graphics」であったとしても、S13のCPU性能が3Dグラフィックスベンチマークにも影響を与えたようだ。

3DMark v2.25.8056「Time Spy」
3DMark v2.25.8056「Fire Strike」
3DMark v2.25.8056「Night Raid」

 ストレージ速度については3機種ともサムスン製のPCIe 3.0 x4接続SSDを搭載しているだけに、1M Q8T1 シーケンシャルライトと4K Q32T1 ランダムライトでF14/F16がS13を大きく上回ったが、ほかの項目についてはわずかな差に留まった。

 2023年のニューモデルとしてはPCIe 4.0 x4接続のSSDを搭載してほしいと思わなくもないが、実性能に与える効果とコストを天秤にかけて、あえてPCIe 3.0 x4接続SSDを選んだことは理解できる。

SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測

 総合ベンチマーク「PCMark 10」では、F14/F16はS13に対して、PCMark 10 Scoreで約112~113%相当のスコアを記録した。最も大きな差になったのはProductivityで約124%だ。

PCMark 10 v2.1.2574

 バッテリ駆動時間については条件を揃えられなかったためF14とF16のみでベンチマークを実施したが、ディスプレイ輝度と音量を50%に設定してYouTube動画を連続再生したところ、F14が9時間19分35秒、F16が8時間35分7秒動作した。

 同じバッテリ容量でF14のほうがディスプレイは小さいぶん、F14のほうがバッテリ駆動時間は長くなった。とは言えいずれにしても、両機種ともにモバイルノートとして十分活躍できるだけのバッテリ駆動時間を備えている。

恩恵を受けられる性能、使い勝手に注力、まさに「愛される定番」に仕上げられている

 F14、F16について総括すると、CPUは第13世代(Raptor Lake)を採用しつつも、SSDはPCIe 4.0 x4接続SSDが用意されず、かな文字なしキーボードが選べないなど、かなり割り切ったスペックだと感じられる。

 しかしボディやキーボードの上質さなどはこれまでのVAIOならではのもので、総合的な使い勝手は高い。特にAIノイズキャンセリング機能は非常に気に入った。

 派手さはないが、着実に恩恵を受けられる性能、使い勝手に注力されており、スタンダードPCとしてまさに「愛される定番」として仕上げられていると言えよう。