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3スロット厚のグラボでパワーを追求できる第13世代Core搭載ベアボーン「NUC 13 Extreme Kit」実機レビュー

「NUC 13 Extreme Kit」1,179ドル~1,549ドル

 既報のとおり、インテルは3スロット厚のグラフィックボードを内蔵可能な第13世代インテルCoreプロセッサ搭載ベアボーンキット「NUC 13 Extreme Kit」を11月8日(米国時間)に発表した。価格は1,179ドル~1,549ドル。

 本製品は「Raptor Canyon」というコードネームで開発されてきた最新ベアボーンキット。11月10日のインテル日本法人のプレスリリースによれば、「まず中国での販売を開始し、幅広いお客様を対象に2022年第4四半期にリリース、2023年初めにさらに展開されていく予定です」とのこと。日本での発売予定、価格などは明言されていないが、貸出機を日本のプレスにも送ってきたということは、近日詳細が発表されるものと思われる。

 今回発売前の実機を借用したのでレビューをお届けする。ただし試作機とのことなので、製品版とは仕様が異なる可能性がある点は留意してほしい。

まずは豪華なプレスキットをご覧いただきたい

 製品実機について触れる前に豪華なプレスキットをご覧いただきたい。比較的コンパクトなベアボーンキットが送られてきたはずなのに、巨大な箱が届いたので何事かと思ったが、実機を収めているハードケースが恐ろしく豪華だった。軍用品でも入っているかのようなハードケースを開けてみると、おなじみのインテルのBGMが流れ、目の前に「NUC 13 Extreme Kit」が飛び込んでくるという趣向である。

 製品版がこのような仕様というわけではないので記事に含めるのはいかがなものかと思ったのが、インテルの遊び心をお伝えするために掲載させていただく。開梱時の動画も載せたのでお楽しみいただければ幸いだ。

コンパクトさが売りのベアボーンキットだが、貸出機は巨大なケースに収められて到着した
ケースを開けるとおなじみの音楽が再生される
ハードケースは明らかに巨大すぎるが、既製品を利用しているのだろう
これがプレスキットの同梱物一覧。ベアボーンキット自体には電源ケーブル、ストレージ用電源ケーブル、SATAケーブル×2、各種ネジ、アンテナ×2、説明書が同梱されるのだと思われる。当然、グラフィックボード関連一式とOSは含まれない

CPUは3種類を用意、3スロットを占有する高性能グラボを搭載可能

 さて本題に戻ろう。「NUC 13 Extreme Kit」には、「Core i9-13900K」搭載「NUC13RNGi9」、「Core i7-13700K」搭載「NUC13RNGi7」、「Core i5-13600K」搭載「NUC13RNGi5」の3モデルが用意されている。

 これらのCPUは主要パーツを搭載した拡張カード「NUC 13 Extreme Compute Element」に装着済み。拡張カード自体も760ドル~1,100ドルで発売されるが、CPU自体を換装することも可能だと思われる。なおベアボーンキットということで、メモリ、ストレージ、OSは別売り。そして、必要に応じてグラフィックボードを装着することになる。

 CPU以外のスペックは基本的に共通。メモリスロットはDDR5-5600 SO-DIMMが2基用意されており、最大64GBまで搭載可能。ストレージはM.2スロットが3基用意されており、スロット1にはPCIe Gen4 x4、スロット2とスロット3にはPCIe Gen4 x4/SATA3を装着可能だ。

 外付けグラフィックボード用にはPCI Express 5.0 x16接続スロットが用意されており、最大450W、313mm長、3スロットサイズの製品を搭載できる。

 インターフェイスは、背面にThunderbolt 4/USB4×2、USB 3.2 Gen2 Type-A×6、HDMI 2.1×1、10GbE有線LAN×1、2.5Gigabit Ethernet×1、マイク入力×1、ライン入力×1、スピーカー出力×1を、上面に3.5mmコンボジャック×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×1が用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6EとBluetooth 5.2(Intel Killer Wi-Fi 6E AX1690i)をサポートしている。

 本体サイズは129×318×337mm。3スロットを占有するハイパフォーマンスなグラフィックボードを搭載できることを考えると、比較的コンパクトと言えるだろう。個人的には机の上に設置しても圧迫感はなかった。

表1:NUC 13 Extreme Kitのスペック
型番NUC13RNGi9NUC13RNGi7NUC13RNGi5
CPUCore i9-13900KCore i7-13700KCore i5-13600K
コア数/スレッド数24コア/32スレッド16コア/24スレッド14コア/20スレッド
Pコア886
Eコア1688
内蔵GPUIntel UHD Graphics 770
外付けGPU増設可能 (PCI Express 5.0 x16接続、最大450W、313mm長、3スロットサイズまで)
メモリスロットDDR5 SO-DIMM×2スロット (DDR5-5600、最大64GBまで)
ストレージM.2スロット(M.2 2280、CPU接続、PCIe Gen4 x4)×1、M.2スロット(M.2 2280/2242、PCH接続、PCIe Gen4 x4/SATA3)×2、RAID 0とRAID 1対応
インターフェイス(上面)3.5mmコンボジャック×1、USB 3.0×2、USB 3.1 Type-C×1
インターフェイス(背面)Thunderbolt 4/USB4×2、USB 3.1×6、HDMI 2.1、10Gigabit Ethernet×1、2.5Gigabit Ethernet×1、マイク入力×1、ライン入力×1、スピーカー出力×1
無線機能Wi-Fi 6E+Bluetooth 5.2 (Intel Killer Wi-Fi 6E AX1690i)
筐体サイズ129×318×337mm
※11月25日時点
前面。サイズは129×318×337mm
背面にはThunderbolt 4/USB4×2、USB 3.2 Gen2 Type-A×6、HDMI 2.1×1、10Gigabit Ethernet、2.5Gigabit Ethernet、マイク入力×1、ライン入力×1、スピーカー出力×1を用意
右側面。ほぼ全面がメッシュパネルだ
左側面
天面。3.5mmコンボジャック×1、USB 3.2 Gen1 Type-A×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×1を配置
底面も全面がメッシュパネルだ

比較的ネジ留め箇所は少ないが、メンテナンスはやや面倒

 さて今回「NUC 13 Extreme Kit」を「最低限」分解してみたが、拡張性はともかく、メンテナンス性はあまりよくないというのが率直な感想だ。

 下記に一通り分解手順を掲載したが、簡単にアクセスできるのはメモリスロットだけ。SSDを増設、換装するためには拡張カード「NUC 13 Extreme Compute Element」を取り外す必要がある。まあ、そうそうSSDを着脱する機会はないだろうが、PCの自作の経験がない方に勧められるかというと個人的にはちょっと厳しいと感じた。

 ただ今回実際に本製品の中身を覗いてみて、よくもここまでパズルのような構造を実現したものだと物欲をそそられた。いくつかのパネルははめ込み式だし、グラフィックボードと2.5インチまたは3.5インチストレージを搭載すれば無駄なスペースはほとんどない。またケースの質感も非常に高い。

 一般的なマザーボードを採用しているわけではないので、中身をごっそり入れ替えつつ長期間利用し続けられるPCではない。しかし「ガジェット」としては非常に魅力があるし、比較的コンパクトなボディーも利便性が高いと言えよう。

まず背面側のネジを手で回し、天面パネルを上側に取り外す
そうすると前面、右側面、左側面のパネルは上から開くように取り外せる
パネルをはずした前面
パネルをはずした右側面
パネルをはずした左側面。ご覧いただkればわかるとおり、右側面から給気し、左側面から排気するというエアフロー設計だ
パネルをはずした天面
さらに分解するためには天面のネジ2本と背面のネジ1本を取り外す
主要パーツを搭載した「NUC 13 Extreme Compute Element」に接続されている電源ケーブルを抜く
「NUC 13 Extreme Compute Element」下にあるレバーを下に押し、ソケットから浮かせる
「NUC 13 Extreme Compute Element」をつかみ少し持ち上げる
「NUC 13 Extreme Compute Element」の左側を少し手前に出してから、左斜め後方に向かって抜き取る
ソケットの手前にあるのが、「NUC 13 Extreme Compute Element」を浮かせるのに使ったレバーだ
「NUC 13 Extreme Compute Element」の表面。CPUファンの右側にはDDR5 SO-DIMMスロット×2と、通信モジュール「Intel Killer Wi-Fi 6E AX1690i」が配置されている
背面にはM.2スロット(M.2 2280、PCIe Gen4.0 x4)が3基用意されている。右からスロット1、スロット2、スロット3の順番だ
電源はFSP製「FSP750-27SCB」(80PLUS GOLD)が搭載されている
電源ユニット下のネジをふたつはずすとパネルを開けられる
パネルには2.5インチストレージを2基、もしくは3.5インチストレージを1基装着可能だ
ここからはグラフィックボードを覗いてみるが、「NUC 13 Extreme Compute Element」を元に戻し、天面パネルを装着する手順を省略している。ご自身でグラフィックボードを装着する際には必ず説明書に沿って進めてほしい。まずは底面パネルを前側から取り外す
グラフィックボードのネジを隠しているカバーを後ろ側に開く
底面のネジを2つはずす
するとグラフィックボード上部のケースの梁を上側に取り外せる
あとは通常の手段でグラフィックボードを装着、換装することが可能だ

高性能グラボ搭載でハイパフォーマンスを遺憾なく発揮

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は下記のベンチマークを実施した。

・Cinebench R23(※最小テスト時間10分)
・3DMark v2.25.8043「CPU Profile」
・3DMark v2.25.8043
・ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
・SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
・PCMark 10 Extended v2.1.2574

 比較対象機種としては前モデルの「NUC 12 Extreme Kit」を採用した。下記が検証機の仕様とその結果だ。

「HWiNFO64 Pro」で取得した「NUC 13 Extreme Kit」のシステムの概要
【表2】検証機の仕様
NUC 13 Extreme KitNUC 12 Extreme Kit
CPUCore i9-13900K(24コア/32スレッド、最大5.80GHz)Core i9-12900(16コア/24スレッド、最大5.10GHz)
GPUGeForce RTX 3080 TiGeForce RTX 3050
メモリDDR5-4800 SDRAM 32GBDDR4-3200 SDRAM 32GB
ストレ-ジ1TB PCIe 4.0 x4 SSD「KINGSTON SFYRS1000G」500GB PCIe 4.0 x4 SSD「KINGSTON SFYRS1000G」
TDP125W65W
OSWindows 11 Pro 22H2Windows 11 Pro 21H2
サイズ約129×337×318mm約120×189×357mm
Cinebench R23(※最小テスト時間10分)
3DMark v2.25.8043「CPU Profile」
3DMark v2.25.8043
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
PCMark 10 Extended v2.1.2574
「Cinebench R23」実行中のCPU温度は平均93.57℃、最大98℃、クロック周波数は平均4,435.01MHz、最大4,456.9MHz
「Cinebench R23」実行中の消費電力は最大345.47W、平均334.8W。アイドル時は平均52.61W

 まずCPU性能については「NUC 13 Extreme Kit」が「NUC 12 Extreme Kit」に対して、Cinebench R23のCPU(Multi Core)で約189%のスコアを記録している。Core i9-13900KはCore i9-12900からコア数が1.5倍、スレッド数が約1.33倍に増え、シングルスレッド性能も向上している。CPU性能に依存するアプリケーションでは大きな恩恵を受けられるわけだ。

 3Dグラフィック性能については「NUC 13 Extreme Kit」がRTX 3080 Ti、「NUC 12 Extreme Kit」がRTX 3050を搭載しているので比較する意味はあまりないが、3DMarkで平均308%、ファイナルファンタジーXIVで平均266%相当のスコアを「NUC 13 Extreme Kit」が記録している。グラフィックボードが異なるので当然の結果だが、「NUC 13 Extreme Kit」が3スロットサイズのハイパフォーマンスなグラフィックボードを搭載できるからこそである。「NUC 13 Extreme Kit」はゲーマー、クリエイターにとっても魅力的なベアボーンキットだ。

 ストレージ速度については両者異なるSSDを搭載しており、特性は違うもののPCIe Gen4 x4接続SSDとしては順当な結果。なお、どちらもRAID0に対応しているので、さらなる高速化を図ることも可能である。

サイズは大きくなったが、グラフィックボード選択の幅が広がった

 「NUC 13 Extreme Kit」はサイズが大きくなったものの、3スロットサイズのグラフィックボードが搭載可能となり選択の幅が広がった。マザーボードから選定したい生粋のPC自作ファンには物足りないかもしれないが、そのぶん手軽にPCを組みたいと考えている方にはベアボーンキットは手頃な存在だ。

 メッシュパネルに梁を張ったような左右パネルをはじめとしたボディーデザインは非常に上質で、デスクの上に置いていても見栄えがいい。前モデルと比較的近い価格帯で発売されれば、注目を集めそうな1台だ。