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12.9インチiPad Pro(第6世代)は、タブレットとして最高峰の性能と機能性を備えた完成形だ
2022年11月21日 06:21
AppleはM2チップを搭載した「12.9インチiPad Pro(第6世代)」と「11インチiPad Pro(第4世代)」を10月26日に発売した。M2チップは、前世代のM1チップより最大15%高速な8コアCPU、最大35%高速な10コアGPU、40%高速な16コアNeural Engineを搭載し、また50%広くなった100GB/sのユニファイドメモリ帯域を実現。マルチタスキングや大容量データを扱う作業がスムーズになると謳われている。
今回Appleより12.9インチiPad Pro(第6世代)を借用したので、前モデルからの進化点、性能の違いなどについてレビューしていこう。
OSにiPadOS 16、SoCにApple M2チップを採用
12.9インチiPad Pro(第6世代)はOSにiPadOS 16、SoCにM2チップを採用。メモリは、128GB/256GB/512GBストレージ版が8GB、1TB/2TBストレージ版が16GBを搭載。ストレージは前述の通り128GB、256GB、512GB、1TB、2TBの5種類がラインナップされている。
ディスプレイはLiquid Retina XDRディスプレイ(2,732×2,048ドット)を搭載。詳細なスペックが書かれた下表で見ていただけると分かるが、仕様面は前世代とほぼ変わらない。ただし、Apple Pencilをディスプレイにかざすとマーカーなどが表示される「ポイント機能」が新搭載された。
カメラは広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm)、超広角カメラ(1,000万画素、F2.4、14mm、視野角125度)、前面カメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度)と基本スペックは前世代を踏襲しているが、ストレージ256GB以上のモデルは最大4K/30fpsのProResビデオ撮影に対応した。ただし標準のカメラアプリではProResビデオ撮影の設定が表示されないため、サードパーティー製アプリから利用する必要がある。
インターフェイスはThunderbolt/USB4ポート(充電とDisplayPort対応)を搭載。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、WWANはミリ波対応5Gをサポートしているが、Wi-Fi 6Eは日本、中国では利用できず、ミリ波は米国、プエルトリコでのみ利用できる。つまり海外出張や旅行にでも出かけなければ、高速通信の真価は発揮できないわけだ。
本体サイズは約280.6×214.9×6.4mm、重量はWi-Fiモデルが682g、Wi-Fi+Cellularモデルが684g。40.88Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はWi-Fiでネット利用/ビデオ再生時に最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用時に最大9時間とされている。
「日本」における前モデルからの進化点は、処理性能、Apple Pencilによるポイント、最大4K/30fpsのProResビデオ撮影(ストレージ256GB以上のモデル)ということになる。
【表1】12.9インチiPad Pro(第6世代)、12.9インチiPad Pro(第5世代)のスペック | ||
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製品名 | 12.9インチiPad Pro(第6世代) | 12.9インチiPad Pro(第5世代) |
OS | iPadOS 16 | iPadOS 15 |
CPU | Apple M2チップ (高性能コア×4+高効率コア×4を搭載した8コアCPU、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅) | Apple M1チップ (高性能コア×4+高効率コア×4を搭載した8コアCPU、8コアGPU、16コアNeural Engine) |
メモリ | 128GB/256GB/512GBストレージ版:8GB 1TB/2TBストレージ版:16GB | |
ストレージ | 128GB/256GB/512GB/1TB/2TB | |
ディスプレイ | Liquid Retina XDRディスプレイ (2,732×2,048ドット、264ppi、ProMotionテクノロジー(最大120Hz)、最大輝度600cd/平方m、フルスクリーンの最大輝度1,000cd/平方m、ピーク輝度1,600cd/平方m(HDR)、P3、コントラスト比100万:1、反射防止、第2世代のApple Pencil、Apple Pencilによるポイント) | Liquid Retina XDRディスプレイ (2,732×2,048ドット、264ppi、ProMotionテクノロジー(最大120Hz)、最大輝度600cd/平方m、フルスクリーンの最大輝度1,000cd/平方m、ピーク輝度1,600cd/平方m(HDR)、P3、コントラスト比100万:1、反射防止、第2世代のApple Pencil) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 ※Wi-Fi 6Eは日本、中国では利用できない | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0 |
WWAN | 5G(Nano SIM、eSIM) ※ミリ波は米国、プエルトリコのみで利用できる | |
インターフェイス | Thunderbolt/USB4ポート(充電、DisplayPort) | |
カメラ | 広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm) 超広角カメラ(1,000万画素、F2.4、14mm、視野角125度) 前面カメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度) ※ストレージ256GB以上のモデルは最大4K、30fpsのProResビデオ撮影に対応 | 広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm) 超広角カメラ(1,000万画素、F2.4、14mm、視野角125度) 前面カメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度) |
センサー | Face ID、LiDARスキャナ、3軸ジャイロ、加速度、環境光、気圧計 | |
バッテリ容量 | 40.88Wh | |
バッテリ駆動時間 | Wi-Fiでネット利用/ビデオ再生:最大10時間 モバイルデータ通信でネット利用:最大9時間 | |
バッテリ充電時間 | 非公表 | |
本体サイズ | 約280.6×214.9×6.4mm | |
重量 | Wi-Fiモデル:682g Wi-Fi+Cellularモデル:684g | |
セキュリティ | Face ID(顔認証) | |
同梱品 | iPad Pro、USB-C充電ケーブル(1m)、20W USB-C電源アダプタ、説明書、SIMピン(Wi-Fi+Cellular版のみ)、ステッカー | |
カラー | シルバー、スペースグレイ | |
価格 | 17万2,800円~37万2,800円 | 12万9,800円~27万9,800円(発売時) 15万9,800円~34万6,800円(価格改定後) |
なお歴史的な円安により、iPadはかなり高価な製品となってしまっている。12.9インチiPad ProのWi-Fi+Cellular版のストレージ2TBモデルで比較すると、2021年モデル(第5世代)は発売当初27万9,800円だったところ、2022年モデル(第6世代)は37万2,800円となっており、約1.33倍だ。
門外漢の筆者には今後の為替の動向の予測はつかないが、早く以前の円相場に戻ること、そして円安が解消された際には速やかにApple製品の価格が改定されることを切に願っている。本当に。
【表2】iPad Proのモデル別直販価格一覧 | ||||
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2022年モデル | 2021年モデル(発売時→価格改定後) | |||
Wi-Fi | Wi-Fi+Cellular | Wi-Fi | Wi-Fi+Cellular | |
11インチ/128GB | 12万4,800円 | 14万8,800円 | 9万4,800円 →11万7,800円 | 11万2,800円 →13万9,800円 |
11インチ/256GB | 14万800円 | 16万4,800円 | 10万6,800円 →13万2,800円 | 12万4,800円 →15万4,800円 |
11インチ/512GB | 17万2,800円 | 19万6,800円 | 13万800円 →16万2,800円 | 14万8,800円 →18万4,800円 |
11インチ/1TB | 23万6,800円 | 26万800円 | 17万8,800円 →22万2,800円 | 19万6,800円 →24万4,800円 |
11インチ/2TB | 30万800円 | 32万4,800円 | 22万6,800円 →28万2,800円 | 24万4,800円 →30万4,800円 |
12.9インチ/128GB | 17万2,800円 | 19万6,800円 | 12万9,800円 →15万9,800円 | 14万7,800円 →18万1,800円 |
12.9インチ/256GB | 18万8,800円 | 21万2,800円 | 14万1,800円 →17万4,800円 | 15万9,800円 →19万6,800円 |
12.9インチ/512GB | 22万800円 | 24万4,800円 | 16万5,800円 →20万4,800円 | 18万3,800円 →22万6,800円 |
12.9インチ/1TB | 28万4,800円 | 30万8,800円 | 21万3,800円 →26万4,800円 | 23万1,800円 →28万6,800円 |
12.9インチ/2TB | 34万8,800円 | 37万2,800円 | 26万1,800円 →32万4,800円 | 27万9,800円 →34万6,800円 |
iPad Proの2022年モデルはApple Pencilのポイント機能に対応
アクセサリについては従来と同じく、「Apple Pencil(第2世代)」(1万9,880円)、「12.9インチiPad Pro用Magic Keyboard」(5万3,800円)、「12.9インチiPad Pro用Smart Keyboard Folio」(3万2,800円)が用意されている。
Apple Pencil(第2世代)については、iPad Proの2022年モデルがポイント機能に対応したことにより、ディスプレイから12mm以内に近づけるとマーカーが表示されるようになった。本機能により描画される位置を正しく確認できるので、精緻なイラストを描く人には非常に重宝するはずだ。
12.9インチiPad Pro用Magic Keyboardについては特に新機能は追加されていない。しかし、iPadOS 16で「ステージマネージャ」と名付けられた新たなマルチタスキング機能が実装され、年内には最大6K解像度の外部ディスプレイへのフルサポートが追加される予定だ。
その際にはiPad上に最大4つ、外部ディスプレイに最大4つのアプリケーションを表示しながら作業できるようになる。両者を行き来して作業するためにはトラックパッドが重要となる。今回セットでキーボードを購入するのなら、トラックパッドを備えたiPad Pro用Magic Keyboardを購入することをおすすめする。
ただし、外部ディスプレイを接続せずに、単体で利用するのなら、Magic Keyboardよりは安価で、キーボードを背面に回して利用できるiPad Pro用Smart Keyboard Folioの購入を検討してほしい。
すべてのiPadにナイトモードなどの機能を実装してほしい
カメラ画質については広角カメラ、超広角カメラ、前面カメラのすべてで、iPhone譲りの自然な露出、発色で撮影できる。前面カメラで室内撮影した際には全体的にノイズが目立つが、ビデオ通話などであれば気にならないと思う。
個人的に残念なのはナイトモードが採用されていないこと。他社製Androidタブレットにはナイトモードが搭載され、コンピュテーショナルフォトグラフィーにより明るく、白飛び少なく夜景を撮影できる機種が存在する。M2チップを搭載するiPad Proで同じことができないとは到底思えない。
大画面のタブレットでの撮影は楽しいし、iPadを持っているときに訪れたシャッターチャンスを逃したくはない。カメラの性能と、処理能力的に可能なのであれば、すべてのiPadにナイトモードなどの機能を実装してほしいと強く望んでいる。
CPUとGPU性能についてはAppleの公式発表以上のスコア向上を確認
M2チップを搭載した12.9インチiPad Pro(第6世代)はどのくらい性能が向上したのだろうか? 今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark V9.1.2」
- CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5.4.4」
- マシンラーニングベンチマーク「Geekbench ML 0.5.2」
- 3Dベンチマーク「Basemark Metal Free 1.0.7」
- 3Dベンチマーク「3DMark Wild Life Extreme Unlimited mode」
- ストレージベンチマーク「JazzDiskBench」
- iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し
- YouTube動画を連続再生した際のバッテリ駆動時間
12.9インチiPad Pro(第6世代)はM2チップ、12.9インチiPad Pro(第5世代)はM1チップを搭載しており、M2はM1よりCPU性能が最大15%高速、GPU性能が最大35%高速、マシンラーニング性能が最大40%高速と謳われている。
CPU性能については、第6世代は第5世代に対して、AnTuTu BenchmarkのCPUで約129%、GeekbenchのMulti-Core Scoreで約120%のスコアを記録している。
続けてGPU性能については、第6世代は第5世代に対して、AnTuTu BenchmarkのGPUで約125%、GeekbenchのComputeで約153%、Basemark Metal FreeのOverallで約145%、3DMark Wild Life Extreme Unlimited modeのOverall Scoreで約137%のスコアとなっている。
最後にマシンラーニング性能については、第6世代は第5世代に対して、Geekbench MLのTensorFlow Lite CPU Scoreで約123%のスコアを記録している。
それぞれのベンチマークがM2、M1に対してどのぐらい最適化が施されているのかは不明だが、少なくともCPUとGPU性能についてはAppleの公式発表以上のベンチマークスコアの向上を確認できた。ただしあくまでもベンチマークソフトの結果なので、参考に留めてほしい。
なお、1つ気になる結果がある。ストレージベンチマーク「JazzDiskBench」で第6世代のほうが第5世代より、Sequential Writeが66%の速度に留まっているのだ。
また、iMovieで実時間5分の4K動画を書き出すというベンチマークでも、わずかではあるが第6世代が第5世代より遅いという結果となっている。第6世代は第5世代より書き込み速度の遅いストレージが採用され、iMovieでは最後のファイルの書き込みに時間がかかってしまった可能性がある。
バッテリ駆動時間については、第5世代のバッテリが経年劣化しているので、第6世代のみでベンチマークを実施した。ディスプレイの明るさ50%、音量50%という条件でYouTube動画を連続再生したところ、11時間2分35秒動作した。12.9型という大型ディスプレイを搭載したタブレットとしては優秀なバッテリ駆動時間と言えよう。
タブレットとして現在最高峰の性能、機能性を備えていることは間違いない
12.9インチiPad Pro(第6世代)がタブレットとしては高価であることは事実だ。しかし、最大メモリ容量を除いて、MacBook Air(M2, 2022)とほぼ同等のSoC、メモリ、ストレージを搭載可能で、Wi-Fi+Cellular版も用意されている。
最大限に真価を発揮するためにはApple PencilとMagic Keyboardを購入しなければならないので、トータルでは「MacBook Air(M2, 2022)」よりも高価な買い物となるが、そのかわりさまざまなスタイルで活用でき、広角&超広角カメラやLiDARスキャナが付いているというアドバンテージがある。iPad Proの2022年モデルは、タブレットとして現在最高峰の性能、機能性を備えていることは間違いない。