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第12世代Core搭載でビデオカードも搭載できる小型ベアボーン「NUC 12 Extreme Kit」

NUC 12 Extreme Kit

 開発コードネーム「Dragon Canyon」こと「NUC 12 Extreme Kit」は、ビデオカードを搭載可能なNUCの最新モデルで、CPUに第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake-S)を採用している。

 このたび、NUC 12 Extreme Kitの上位モデルにして「Core i9-12900」を搭載する「NUC12DCMi9」を借用する機会が得られたので、GeForce RTX 3050搭載ビデオカードを組み込んでテストしてみた。

Alder Lake-Sベースの16コア24スレッドCPU「Core i9-12900」を搭載

 NUC 12 Extreme Kitは、2021年に発売されたNUC 11 Extreme Kit (Beast Canyon)の後継となるベアボーンキットにして、ビデオカードを搭載可能なNUCの最新モデルだ。CPUにデスクトップ向け第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake-S)のCore i9またはCore i7を採用しており、今回テストする「NUC12DCMi9」は、16コア24スレッドCPU「Core i9-12900」を搭載している。

 ベアボーンキットであるNUC 12 Extreme Kitの利用には最低限メモリ・SSD・OSが必要で、オプションとして12インチ(304.8mm)までのビデオカードを搭載できる。対応メモリはDDR4 SO-DIMM(2枚まで)で、SSDはM.2型を最大3基まで搭載可能。筐体サイズは120×189×357mm(幅×高さ×奥行)。

NUC 12 Extreme Kit
Core i9-12900KのCPU-Z実行画面
【表1】NUC 12 Extreme Kitのスペック
型番NUC12DCMi9NUC12DCMi7
CPUCore i9-12900Core i7-12700
コア数/スレッド数16コア24スレッド12コア20スレッド
Pコア88
Eコア84
内蔵GPUIntel UHD Graphics 770
外付けGPU増設可能 (PCIe 5.0 x16接続、304.8mm長、2スロットサイズまで)
メモリスロットDDR4 SO-DIMM ×2スロット (DDR4-3200、最大64GBまで)
ストレージM.2スロット(M.2 2280、PCIe 4.0 x4)、M.2スロット×2 (M.2 2280/2242、PCIe 4.0 x4)
インターフェイス(前面)SDXCカードリーダー(UHS-II対応)、USB 3.2 Gen 2 Type-A、USB 3.2 Gen 2 Type-C、3.5mmコンボジャック
インターフェイス(背面)Thunderbolt 4(×2基)、USB 3.2 Gen 2 Type A(×6基)、2.5GbE、10GbE、HDMI 2.0b
無線機能Wi-Fi 6E + Bluetooth 5.2 (Intel AX211)
筐体サイズ120×189×357mm (幅×高さ×奥行)

筐体のデザインはNUC 11 Extreme Kitから流用

 NUC 12 Extreme Kitの筐体はNUC 11 Extreme Kitのものを流用しており、フロントパネルにドクロマークが浮かび上がるLEDイルミネーション機能なども引き続き採用。LEDやファンコントロールなどの制御はユーティリティソフト「Intel NUC Software Studio」で行なう。

 前面パネル下部にはSDXCカードスロットやUSB 3.2 Gen2が配置されており、背面には2基のThunderbolt 4のほか、10GbEや2.5GbE、USB 3.2 Gen 2などのインターフェイスを備えている。

前面。ドクロマークが浮かぶLEDイルミネーションパネルを装備している
前面下部に配置された前面パネルインターフェイス
背面
バックパネルインターフェイス。Thunderbolt 4や10GbEを備えている
左側面。メッシュパネルで通気性を確保している
右側面。こちらもにもメッシュパネルを採用している
天板。3基の排気ファンのために通気口が設けられている
底面。左右にLEDライティングバーが配置されている。中央部のカバーは前世代のM.2スロット用で、その位置にスロットの無いNUC 12 Extreme Kitでは機能しない
前面パネルと底面にRGB LEDイルミネーションを搭載
RGB LEDはIntel NUC Software Studioでコントロールできる

 ケース内部には、背面のパネルを取り外すことでアクセス可能となり、両側面のメッシュパネルを取り外せるほか、冷却ファンを備える天板は右側面のヒンジを軸に開閉する。

 NUC 12 Extreme Kitの内部には、CPUをはじめとする主要パーツを集約した拡張カード型の「Compute Element」と、Compute Elementとビデオカード接続用の拡張スロットを備えたベースボードが内蔵されている。以前のモデルではベースボードにM.2スロットが用意されていたが、NUC 12 Extreme KitではCompute Elementに集約された。

 Compute Elementの冷却ファンはダクトで覆われており、このダクトによってケース背面から吸気された空気でCPUを冷却して、排気をケース内に放出する。NUC 12 Extreme Kitは、天板に配置した3基の冷却ファンで排気を行なうことで、両サイドパネルの通気口から空気を取り込むというエアフロー設計となっており、Compute Elementのダクトはビデオカードを搭載した場合でもCPUを効果的に冷却するためのものだ。

ケース背面パネルを取り外すと、両サイドパネルが取り外せるようになる
天板は右側面のヒンジを軸にドア状に開閉する。3基の冷却ファンは排気ファンで、ケース両側面のメッシュパネルから空気を取り込んで天板へと排気する
ケース内部。カード状のCompute Elementと、それを接続するベースボード、電源ユニットが見える
ベースボードのPCIe 5.0 x16スロット。304.8mm長までのビデオカードを搭載できる
電源ユニット。FSP製で出力容量は650W
ビデオカード接続用のPCIe補助電源。6+2ピンコネクタ2つと、8ピンコネクタ1つが用意されている
Compute Elementには背面から空気を取り込むためのダクトが配置されている
ダクトは拡張スロットに固定されており着脱可能

 NUC 12 Extreme KitのCompute Elementは拡張カードの形状をとっているが、メモリやSSDを取り付けるためのスロットへのアクセスは本体に取り付けたままで行える。むしろ、Compute Elementには複数のケーブルが接続されており着脱は容易ではないので、特別な事情がない限りはベースボードからCompute Elementを取り外すべきではない。

 Compute Elementは天板側の両端にカバー固定用のねじが配置されており、これを緩めて外せば冷却ファンごとカバーが外れ、メモリスロットとM.2スロットにアクセスできる。2本のM.2スロットはいずれもPCIe 4.0 x4接続が可能だが、CPUソケットに近い側のスロットはCPUに直結されているため、6Gbps SATA接続のM.2 SSDは利用できない。

 Compute Elementの裏面側にはM.2スロットが配置されており、SSD用ヒートシンクとして機能するバックパネルの一部を取り外すと、M.2 2280に対応したM.2スロットにアクセスできる。このスロットはチップセット接続であるため、インターフェイスはPCIe 4.0 x4または6Gbps SATAが利用できる。

ダクトを取り外したCompute Element。メモリやSSD用のスロットはこのユニットに搭載されている
カバー上部に固定ねじが設けられており、これを外すことでCompute Elementの内部にアクセスできる
表面側のカバーを取り外したCompute Element。DDR4 SO-DIMMスロットとM.2スロットが2本ずつ用意されている
取り外したカバー側。冷却ファンとM.2 SSD冷却用ヒートシンクと一体になっている
2本のDDR4 SO-DIMMスロットを搭載。DDR4-3200動作に対応しており、最大64GB(32GB×2)までのメモリを搭載可能
2本のM.2スロット。CPUソケットに近い側(写真左側)はCPU直結のPCIe 4.0 x4専用スロットで、反対側はチップセット接続なのでPCIe 4.0 x4と6Gbps SATAに対応している
Compute Elementの裏面はバックプレートで覆われているが、一部はM.2 SSD用ヒートシンクとなっている
バックプレートの一部を取り外すとアクセスできるM.2スロット。チップセット接続なのでPCIe 4.0 x4と6Gbps SATAが利用できる

GeForce RTX 3050を搭載してベンチマークテストを実施

 今回は、NUC 12 Extreme KitにGeForce RTX 3050を搭載したビデオカード「GIGABYTE GeForce RTX 3050 EAGLE 8G」を組み込んでベンチマークテストを実行する。メモリにはG.SkillのDDR4-3200動作の16GBメモリ2枚組「F4-3200C22D-32GRS」、SSDにはSamsung 980 PROの500GBモデル「MZ-V8P500B」を搭載している。

 CPUのパフォーマンスに影響を与える電力リミットについては、今回借用したNUC 12 Extreme Kitでは「PL1=65W、PL2=221W、Tau=28秒」に設定されていたので、この設定のままテストを実施している。

GeForce RTX 3050搭載ビデオカード「GIGABYTE GeForce RTX 3050 EAGLE 8G」
GIGABYTE GeForce RTX 3050 EAGLE 8GをNUC 12 Extreme Kitに取り付けたところ
メモリスロットに取り付けたG.Skill製のDDR4-3200メモリ「F4-3200C22D-32GRS」
PCIe 4.0 SSDであるSamsung SSD 980 PROは、CPU直結のM.2スロットに搭載した
【表2】テスト環境
CPUCore i9-12900
CPU電力リミットPL1=65W、PL2=221W、Tau=28秒
GPUGIGABYTE GeForce RTX 3050 EAGLE 8G
メモリ16GB×2 DDR4-3200 (2ch、22-22-22-52、1.2V)
ストレージSamsung SSD 980 PRO 500GB (PCIe 4.0 x4)
グラフィックスドライバGame Ready Driver 511.79 (30.0.15.1179)
Resizable BAR無効
OSWindows 11 Pro 21H2 (build 22000.527、VBS有効)
電源プランバランス
モニタリングソフトHWiNFO64 Pro v7.20
ワットチェッカーラトックシステム RS-BTWATTCH2
室温約24℃

 まずは、基本的なベンチマークテストとして「CINEBENCH R23」、「3DMark」、「Blender Benchmark」、「PCMark 10」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「CrystalDiskMark」を実行した結果をまとめて紹介する。

 NUC12DCMi9が搭載するCore i9-12900Kは、CINEBENCH R23 Single CoreのようにCPU使用率が低い条件や、3DMark CPU Profileのように短時間で完了するベンチマークテストでは素晴らしいスコアを記録している一方、CINEBENCH R23のMulti CoreやBlender Benchmarkのように、長時間にわたってCPU使用率が100%に達するような条件では、Alder Lake-Sベースの16コア24スレッドCPUとしてはやや物足りないパフォーマンスとなっている。

 これについては後ほどモニタリングデータを確認しながら解説するが、長時間のブースト動作ではCPU消費電力が65Wに制限されることが影響している。省スペースPCとしては十分に優秀といえるCPU性能を発揮してはいるが、高性能マザーボードとの組み合わせで常に最大ブースト動作を維持したCore i9-12900が発揮するパフォーマンスを得られる訳ではない。

 ゲーム系ベンチマークでのパフォーマンスは搭載したビデオカードの性能に左右されることになるが、GeForce RTX 3050を搭載した今回の条件では、最高品質設定を適用したファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークにて、フルHD解像度でスコア「16,781」を記録し、最高評価の「非常に快適」を獲得している。

 この結果をはじめ、3DMarkのベンチマークスコアについても、今回と同じビデオカードを用いたGeForce RTX 3050レビュー時の結果と遜色ないものであり、NUC12DCMi9のCPU性能や換気能力がGeForce RTX 3050の能力を引き出すのに十分以上であることが伺える。

【グラフ01】CINEBENCH R23
【グラフ02】3DMark v2.22.7336「CPU Profile」
【グラフ03】Blender Benchmark (v2.93.1)「シーン別レンダリング時間」
【グラフ04】Blender Benchmark (v2.93.1)「合計レンダリング時間」
【グラフ05】PCMark 10 Extended (v2.1.2535)
【グラフ06】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
【グラフ07】3DMark v2.22.7336「Time Spy」
【グラフ08】3DMark v2.22.7336「Fire Strike」
【グラフ09】3DMark v2.22.7336「Wild Life」
【グラフ10】3DMark v2.22.7336「Port Royal」
CrystalDiskMark 8.0.4

システムの消費電力とベンチマーク実行中のモニタリングデータ

 ベンチマーク実行中にワットチェッカーで計測したシステムの消費電力をまとめたものが以下のグラフだ。

 もっとも高い消費電力を記録したのはCINEBENCH R23のMulti Core実行中で、最大消費電力は305.1Wに達している。ただ、同テストの平均消費電力は126.6Wであり、10分を超えるテスト時間の大部分は130W弱の消費電力で動作していたようだ。

 一方、GPU消費電力の比率が高まる3DMarkなどのゲームベンチマークでは、平均200W前後、最大でも300Wを超えない程度の消費電力を記録している。TGP 130WのGeForce RTX 3050では電源容量的にもだいぶ余裕のある消費電力となっており、消費電力的にはより高性能なGPUを搭載できる余地があることを確認できる。

システムの消費電力

 モニタリングソフトを使って計測した、「CINEBENCH R23 Multi Core」と「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」実行中の温度や消費電力をまとめたものが以下のグラフ。

 CINEBENCH R23実行中のCPU温度は平均すると73.8℃だが、最高温度はサーマルスロットリングが作動する100℃に達している。一方でCPU消費電力については平均67.1Wで、最大189.4Wとなっており、テスト中の大部分はPL1の65W制限が作動していると伺える一方で、PL2の最大値である221Wには達していない。

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク実行中の温度は、CPUが平均70.3℃で最高89℃、GPUは平均65.7℃で最高71.2℃と、いずれもサーマルスロットリングの作動温度には達しなかった。消費電力はCPUが平均51.7Wで最大91.1W、GPUは平均119.7Wで最大129.7Wだった。

ベンチマークテスト実行中のCPU/GPU温度
ベンチマークテスト実行中のCPU/GPU消費電力

 CINEBENCH R23実行中のモニタリングデータを推移グラフでみてみると、テスト開始直後にCPU温度が100℃に達することでサーマルスロットリングが作動しており、ブースト動作は維持しているもののクロックや消費電力の低下が生じている。

 その後は消費電力がPL1の65Wに制限されることでCPU温度も70℃台に低下し、動作クロックについてもPコアが2.8GHz弱、Eコアは2.2GHz前後まで低下している。なお、この65W動作中のCPUクロックはベースクロック(Pコア=2.4GHz、Eコア=1.8GHz)を上回っている。

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク実行中のモニタリングデータでは、CPU温度は負荷の変化に応じてある程度変動している一方、GPU温度はテスト後半になると70℃前後で安定している。

 ケースの換気能力が不足している場合、ケース内温度の上昇に伴ってCPUやGPUの温度が上昇し続ける様子がみられるものだが、それが見られないということは、NUC12DCMi9の換気能力がCore i9-12900とGeForce RTX 3050を冷却するのに十分なものであるということだ。

CINEBENCH R23実行中のモニタリングデータ
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク実行中のモニタリングデータ

実際のゲームでパフォーマンスを確認

 最後に、実際のゲームでのパフォーマンスを測定してみたので、その結果を紹介しよう。テストしたゲームは「エルデンリング」、「バトルフィールド 2042」、「Forza Horizon 5」の3タイトル。

エルデンリング

 エルデンリングでは、フルHD解像度で3種類の描画設定プリセットをテストした。なお、エルデンリングは上限フレームレートが60fpsとなっている。

 描画設定「中」と「高」では平均フレームレートが上限の60fpsに張り付いているが、「最高」では56.6fpsとややフレームレートの低下がみられる。プレイするうえで支障が出るほどではないが、フルHD/最高画質で60fpsを常時維持したいのであれば、GeForce RTX 3050より上位のGPUを組み込む必要がある。

【グラフ16】エルデンリング (v1.02.3)

バトルフィールド 2042

 バトルフィールド 2042でも、フルHD解像度で3種類の描画設定プリセットをテストした。レイトレーシングやDLSSについては無効化している。

 描画設定「ノーマル」から「最高」までのすべての条件で平均フレームレートが60fpsを超えている。GeForce RTX 3050を組み込んだNUC12DCMi9のパフォーマンスは、フルHD解像度であればバトルフィールド 2042をプレイするのに十分なものと言える。

【グラフ17】バトルフィールド 2042 (v0.3.2)

Forza Horizon 5

 Forza Horizon 5ではゲーム内ベンチマークモードを使って、フルHD解像度で4種類の描画設定プリセットをテストした。

 描画設定「最高」以下では平均60fps以上のフレームレートを記録しており、NUC12DCMi9とGeForce RTX 3050の組み合わせは、なかなかの高画質設定でForza Horizon 5を快適にプレイできるパフォーマンスを発揮している。

【グラフ18】Forza Horizon 5 (v1.435.64.0.HV)

手軽に小型ゲーミングPCが構築できるベアボーンキット搭載可能なビデオカードは前世代の互換性リストなども参考に

 Intel NUC 12 Extreme Kitは、CPUがデスクトップ向けのAlder Lake-Sになったことで、特にシングルスレッド性能が大きく向上している。電力や温度のリミットが作動する高CPU負荷での運用に適した設計ではないが、CPU負荷的には中程度の負荷となるゲーミングシーンにおいては、最新世代CPUの優れたパフォーマンスを発揮できる。

 今回は上位モデルのNUC12DCMi9にGeForce RTX 3050を搭載してテストしたが、GeForce RTX 3060 TiやGeForce RTX 3070クラスのGPUを搭載すれば、よりバランスの良い高性能ゲーミングPCを構築することができるだろう。

 搭載可能なビデオカードを選ぶことにさえ気を付ければ、NUC 12 Extreme Kitは手軽に小型ゲーミングPCを構築できるベアボーンキットだ。記事執筆時点ではNUC 12 Extreme Kitの互換性リストは公開されていないので、組み込むビデオカードを選ぶさいは、同じ筐体設計を採用している前世代モデルNUC 11 Extreme Kitの互換性リストを参考にすると良いだろう。