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ダイヤル付きの16型クリエイティブノート。ASUS Zenbook Pro 16X OLEDをレビュー
2022年8月6日 07:09
ASUSから、2022年モデルのZenBook最新シリーズが発表された。「Zenbook Pro 16X OLED(UX7602)」は、ラインナップ中でもっとも大きな16型サイズの有機ELディスプレイを搭載する薄型ノートPCだ。
クリエイティブワークを行なうクリエイターを強く意識した製品で、高性能な14コアCPUとGPUを搭載するのに加えて、キーボードがせり上がる「ASUS AAS Ultra」やカスタマイズ可能な操作ダイヤル「ASUS Dial」、迫力の6スピーカーなど、独自の付加価値もたっぷりと上乗せした贅沢な製品となっている。実機を入手したのでレビューしよう。
パワフルな基本スペック
CPUには、Core i7-12700Hを採用。高性能ノートPC向け第12世代Coreプロセッサ(開発コードネーム : Alder Lake-H)の主力モデルで、最新世代のクリエイターPC/ゲーミングPCで定番的に採用されているCPUだ。
Alder Lakeシリーズでは、性能優先のPコアと電力効率優先のEコアを最適に使い分けるハイブリッド構造を採用。前世代の第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake-H)から比べても大幅に性能が底上げされている。
GPUにはGeForce RTX 3060 Laptop(6GB)を搭載している。現行のゲームタイトルをフルHDで高画質でプレイできる描画性能を備え、クリエイティブアプリでも、レンダリング、プレビュー、エンコード、超解像処理など、さまざまな処理を高速に行なえる。
メモリは、LPDDR5-5200を32GB、ストレージはPCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDを1TB搭載する。速度的には申し分ないが、容量的には意見が分かれるところだろう。
特にストレージ容量は、外付けで対処できることを考慮しても最低ライン。入門モデルやコストパフォーマンス重視のモデルではなく、高付加価値モデルだけにもっと贅沢な容量にしたほうが訴求力は上がるだろう。
【表1】ZenBook 16X OLED(UX7602) | |
---|---|
CPU | Core i7-12700H |
CPUコア/スレッド数 | 14コア20スレッド (6Pコア12スレッド+8Eコア8スレッド) |
CPU周波数 | Pコア : 最大4.7GHz Eコア : 最大3.5GHz |
メモリ | 32GB(LPDDR5-5200) |
1TB SSD(PCIe 4.0 x4) | |
グラフィックス機能 | GeForce RTX 3060 Laptop(6GB) Iris Xe Graphics eligible(CPU内蔵) |
ディスプレイ | 16型有機EL光沢ディスプレイ、10点マルチタッチ、ASUS Pen対応 |
表示解像度 | 3,840×2,400ドット |
サウンド | 6スピーカー(1W×4、2W×2)、クアッドアレイマイク |
インターフェイス | HDMI、SDXCカードリーダ、Thunderbolt 4×2、USB 3.1、ヘッドフォン/マイク兼用 |
通信機能 | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
カメラ | 207万画素(Windows Hello対応IRカメラ内蔵) |
バッテリ駆動時間 | 未公開 |
ACアダプタ | 200W、独自端子 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 357×253×16.9~20.9mm |
重量 | 約2.4kg |
OS | Windows 11 Pro |
高級感たっぷりのスリムなメタル筐体
高級感のある筐体は、CNC(コンピュータ制御)加工されたアルミニウム合金を利用。手に持ってみると、ガッシリとした剛性と重厚さを強く感じる。具体的なサイズは、357×253×16.9~20.9mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約2.4kgだ。
天板にはZenBookシリーズの新しいシンボルを配置。そのシンボルを中心として同心円のヘアライン加工がされている。このシンボルには、「向上」「思いやり」「喜び」という3つの信念が込められているという。
キーボードがせり上がる「AAS Ultra」
Zenbook Pro 16X OLEDはキーボードがせり上がる「AAS(Active Aerodynamic System) Ultra」機構を採用している。トップカバーを開くと連動してキーボードの奥側が持ち上がり、7度の傾斜が付くとともに、エアフロー効率を向上させる。
キーボードが持ち上がった内側には冷却ファンがあり、3方向(左右奥)から効率的にフレッシュエアーを取り込むことができ、AAS Ultraがない場合と比べて、エアフローは30%増加するという。
このようなギミックは一見すると強度的な不安を感じさせるが、実際に触ってみるとその不安はまったくない。キーボードベースやそれを支える金属フレームはきわめて剛性が高くて堅牢。浮いている部分を掴んで持っても、たわんだり歪むような感触がいっさいないのは見事だ。
Thunderbolt 4を2基搭載
インターフェイスは先進的な内容だ。左側面にThunderbolt 4対応Type-Cを2基搭載している。それぞれ最大40Gbpsのデータ転送、ディスプレイ出力(DisplayPort Alt Mode)、最大100WのUSB PDによるPCの充電に対応している。レノボ製のUSB PD対応ACアダプタ(最大65W)を使ってみたところ、アイドル状態では低速ながら充電はできていた。
harman/kardon認証のオーディオシステムによる低音の効いた豊かなサウンドも見逃せない。スピーカーは2ツイーター+4ウーファーの6ユニット構成。音量を増幅するDSPスマートアンプも搭載しており、大きな音圧も歪みなく再生できる。臨場感のあるサラウンドサウンドを実現するDolby ATMOSにも対応している。
ASUS Dialの操作感は課題あり
タッチパッドの脇には小さな円形パッドの中央にボタンを配置した「ASUS Dial」を備える。触れるとメニューが表示され、パッドの円周に沿ってなぞる操作でシステムの音量や画面の明るさの変更ができる。
また、登録済みのアプリについては独自の操作項目が利用可能。標準では、Photoshopでのブラシのサイズや硬さの変更、Premiere Proの時間軸調節(タイムラインの移動)、Lightroom Classicの現像パラメータの設定などがプリセットされているが、アプリの追加や操作の追加も可能だ。
操作感は率直に言うと微妙である。Premiere Proの時間軸の移動を左手でできるのは便利ではあるのだが、それも限定的だ。微調節しやすい設定だと早く進めたい場合にまどろっこしく感じるし、ダイヤル操作に比べて指の移動量が案外大きく、操作しているうちに疲れてくる。
これが物理ダイヤルならばダイヤルに指をあずけてしまえるし、ひとさし指だけでなく親指なども使って回せるのでこのような疲労感は感じない。物理ダイヤルとの間には「越えられない壁」があることを実感してしまった。
また、Premiere Proではほかに「タイムラインズーム」や「オーディオトラックの縦幅変更」が標準で割り当てられているのだが、試用段階では少し動かしただけで最小値になってしまい、逆方向への調節ができなかった。おそらくそのうち改善されるだろうが、こういう点も印象が悪い。
左手操作で編集作業を効率化したければ、物理ダイヤルを持つ外付けのコントローラも市販されており、訴求力としては弱い。この機能の開発にかけているコストをメモリやストレージの充実に振り向けてほしいと感じてしまう。
ハイスペック16型有機ELディスプレイを搭載
画面としては16型の有機ELディスプレイを搭載する。表示解像度はWQUXGA(3,840×2,400ドット)の高解像度に対応、画素密度約283ppiと近くで見てもドット感のない精細な表示だ。
色域はDCI-P3比100%(sRGB比133%)、最大輝度550cd/平方m、黒色輝度0.0005cd/平方m、コントラスト比100万:1、応答速度0.2msという高性能を持つ。
また、HDRコンテンツを高水準の品質で表示できることを示すVESAの「DisplayHDR 500 True Black」に準拠。カラーサイエンス大手のPANTONE、CalMANの認証を取得しており、工場出荷状態で「正しい色」を表示できることが担保されている。
スペクトルの調整によってブルーライトを最大で約70%低減することが可能で、こちらについてはドイツの認証機関であるテュフラインランド認証を取得しているという。
有機ELディスプレイの焼き付き対策も万全
性能面で優位の大きい有機ELディスプレイだが、弱点として「焼き付きやすい」ことが指摘されているが、その対策も万全だ。
この焼き付きは、素子の劣化による光量低下が原因。長時間同じ明るい色を表示させると劣化しやすいため、本製品はWindows 11の設定で「ダークモード」および「タスクバーを隠す」を標準にしている。
また、特別なスクリーンセーバーや表示ドットをずらす「ドットシフト」機能を用意するなど、さまざまな予防策を用意している。さらにSamsungの焼き付き防止テクノロジを導入。これは、老朽化した素子を検出し、ピンポイントでその素子に対しての電流を増加させることで低下した光量を補い、視覚色を回復する仕組みだ。
クリエイティブ適性の高いパフォーマンスを実証
ベンチマークテストの結果を掲載する。比較対象としては、Core i9-9900Kを搭載した自作PCのスコアを掲載している。ファンの動作モードは「パフォーマンス」に設定している。
【表2】検証機のスペック | ||
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ZenBook 16X OLED(UX7602) | 旧世代自作PC | |
CPU | Core i7-12700H | Core i9-9900K |
CPUコア/スレッド数 | 14コア20スレッド (6Pコア12スレッド+8Eコア8スレッド) | 8コア16スレッド |
CPU周波数 | Pコア : 最大4.7GHz Eコア : 最大3.5GHz | 3.6G~5GHz |
メモリ | 32GB(LPDDR5-5200) | 16GB(8GB×2 、PC4-21300) |
ストレージ | 1TB SSD(PCIe 4.0 x4) | Intel 760p(512GB、PCIe 3.0 x4) |
グラフィックス機能 | GeForce RTX 3060 Laptop(6GB) Intel Iris Xe Graphics eligible(CPU内蔵) | Intel HD Graphics 630(CPU内蔵) |
OS | Windows 11 Pro | Windows 11 Pro |
CPUの馬力がストレートにスコアに反映されるCinebench R23のCPUスコアでは、3世代前とは言えデスクトップPC向けのフラグシップを圧倒しており、第12世代Coreプロセッサの優秀さが分かる。そして、本製品がその優秀さをしっかり引き出せていることも実証されている。
実際のアプリを使ってPCの用途をシミュレートするPCMark 10でもEssentials(日常操作)、Productivity(オフィス作業)、Digital Content Creation(デジタルコンテンツ制作)、いずれも優秀でスキがない。比較対象と比べるとクリエイティブアプリを利用したコンテンツ制作をシミュレートするDigital Content Creationのスコアで特に大差を付けている。
3DMarkのスコアはご覧の通り。GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)搭載機として平均よりわずかに低めだが、薄型のフォームファクタとしては健闘している。1,920×1,080ドットの解像度でゲームを高画質でプレイできるスコアだ。
Adobeのクリエイティブアプリを利用したUL Procyon Benchmark Suitesのスコアもまた優秀だ。特に、Premiere Proを利用してプロジェクトの書き出しを行なうVideo Editing(動画編集)のスコアは比較対象を大きく上回っており、クリエイティブ適性の高さが伺える。
放熱設計も優秀、静音動作も可能
FINAL FANTASY XIV : 暁のフィナーレベンチマークのみは、ファンの動作モードを3種類テストしてみた。
スタンダードではパフォーマンスとそれほど差があるわけではなく、ピークの動作音からするともっともバランスが良いのはスタンダードだろう。
もっとも、パフォーマンスモードでもそれほどノイジーな印象はなく、パフォーマンスモードでの常用も現実的に思える。ウィスパーモードではかなり性能が落ちるが、高負荷時の動作音もしっかり抑えられるので、静かに使いたい時には良いはずだ。
最先端の技術が惜しみなく投入されたプレミアムなノートPC
ASUS Storeでの直販価格は44万9,800円。さすがに高価ではあるが、最先端の技術が惜しみなく投入された盛りだくさんの内容だけに理解できるところだ。
ただ、これだけのPCを購入したならば、できるだけ長く使いたい。CPUとGPUの性能は3年先でも通用するだろうし、画面やサウンドなどプレミアムな装備も色褪せないだろう。しかし、メモリとストレージの容量はどうだろうか。リアルクリエイターに訴求するためにはそのあたりが課題だろう。
なお、本製品は、通常の1年保証に加えて、購入後30日以内のユーザー登録で加入できる拡張サービス「ASUSあんしん保証」の対象製品だ。1年間の保証期間内は、落下や水没、ユーザーの分解など、いかなる理由で故障したとしても、本来かかる修理費用の20%の負担で修理が受けられるという手厚い内容だけに忘れずに登録しておきたい。
さらに、保証期間を3年(法人向けは最長5年)に延長し、故障時の自己負担額も0円になる有償サービス「ASUSのあんしん保証プレミアム」も用意されているので、長期で安心して使いたい方はこちらにも加入を検討するとよいだろう。