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もう変態とは言わせない。2画面ノートPC「ASUS Zenbook Pro 14 Duo OLED」実機レビュー
2022年8月8日 06:25
ASUS JAPANは、メインの14.5型OLEDに加え、キーボード奥に12.7型液晶を積んだデュアルディスプレイ搭載ノートPC「Zenbook Pro 14 Duo OLED(UX8402)」を8月4日に発表、同日より販売開始した。
本製品はデュアルディスプレイ、76Whの大容量バッテリを搭載しつつ、重量は約1.7~1.75kgと「比較的」軽量に抑えられている。またディスプレイはメイン、セカンドともにリフレッシュレートが120Hzで、上位モデルは「GeForce RTX 3050 Ti」を内蔵しており、ゲーム用途にも活用可能だ。今回本製品の製品版を借用したので実機レビューをお届けしよう。
ディスクリートGPUの有無で上位/下位モデルを用意
Zenbook Pro 14 Duo OLEDはOSにWindows 11 Home、CPUに第12世代(Alder Lake)のCore i9-12900HまたはCore i7-12700Hを採用。メモリは32GBまたは16GB(LPDDR5-4800)、ストレージは1TBまたは512GBのSSD(PCIe 4.0 x4接続)を搭載している。
モデルは、Core i9-12900H/メモリ32GB/SSD 1TBの「UX8402ZE-M3034W」(直販価格39万9,800円)、Core i7-12700H/メモリ16GB/SSD 512GBの「UX8402ZA-M3033W」(同32万9,800円)の2種類が用意されており、ディスクリートGPU「GeForce RTX 3050 Ti Laptop」は上位モデルのみに搭載されている。
これら以外のスペックは基本的に共通。ディスプレイは14.5型OLED(2,880×1,800ドット)、12.7型液晶(2,880×864ドット)を搭載。ディスプレイ上部には92万画素IR(赤外線)カメラが内蔵。オーディオ機能はステレオスピーカー(1W×2)、クアッドアレイマイクが搭載されている。
インターフェイスはThunderbolt 4×2、USB 3.1、HDMI、microSDカードスロット、3.5mmコンボジャックを用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.1をサポートしている。
本体サイズは約323.5×224.7×17.9~19.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は上位モデルが約1.75kg、下位モデルが約1.7kg。76Whのリチウムポリマーバッテリが内蔵されており、バッテリ駆動時間は上位モデルが約5.1時間、下位モデルが約5.5時間だ。
スペックで最も留意すべき点はディスクリートGPUの有無。一般的な用途が中心であれば下位モデルでもよいが、3Dゲームをプレイしたり、GPU支援を得られるクリエイティブ系アプリを頻繁に利用するのであれば上位モデルを購入するべきだ。
Zenbook Pro 14 Duo UX8402ZE | Zenbook Pro 14 Duo UX8402ZA | |
---|---|---|
型番 | UX8402ZE-M3034W | UX8402ZA-M3033W |
OS | Windows 11 Home | |
CPU | Core i9-12900H(14コア[Pコア×6、Eコア×8]、20スレッド、最大5GHz、45W) | Core i7-12700H(14コア[Pコア×6、Eコア×8]、20スレッド、最大4.7GHz、45W) |
GPU | GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU Intel Iris Xe Graphics(1.45GHz) | Intel Iris Xe Graphics(1.40GHz) |
メモリ | LPDDR5-4800 32GB | LPDDR5-4800 16GB |
ストレージ | 1TB PCIe 4.0 x4 SSD | 512GB PCIe 4.0 x4 SSD |
ディスプレイ | メイン:14.5型OLED(2,880×1,800ドット、234ppi、16:10、550cd/平方m、1,000,000:1、120Hz、0.2ms、DCI-P3 100%、VESA DisplayHDR True Black 500認証、PANTONE認証、グレア、ペン対応、タッチ対応) サブ:12.7型液晶(2,880×864ドット、237ppi、500cd/平方m、120Hz、DCI-P3 100%、ノングレア、ペン対応、タッチ対応) | |
ワイヤレス通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 | |
WWAN | - | |
インターフェイス | Thunderbolt 4×2、USB 3.1、HDMI、microSDカードスロット、3.5mmコンボジャック | |
カメラ | 92万画素IR(赤外線)カメラ | |
サウンド | ステレオスピーカー(1W×2)、クアッドアレイマイク | |
バッテリ容量 | 76Wh | |
バッテリ駆動時間 | 約5.1時間(JEITA2.0準拠) | 約5.5時間(JEITA2.0準拠) |
バッテリ充電時間 | 約1.8時間 | |
本体サイズ | 約323.5×224.7×17.9~19.6mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 約1.75kg | 約1.7kg |
セキュリティ | Windows Hello対応顔認証カメラ | |
オフィスアプリ | WPS Office 2 Standard Edition (3製品共通ライセンス付) | |
同梱品 | ACアダプタ、電源ケーブル、専用スリーブ、ASUS Pen 2.0、スタンド、説明書類 | |
直販価格 | 39万9,800円 | 32万9,800円 |
高画質化が図られたメイン、セカンドディスプレイ
Zenbook Pro 14 Duo OLEDは前述の通り、メインディスプレイに14.5型OLED、「ScreenPad Plus」と名付けられているセカンドディスプレイに12.7型液晶が採用されている。輝度はメインが550cd/平方m、セカンドが500cd/平方mと違いはあるが、120Hzのリフレッシュレート、DCI-P3 100%の色域はスペック上は同じだ。
ただし、下の写真を見ていただければ分かる通り、実際の利用時にはそれぞれのディスプレイを見る角度が異なり、またメインが光沢、セカンドが非光沢と表面処理が違うため、発色の差は感じる。実際に使用しているとそれほど気にならないが、限りなく見え方を近づけたいのであれば、輝度や色味を調節するといいだろう。
ディスプレイの実際の色域をカラーキャリブレーション機器「iDisplay Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で計測したところ、下記のような結果となった。色域はどちらも「DCI-P3 100%」と謳われているが、実際には違いはある。セカンドも広色域ではあるが、色調整などの作業はメインで行なうことをおすすめする。
メインディスプレイ | セカンドディスプレイ | |
---|---|---|
sRGBカバー率 | 100.00% | 100.00% |
sRGB比 | 150.20% | 138.40% |
Adobe RGBカバー率 | 95.20% | 92.00% |
Adobe RGB比 | 111.30% | 102.60% |
DCI-P3カバー率 | 100.00% | 92.00% |
DCI-P3比 | 110.70% | 102.60% |
Zenbook Pro 14 Duo OLEDはメイン、セカンドディスプレイともに高画質化が図られているが、デュアルディスプレイとしての使い勝手も進化を続けている。新しいコントロールパネルとして「Illustrator」用が追加されたほか、コントロールセンターにカメラとマイクのオン/オフ機能も追加された。
コントロールパネルは「Photoshop」「Premiere」「After Effects」を含めて4本のAdobeアプリで利用可能になったわけだ。ダイヤルによるアナログ的な操作感はクリエイティブワークにおいて重宝するはずだ。
右側に配置されたタッチパッドのためにキーボードはやや窮屈
Zenbook Pro 14 Duo OLEDのキーボードはやや窮屈。キーピッチは実測17mm前後、キーストロークは実測1.5mm前後、文字キー(Fキー)の押圧力は実測0.53N前後。
キーボード面の剛性が高く、打鍵感は良好なのだが、14.5型ディスプレイを搭載するノートPCとしては、やはりキーピッチが狭いと言わざるを得ない。またホームポジションに指を置くと、両手が左側に寄ってしまうことにどうしても違和感があった。
個人的には、タッチパッドではなくキーボード中央にポインティングスティックを装備し、キーボードをフルサイズ化してほしいと考えている。
Fキー | Enterキー | Spaceキー | |
---|---|---|---|
Zenbook Pro Duo 14 OLED | 0.53N | 0.52N | 0.57N |
Zenbook 13 UX325EA | 0.53N | 0.5N | 0.51N |
13インチMacBook Air(2022) | 0.48N | 0.55N | 0.52N |
14インチMacBook Pro(2021) | 0.5N | 0.5N | 0.52N |
本製品の92万画素IR(赤外線)カメラの画質は良好。室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影できる。HDRをオンにしても、オフにしてもノイズは少なめだ。Web会議用途であれば実用上十分な画質を備えている。
CPU性能は十二分。ディスクリートGPUも欲しいところ
最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。今回借用しているのは、Core i7-12700H/Iris Xe Graphics/メモリ16GB/SSD 512GBという構成の下位モデルだ。
比較対象機種としてはCore i7-11800H(8コア/16スレッド、2.3~4.6GHz)/GeForce RTX 3050 Laptop/メモリ16GB/SSD512GBという構成の「DAIV 5P(2022年モデル)」を採用した。
第12世代(Alder Lake)と第11世代(Tiger Lake)の差、またディスクリートGPU搭載ノートPCとどのぐらい3D性能に差が出るのかという視点からベンチマーク結果をご覧いただきたい。
まずCPU性能については、Zenbook Pro 14 Duo OLEDはDAIV 5Pに対して、Cinebench R23で約1.72倍のスコアを記録した。冷却システムの差もあるだろうが、最終的にはコア数、スレッド数の差が大きく寄与した結果と言えよう。
一方、PCMark 10では総合スコアはほぼ同等。すべてのスコアをよく見ると、項目ごとに勝敗が大きく分かれており、たまたま総合スコアでは並んだという結果だ。
バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度50%という条件で「PCMark 10 Modern Office Battery Life」を実行したところ、311分(5時間11分)とカタログスペックと同様に5時間超えを記録した。バッテリ駆動時間としては、モバイル用途に活用できるスペックだ。
3Dグラフィックス性能については、今回のZenBook Pro 14 DuoがディスクリートGPUを搭載していないため、GeForce RTX 3050 Laptop GPUを搭載するDAIV 5Pに対して3DMarkで約38~56%のスコアに留まっている。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3でも約36%のスコアだ。やはり、3Dゲームをプレイするのなら、予算が許せばディスクリートGPUを搭載する上位モデルを選ぶべきだ。
ストレージ速度についてはPCIe 4.0 x4接続SSDを搭載するZenBook Pro 14 Duoが圧倒的なパフォーマンスを見せた。ただしDAIV 5Pもカスタマイズ購入時にPCIe 4.0 x4接続のSSDを選べることはお伝えしておこう。
実アプリでは興味深い結果となった。Lightroom ClassicではZenbook Pro 14 Duoが約57%、Premiere ProではDAIV 5Pが約65%の所要時間で処理を終えたのだ。Lightroom ClassicではCPU性能が優れるZenbook Pro 14 Duoが、Premiere Proでは3Dグラフィックス性能が優れるDAIV 5Pが高いパフォーマンスを発揮したことになる。
高負荷時の表面温度については、キーボード面で最大35.5℃、底面で34.4℃となった。Zenbook Pro 14 Duoには、エアフローを最大38%改善したと謳う「ASUS Active Aerodynamic System Ultra」、2基の高効率12Vファン、2本の8mmヒートパイプ、各コンポーネントの温度を検出するスマートセンサーなどによる冷却システム「ASUS IceCool Plusサーマルテクノロジー」が採用されている。本体の表面温度は比較的低く抑えられており、効率的に冷却されているようだ。
ディスプレイ1枚のノートPCでは物足りない方はぜひ試してほしい
ASUSのDuoシリーズには複数のラインナップがあるが、Zenbook Pro 14 Duo OLEDは重量が約1.7~1.75kgで、バッテリ駆動時間は5時間超えとモバイル可能なマシンとして仕上げられている。それでいて上位モデルであればGeForce RTX 3050 Tiを搭載しており、3Dゲームなどもプレイできるパフォーマンスを備えている。
発売直後は「変態ノートPC」と呼ばれることもあったDuoシリーズだが、ASUSが少しずつ改良を重ねて、ハードウェア的にもソフトウェア的にも完成度が高くなっている。
普段デュアルディスプレイ環境で作業していて、ノートPCのディスプレイ1枚では窮屈に感じている方は、ぜひZenbook Pro 14 Duo OLEDを試してみてほしい。ディスプレイを開くだけで2枚の画面を利用できる本製品は、一度使ったら手放せなくなるほどの魅力があるのだ。