Hothotレビュー

コスパ最高!ゲーム/エンタメ/クリエイティブまで1台でこなすオールラウンドな有機ELノートPC

Vivobook Pro 15X OLEDは、15.6型有機ELディスプレイを搭載したノートPCだ。ゲームやクリエイティブをカジュアルに楽しむ若者をターゲットとして意識し、コストパフォーマンスにも配慮した内容となっている。価格は19万9,800円

 ASUSのノートPCラインナップに新たに加わったVivobook Pro 15X OLED(K6501ZM)は、15.6型有機ELディスプレイを搭載したミドルクラスのノートPCだ。

 ゲームやクリエイティブをカジュアルに楽しむ若者をターゲットとして意識しており、外部GPUとしてGeForce RTX 3060 Laptop(6GB)を搭載するなどゲームもクリエイティブもしっかり楽しめるハイスペックを遊び心のあるデザインのあるボディに収めつつ、比較的リーズナブルな価格にまとめている。実機を入手したのでレビューしよう。

費用対効果を意識した基本スペック

 CPUには、Core i7-12650Hを採用する。第12世代Coreプロセッサの高性能ノートPC向けCPU(開発コードネーム=Alder Lake-H)としてはベーシックなモデルだ。

 最新ゲーミングPC/クリエイターPCで採用例が多い1つ上の12700HよりもEコアが4つ少ない10コア16スレッドという仕様となっている。パフォーマンスに大きく寄与するPコア部分はコア数、最大周波数ともに共通だけに差は差は少ないと思われるが、実際の性能は後ほど検証しよう。

CPUは、第12世代CoreプロセッサのHシリーズ(高性能のノートPC向け)の中ではベーシックなCore i7-12650Hを採用。6Pコア12スレッド+4Eコア4スレッドの合計10コア16スレッドという仕様だ
Core i7-12650Hの内蔵GPUは「Intel UHD Graphics」。演算処理を行なう実行エンジン(EU)は64基。Intel Iris Xe Graphics(Core i7-12700Hの場合は96基)より少なくなっている。外部GPUと内蔵GPUはNVIDIA Optimus Technologyにより最適に使い分けられ、高負荷な処理では外部GPUが利用されるので影響は最小限と思われる

 GPUにはNVIDIA GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)を搭載している。現行のゲームタイトルをフルHDで高画質でプレイできる描画性能を備えるほか、クリエイティブアプリでも、レンダリング、プレビュー、エンコード、超解像処理など、さまざまな処理を高速に行なえる。

GPUにはNVIDIA GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)を搭載している
最大グラフィックスパワーは125Wだ

 メモリは、DDR5-4800を16GB搭載する。ストレージはスペック表ではPCIe 3.0 x2対応のSSDとされているが、評価機ではPCIe 3.0 x4対応のIntel 670pが搭載されていた。このIntel 670pもPCIe SSDとしてはエントリークラスのモデルであり、このあたりにコストパフォーマンスも意識したモデルであることが伺える。

ストレージは、512GBのPCIe 3.0 x2対応SSDとされているが、評価機ではPCIe 3.0 x4対応のIntel 670pが搭載されていた
CrystalDiskMark(ひよひよ氏・作)のスコア。Intel 670pの公称値に近いスコアであり、PCIe 3.0 x4で接続されているようである
【表1】Vivobook Pro 15X OLEDのスペック
型番K6501ZM-MA052W
CPUCore i7-12650H
CPUコア/スレッド数10コア16スレッド
(6Pコア12スレッド+4Eコア4スレッド)
CPU周波数Pコア:最大4.7GHz
Eコア:最大3.5GHz
メモリ16GB(DDR5-4800)
ストレージ512GB SSD(PCIe 3.0 x2)
グラフィックス機能GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)
Intel UHD Graphics(CPU内蔵)
ディスプレイ15.6インチ有機ELディスプレイ、非光沢
DCI-P3 100%、リフレッシュレート120Hz、応答速度0.2ms
表示解像度2,880×1,620ドット
サウンドステレオスピーカー(1.5W×2)、トリプルアレイマイク
インターフェイスThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.1、USB 3.0、ヘッドフォン/マイク兼用、HDMI、microSD(SDXC対応)
通信機能2.5GbE対応有線LAN
Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
カメラ207万画素
バッテリ駆動時間約9時間
ACアダプタ240W、独自端子
サイズ(幅×奥行き×高さ)355.4×239.8×20.9~21.9mm
重量約2.17kg
OSWindows 11 Home

遊び心を感じるカジュアルなボディ

 筐体の具体的なサイズは、355.4×239.8×20.9~21.9mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約2.17kgだ。「0°ブラック」と呼ばれるシックなブラックで統一されているが、Escキーをオレンジ色にしたり、ストライプパターンを鮮やかなEnterキーの下部にストライプパターンをあしらうなど、アクセントで変化を付けてカジュアルなイメージに仕上げている。

「0°ブラック」と呼ばれるシックなブラックで統一している
筐体の具体的なサイズは、355.4×239.8×20.9~21.9mm(幅×奥行き×高さ)

 ボディの素材は樹脂製と思われるが、剛性感は十分。開発段階では米軍調達基準「MIL-STD 810H」適合の過酷なテストをクリアしている裏付けもある。

テンキー付きのキーボードを搭載する。実測のキーピッチは縦横とも約19mm。キートップにはわずかな凹みがあり、スイッチの感触も良く、タイピングの感触は良好だ
電源ボタンはキーボードの右上端にあり、指紋センサーを統合している。キーボードとは素材も押下圧も異なるため誤操作の心配はない。Enterキーの下部にはストライプパターンとプリントしている
Escキーは鮮やかなオレンジ、TabキーやShiftキーなどはグレーに塗り分けられている
白色LEDのキーボードバックライトも搭載している

 キーボード/パームレストなどよく手が触れる部分には「ASUSアンチバクテリアガード」として、ISO22196認証を取得した銀イオンコーティングが施されている。細菌の増殖を防ぐ効果が実証されており、効果は約3年間持続するという。

筐体の重量は約2.17kgだ。評価機の実測では公称値よりも少し軽かった
ACアダプタは240W仕様で端子形状は独自仕様だ。実測サイズは約76×166×25mm(幅×奥行き×高さ)
評価機のバッテリ設計容量は76Wh。公称バッテリ駆動時間は約9時間となっている

2.5GbE対応有線LAN、Thunderbolt 4を装備

 通信機能、本体装備のインターフェイスも充実している。最近では有線LAN端子そのものを省く製品ある中で、2.5Gigabit Ethernet対応有線LAN端子を装備する点は1つ強調できるポイントだろう。

 また、USBポートは、Type-C、Type-Aともに2基ずつ装備。Type-Cのうち1基はThunderbolt 4対応で、クリエイティブのプロユースで需要の高いThunderbolt 3/Thunderbolt 4対応のビデオキャプチャデバイスや高速ストレージが利用できるのは強みだ。

 Type-Cは2基ともディスプレイ出力(DisplayPort Alt Mode)、USB PD(Power Delivery)に対応。USB PDについての詳細な記述はないが、筆者の手元にあったレノボのUSB PD対応65Wアダプタを試しに利用したところ、低速ながら充電できていた。

前面。ボトム中央部に凹みがあって指がかかりやすく、トップカバーは片手でもスムースに開けられる
背面。排気口もシャープにデザインされている
左側面。手前側からmicroSDカードスロット、USB 3.0、有線LAN、DC入力(ACアダプタ)
右側面。手前側からヘッドフォン/マイク兼用端子、USB 3.1、HDMI出力、USB 3.1 Type-C、Thunderbolt 4。Type-CとThunderboltは2基ともディスプレイ出力、給電端子(USB PD)として使える
画面の上には約207万画素のWebカメラとトリプルアレイマイクを搭載
カメラは物理シャッター付きで、意図しない配信を確実に防げる

鮮やかな有機ELディスプレイ、サウンドも一級品

 画面は15.6型の有機ELディスプレイを搭載する。表示解像度は、2,880×1,620ドットの高解像度に対応。色域はDCI-P3比100%(sRGB比133%)、リフレッシュレート120Hzに対応。VESAが定めるHDR向け有機ELディスプレイの基準である「DisplayHDR True Black 600」にも準拠しており、エンターテイメントもクリエイティブもゲームも高レベルで楽しめるハイスペックを持つ。

15.6型2,880×1,620ドットの有機ELディスプレイを搭載。色域はDCI-P3相当をカバー、リフレッシュレート120Hzに対応。VESAが定めるHDR向け有機ELディスプレイの基準である「DisplayHDR True Black 600」にも準拠する。

 高解像度ディスプレイならではの精細さ、そして有機ELディスプレイならではの引き締まった黒の表現、鮮やかな発色は、写真や動画はもちろん、Windows 11のデスクトップ画面やWebブラウジングなどの日常操作でも実感できる。仕事や学習のモチベーションも上がってくるだろう。

エックスライトのi1 Display Pro/i1 Profilerでの測定結果(ネイティブモード)。黒色輝度は0cd/平方m。つまり、計測限界を超えた完全な「黒」を表現できている
i1 Profilerで作成したICCプロファイルをColor AC(Phonon氏・作)で表示させた。実線で示した本製品の色域はDCI-P3の色域(点線)をも大きく上回っている
MyASUSには有機ELディスプレイの焼き付き防止のためのスクリーンセーバーやドットシフトの設定、およびフリッカー(ちらつき)低減機能の設定が用意されている
MyASUSでは色域の選択やブルーライトカット機能の設定が用意されている

 harman/kardonブランド監修のサウンドシステムの迫力もかなりのもの。音量を増幅するDSPスマートアンプも搭載しており、大きな音圧も歪みなく再生できる。臨場感のあるサラウンドサウンドを実現するDolby ATMOSにも対応している。画面上のマイクはトリプルアレイ仕様で、ノイズを効果的に除去してくれるAIノイズキャンセリング機能も搭載している。

スピーカーは1.5W×2。音圧を350%に増幅するというスマートアンプを搭載しており、迫力あるサウンドを再生できる
スピーカーとマイクもノイズリダクション機能対応。Web会議のスタイルに応じたマイクの最適化設定も用意されている

全方位死角のないパフォーマンスを実証

 ベンチマークテストの結果を掲載する。比較対象としては、先日レビューしたZenbook Pro 16X OLEDのスコアを掲載している。ファンの動作モードは特に言及がない限り「パフォーマンス」に設定している。

【表2】比較機のスペック
Vivobook Pro 15X OLED
(K6501ZM-MA052W)
Zenbook Pro 16X OLED(UX7602)
CPUCore i7-12650HCore i7-12700H
CPUコア/スレッド数10コア16スレッド
(6Pコア12スレッド+4Eコア4スレッド)
14コア20スレッド
(6Pコア12スレッド+8Eコア8スレッド)
CPU周波数Pコア:最大4.7GHz
Eコア:最大3.5GHz
Pコア:最大4.7GHz
Eコア:最大3.5GHz
メモリ16GB(DDR5-4800)32GB(LPDDR5-5200)
ストレージ512GB SSD(PCIe 3.0 x2)1TB SSD(PCIe 4.0 x4)
グラフィックス機能GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)
Intel UHD Graphics(CPU内蔵)
GeForce RTX 3060 Laptop(6GB)
Intel Iris Xe Graphics(CPU内蔵)
OSWindows 11 HomeWindows 11 Pro
MyASUSユーティリティで動作モードが選べる。今回はパフォーマンスモードを基本にテストした

 CPU性能がストレートに反映されるCinebench R23のCPUスコアは14481pts。Core i7-12700Hを搭載する比較対象にはおよばないものの肉薄しており、Eコアが4コア少ない不利をあまり感じない。チューニングの違いの影響か、CPU(シングルコア)のスコアでは逆に上回っている。

Cinebench R23のスコア比較。CPUスコアは格上のCore i7-12700H搭載機に迫り、CPU(シングルコア)は逆に上回った

 ほかのテストでも、スペック上では格上のZenbook Pro 16X OLEDを上回る項目が多い。チューニング的に本製品のほうが比較対象よりも性能面に振っている印象もあるが、PCMark 10のProductivityについては、タッチパネル搭載機(Zenbook Pro 16X OLEDはタッチパネル搭載)で不当に低い値が出る項目があり、その影響も出ている。

PCMark 10のスコア比較。Productivityでの差はZenbook Pro 16X OLED(UX7602)がタッチパネル搭載機であることが大きい
PCMark 10/Modern Office Battery Lifeのスコア(ディスプレイの輝度50%)。残量2%まで7時間7分動作した

 また、GPUの最大グラフィックスパワーは、Zenbook Pro 16X OLEDが95Wであるのに対し、Vivobook Pro 15X OLEDでは125Wに設定されている。GPUを高負荷で活用する内容では本製品のほうが良いスコアをマークしているのは順当と言える。

3DMarkのスコア比較。同じGPUを搭載するZenbook Pro 16X OLEDよりも良いスコアをマーク。最大グラフィックスパワーが125Wであることが大きいだろう
UL Procyon Benchmark Suitesのスコア比較。アドビのPhotoshop、Lightroom Classicを利用した写真編集(Photo Editing)では比較対象を上回り、Premiere Proを利用した映像編集(Video Editing)でも僅差だ

 ビジネス、クリエイティブ、ゲーム、いずれの分野でもスペックから期待される通りのハイレベルなスコアをマークしている。

静音運用も可能

 FINAL FANTASY XIV : 暁のフィナーレベンチマークのみは、ファンの動作モードを3種類テストした。

FINAL FANTASY XIV : 暁のフィナーレベンチマーク(1,920×1,080ドット、最高品質)の動作モード別のスコア

 スタンダードではパフォーマンスとスコアがそれほど差があるわけではなく、ピークの動作音からするともっともバランスが良い。

 一方、パフォーマンスモードは、低~中負荷時から負荷に敏感に反応してファンが動作するためややノイジーな印象。ピークの動作音もかなり高い。バランスモードで常用し、いざという時だけパフォーマンスモードにするのが良いと感じた。

 ウィスパーモードではかなり性能が落ちるが、高負荷時の動作音もしっかり抑えられるので、静かに使いたい時には良いだろう。

動作音の比較。室温28℃、騒音計はサンワサプライのCHE-SD1を利用し、本体正面から5cmの至近距離で測定した。ウィスパーモードは高負荷時でも静音だ

 高負荷時の発熱に関してはやや高め。サーモグラフィを見ると手がよく触れるパームレストやWASDキーが高温にならないよう工夫されていることが分かるが、その周辺の熱が大きいため、じんわり程度の熱さは伝わってくる。高負荷で長時間利用するならば、ノートPCクーラーなどがあったほうがよいだろう。

パフォーマンスモードでFINAL FANTASY XIV : 暁のフィナーレベンチマーク(1,920×1,080ドット、最高品質)の終了直前にFLIR ONEで撮影したサーモグラフィ(室温27℃)。全体にやや高めだが、ゲーム操作で多用するWASDキーやテキスト入力時に一番よく触れるパームレストの温度を下げる工夫がされている

可能性バーゲンプライスでゲットするチャンス

 これまで見てきたように、Vivobook Pro 15X OLEDは、ビジネス、ゲーム、クリエイティブ、エンターテイメント、いずれも楽しめるハイスペックと充実の機能を備えている。ベンチマークテストではそのポテンシャルをしっかりと発揮できていることも確認できた。

 Vivobook Pro 15X OLEDは、何かに特化した専門的なPCというよりは、さまざまなことを高いレベルでこなせるオールラウンダーの仕様だ。仕事や学習に使いつつゲームやエンターテイメントも楽しみたい方、入門機からステップアップしたい方、入門機では快適にできなかったゲームやクリエイティブ作業に取り組んでみたい方など、幅広いユーザーに高レベルのPC体験を提供できる製品になっている。

 本製品の価格は19万9,800円。円安が続く状況を鑑みるとこれはもはやバーゲンプライス。文句なしに買いの1台と言える。