Hothotレビュー
NEC PCのゲーミングPC「LAVIE GX」はコンパクトで静音。リビングの大画面TVで遊ぶのに最適!
2022年7月20日 06:15
24年ぶりのゲーミングPC参入
NECパーソナルコンピュータ株式会社(NEC PC)が、24年ぶりにゲーミングPCに再参入すると報じられた「LAVIE GX」は、いろんな意味で注目を集めているようだ。
再参入というのは、国民機と呼ばれたPC-98シリーズをゲーミングPCとした上での発言。また“Project炎神”という名前からは往年のゲーム機「PCエンジン」を連想するし、型番の頭にある「PC-GX」は同じくゲーム機の「PC-FX」を思い出す。
元PC-9801/21ユーザーであり、長年のゲーマーである筆者には、刺さるワードが満載だ(といってもゲーム機は関係ないらしいが)。「PC98シリーズの要素がどこかに垣間見えるものなのか? というかPC98-NXのことも思い出してあげて?」などとツイートしようとした矢先、検証機をお借りできることになったので、早速すみずみまで眺めていきたい。
こだわりの見えるパーツをコンパクトな筐体に搭載
「LAVIE GX」シリーズはカタログモデルで2機種あり、今回お借りしたのは上位機種となる「GX750/EAB」。スペックは下記の通り。
【表1】LAVIE GX GX750/EAB | |
---|---|
CPU | Core i7-12700F(Pコア×8+Eコア×4/20スレッド、最大4.9GHz) |
チップセット | Intel B660 |
GPU | GeForce RTX 3060(GDDR6 12GB) |
メモリ | DDR4-3200(16GB×2) |
SSD | 1TB(PCIe) |
HDD | なし |
光学ドライブ | なし |
電源 | 出力非公開(80PLUS Platinum) |
OS | Windows 11 Home |
汎用ポート | USB 3.0 Type-C×1、USB 3.1×1、USB 3.0×1、USB 2.0×4 |
カードスロット | なし |
映像出力 | HDMI×1、DisplayPort×3 |
有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5 |
その他 | Xbox ワイヤレス コントローラー + USB-Cケーブル、有線ヘッドセット、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約170×308.6×370mm |
重量 | 約6.5㎏ |
実売予想価格 | 30万2,280円前後 |
CPUは12コア20スレッドのCore i7-12700F、GPUはGeForce RTX 3060という構成。ゲーミングPCとしてはミドルクラスといったところだ。メインメモリはDDR4の16GB、ストレージは1TBのSSDのみと、こちらも昨今のゲーミングPCとしては標準的。
本機の特徴として、ゲーミングPCとしてはかなりコンパクトな筐体を採用している。見た感じのサイズ感は、microATXケースの中でも小さめな方という印象だ(実際のケースとマザーボードの規格は不明)。特に奥行きが308.6mmとかなり短い。重量も約6.5kgとゲーミングPCとしては相当に軽量だ。
ほかにもユニークな点がいくつかある。電源は出力の記述はないものの、80PLUS Platinumの認証を受けたものとされている。ゲーミングPCでも80PLUS認証を受けた製品は増えてはきているが、特に高効率な80PLUS Platinumを採用したものは珍しい。コンパクトな筐体で発熱を少しでも減らしたいという配慮かもしれないが、コストが上がる要因でもある。
ネットワーク周りは、2.5Gigabit Ethernetを採用し、昨今の1Gbps超のインターネット回線にも対応。またWi-Fi 6も標準搭載で、設置場所の自由度も高まる。
さらにキーボードやマウスに加え、Xbox ワイヤレス コントローラーや有線ヘッドセットも同梱される。Xbox ワイヤレス コントローラーはBluetooth接続のほか、付属の2.7m USB Type-Cケーブルを使った有線接続も可能。XboxのコントローラーはWindows PCでも標準仕様となるゲームパッドで安心感があるものの、単体購入すると6,578円とやや高価なのがネックの製品だ。
スペック上から読み取れるデータとしては、処理能力だけで見れば割高感はあるものの、小型軽量の筐体、高効率電源、充実した付属品などで付加価値がある。小型筐体は排熱による性能低下や騒音などのデメリットも大きくなりやすいので、実際の使用感がどうかという点も含めて評価していきたい。また家電量販店では10%のポイント還元が付いているところもあり、設定価格を真正面から受け止める必要はないだろう。
ちなみに「LAVIE GX」にはカタログモデルのほかに、構成をカスタマイズできる直販モデルも用意されている。CPUやメモリ、ストレージなどを変更できるほか、カタログモデルに付属する多彩なソフトウェアをあえて付けず、セキュリティ関連ソフトウェアなど最低限必要なものに絞ることも可能(1,100円引きになる)。さらに直販モデル独自の割引クーポンも用意されており、本稿執筆時点では10%オフで購入可能だ。
コンパクトで静音、デザインも秀逸
続いて実機を見ていく。まず本体は思った以上に軽くコンパクトで驚かされた。ゲーミングPCは軽く10kgを超えるものもあり、落としたりしたら大変なので非常に気を使うのだが、本機は箱から取り出す時にも何ら苦労しなかった。
筐体色は背面を除きブラックで統一されている。前面パネルは斜め向きの格子模様を採用し、和を感じさせるデザイン性と、十分な通気性を両立している。PCでは見かけないデザインで、リビングなど目につくところに置いても家具との調和がとりやすそうだ。「たかがデザイン」と思われるかもしれないが、PCも家具の1つである以上、とても大事な要素だと感じる人もいる。日本メーカーらしいオリジナリティの出し方だ。
前面には右側に電源ボタンと端子類が並ぶ。端子はUSB Type-Cが搭載されているのが嬉しい。ヘッドセット端子も前面にある。逆に背面はシンプルで、2.5Gigabit EthernetとUSB 2.0×4、ビデオカードの映像出力などとなっている。
サイドパネルは左側に通気口がある以外はフラット。背面がシルバーなのは高級感に欠けるが、頻繁にカスタマイズでもしない限りは気にならない。つまり本機は購入後のユーザーによるカスタマイズをそれほど想定していない製品なのだろう。
とはいえ内部も確認しておきたい。左サイドパネルを開けると、案外余裕のあるすっきりした配置が見える。マザーボードはメモリスロットが2本(使用済み)、PCI-Express x1は空きスロットが1基あるものの、ビデオカードとの干渉で使えそうにない。やはりカスタマイズ性はかなり低い。
ケースファンは前面下部と背面上部に取り付けられている。背面からは電源の排気もあるので、吸気は前面ファンのほか、前面と左側面からの自然吸気となる。
面白いのはM.2で、マザーボードの下部からはみ出すようにSSDとWi-Fiモジュールが取り付けられている。SSDのすぐ横には吸気ファンがあり、SSDを効率的に冷却するとともに、ビデオカードからの熱が回らないように設計されている。
気になる電源ユニットは、AcBel製でPCK010という型番。80PLUS Platinumのマークがあり、出力は500Wとされている。
使用時の騒音については、低負荷時は本機に耳を近づけるとファンの回転音がわかる程度。CPU負荷をかけると、わずかにファンの回転音が聞こえるのだが、そこから大きな変化がない。季節柄、エアコンを使用している部屋でテストしているのだが、エアコンの風の音の方が大きいくらいで、全く気にならない。
続いてGPUに負荷をかけると、こちらもかすかにファンの回る音がしてくる。CPUに比べれば大きめの音で、エアコンの音と同じくらいには聞こえてくるが、音質も低く耳触りな感覚はない。ゲームなり、何かしらの音が出れば間違いなく気にならない。静音性はとても高く、リビングなどで使用してゲームや映像視聴に使うのにも適している。
搭載しているCPUクーラーはトップフロー型。コンパクトな筐体なので大がかりな冷却は難しいかと思ったが、筐体内部のスペースはまだ余裕がある。もう少し冷却を強化してもよさそうには思うが、無理に頑張って騒音を増やすよりは、ゲームプレイに支障のない範囲で静音性を取った、あえてのチューニングだとも受け取れる。
CPUの排熱処理が力不足ながら、ゲーミング性能は十分
次に実機のベンチマークテストを行なう。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2563」、「3DMark v2.22.7359」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「CINEBENCH R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2563 | |
PCMark 10 | 7,732 |
Essentials | 10,423 |
Apps Start-up score | 14,385 |
Video Conferencing Score | 7,541 |
Web Browsing Score | 10,439 |
Productivity | 9,924 |
Spreadsheets Score | 12,195 |
Writing Score | 8,076 |
Digital Content Creation | 12,131 |
Photo Editing Score | 14,154 |
Rendering and Visualization Score | 16,262 |
Video Editing Score | 7,756 |
3DMark v2.22.7359 - Port Royal | |
Score | 5,022 |
3DMark v2.22.7359 - Time Spy | |
Score | 9,028 |
Graphics score | 8,491 |
CPU score | 14,084 |
3DMark v2.22.7359 - Fire Strike | |
Score | 19,988 |
Graphics score | 21,537 |
Physics score | 32,439 |
Combined score | 9,452 |
3DMark v2.22.7359 - Wild Life | |
Score | 48,406 |
3DMark v2.22.7359 - Night Raid | |
Score | 49,613 |
Graphics score | 93,960 |
CPU score | 13,502 |
3DMark v2.22.7359 - CPU Profile | |
Max threads | 7,746 |
16 threads | 6,610 |
8 threads | 5,401 |
4 threads | 3,496 |
2 threads | 1,964 |
1-thread | 1,037 |
VRMark v1.3.2020 - Orange Room | |
Score | 12,390 |
Average frame rate | 270.10FPS |
VRMark v1.3.2020 - Cyan Room | |
Score | 9,182 |
Average frame rate | 200.17FPS |
VRMark v1.3.2020 - Blue Room | |
Score | 2,618 |
Average frame rate | 57.07FPS |
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator(簡易設定6) | |
3,840×2,160ドット | 2,954 |
1,920×1,080ドット | 20,732 |
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 6,851 |
1,920×1,080ドット | 20,808 |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質) | |
3,840×2,160ドット | 3,729 |
1,920×1,080ドット | 9,138 |
Cinebench R23 | |
CPU(Multi Core) | 12,495pts |
CPU(Single Core) | 1,880pts |
ゲーム系のベンチマークの結果を見ると、フルHD環境ではいずれも十分なパフォーマンスが確認できる。4Kになると「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で「普通」の評価。「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」では映像設定を下げるよう勧められるが、全く遊べないというほどフレームレートは低くない。4Kでも画質やゲーム次第ではそこそこ動かせる、という印象だ。
CPUの結果を見ると、シングルスレッドでは極めて優秀だが、マルチスレッドでは伸びが悪い。「Cinebench R23」のMP Ratioは6.64で、Pコアの実コア数である8にも届いていない。
「3DMark」の「CPU Profile」で詳細なデータを確認すると、CPUクロックがシングルスレッドでは約4.8GHzまで上がるのに対し、4スレッドでは約4.2GHz、8スレッドでは約3.3GHzまで落ちている。いずれもテスト開始時は高いクロックだが、CPU温度が70℃付近に下がるまでクロックを下げているのが見える。高負荷時の排熱処理が不足しているようだ。
GPUに関しては常に安定したクロックで動いており、ゲームのパフォーマンスは安定して高く、ゲーミングPCとしてはそれほど問題はない。ゲーム以外の用途でCPUを使い切るような処理が必要になるなら、スペックの割にはパフォーマンスが上がらないという感想になるだろう。
ストレージはキオクシア製「KBG5AZNV1T02」が使われていた。「KIOXIA BG5」シリーズの製品で、PCIe Gen4 x4対応のSSDだ。こういったPCでキオクシア製のSSDが使われているのは割と珍しく、国内メーカーのPCだけに、国内メーカーのSSDを採用したのだろうかと思う。ただしスペックシートでは製品名やメーカー名の指定はないため、今後の製品では別のSSDが使われる可能性はある。
また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。解像度はフルHDと4Kで実施。画質はいずれも最高設定。
【表3】ゲームのフレームレート | ||
---|---|---|
Fortnite | ||
解像度 | 3,840×2,160 | 1,920×1,080 |
平均 | 54.84 | 130.901 |
下位90% | 49.014 | 109.451 |
下位95% | 47.292 | 101.79 |
下位99% | 35.287 | 80.054 |
Apex Legends | ||
解像度 | 3,840×2,160 | 1,920×1,080 |
平均 | 78.742 | 143.77 |
下位90% | 64.338 | 123.854 |
下位95% | 61.61 | 119.187 |
下位99% | 57.27 | 113.146 |
「Fortnite」では、4Kで平均約55fps、下位99%で約35fpsとなった。普通に遊んでいる分にはそれほど気にならないが、スコアを重視するなら少し画質を下げたい。フルHDであれば平均で約131fps、下位99%で約80fpsと、ハイリフレッシュレートディスプレイでの利用も視野に入る。
「Apex Legends」では、4Kで平均約79fps、下位99で約57fpsとなり、60fps環境ならまず問題のない数値が出ている。フルHDにすると、ゲーム側で設定されたリミットの144fpsに当たるシーンも多く、下位99%でも約113fpsと十分な値だ。ビデオメモリを12GB搭載しているおかげで、本作のVRAM設定も最高値を選べるので、フルHD環境には最適と言える。
日本のリビングに調和するゲーミングPC
一通り本機を見渡して、PC-98シリーズっぽさはどこかにあるかと考えたが、強いて言えばプリインストールされているソフトの多さだろうか。ウイルス対策の「ウイルスバスター」のほかに、「Coral PaintShoo Pro 2022 SE」、「Coral VideoStudio 2021」、「CyberLink Power2Go 8」、「筆ぐるめ」など。
さらに子供向けの教育コンテンツや、家族で共用する際の設定マニュアルも用意されている。共用PCの設定は意外と難しいので、子供向けコンテンツと合わせて入っているのはありがたい。
プリインストールされるソフトが多いのは、PCに慣れた人には邪魔でしかないのは事実だが、それほど詳しくない人は「いろんなソフトが入っていてお得で安心」と感じるそうだ。個人の好みの問題ではなく、本機はそういう購買層を相手にした商品だということだ。
コンパクトな筐体、高い静音性、ユニークなデザインと、家族での共用に配慮したコンテンツを見るに、やはり本機はリビングで使用されることを相当強く意識していると感じる。Xboxのワイヤレスコントローラーも、テレビとの距離がある環境でこそ便利な代物だ。リビングでテレビに接続し、家族みんながそれぞれの用途で使うことを想定しているのだと思う。
もし家族が寝静まってから1人でゲームをやりたいなら、ヘッドセットを使えばいい……ということでヘッドセットも同梱。マウスやキーボードも同梱しているので、HDMIでTVに接続すればすぐに利用できるというわけだ(HDMIケーブルだけは別途必要)。マウスやキーボードもワイヤレスならなおよかった。
いろいろな部分でもう一声欲しい部分もあるが、それは筆者のようなベテランPCユーザーの感覚に限った話だ。「PCにそれほど詳しくない人が、リビングでPCゲームをやる」ことを想定した製品として見れば、確かにほかにはない魅力的な製品であると思う。
ここまでお読みいただいてなお「価格が高い」とか「性能が不満」と感じる人は、つまるところ本機のターゲット層ではない。製品が万人受けする必要はなく、明確なコンセプトが見える製品のほうが、自分に最適と感じる人が出てくるものだ。ただのゲーミングPCとして性能や価格で競うのではなく、日本の環境やニーズに合わせた独自性を出せたところは、NEC PCらしさとして評価したい。
【7月20日訂正】記事初出時、電源をATX12VOとしておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正します。