Hothotレビュー
待望の第12世代Coreついに発売! ベンチマークで見るその実力
2021年11月4日 22:00
開発コードネーム「Alder Lake」で知られる新世代デスクトップ向けCPU「第12世代Intel Coreプロセッサ」が本日11月4日より販売開始される。先日の開封記事で宣言していた通り、発売に先立って到着していたAlder Lakeのレビュアーズキットを使ってベンチマークテストを実施したので、その結果を紹介する。
異なる設計のCPUコアを統合したAlder Lake
今回テストする新CPUは、最上位モデルで16コア24スレッドCPUの「Core i9-12900K」と、10コア16スレッドCPUの「Core i5-12600K」だ。いずれも10nmプロセスを発展させた「Intel 7」プロセスで製造されたAlder LakeベースのCPUで、CPUソケットにも新設計のLGA1700を採用している。
Alder Lakeでは、「Pコア(Performanceコア)」と呼ばれる高性能CPUコアと、電力効率に優れた高効率CPUコア「Eコア(Efficientコア)」という、異なる設計のCPUコアを統合するハイブリッドアーキテクチャが導入された。Alder LakeのPコアはHyper-Threadingに対応する「Golden Cove」アーキテクチャを採用し、Eコアには省電力CPUコアを発展させたの「Gracemont」アーキテクチャを採用している。
CPUコア以外の機能も刷新されており、CPUに統合されたdGPUのPCI ExpressがGen 5(PCIe 5.0)に対応したほか、新規格のDDR5メモリにも対応した。なお、Alder Lakeのメモリコントローラは従来のDDR4メモリもサポートしており、マザーボードが搭載するメモリスロットの仕様に応じてDDR5とDDR4のいずれかを利用できる。
Alder Lakeはスペック上の電力指標が変更されており、これまで発熱や電力設計の指標として用いられてきた「TDP」に代わって、「Processor Base Power(PBP)」と「Maximum Turbo Power(MTP)」という新たな電力指標が導入された。PBPは従来のTDPと同じくベースクロック時の最大消費電力と同義の数値で、MTPはTurbo Boost動作を制限する消費電力の上限値である。MTPはCPUの最大消費電力を知る手がかりとなるが、実際の電力リミット値はマザーボード固有の設定値に依存する点に注意が必要だ。
モデルナンバー | Core i9-12900K | Core i5-12600K |
---|---|---|
CPUアーキテクチャ | Golden Cove + Gracemont | Golden Cove + Gracemont |
製造プロセス | Intel 7 | Intel 7 |
Pコア数 | 8 | 6 |
Eコア数 | 8 | 4 |
CPUスレッド数 | 24 | 16 |
L2キャッシュ | 14MB | 9.5MB |
L3キャッシュ | 30MB | 20MB |
ベースクロック | 3.2GHz(Pコア)、2.4GHz(Eコア) | 3.7GHz(Pコア)、2.8GHz(Eコア) |
ブーストクロック | 5.1GHz(Pコア)、3.9GHz(Eコア) | 4.9GHz(Pコア)、3.6GHz(Eコア) |
Turbo Boost Max 3.0 | 5.2GHz | 非対応 |
CPU内蔵GPU (iGPU) | Intel UHD Graphics 770 | Intel UHD Graphics 770 |
GPU実行ユニット(EU) | 32 | 32 |
GPUクロック(最大) | 1.55GHz | 1.45GHz |
対応メモリ | DDR5-4800(2ch)、DDR4-3200(2ch) | DDR5-4800(2ch)、DDR4-3200(2ch) |
PCI Express | PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x16、PCIe 4.0 x4 |
Processor Base Power | 125W | 125W |
Maximum Turbo Power | 241W | 150W |
対応ソケット | LGA1700 | LGA1700 |
Intel Z690チップセットを搭載するASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO
今回、Alder Lakeを搭載してテストするのは、ASUSのIntel Z690チップセット搭載マザーボード「ROG MAXIMUS Z690 HERO」だ。
既に発表されているASUSのIntel Z690チップセット搭載マザーボードの中では、特に豪華な設計を採用したハイエンドマザーボードで、20+1フェーズの電源回路やDDR5メモリ対応メモリスロット4本を搭載している。
ASUSのLGA1700対応CPUクーラー「ROG RYUJIN II 360」
新CPUソケットのLGA1700では、取り付け穴位置の変更によりCPUクーラーの互換性が失われており、LGA1700に対応したCPUクーラーでなければ利用できない。そこで今回は、LGA1700に対応するASUSのオールインワン水冷「ROG RYUJIN II 360」を利用する。
ROG RYUJIN II 360は、360mmサイズのラジエーターにNoctua製の冷却ファンを3基標準搭載するハイエンド水冷。水冷ヘッドには3.5型の液晶パネルを装備するほか、周辺冷却用の小型ファンを内蔵している。
LGA1700に対応するROG RYUJIN II 360のリテンションキットには、LGA1700専用のスペーサーが用意されている。そのほかのマウンティングブラケットやバックプレートについては、LGA1200などのIntel系ソケットで共通のパーツを利用するため、LGA1700専用パーツはスペーサーだけだ。
LGA1700用スペーサーは、長さがおおよそ15.1mmほどとなっており、15.85mmほどあるLGA1200用のスペーサーより0.8mm弱短くなっている。これは、LGA1700では基板表面からCPUのヒートスプレッダ表面までの高さが、LGA1200より低くなっていることを意味している。
このため、ROG MAXIMUS Z690 HEROのようにLGA1200と同じ位置に取り付け穴が設けられている場合でも、LGA1200以前のソケットに対応するCPUクーラーでは適切なテンションでCPUクーラーを固定できない場合がある。実際のところ、1mm未満の差でしかないので使用できる場合もあるだろうが、取り付け穴の位置だけでなく、高さも変更されていることを覚えておきたい。
スロット数や枚数、メモリランクで異なるAlder Lakeの対応メモリクロック
DDR5メモリスロットを備えるROG MAXIMUS Z690 HEROのために用意したのは、G.Skillの「F5-5200U4040A16GX2-RS5W」。DDR5-5200(CL40)動作に対応するオーバークロックメモリ2枚組で、容量は32GB(16GB×2)、動作電圧は1.1V。
メモリのオーバークロックは別として、Alder Lakeは最大でDDR5-4800動作に対応するとされているのだが、この対応メモリクロックはマザーボードのスロット数や、搭載するメモリの枚数、メモリランクなどによって変化する。
公式にDDR5-4800動作に対応するのは、1チャネルあたり1本のメモリスロット(合計2本)を備えたマザーボードのみで、1チャネルあたり2本のメモリスロット(合計4本)を備えるマザーボードではDDR5-4400が最大メモリクロックとなる。
メモリスロット数 | メモリ枚数 | メモリランク | メモリクロック |
---|---|---|---|
4本 (2ch×2本) | 4枚 (2ch×2枚) | シングルランク (1R) | DDR5-4000 |
4本 (2ch×2本) | 4枚 (2ch×2枚) | デュアルランク (2R) | DDR5-3600 |
4本 (2ch×2本) | 2枚 (2ch×1枚) | シングルランク (1R) | DDR5-4400 |
4本 (2ch×2本) | 2枚 (2ch×1枚) | デュアルランク (2R) | DDR5-4400 |
2本 (2ch×1本) | 2枚 (2ch×1枚) | シングルランク (1R) | DDR5-4800 |
2本 (2ch×1本) | 2枚 (2ch×1枚) | デュアルランク (2R) | DDR5-4800 |
用意したメモリは最大でDDR5-5200動作をサポートしているが、今回のテストではAlder Lakeのメモリ対応リストに従って、F5-5200U4040A16GX2-RS5WのメモリクロックをDDR5-4400に引き下げてテストを行なう。
比較用CPUとテスト機材
今回のテストではAlder Lakeの比較対象として、前世代の最上位CPUである「Core i9-11900K」と、AMDのデスクトップ向けCPU最上位モデル「Ryzen 9 5950X」を用意した。
テストに用いるOSはWindows 11で、RyzenのL3キャッシュ速度低下問題に対処した「build 22000.282」と、AMDのチップセットドライバ「3.10.08.506」を導入している。
また、Intelの推奨設定に基づき、各環境で「仮想化ベースのセキュリティ(Virtualization-Based Security、VBS)」を有効化しているほか、現時点では無効化を推奨するとされているResizable BARについては、Alder Lakeでのみ無効化している。
そのほか、Alder Lakeでは時間制限付き電力リミットである「PL2」と、持続的な電力リミットである「PL1」がともにMTP(Maximum Turbo Power)値となっている。結果として、Alder Lakeは常にMTP値までの電力消費が許容されることになるが、Alder Lakeではこれが標準の動作だ。
CPU | Core i9-12900K | Core i5-12600K | Core i9-11900K | Ryzen 9 5950X |
---|---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 16/24 | 10/16 | 8/16 | 16/32 |
CPUパワーリミット | PL1=PL2=241W、Tau=56秒 | PL1=PL2=150W、Tau=56秒 | PL1=125W、PL2=250W、Tau=56秒 | PPT:142W、TDC:95A、EDC:140A |
CPUクーラー | ASUS ROG RYUJIN II 360 (ファンスピード=100%) | |||
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO [UEFI:0237] | ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFI [UEFI:1017] | ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI:4201] | |
メモリ | DDR5-4400 16GB×2 (2ch、40-40-40-76、1.1V) | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-52、1.20V) | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-52、1.20V) | |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Edition | |||
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | |||
アプリケーション用SSD | CFD PG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | CFD PG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | CFD PG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | |
電源 | Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum | |||
GPUドライバ | GeForce Game Ready Drivers 496.49 (30.0.14.9649) | |||
OS | Windows 11 Pro (Ver 21H2 / build 22000.282) | |||
Resizable BAR | 無効 | 有効 | ||
電源プラン | バランス | |||
Virtualization-Based Security | 有効 | |||
モニタリングソフト | HWiNFO64 Pro v7.14 | |||
ワットチェッカー | ラトックシステム RS-BTWATTCH2 | |||
室温 | 約24℃ |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。
実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R23」、「CINEBENCH R20」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 4」「フォートナイト」、「Apex Legends」、「レインボーシックス シージ」、「Microsoft Flight Simulator」。
CINEBENCH
CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCHは、最新版のCINEBENCH R23と、旧バージョンのCINEBENCH R20を実行した。
Core i9-12900Kは、CINEBENCHの全てのテストで全体ベストのスコアを記録。マルチコアテストではRyzen 9 5950Xを5~7%、Core i9-11900Kを74~94%上回り、シングルコアテストでもRyzen 9 5950Xを20~22%、Core i9-11900Kを約20%上回った。
一方、Core i5-12600Kは、マルチコアテストでは全体3番手となっているものの、前世代最上位のCore i9-11900Kを12~24%も上回っている。シングルコアテストでは全体2番手となっており、Core i9-12900Kを約5%下回るものの、Ryzen 9 5950Xを14~16%、Core i9-11900Kを約14%上回っている。
3DMark「CPU Profile」
3DMarkの「CPU Profile」は、使用するCPUスレッド数毎のパフォーマンスを計測するテストだ。
Core i9-12900Kは、Ryzen 9 5950Xを約2%下回った16スレッドテスト以外は全体ベストを記録している。一方、Core i5-12600Kは、4スレッド以下ならCore i9-11900Kと僅差で2番手争いをできているが、8スレッド以上ではRyzen 9 5950Xに逆転されて最下位に沈んでいる。
CPUが備えるPコア数以内であればAlder Lakeは優れたパフォーマンスを発揮しており、下位モデルのCore i5-12600Kであっても、従来のデスクトップ向けCPU最上位モデルに匹敵するスコアを記録した。
Blender Benchmark
Blender Benchmarkの合計レンダリング時間は、「22分19秒」を記録したRyzen 9 5950Xが最速で、1分39秒遅れの「23分58秒」がCore i9-12900Kが2番手だった。3番手はCore i5-12600Kはトップから15分45秒遅れの「38分4秒」で、そのレンダリング速度は「42分28秒」で最下位のCore i9-12900Kより12%高速だった。
V-Ray Benchmark
レンダリング時間が1分に固定されているV-Ray Benchmarkでは、「19,432」を記録したRyzen 9 5950Xがトップで、「17,922」で2番手だったCore i9-12900KはRyzen 9 5950Xを約7%下回った。
一方、Core i5-12600Kのスコアは「11,068」で、「11,085」を記録したCore i9-11900Kを僅かながら下回った。もっとも、テストの大部分をPL2リミット(250W、56秒間)のブースト動作で処理したCore i9-11900Kに、最大電力が150Wに制限されたCore i5-12600Kが並ぶという結果は、十分に進化を感じられるものである。
将棋ソフト「やねうら王」
将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でベンチマークコマンドを実行した。
KPPT型でのCore i9-12900Kは、シングルスレッドで全体ベストを記録する一方、マルチスレッドではRyzen 9 5950Xを約16%下回る2番手となっている。Core i5-12600KはシングルスレッドはRyzen 9 5950XとCore i9-11900Kと僅差ながら最下位となっており、マルチスレッドではCore i9-11900Kを約9%上回る3番手だった。
NNUE型では、Core i9-12900KがRyzen 9 5950Xをマルチスレッドで約1%上回り、シングルとマルチの両方で全体ベストを記録した。Core i5-12600KはシングルスレッドでCore i9-12900Kに次ぐ2番手の結果を記録し、マルチスレッドではCore i9-11900Kを約11%上回り3番手となっている。
動画エンコードソフト「HandBrake」
オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。
Core i9-12900Kは全ての条件で最速を記録しており、そのエンコード速度はRyzen 9 5950Xを4~11%、Core i5-12600Kを30~59%、Core i9-11900Kを69~100%上回っている。
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。
H.264形式への変換では、4Kから4Kへの変換でRyzen 9 5950Xに2秒遅れをとっているものの、ほかの条件ではCore i9-12900Kが最速だった。一方、全条件で3番手だったCore i5-12600Kは、Core i9-11900Kを7~21%上回る速度でエンコードを完了している。
H.265形式への変換でも、Core i9-12900Kは4Kから4Kへの変換でRyzen 9 5950Xに1秒遅れをとっているが、ほかの条件では5~7%上回る速度でエンコードを完了している。一方、Core i5-12600KはCore i9-11900Kを19~24%上回るエンコード速度を記録した。
PCMark 10
PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。
総合スコアでは、Ryzen 9 5950Xを1%未満という僅差で上回ったCore i9-12900Kがトップに立っており、3番手のCore i5-12600Kを約8%、4番手のCore i9-11900Kを約15%上回った。
SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」
SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。
CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、整数演算(Dhrystone)でCore i9-12900KがRyzen 9 5950Xを12~16%上回る一方、浮動小数点演算(Whetstone)ではRyzen 9 5950Xを8~44%下回った。一方、Core i5-12600Kは短精度浮動小数点(Single-Float)でCore i9-11900Kを約20%上回ったものの、ほかの条件では6~24%下回った。
マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Core i9-12900KはRyzen 9 5950Xを18~34%下回っており、Quad-IntではCore i9-11900Kを28%下回った。このテストはCPUがサポートする拡張命令の効果が大きいテストでもあるので、Rocket Lake-SでサポートされたAVX-512が、ハイブリッドアーキテクチャ実現のためにAlder Lakeでは省略されたことが影響しているようだ。
画像処理性能を測定するImage Processingでは、8項目中5項目でCore i9-12900Kが全体ベストを記録している。一方、Core i5-12600KはDiffusionでRyzen 9 5950Xを72%上回ったことを除けば、比較製品中最下位の結果となっている。
SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」
Alder LakeでSiSoftware Sandraのメモリ性能を測定するベンチマークを実行すると、開始直後にブルースクリーンが発生してしまいスコアを取得することができなかった。
このため、肝心のAlder Lakeのデータがないのだが、参考までにCore i9-11900KとRyzen 9 5950Xの結果のみでグラフ化している。
SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」
Alder Lakeでは、キャッシュのパフォーマンスを測定する「Cache & Memory Latency」や「Cache Bandwidth」でもブルースクリーンが発生してスコアを取得することができなかった。
こちらも主役不在のグラフとなっているのだが、Ryzen 9 5950Xの結果からは、Windows 11リリース直後に報告されていたL3キャッシュの速度低下問題が起こっていないことを確認できる。
3DMark
3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」、「Port Royal」を実行した。なお、以降の3D系ベンチマークでは、参考データとしてResizable BARを有効化したCore i9-12900Kの測定結果を比較に加えている。
DirectX 12テストのTime Spyでは、Core i9-12900Kが2番手のRyzen 9 5950Xを4%上回ってトップに立っており、3番手のCore i5-12600Kを約5%、4番手のCore i9-11900Kを約6%上回った。
Fire Strikeでは、Combined Scoreの結果が総合スコアに大きく反映されており、Core i9-12900KがRyzen 9 5950Xを僅差で上回り全体ベストを記録。3番手のCore i9-11900Kを約22%上回り、最下位に沈んだCore i5-12600Kを約27%上回った。
VulkanテストのWild LifeとWild Life Extremeでは、Alder Lakeの2製品が1~2番手の結果を記録しているものの、それほど大きな差はついていない。特に高負荷版であるWild Life Extremeのスコア差は誤差程度であり、各CPUがほぼ同等のパフォーマンスを発揮していると言える。
DirectX Raytracing(DXR)テストのPort Royalでは、Core i5-12600KとRyzen 9 5950Xがやや高いスコアを記録しているが、Wild Lifeと同じくCPUの性能差が反映された結果というには小さな差であり、同程度の結果であると見るべきだろう。
VRMark
VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行した。
Core i9-12900Kは、もっともGPU負荷が低くCPUがボトルネックになりやすいOrange Roomと、マルチコアCPUを効率的に利用できるDirectX 12テストのCyan Roomで全体ベストのスコアを記録しており、Ryzen 9 5950Xを6~21%、Core i9-11900Kを2~8%、Core i5-12600Kを4~8%上回った。なお、もっともGPU負荷の高いBlue Roomでは、各CPUのスコアはほぼ横並びだった。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。
Core i9-12900Kは、すべての条件で全体ベストのスコアを記録している。GPU性能のボトルネックが支配的になる4Kではほぼ横並びの結果となっているが、WQHD以下ではRyzen 9 5950Xを7~13%、Core i9-11900Kを8~11%。Core i5-12600Kを7~11%上回った。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。
Core i9-12900Kが全体ベストのスコアを記録したのはフルHD解像度のみで、WQHD以上の解像度ではCore i5-12600Kを僅差で下回り、4KではRyzen 9 5950Xを2%下回る3番手となっている。一方、Core i5-12600Kは全ての条件で前世代最上位のCore i9-11900Kを上回った。
Forza Horizon 4
Forza Horizon 4では、描画品質を「ウルトラ」にして、3種類の画面解像度でテストを実行した。
もっともCPUのボトルネックが生じやすいフルHDでは、Core i9-12900Kが全体ベストを記録し、Core i5-12600KもCore i9-11900Kを上回っている。しかし、WQHDではCore i9-12900KはRyzen 9 5950Xを1fpsだけ下回る2番手となり、4KではAlder Lakeの2モデルが比較製品中最下位という結果に終わっている。
Forza Horizon 4はResizable BARの効果が大きいタイトルであり、WQHD以上でAkder Lakeが遅れをとったのはResizable BARの有無が効いているものと思われる。実際、ここではResizable BARを有効化したCore i9-12900Kが全条件で全体ベストを獲得している。
フォートナイト
フォートナイトでは、描画設定を「最高」にして、3種類の画面解像度でフレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。
フルHDでは、Core i9-12900Kが2番手のRyzen 9 5950Xを5%上回ってトップに立っているが、WQHD以上になるとCore i9-12900K、Core i5-12600K、Ryzen 9 5950Xの3製品が横並びの結果となっている。
Apex Legends
Apex Legendsでは、描画設定を可能な限り高品質にして、3種類の画面解像度でフレームレートを計測した。なお、フレームレートの上限は300fpsまで解放している。
このタイトルでは、Core i9-12900K、Core i5-12600K、Ryzen 9 5950Xの3製品がすべての条件で横並びに近い結果を記録している。前世代最上位のCore i9-11900Kがやや遅れをとっているという格好だ。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、描画設定を「最高」にして、3種類の画面解像度でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「Vulkan」で、レンダリングのスケールは100%。
フルHDではCPU毎の差が大きくついており、Core i9-12900KはRyzen 9 5950Xを5%下回る2番手に位置している。WQHD以上では各CPUの差が一気に縮まっており、CPU性能の差を反映した結果とは言えないものとなっている。
Microsoft Flight Simulator
Microsoft Flight Simulatorでは、描画設定を「ウルトラ」にして、3種類の画面解像度でフレームレートの測定を行った。測定は、羽田空港から関西国際空港へのルートをAIに飛行させ、離陸後3分間のフレームレートを測定している。使用した機体は「Daher TBM 930」。
Core i9-12900Kは、フルHDとWQHDで全体ベストを記録しており、Core i9-11900Kを6~7%、Core i5-12600Kを約9%、Ryzen 9 5950Xを9~10%上回った。なお、GPUのボトルネックが支配的になる4Kでは、各CPUのフレームレートがほぼ横並びとなっている。
システムの消費電力
システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークと3Dベンチマークの結果を分割してグラフ化している。
アイドル時消費電力がもっとも低かったのは、72Wを記録したCore i9-11900Kだった。次いで73WのCore i5-12600K、76WのCore i9-12900K、88WのRyzen 9 5950Xの順で大きな数値となっている。
CPUベンチマーク中、マルチスレッドテストのピーク消費電力がもっとも低かったのは、213~225Wを記録したCore i5-12600Kで、次いで231~272WのRyzen 9 5950X、279~316WのCore i9-11900K、290~359Wを記録したCore i9-12900Kの順で大きな数値となっている。
3Dベンチマークでは、テストによってもっとも高い消費電力を記録したCPUは異なるが、もっとも消費電力が低かったのはCore i5-12600K(444~547W)だった。なお、最大値を記録したのは636WのCore i9-11900Kで、Core i9-12900Kはそれに次ぐ623Wを記録している。
CPU温度とモニタリングデータ
CINEBENCH R23のMulti Coreテスト実行中のステータス情報を、モニタリングソフトのHWiNFO64 Pro v7.14を使って取得。そのデータからCPU温度(CPU Package)についてまとめたものが以下のグラフだ。
Core i9-12900Kの最大CPU温度は79℃で、ベンチマーク中の平均CPU温度は74.7℃、アイドル時温度は25℃だった。サーマルスロットリングが作動するジャンクション温度は100℃なので、まだ20℃以上の余裕があるという結果だ。
Core i5-12600Kの最大CPU温度は61℃で、ベンチマーク中の平均CPU温度は58.3℃、アイドル時温度は25℃だった。こちらもジャンクション温度は100℃なので、40℃近い余裕があることになる。今回は360mmラジエーターを搭載するハイエンド水冷をフルスピードで動作させているが、これならば空冷CPUクーラーでも十分に冷却できるだろう。
Core i9-12900Kのモニタリングデータ
さきの温度グラフを作成するのに用いたモニタリングデータから、Core i9-12900Kの各種ステータス情報の推移をグラフ化した。
Core i9-12900Kは、220W前後の電力を消費しながらPコアとEコアをフル稼働させており、Pコアは約4.9GHz、Eコアは約3.7GHzで動作している。この結果を見るまでは、電力リミットの241Wまで達するものと思っていたが、CINEBENCH R23のMulti Coreテストでは電力リミットの範囲内で最大限のブースト動作が可能だったようだ。
内蔵GPUでベンチマークテストを実行
ここからは、CPUの内蔵GPU(iGPU)でベンチマークを実行した結果を紹介する。
テスト機材は以下の通り。Core i9-12900KとCore i5-12600KのiGPUである「UHD Graphics 770」は、Core i9-11900Kの「UHD Graphics 750」と同じく32基の実行ユニット(EU)を備えるGPUコアだが、GPUクロックが向上している。また、DDR5-4400メモリを利用しているのでVRAMの帯域幅も大きくなっている。
CPU | Core i9-12900K | Core i5-12600K | Core i9-11900K |
---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 16/24 | 10/16 | 8/16 |
CPUパワーリミット | PL1=PL2=241W、Tau=56秒 | PL1=PL2=150W、Tau=56秒 | PL1=125W、PL2=250W、Tau=56秒 |
iGPU | Intel UHD Graphics 770 | Intel UHD Graphics 770 | Intel UHD Graphics 750 |
GPU実行ユニット(EU) | 32基 | 32基 | 32基 |
GPUクロック(最大) | 1.55GHz | 1.45GHz | 1.30GHz |
GPUドライバ | 30.0.100.9837 | 30.0.100.9955 | |
CPUクーラー | ASUS ROG RYUJIN II 360 (ファンスピード=100%) | ||
マザーボード | ASUS ROG MAXIMUS Z690 HERO [UEFI:0237] | ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFI [UEFI:1017] | |
メモリ | DDR5-4400 16GB×2 (2ch、40-40-40-76、1.1V) | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-52、1.20V) | |
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | ||
アプリケーション用SSD | CFD PG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | CFD PG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | |
電源 | Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum | ||
OS | Windows 11 Pro (Ver 21H2 / build 22000.282) | ||
Resizable BAR | 無効 | ||
電源プラン | バランス | ||
Virtualization-Based Security | 有効 | ||
ワットチェッカー | ラトックシステム RS-BTWATTCH2 | ||
室温 | 約24℃ |
実行したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「VALORANT」。
Core i9-12900Kは20~30%ほど、Core i5-12600Kも15~20%ほど、それぞれCore i9-11900Kを上回っている。GPUクロックの向上とDDR5メモリの採用によって、iGPUの性能は前世代のRocket Lake-Sより高いものとなっていることは間違いない。VALORANTのようにGPU負荷の低いゲームを動かす程度は可能だろう。
もっとも、依然としてゲームをプレイには心許ない性能であることには変わりない。ゲームでの利用を目的にAlder Lakeを選択するのであれば、iGPU非搭載の「F」モデルとビデオカードの組み合わせを検討してみても良いだろう。
大きな進化を遂げたIntelの新世代デスクトップ向けCPU
Alder Lake最上位モデルのCore i9-12900Kは、デスクトップCPUの頂点に君臨していたRyzen 9 5950Xに匹敵するマルチスレッド性能を発揮し、Core i9-11900Kを大きく上回るシングルスレッド性能によって、ゲームでも最上級のパフォーマンスを発揮した。電力効率も大きく向上しており、とても1世代でのものとは思えないほど大きな進化を遂げている。
また、4万円を切る価格のCPUでありながら、前世代の最上位CPUと互角以上のパフォーマンスを発揮するCore i5-12600Kも驚異的なCPUだ。150Wという扱いやすいMTPも相まって、コストパフォーマンスを重視したゲーミングPCなどに好適なCPUであると言える。
CPUそのものをはじめ、マザーボードやDDR5メモリの供給量に不安が残るものの、十分な数が供給されれば盤石だったRyzen 5000シリーズの地位を脅かせる実力がAlder Lakeには備わっている。Windows 11でPCの自作を考えているユーザーにとって、Alder Lakeは有力な選択肢となるだろう。