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Intel、ゲーミング向けCPUで最速の座奪還を狙う第12世代Coreを11月4日に発売

第12世代Coreの特徴

 米Intelは27日(現地時間)、大規模な製品発表イベント「Intel Innovation」を開催し、この中でAlder Lakeの開発コードネームとして知られてきたCPUを、第12世代Coreとして正式発表した。11月4日より発売し、価格は264ドルから589ドル。

 今回の発表では、デスクトップ向けCore i9-12900K/KF、Core i7-12700K/KF、Core i5-12600K/KFの6モデル。このうちF付きモデルは内蔵GPUなしで、より安価となる。いずれも倍率アンロック版で、同時発表のIntel Z690チップセットとともに出荷され、オーバークロックが可能となっている。

 製造プロセスはいずれもIntel 7を採用。ソケットはLGA1700で刷新され、DDR5メモリ、PCI Express 5.0への対応が図られた。また、チップセット「Z690」とCPU間の接続はDMI 4.0に進化し転送速度が向上。このためチップセット側のPCI Expressも4.0となり、USB 3.2 Gen 2x2ネイティブ対応となるなど、足回りが大幅に強化された。

最大8つのPコアと、8つのEコアで構成される
CPUの主な特徴。DDR5メモリへの対応とPCI Express 5.0への対応は大きなトピックだと言える
DDR5は最大4,800MHzまでサポート。DDR4も3,200MHzに対応する
Intel Z690チップセットの主な特徴。CPUとの接続がDMI 4.0となり、PCI Express 4.0をサポートした

 コアは性能重視のPコアと電力効率重視のEコアのハイブリッド構成で、コア数はCore i9-12900K/KFが8P+8E、Core i7-12700K/KFが8P+4E、Core i5-12600Kが6P+4Eとなっている。このうちPコアのみHyper Threadringに対応するため、スレッド数は順に24、20、16となっている。

 動作クロックはCore i9-12900KのPコアが3.2~5.2GHz、Eコアが2.4~3.9GHz。Core i7-12700Kはそれぞれ3.6~5GHz、2.7~3.8GHz、Core i5-12600Kはそれぞれ3.7~4.9GHz、2.8~3.6GHz。

第12世代CoreのSKU。現時点では6モデルが用意されている

 同社によれば、今回のローンチは過去最大規模となるアンロック版=K SKUの出荷になると言い、発表時で既に数十万個、2022年第1四半期末までに200万個もの出荷を予定しているという。このところAMD Ryzenにシェアを奪われつつあるハイエンドゲーミング市場で、シェア奪回を狙っているのは明白だ。

世界最高のゲーミングプロセッサと、コンテンツクリエーションでの性能向上が謳われている

Pコア、Eコア、そしてIntel Thread Director

 第12世代Coreの技術的な詳細について、既に8月に開催した「Intel Architecture Day 2021」で一部明らかとなっている。具体的に言えば、1つのチップ内に性能重視コア(Pコア)と電力効率重視コア(Eコア)の2種類のコアを混在させ、負荷に応じて最適なコアにスレッドを割り振る「Intel Thread Director」によって、効率性と性能の両立を図ったアーキテクチャが特徴となっている。

 Pコアは「Golden Cove」で、第10世代のComet Lakeと比較して同クロック下で28%増、第11世代と比較しても14%増の性能向上が見られるという。一方でEコアは「Gracemont」で、こちらも同クロックのComet Lakeと比較して1%の性能向上があるという。それだけ第12世代CoreはPコアもEコアも非常に強力な構成だ。

最大8基のPコアと、8基のEコアを混在させた16コア構成
同クロックの条件では平均19%の性能向上を実現したという
Intel Thread Directorを搭載し、Windows 11利用時に最適な性能を発揮
L3をPコアとEコアで共有している

 このPコアとEコアの両方をうまく使いわける仕組みがIntel Thread Directorで、現時点ではWindows 11でのみその真価が発揮され、アプリケーション自体のワークロードや優先度をOSが判断して最適なコアが選択される。

 Windows 11では発売時からこの仕組みをフルに利用できる。Windows 10ではIntel Thread Directorの一部機能の実装にのみ留まるため、完全に発揮されるわけではないが、それでも十分な性能を実現できるという。一方でChromeOSなどについてはこれから最適化をしていくとのことだった。

気になる性能は?

 もっとも注目される性能であるが、250Wでフル稼働するCore i9-11900Kに対して、Core i9-12900Kは241Wの消費電力で+50%のピーク性能を実現できるという。125Wに制限しても+30%、65Wで同等のことだ。このあたりは純粋にコア数が倍増していることによる影響が大きいと見ていいだろう。

 これまで長時間負荷をかけた時の電力はPL1、短時間負荷をかけた時の電力はPL2と表現してきたが、それぞれ「Processor Base Power」と「Maximum Turbo Power」という表現に変更された。Core i9-12900Kを例に取ると前者は125W、後者は241Wとなるわけだが、第12世代のアンロック版では標準でいずれも最大値、つまりCore i9-12900Kでは241Wが設定されるという。これにより最大限の性能を発揮できるようにしたとしている。

 この結果、Core i9-11900Kと比較して多くのゲームで20%近い性能向上を実現。また、Pコアでゲームを走らせる裏側でキャプチャしてストリーミングを行なうような用途だとEコアが活き、「Mount & Blade II: Bannerlord」のような多コアに最適化したようなゲームだと、84%もフレームレートが向上するとしている。

ほとんどのゲームでCore i9-11900Kを上回る高い性能を発揮している
小さなEコアでHT非対応とは言え、コア数が倍増しているため、コンテンツ制作アプリケーションでも大きな性能向上を果たした
シングルスレッド性能は第10世代Coreと比較して28%増を実現している
250WのCore i9-11900Kと比較すると、241Wの消費電力で50%増のマルチスレッド性能を実現。同等の性能は65Wで実現できるという
Intelの推奨値は、Processor Base Power(従来のPL1)とMaximum Turbo Power(従来のPL2)をともに最大の241Wに設定した場合だという
この場合、多くのゲームで目をみはるほどの性能向上を実現
バックグラウンド動作のアプリをEコアで実行させることで、フォアグラウンドでPコアで実行しているアプリの性能に影響せず並列化できるとしている
純粋にゲームを実行しているだけの場合でも、Core i9-11900Kと比較して19%の性能向上を実現しているが、OBSでストリーミングと録画を同時並行して行なった場合、Eコアがバックグラウンドプロセスを請け負うため、ゲーム性能向上は実に84%増にもなる

 一方でコンテンツ製作のような用途だと、フォアグラウンドでRAW現像やJPEGへの吐き出しをしながら、編集したビデオを出力するといった作業を同時に行なえるようになるため、Core i9-11900Kと比較して47%も作業時間の高速化が図れるとした。そしてごく一般的な生産性アプリケーションでも、15~19%程度の性能向上を実現できるとしている。

 気になる競合のRyzen 9 5950Xとの比較だが、説明の時点ではまだRyzen向けのL3キャッシュ遅延問題に対処したパッチを適用した状態でベンチマークが取得できなかったとしているが、例え当てたとしても、多くのゲームでより高い性能を実現できるとしている。

コンテンツ制作のワークフローでもバックグラウンドで処理させる機会はあるとする
単純にタスクを順にこなしても従来と比較して29%増の性能向上を実現するが、バックグラウンドで実行すれば作業を47%高速化できるとしている
UL ProcyonやPCMark 10など、お馴染みのアプリでもベンチマークを実施
コンテンツ制作で大きな性能向上を実現
生産性アプリでも性能向上を実現するとしている

今度こそオーバークロッカーの福音となるか……?

 第12世代Coreではオーバークロック可能なSKUから投入していることからも伺えるように、オーバークロッカーやエンスージアストが「遊べる」プロセッサとして仕上げている。

 Intelは第2世代CoreことSandy Bridge世代で、CPUのダイとヒートスプレッダの間をソルダリングで接合していた。この時のソルダリングは熱伝送のボトルネックとならず、あまり問題とならなかったのだが、第3世代CoreであるIvy Bridgeでこの間の接合材(TIM)をシリコングリスに変更したことで、オーバークロックをした際にボトルネックとなってしまった

 その後シリコングリスの改良を加えながらも、抜本的な問題解決にならず、オーバークロッカーの間でCPUのヒートスプレッダを除去してTIMを液体金属に置き換える改造が流行してしまう。これが第9世代Coreで再びソルダリングに戻すという試みが行なわれたが、ダイとソルダリング両方に厚みがあったためボトルネックが存在し、オーバークロッカーにとって十分とは言えるものではなかった。第10世代/第11世代ではダイこそ薄型化したが、ソルダリング部は厚いままだった。

 この問題をついにIntelも認識したのか、第12世代ではダイもソルダリングも薄くしてボトルネックを軽減したとしている。ただオーバークロックのヘッドルームについては説明されておらず、発売後のオーバークロッカーの報告を楽しみに待ってほしいとしている。

従来と比較して、ダイもソルダリング部分も薄型化し、熱伝送のボトルネックを軽減したという

 一方Windows上からオーバークロックできるツールとして、「Intel Extreme Tuning Utility 7.5」から対応を行なう。このバージョンではPコアのみならずEコアのオーバークロックが可能となるほか、DDR5メモリのオーバークロック機能、XMP 3.0への対応、Dynamic Memory Boost機能、Synthetic Internal BCLKコントロール機能などが追加された。

 Core i9-12900Kを例に挙げると、Pコアは標準で4.9GHz、Eコアは標準で3.9GHz駆動となっている。Intel XTU 7.5では各々を設定できるのはもちろんだが、初心者向けに「Intel Speed Optimizer」と呼ばれるワンクリックオーバークロック機能も用意している。これを利用すると、数秒でPコアは5GHz、Eコアは4GHzに設定されるとのことだった。

第12世代Coreのオーバークロック機能
Intel XTUの新機能
オーバークロックはKシリーズCPUとZ690の組み合わせでフル機能が使える
オーバークロックで設定できる倍率など
AVXオフセットやAVXの無効化、Pコア/Eコア各々の動作クロックなどを設定できる
Intel XTU 7.5での機能強化
ワンクリックでクロックを引き上げる機能も搭載

DDR5メモリで加わるXMP 3.0などの機能

 一方XMP 3.0はDDR5に対応した、SPDに基づく新しいメモリプロファイル拡張規格。従来XMPプロファイルは2つまでとなっていたが、新たに5つのプロファイルを保存できるようになり、このうちの3つはベンダーが使用、2つは書き込み可能でユーザーが利用可能となっている。また、プロファイルの名前も16文字までユーザーが設定できるようになった。一例だが、バンド幅を重視したプロファイルと、レイテンシを重視したプロファイルの2つを用意しておき、用途に合わせて切り替えて最適化するということも可能になる。

 また、負荷に応じてメモリクロックを変動させる機能が、「Intel Dynamic Memory Boost Technology」として実装された。これまでメモリのクロックをリアルタイムに変更させる機能はデスクトップ向け第11世代Coreでも実現できていたが、負荷に応じて変動させられるようになったのは初。XMPを持つメモリであれば、JEDEC標準プロファイルとXMPプロファイルを切り替えられるとしている。なお、この機能はDDR4でも有効となる。

DDR5では、Intel XMPが3.0に対応
XMP 3.0ではより多くのプロファイルを保存できるようになり、柔軟性も増した
XMPプロファイルは5つまで保存可能。うち3つはベンダーが用意し、2つはユーザーが自由に書き込むことができるようにするという
サードパーティーのユーティリティで、XMP 3.0の細かい設定が可能になる見込みだ
XMP 3.0と従来の1.0、2.0との比較
Dynamic Memory Boost Technologyに対応し、負荷に応じてメモリクロックやタイミングのプロファイルを切り替えられるようになった