Hothotレビュー

新コア設計でゲーム性能が向上した第11世代Coreを徹底ベンチマーク

 3月30日より、「Rocket Lake-S」ことデスクトップ向けIntel第11世代Coreプロセッサの販売がスタートする。

 今回、発売に先立って、同シリーズの最上位モデルである「Core i9-11900K」と、6コアモデル「Core i5-11600K」をテストする機会が得られたので、Intelの新世代デスクトップ向けCPUの実力をベンチマークテストでチェックしてみた。

Skylake以来となる新設計CPUコア採用のRocket Lake-S

 Rocket Lake-Sことデスクトップ向けIntel第11世代Coreプロセッサは、第6世代から第10世代にまで使われてきたCPUアーキテクチャ「Skylake」ではなく、モバイル向けCPUのIce Lakeで採用された「Sunny Cove」ベースのアーキテクチャ「Cypress Cove」を採用した。また、CPU統合グラフィックス(iGPU)のアーキテクチャに「Xe」を採用しており、CPU・GPUともに設計が刷新されている。

 アーキテクチャが刷新された一方で、製造プロセスは従来と変わらず14nmのままとなっている。そのためか、最上位であるCore i9のコア数は8コアとなっており、前世代である第10世代Coreプロセッサ(Comet Lake-S)のCore i9より2コア減少している。

 Rocket Lake-Sでは、CPUやGPUコア以外の部分も強化されている。CPU内蔵のPCI ExpressはGen 4に対応し、ビデオカード用のx16レーンに加え、NVMe SSD用のx4が新たに追加された。メモリコントローラの対応メモリクロックはDDR4-3200に引き上げられたほか、CPUとチップセット間の接続はDMI 3.0 x8接続に対応。Intel Z590チップセットなど、x8接続対応チップセットでは、従来の2倍の帯域幅でCPUとチップセット間を接続できるようになった。

 今回テストするのは、最上位モデルの8コア16スレッドCPU「Core i9-11900K」と、6コア12スレッドCPUの「Core i5-11600K」。両CPUのおもな仕様は以下のとおり。

【表1】Core i9-11900KとCore i5-11600Kのおもなスペック
モデルナンバーCore i9-11900KCore i5-11600KCore i9-10900K
開発コードネームRocket Lake-SRocket Lake-SComet Lake-S
CPUアーキテクチャCypress CoveCypress CoveSkylake
製造プロセス14nm14nm14nm
コア数8610
スレッド数161220
L3キャッシュ16MB12MB20MB
ベースクロック3.5GHz3.9GHz3.7GHz
Turbo Boost 2.05.1GHz(全コア4.7GHz)4.9GHz(全コア4.6GHz)5.1GHz
Turbo Boost Max 3.05.2GHz5.2GHz
Thermal Velocity Boost5.3GHz(全コア4.8GHz)5.3GHz
Adaptive Boost Technology対応 (全コア5.1GHz)
対応メモリDDR4-3200DDR4-3200DDR4-2933
PCI ExpressPCIe 4.0 x20PCIe 4.0 x20PCIe 3.0 x16
内蔵GPUUHD Graphics 750UHD Graphics 750UHD Graphics 630
TDP125W125W125W
対応ソケットLGA1200LGA1200LGA1200
8コア16スレッドCPU「Core i9-11900K」
Core i9-11900KのCPU-Z実行画面
6コア12スレッドCPU「Core i5-11600K」
Core i5-11600KのCPU-Z実行画面
Core i9-11900KとCore i9-10900K(右)。ヒートスプレッダの形状が変更されている
Core i9-11900KとCore i9-10900K(右)の裏面

 Core i9-11900Kは、新しいブースト技術「Adaptive Boost Technology」に対応している。これは同モデルと、内蔵GPU省略モデル「Core i9-11900KF」でサポートされるブースト機能で、有効にすると全コアブースト時の最大クロックが5.1GHzに上昇する。今回テストした時点では、Adaptive Boost Technologyを利用するにはUEFIで同機能を有効化する必要があったが、Intelによれば、これを有効化しても製品保証外のオーバークロックには該当しないとのことだ。

 Rocket Lake-Sのメモリコントローラでは、メモリとコントローラのクロック周波数が1:1で同期する「Gear 1」と、コントローラがメモリの2分の1倍速で動作する「Gear 2」というモードが用意されており、最大対応メモリクロックのDDR4-3200でGear 1動作が可能なのはCore i9-11900KおよびCore i9-11900KFのみで、そのほかのモデルでGear 1動作が可能なのはDDR4-2933までとされている。

Rocket Lake-S向けのIntel Z590チップセット搭載マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XIII HERO」

 今回のテストでは、CPUのほかにIntel Z590チップセットを搭載したASUS製マザーボード「ROG MAXIMUS XIII HERO」も借用した。

 Intel Z590チップセットは、Rocket Lake-S向けの新チップセットであるIntel 500シリーズチップセットの最上位モデルで、20レーンのPCI Express 4.0を備えるRocket Lake-Sに正式対応し、CPUとのDMI 3.0 x8接続にも対応している。

 なお、LGA1200をサポートする従来のIntel 400シリーズチップセットを搭載したマザーボードでも、対応BIOSを導入すればRocket Lake-Sの利用は可能だが、CPUが備えるNVMe SSD用のPCIe 4.0 x4や、DMI 3.0 x8でのCPU~チップセット間接続は利用できず、対応メモリクロックもDDR4-2933が上限となる。

Intel Z590チップセット搭載マザーボード「ASUS ROG MAXIMUS XIII HERO」
CPUに内蔵されたNVMe SSD用のPCIe 4.0 x4や、DMI 3.0 x8を利用するには、それらに対応した新世代チップセット搭載マザーボードが必要だ

テスト機材

 今回のテストにはRocket Lake-Sの比較用として、前世代である第10世代Coreプロセッサ(Comet Lake-S)の最上位モデル「Core i9-10900K」と、AMDの8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 5800X」を用意した。

 そのほかの機材については以下のとおり。

【表2】テスト機材一覧
CPUCore i9-11900KCore i5-11600KCore i9-10900KRyzen 7 5800X
コア数/スレッド数8/166/1210/208/16
CPUパワーリミットPL1:125W、PL2:251W、Tau:56秒PL1:125W、PL2:251W、Tau:56秒PL1:125W、PL2:229W、Tau:56秒PPT:142W、TDC:95A、EDC:140A
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240 (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS ROG MAXIMUS XIII HERO [UEFI:0610]ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI:3602]
メモリDDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)DDR4-2933 16GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)
メモリコントローラ1,600MHz (Gear 1)1,600MHz (Gear 1)1,600MHz (1:1)
GPUGeForce RTX 3080 Founders Edition 10GB
システム用SSDSamsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
アプリケーション用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum
dGPUドライバGeForce Game Ready Driver 461.62 (27.21.14.6192)
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 20H2 / build 19042.868)
電源プランバランス
室温約24℃
10コア20スレッドCPU「Core i9-10900K」
8コア16スレッドCPU「Ryzen 7 5800X」

 なお、前述したメモリコントローラの動作モードについては、今回の機材ではCore i9-11900KとCore i5-11600Kはともに1:1で同期するGear 1で動作していた。BIOS上で設定を行なうことで2分の1倍速に設定することも可能だったが、今回の検証では標準設定のままでテストしている。

DDR4-3200メモリでのGear 1動作。DRAM Frequency(メモリ)とMem Controller Freq(コントローラ)が約1,600MHzで同期していることが確認できる
BIOSでGear 2に設定した場合。約1,600MHzのDRAM Frequencyに対し、Mem Controller Freqは約800MHzになっている

ベンチマーク結果

 それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。

 実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R23」、「CINEBENCH R20」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「フォートナイト」、「Apex Legends」、「レインボーシックス シージ」、「Microsoft Flight Simulator」。

CINEBENCH

 CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCHは、最新版のCINEBENCH R23と、旧バージョンのCINEBENCH R20を実行した。

 CINEBENCH R23のマルチスレッドテスト(Multi Core)では、Ryzen 7 5800Xがトップスコアを記録しており、Core i9-11900Kはトップと約13%差、2番手のCore i9-10900Kと約8%差で、全体3番手のスコアとなっている。Core i9-11900KとCore i5-11600Kの差は約25%。

 一方、シングルスレッドテスト(Single Core)ではCore i9-11900Kがトップに立っており、2番手のRyzen 7 5800Xに約4%、Core i9-10900Kに約25%の差をつけた。Core i5-11600KはCore i9-11900Kと約6%差の3番手だった。

 旧バージョンであるCINEBENCH R20では、シングルスレッドテストの結果がR23とほぼ変わらない一方、マルチスレッドテストでは時間制限のあるPL2ブーストがスコアに反映されるため、Core i9-10900Kが最高スコアを獲得。Core i9-11900Kは全体3番手の位置こそ変わらないものの、2番手のRyzen 7 5800Xと約2%差となっている。

【グラフ01】CINEBENCH R23
【グラフ02】CINEBENCH R20

V-Ray Benchmark

 Blender Benchmarkでは、Ryzen 7 5800Xがレンダリング時間の短いbmw27以外のテストで最速を記録。トータル実行時間では、10コア20スレッドCPUのCore i9-10900KがトップRyzen 7 5800Xと12%差の2番手で、Core i9-11900Kはトップから15%差の3番手となっている。Core i9-11900KとCore i5-11600Kの速度差は約25%。

【グラフ03】Blender Benchmark (v2.92)

V-Ray Benchmark

 レンダリング時間が1分に固定されているV-Ray Benchmarkでは、「12,315」を記録したCore i9-10900Kがトップにたっている。Core i9-11900Kはトップと11%差の3番手で、2番手のRyzen 7 5800Xとの差は約5%。Core i9-11900KとCore i5-11600Kの差は約35%。

【グラフ04】V-Ray Benchmark v5.00.02 「V-RAY (CPU)」

将棋ソフト「やねうら王」

 将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でベンチマークコマンドを実行した。今回はAVX2版に加え、Rocket Lake-Sで追加されたAVX-512版およびAVX-512 VNNI版でのテストも実施したのだが、NNUE型ではAVX-512版が正常に動作しなかったため、AVX2版での比較のみとなっている。

 KPPT型のAVX2版では、マルチスレッドでRyzen 7 5800Xがトップに立っており、Core i9-11900Kはトップと13%差の3番手となっている。一方、シングルスレッドではCore i9-11900Kがトップに立っており、2番手のRyzen 7 5800Xを約6%上回った。なお、AVX-512版およびAVX-512 VNNI版に関しては、Rocket Lake-Sで実行できてはいるものの、AVX2版からの大きな変化はみられなかった。

 NNUE型のマルチスレッドでは、Core i9-10900KがRyzen 7 5800Xに約3%差をつけて上回ったが、Core i9-11900KはRyzen 7 5800Xと約4%差の3番手となっている。シングルスレッドではKPPT型同様Core i9-11900Kがトップに立っており、約3%差の2番手にRyzen 7 5800X、約8%差の3番手にCore i5-11600Kと続いている。

【グラフ05】やねうら王 v6.00 「KPPT型」
【グラフ06】やねうら王 v6.00「NNUE型」

動画エンコードソフト「HandBrake」

 オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。

 Core i9-11900Kは全体3番手に位置しており、Ryzen 7 5800Xとの速度差は9~18%、Core i9-10900Kとの差は5~13%だった。Core i9-11900KとCore i5-11600Kの速度差は23~30%。

【グラフ07】HandBrake v1.3.3

動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」

 動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。

 H.264形式への変換で最速を記録したのはRyzen 7 5800Xで、Core i9-11900Kはトップと10~19%差、2番手のCore i9-10900Kと4~9%差の3番手だった。

 H.265形式への変換でも最速はRyzen 7 5800Xで、Core i9-11900Kはトップと15~19%差の全体3番手に位置している。2番手はCore i9-10900Kで、Core i5-11600KはCore i9-11900Kと20~28%差の4番手。

【グラフ08】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.19.21)「H.264形式へのエンコード」
【グラフ09】TMPGEnc Video Mastering Works 7 (v7.0.19.21)「H.265形式へのエンコード」

PCMark 10

 PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。

 総合スコアのトップはRyzen 7 5800Xで、以下Core i9-11900K、Core i5-11600K、Core i9-10900Kの順で続いている。アプリの起動速度などを測定するEssentialsや、オフィスアプリなどをテストするProductivityでは、シングルスレッド性能に優れるRocket Lake-Sが優れたスコアを記録しており、前世代最上位のCore i9-10900Kに対し、Core i9-11900Kは9~13%、Core i5-11600Kも4~7%の差をつけた。

【グラフ10】PCMark 10 Extended (v2.1.2508)

SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」

 SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。

 CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、もっともコア数の多いCore i9-10900Kがトップスコアを記録しており、Core i9-11900Kとトップとの間には15~24%の差がついている。Core i9-11900KとCore i5-11600Kの差は24~34%。

 マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Ryzen 7 5800Xが倍精度までの演算ではトップに立っており、Core i9-11900Kに1~28%の差をつけているが、4倍精度ではCore i9-11900Kが全体トップのスコアを記録している。

 画像処理性能を測定するImage Processingでは、すべての項目でCore i9-11900Kが最速を記録しており、前世代最上位のCore i9-10900Kに9~130%、Ryzen 7 5800Xに19~91%の差をつけている。Core i5-11600KもRyzen 7 5800Xを全項目で上回り、Core i9-11900KにもMarbling以外の処理で勝利している。

【グラフ11】SiSoftware Sandra v31.11 「Processor Arithmetic (プロセッサの性能)」
【グラフ12】SiSoftware Sandra v31.11 「Processor Multi-Media (マルチメディア処理)」
【グラフ13】SiSoftware Sandra v31.11 「Processor Image Processing (画像処理)」

SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」

 メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、Core i9-11900Kが41.15GB/sで最速を記録し、40.38GB/sを記録したCore i5-11600Kが2番手に位置している。

 「Cache & Memory Latency」で測定したメモリレイテンシでは、36.3nsのCore i5-11600Kが最速で、36.7nsのCore i9-11900Kが2番手だった。

【グラフ14】SiSoftware Sandra v31.11 「Memory Bandwidth (メモリ帯域幅)」
【グラフ15】SiSoftware Sandra v31.11 「Cache & Memory Latency (メモリレイテンシ)」

SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」

 CPUが備えるキャッシュのパフォーマンスを測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。

 キャッシュ容量やコア数の差による帯域幅の差はあるものの、Rocket Lake-SとCore i9-11900Kのキャッシュ速度やレイテンシにそこまで大きな差はみられず、256MBや1GBメインメモリへのアクセスレイテンシが減少していることが確認できる。

【グラフ16】SiSoftware Sandra v31.11 「Cache & Memory Latency (レイテンシ)」
【グラフ17】SiSoftware Sandra v31.11 「Cache & Memory Latency (クロック)」
【グラフ18】SiSoftware Sandra v31.11 「Cache Bandwidth」

3DMark

 3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」を実行した。

 Fire StrikeではRyzen 7 5800Xが最速を記録しているものの、Time SpyとWild LifeではCore i9-11900Kが全体ベストのスコアを記録した。Core i5-11600KはWild Lifeで2番手の結果を残しているが、CPUのマルチスレッド性能がスコアに反映されやすいTime SpyとFire Strikeでは比較製品中最下位に沈んでいる。

【グラフ19】3DMark v2.17.7137「Time Spy」
【グラフ20】3DMark v2.17.7137「Fire Strike」
【グラフ21】3DMark v2.17.7137「Wild Life」

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、描画設定を「最高品質」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 Core i9-11900Kは、CPUがボトルネックになっているWQHD以下の解像度でCore i9-10900Kに11~12%の差をつけており、同条件ではCore i5-11600KもCore i9-10900Kに約6%の差をつけている。前世代からの進化を感じられる結果だが、WQHD以下でここでトップに立っているのはRyzen 7 5800Xで、2番手のCore i9-11900Kに11~12%の差をつけている。

【グラフ22】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画設定を「高品質」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。

 ここでは、Rocket Lake-Sの2モデルとRyzen 7 5800Xが同程度のスコアを記録しており、もっともCPU性能が反映されやすいフルHD解像度において、7~9%程度の差をCore i9-10900Kにつけている。

【グラフ23】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3

フォートナイト

 フォートナイトでは、描画設定を「最高」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。

 Core i9-11900KとRyzen 7 5800Xは、ほぼ同等のフレームレートを記録している。両CPUと比べるとフルHD時に3~4%の差をつけられているものの、Core i5-11600KもCore i9-10900Kを上回るパフォーマンスを発揮している。

【グラフ24】フォートナイト (v16.00)

Apex Legends

 Apex Legendsでは、描画設定をできるかぎり高く設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でフレームレートを測定した。なお、テスト時はフレームレートの上限を解除している。

 ここでは、Core i9-11900KとCore i5-11600Kがほぼ互角のフレームレートを記録しており、わずかな差でRyzen 7 5800Xを上回っている。また、前世代最上位のCore i9-10900Kに対しては4~7%の差をつけた。

【グラフ25】Apex Legends (v3.0.5.164)

レインボーシックス シージ

 レインボーシックス シージでは、描画設定を「最高」に固定して、フルHDから4Kまでの画面解像度でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「Vulkan」で、レンダリングのスケールは100%。

 フルHDではRyzen 7 5800XがCore i9-11900Kを約3%上回っているが、WQHD以上ではCore i9-11900KとCore i5-11600Kが比較製品中最高のフレームレートを記録している。

【グラフ26】レインボーシックス シージ (Y6S1)

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorでは、画面解像度をフルHDに固定して、4種類の描画設定でフレームレートの測定を行った。測定は、羽田空港から関西国際空港へのルートをAIに飛行させ、離陸後3分間のフレームレートを測定している。使用した機体は「Daher TBM 930」。

 Core i9-11900Kは、描画設定LOW-ENDとULTRAでトップに立っており、MEDIUMとHIGH-ENDではRyzen 7 5800Xに次ぐフレームレートを記録している。Core i5-11600Kは、ULTRA以外では3番手に位置しているが、ULTRAではCore i9-10900Kに逆転されている。

 Microsoft Flight SimulatorのULTRA設定は、多くのコアがアクティブになっている状態でのシングルスレッド性能が問われるため、全コアブースト時のCPUクロックが低めのCore i5-11600Kにとっては不利な条件だったようだ。

【グラフ27】Microsoft Flight Simulator (v1.14.6.0)

消費電力とCPU温度

 システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークとGPUベンチマークの結果を分割してグラフ化している。

 アイドル時の消費電力は、Rocket Lake-Sが74Wで横並びとなっており、Core i9-10900Kの63Wや、Ryzen 7 5800Xの61Wより10W以上高い数値となっている。Ryzen 7 5800Xはマザーボードが異なるため条件の違いが大きいが、同じマザーボードを使ったCore i9-10900Kとの差をみると、ビデオカードとのPCI Express 4.0接続や、チップセットとのDMI 3.0 x8接続などでアイドル時消費電力が増加しているように見える。

 ピーク消費電力については、Core i9-11900Kがほとんどのテストで最大消費電力を記録しており、FINAL FANTASY XVベンチマーク中には、比較製品の中でただ1つ600Wを超える消費電力を記録している。PL2ブーストの電力リミットが251Wと、Core i9-10900Kの229Wより高く設定されていることも1つだけ抜きんでた数値となっている要因だが、電源ユニットには瞬間的な大電力を賄えるものを選びたい。

【グラフ28】システムの消費電力 (CPUベンチマーク)
【グラフ29】システムの消費電力 (GPUベンチマーク)

 続いて、Rocket Lake-SでCINEBENCH R23を実行したさいのモニタリングデータと、同データからCPU温度についてまとめたグラフを紹介する。

 CINEBENCH R23実行中の最大CPU温度は、Core i9-11900Kが79℃で、Core i5-11600Kが65℃。CPU使用率が40%以上で動作しているさいのCPU温度を平均すると、それぞれ55.5℃と59.8℃だった。

 モニタリングデータをみると、Core i9-11900Kは最初の1分弱の間、PL2ブーストのリミットいっぱいの250W前後の電力を消費しながら5GHz弱で動作したあと、PL1ブーストのリミット値である約125Wの電力を消費しながら4.2GHz前後で動作している。

 一方、Core i5-11600Kは、テスト開始から2分弱にわたって140W弱の電力を消費しながら約4.6GHzで動作しており、消費電力が125Wに制限された後は4.4~4.5GHz程度のクロックで動作している。

【グラフ30】CPUの温度「HWiNFO64 Pro v7.00 (CPU Package)」
【グラフ31】Core i9-11900K のモニタリングデータ
【グラフ32】Core i5-11600K のモニタリングデータ

内蔵GPUでベンチマークテストを実行

 ここからは、CPU内蔵GPUでベンチマークテストを実行した結果を紹介する。

 テスト環境は先の機材からビデオカードを取り外したもので、Rocket Lake-Sにはレビュアー向けのテスト用ドライバ、Core i9-10900Kにはテスト時点での最新版ドライバを適用している。そのほかの機材は以下のとおり。

【表3】テスト機材一覧
CPUCore i9-11900KCore i5-11600KCore i9-10900K
コア数/スレッド数8/166/1210/20
CPUパワーリミットPL1:125W、PL2:251W、Tau:56秒PL1:125W、PL2:251W、Tau:56秒PL1:125W、PL2:229W、Tau:56秒
CPUクーラーASUS ROG RYUJIN 240 (ファンスピード=100%)
マザーボードASUS ROG MAXIMUS XIII HERO [UEFI:0602]ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI:3602]
メモリDDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V)DDR4-2933 16GB×2 (2ch、21-21-21-47、1.20V)
メモリコントローラ1,600MHz (Gear 1)1,600MHz (Gear 1)
CPU内蔵GPU (iGPU)UHD Graphics 750UHD Graphics 750UHD Graphics 630
システム用SSDSamsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用SSDCORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4)
電源Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum
iGPUドライバ27.20.100.922027.20.100.9316
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 20H2 / build 19042.868)
電源プランバランス
室温約24℃

 実行したベンチマークテストは、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「レインボーシックス シージ」、「VALORANT」。

 GPUアーキテクチャを「Xe」に刷新したUHD Graphics 750を備えるCore i9-11900KとCore i5-11600Kは、UHD Graphics 630を備えるCore i9-10900Kに対して、多くのテストで1.5倍前後という大差をつけている。

 もっとも、Rocket Lake-Sの内蔵GPUが前世代より進化していることはたしかだとしても、モバイル向けのTiger Lakeなどが備えるXeベースの内蔵GPU「Iris Xe Graphics」ほどの性能ではない。VALORANTのように軽いゲームであればプレイすることは可能だが、ゲーミング性能に多くを期待すべきではないだろう。

【グラフ33】3DMark v2.17.7137「Time Spy」
【グラフ34】3DMark v2.17.7137「Fire Strike」
【グラフ35】3DMark v2.17.7137「Wild Life」
【グラフ36】ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
【グラフ37】FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク v1.3
【グラフ38】レインボーシックス シージ (Y6S1)
【グラフ39】VALORANT (v02.05.00.533692)
【グラフ40】システムの消費電力

ゲーミング用CPUとして注目のRocket Lake-S

 設計を刷新してクロック当たりの性能を高めたRocket Lake-Sは、ゲーミングシーンにおいて前世代の最上位モデルを上回り、強力なライバルであるRyzen 5000シリーズとも勝負できるだけの実力を示した。

 前世代から最上位モデルのコア数が減ったこともあり、Ryzen 5000シリーズの優位を揺るがすほどのマルチスレッド性能は備えていないが、4万円弱で購入できるCore i5-10600Kもゲーミング性能は上々であり、発売以来品薄が続いているRyzen 5000シリーズより入手しやすいCPUとして、Rocket Lake-Sはゲーマーにとっての有力な選択肢となるだろう。

Rocket Lake最速ライブレビュー配信、やってます!

 Core i9-11900Kの実機ライブレビューを3月30日(火)22時よりYouTubeにて配信します! この記事の掲載と同時に配信開始、ライブ終了後はアーカイブが公開されます。

 MSI新宅洪一氏による同社Z590マザーボードの解説と、最新CPUを使った自作PC早組みチャレンジ企画もあります。解説は“KTU”こと加藤勝明氏と、“改造バカ”こと髙橋敏也氏。