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ハンドルが便利! コンパクト&高性能ゲーミングPC「G-Tune HL-B」をレビュー
2021年3月31日 09:50
株式会社マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-Tune」より、ハンドルつきミニタワー型ゲーミングPC「G-Tune HL-B」が発売された。直販価格は15万9,800円(税別)から。
本機はMini-ITXマザーボードを採用した、「G-Tune」ブランドのなかでももっともコンパクトなデスクトップPCとなる。設置場所に困らない省スペースゲーミングPCの人気は根強いが、本機は筐体上部にハンドルが装着されており、持ち運びも考慮されているのが特徴だ。
このシリーズはVRデバイスの人気が高まった数年前、パワフルなPCを持ち運びやすくする目的で開発された、と記憶している。VRにかぎって言えば、コロナ禍にある昨今は、ヘッドセットを装着して使うイベントの開催が難しく、また世界的な半導体不足の影響でビデオカードの入手が困難になっており、逆風は強い。
もちろん用途をVRに限定する必要はなく、一般のゲーミングPCとしても使えるので、コンパクトで可搬性に優れたゲーミングPCとして一定のニーズはあるだろう。それでは、本機の使用感をお伝えしていく。
ストレージも充実、小さくてもマルチに使える
「G-Tune HL-B」のスペックは下記のとおり。
【表1】G-Tune HL-B | |
---|---|
CPU | Core i7-10700(8コア/16スレッド、2.9~4.8GHz) |
チップセット | Intel B460(Mini-ITX) |
GPU | GeForce RTX 3060(12GB) |
メモリ | 16GB DDR4-2666(8GB×2) |
SSD | 512GB(M.2 NVMe) |
HDD | 2TB |
光学ドライブ | なし |
電源 | 700W(80PLUS Bronze) |
OS | Windows 10 Home 64bit |
汎用ポート | USB 3.0×6 |
カードスロット | なし |
映像出力 | HDMI、DisplayPort×3 |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5 |
その他 | PS/2コネクタ、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約178×395×285mm |
重量 | 約8kg |
価格 | 15万9,800円(税別) |
CPUは8コア16スレッドのCore i7-10700、GPUはGeForce RTX 3060。CPUが高めのミドルクラスゲーミングPCといった構成だ。メインメモリは16GB、SSDが512GBで、HDDも搭載する。光学ドライブは非搭載だが、カスタマイズでスロットイン式のDVDスーパーマルチドライブを内蔵できる。コンパクト筐体ながら汎用性は高い。
スペック的にユニークなのは、Wi-Fi 6対応の無線LANを標準搭載していること。持ち運びが楽な筐体なら、無線LANを搭載しているほうが利便性は上がるし、置き場所の選択肢も広がる。Bluetoothも標準搭載するので、キーボードやマウスのワイヤレス環境も構築しやすい。キーボードと言えば、PS/2コネクタも搭載しており、古いキーボードを愛用している人も安心だ。
カスタマイズの幅も広く、SSDは最大2TB、HDDは最大8TB、メインメモリも32GBまで選択可能。冷却性能を高めるため、熱伝導率の高いCPUグリスに変更できるのもおもしろい。電源もより変換効率に優れた80PLUS Goldのものに変更でき、省電力に加え発熱を減らす効果が期待できる。
性能は十分に発揮。VR用マシンとしても活躍できる
次は実機を使ってベンチマークテストを行なう。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2508」、「3DMark v2.17.7173」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.0」。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2508 | |
PCMark 10 | 6,511 |
Essentials | 9,833 |
Apps Start-up score | 13,976 |
Video Conferencing Score | 7,311 |
Web Browsing Score | 9,305 |
Productivity | 8,111 |
Spreadsheets Score | 9,517 |
Writing Score | 6,914 |
Digital Content Creation | 9,395 |
Photo Editing Score | 10,962 |
Rendering and Visualization Score | 13,245 |
Video Editing Score | 5,712 |
3DMark v2.17.7173 - Time Spy | |
Score | 8,736 |
Graphics score | 8,482 |
CPU score | 10,524 |
3DMark v2.17.7173 - Port Royal | |
Score | 4,959 |
3DMark v2.17.7173 - Fire Strike | |
Score | 19,451 |
Graphics score | 21,247 |
Physics score | 24,233 |
Combined score | 10,079 |
3DMark v2.17.7137 - Wild Life | |
Score | 45,146 |
3DMark v2.17.7173 - Night Raid | |
Score | 52,341 |
Graphics score | 96,621 |
CPU score | 14,552 |
VRMark v1.3.2020 - Orange Room | |
Score | 11,726 |
Average frame rate | 255.62FPS |
VRMark v1.3.2020 - Cyan Room | |
Score | 8,843 |
Average frame rate | 192.78FPS |
VRMark v1.3.2020 - Blue Room | |
Score | 2,531 |
Average frame rate | 55.18FPS |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質) | |
3,840×2,160ドット | 3,793 |
1,920×1,080ドット | 8,704 |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 7,107 |
1,920×1,080ドット | 18,559 |
Cinebench R23 | |
CPU(Multi Core) | 9,902pts |
CPU(Single Core) | 1,294pts |
4K解像度の結果を見ると、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では最高評価の「非常に快適」を獲得。「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では「普通」の評価となっており、実用的な範囲と言える。また「3DMark」の結果を見ても、フルHDであれば120fps以上の高リフレッシュレートにも対応できるゲームは多そうだ。
「VRMark」でも、もっとも処理が重い「Blue Room」では約55fpsで少々物足りないが、ほかの2つのテストは200fps前後の値となっており、とくにヘビーなVRゲームでなければ問題なさそうだ。
コンパクトな筐体なので冷却面も気になるところだが、Core i7-10700を搭載したほかのPCと比べるとむしろ良好なスコアが出ており、十分に冷却できていることがうかがえる。性能面での心配はなさそうだ。
ストレージは、SSDはADATA製「SX6000PNP」、HDDはSeagate製「ST2000DM005」が使われていた。「SX6000PNP」はNVMe SSDとしては廉価なモデルだが、シーケンシャルリードでは2GB/sを超えるなど、実用上で気になることはないであろう速度は確保している。HDDは3.5インチタイプで、速度も約200MB/sと問題ない。
コンパクトケースでもバランスの取れた排熱
続いて実機を見ていこう。ケースは先述のとおり、天面に取っ手がついためずらしい外見をしている。前面と天面が緩い曲面になっているのもユニークだ。筐体はほぼ全体がマットブラックで統一されており、ほかは前面にあるパワーLEDの赤いラインと、取っ手のグレーが見える程度。地味ながら、ところどころに存在感を出している。
「約8kgもある筐体を、この取っ手で持ち上げて大丈夫か?」という不安もありそうだが、実際に持ってみると、筐体がきしむこともなく安定して持ち上げられる。ただ重量バランス的に、後ろが下がるかたちで斜めになってしまうので、もう少し後方(筐体中央付近)に取っ手があってもいいかなとは思う。もっとも、そんなに頻繁に本機を持ち運ぶ人もいないとは思うが。
電源ボタンは右側面にあり、USB端子やヘッドフォン、マイク端子もその下に並ぶ。小型筐体で、かつボタンや端子が筐体の中央から下部に並ぶので、使いやすさを考えると卓上で使用者の左側がベスト。右側にすると端子の使い勝手が悪くなり、床置きすると電源やヘッドフォン端子がかなり遠くなる。製品写真を参考に、購入前にあらかじめ使用環境をイメージしておくほうがいいだろう。
筐体の側面はどちらも広く網目状の穴が空けられている。騒音対策の面では不利になるが、パワフルな小型筐体ゆえに、内部の放熱には苦心していると思われる。実際のエアフローは内部を開けて確かめたい。
左サイドパネルを開けてみると、手前に金属プレートが出てくる。このプレートはネジ止めされているので外してみると、上に持ち上がるように開いて外せるようになっている。プレート部には3.5インチHDDが取りつけられており、さらに2基の2.5インチベイが空いている状態だ。
内部を見ると、想像どおりかなり狭い。前方上部に電源があり、後方はマザーボードの上にサイドフローのCPUファンが乗っている。下部はビデオカードがほぼ占有するかたちだ。
ケースファンは見当たらず、各パーツのファンでエアフローを作っている。電源は右側面から吸気し、ケース内の上方に排気。CPUファンは前方から後方に流れるかたちで、電源の排気とともに背面から排気する流れ。ビデオカードは底面から吸気し、背面から排気。ただ左側面も大きく開いているので、全体として空気の出入りはしやすいかたちになっている。
かなり詰め込んでいるのは確かだが、CPUやビデオカードの周辺はうまくスペースが取ってあり、うまく排熱できるよう配置できているように思う。配線の残りが、電源の下方、前方下部にぎゅうぎゅうにまとめられており、そもそもの配線自体を減らしてほしい気もしないでもない。ただ前方からの吸気に頼ったエアフローではないので、実使用上に問題はないだろう。
さらに右サイドパネルを開けると、電源やマザーボードの裏面が見えるほか、マザーボードの下部にさらに2.5インチベイがある。最近はM.2タイプのSSDが安価になったこともあり、2.5インチベイが使われる機会も減りつつあるが、あとから計3基のSSDやHDDを増設可能というのは、このサイズのケースであることを思うと相当がんばっている。Mini-ITXのケースとしてもなかなか魅力的だ。
コンパクトで安いゲーミングPCが欲しいなら安定・安心の1台
コンパクトなゲーミングPCが欲しい人にとっては、本機はかなり魅力的であろう。基本的なデザインは落ち着いた印象で、ゲーミングPCであることをことさらに主張しない。
性能的にもミドルクラスのゲーミングPCとしては満足がいく。CPUやビデオカードはカスタマイズできないものの、メモリやストレージ、光学ドライブは増強できる。価格もコンパクトなゲーミングPCながら高価に設定されているわけでもない。
弱点もなくはない。ケースの開放部が多いため、騒音が漏れやすい。高負荷になるとCPUとGPUのファンの音がはっきりと聞こえている。ただどちらも各パーツの元々の騒音レベルがそこまで大きくはないので、同レベルの構成でより大型のゲーミングPCに比べれば騒音が聞こえやすい、という程度ではある。
ほかにはUSB Type-Cがないのは気になる。拡張スロットに空きがないので、あとで増設もできない。USBなので端子を変換して使えなくはないが、将来性を考えれば1つは用意しておいてほしいところだ。
トータルすると、取っ手の必要性の有無に関わらず、お買い得感のある製品であるのは確か。コンパクトなゲーミングPC自体にそれほど選択肢がないなか、価格的にも比較的安価で、設計も十分よくできている。もちろん、持ち運べることも大きなメリットだし、それゆえか一般的なゲーミングPCよりも堅牢性が高いように感じる。見た目や性能が気に入れば、あらゆる意味で安心して買える1台だ。