Hothotレビュー
60万円台の2画面最強ゲーミングノートがASUSから登場! 「ROG Zephyrus Duo 15」を試す
2020年7月24日 06:55
ASUSの2画面縦配置ノートがまた進化を遂げた。今回紹介する「ROG Zephyrus Duo 15」は、メインパネルのほかに、同じ幅、同じ水平解像度のサブパネルを搭載。デザインでは昨年(2019年)発売の2画面ノート「ZenBook Pro Duo」を継承しつつ、ゲーミング向けにアレンジしたモデルだ。
ROG Zephyrus Duo 15は最上級のCPUに最上級をGPUを組み合わせ、さらに4K 2画面といったモンスタースペック。税別636,182円でコストパフォーマンスは度外視だが、そうした価格的なところよりも「至高のゲーミングノートPC」、あるいは「超強力なクリエイターノートPC」を求めるニーズに向けた製品と言える。
2画面ノートPCを実現するレイアウトはいくつかあるが、ASUSはZenBook Pro Duoで縦2画面を打ち出した。メインディスプレイは通常のノートPC同様、キーボードの奥に縦解像度を切り詰めたサブディスプレイ「ScreenPad Plus」をレイアウトし、縦2画面でキーボードも利用できるというデザインだ。
ROG Zephyrus Duo 15もこのレイアウトを継承しているが、1つ異なるのはサブディスプレイが持ち上がる「Active Aerodynamic System Plus(AAS+)」だ。ZenBook Pro Duoはヒンジの機構(エルゴリフト)で持ち上がっていたが、ROG Zephyrus Duo 15のメインディスプレイは通常のヒンジでサブディスプレイは独立して持ち上がる。
このサブディスプレイのリフト機構を採用するメリットは2つ。1つはヒンジで持ち上げさせるよりも角度を立てることができ、見やすくなっている点だ。もともと対策が施されているとは言え、多少気になった天井照明の反射の影響も少し解消される。
もう1つが冷却だ。ゲーミングノートPCの内部設計として、ヒンジに近い部分にCPUやGPUを置く。ちょうどサブディスプレイの下にあたる部分だ。サブディスプレイが持ち上げることでここに開口部が生まれ、熱源にもっとも近い部分に大きな吸気口を設けることができる。
ROG Zephyrus Duo 15のメインディスプレイは15.6型で解像度が4K(3,840×2,160ドット)。サブディスプレイは14型で解像度が3,840×1,100ドット。横解像度はまったく同じなので、ウィンドウをサブディスプレイに移動させたさいも大きさが切り換わるといったことがない。
また、サブディスプレイ側のみタッチ操作もサポートしている。ゲームではあまりよいアイデアが思いつかないが、画像編集や音楽制作などでのコマンド系のパネルをサブディスプレイ側に表示させれば、タッチ操作ですばやい調節が可能になるといった使い方が考えられる。
また、メインディスプレイはAdobe RGBカバー率100%、サブディスプレイはsRGBカバー率100%と、色域が高いものを採用している。実際にはAdobe RGBとsRGBでは異なるため両パネルでスペックを統一されているほうがグラフィックス用途では望ましいが、ゲーミング用途であればそこまでのスペックは求められないだろう。もちろん、どちらのパネルの視野角も実運用で問題ないレベルだ。
2画面レイアウトによりサイズはやや大きく入力系レイアウトはクセがある
こうしたデザインのため、ROG Zephyrus Duo 15は、通常の15.6型ノートPCのイメージよりも縦が長めだ。本体サイズは360×268×20.9~23.0mm(幅×奥行き×高さ)。縦横比で言えば11:8あたりだろうか。そして重量は約2.5kg。基本的に据え置きのデスクトップ代替用途だ。
キーボードは、サブディスプレイの搭載によって手前に寄せられている。本体上にパームレストのスペースはない。代わりに単体パームレストが付属する。また、パームレストがないから通常、キーボード手前に配置されるタッチパッドも本製品ではキーボードの右に移設され、しかも縦長となっている。この意味でサブディスプレイによって入力系インターフェイスに制限が生まれていることは確かだ。
本体インターフェイスは左右および背面。左側面は電源ジャックとマイク、ヘッドセットのみ。右側面はUSB 3.0×2、Thunderbolt 3(DisplayPort Alt Mode、USB PD対応)。背面はGigabit Ethernet、USB 3.1、HDMI。背面にLANやHDMIといった“つけっぱなしにしがち”な端子を配置しているのはケーブルレイアウト時にスッキリと見せることができ、操作の邪魔にならない点でよい。
一方、USBは左側面にもほしいと思うシーンがあった。背面の1ポートがこれに近いとしても、液晶パネルの裏にあたるため頻繁に着脱するUSB機器向きではない。
ACアダプタは出力240WのものでいわゆるハイエンドゲーミングノートPCでは一般的な大型のものだ。と言っても従来のゲーミングPCに比べればずいぶん小型である。持ち運びには適さないが据え置きで邪魔になるというほどでもない。
最高のCPUにGPU、メモリやストレージにいたるまで妥協がないスペック
内部スペックは、おそらく現時点でモバイル向け、マルチGPU製品を除けば最高と言える。CPUはCore i9-10980HK。8コア16スレッドで最大クロック5.3GHzといった仕様だ。IntelのCoreプロセッサはデスクトップ向けで10コアモデルが登場しているとは言え、モバイル向けではまだライバルのAMDも含めて8コア16スレッドが最大スペックだ。
GPUはGeForce RTX 2080 SUPER Max-Q。GeForce RTXシリーズのモバイル向けGPUで最上位のものだ。3,072基のCUDAコアを搭載しメモリも256bit接続で8GBと、大電力、高発熱と引き換えに高い3D性能を実現する。また、RTX世代のリアルタイムレイトレーシングやDLSSといった機能が利用できるところも画質、フレームレートの点で強力だ。
こうしたCPU、GPUともにモバイル向けの最上位を搭載するROG Zephyrus Duo 15は、これをしっかり冷やすだけの冷却が重要だ。1つは先に紹介したリフトするサブディスプレイが生み出す開口部。ただしそれだけではない。ヒートパイプ、ファン、ヒートシンクといった一般的な冷却パーツも接触面積や大きさ、薄さなどで工夫を凝らすとともに、熱伝導率が高いことで知られる「液体金属グリス」を採用した。それもオーバークロック用高性能グリスで知られるドイツ「Thermal Grizzly」製のものが使われている。
通常、CPUやGPUクーラーで用いられるのはシリコングリス。シリコンをベースに金属粉末などを添加し熱伝導率を高めているが、液体金属グリスはそもそも金属なので熱伝導率が高い。一方で金属であるために導電性もある。正確に塗布をする技術も必要だ。ROG Zephyrus Duo 15は、そうしたハードルを超えて製造される。この液体金属グリスを含めた冷却機構を「Intelligent Cooling 2.0」と呼んでいる。
そのほかのパーツではメモリにも注目したい。容量は32GB。デスクトップPCでは16GB×2枚で組むのが自作のトレンドになりつつあるが、モバイルではいまだに8GB×2枚が主流。標準搭載32GBなら当分の間メモリ不足に陥ることがない。
また、動作クロックはDDR4-3200だ。Core i9-10980HKの仕様ではDDR4-2933が最大だ。DDR4-3200駆動のROG Zephyrus Duo 15のメモリはOC動作ということになる。DDR4-3200でも実際にはDDR4-2933動作になるのかと思ったが、CPU-Zから見るかぎりDDR4-3200で動作しているようだ。ここは多少なり性能に寄与するのではないだろうか。
ストレージはSSD。NVMe接続で、1GBのSSDを2台搭載している。IntelプラットフォームなのでPCI Express 3.0 x4接続だが、シーケンシャルリードで3.5GB/s級の高速モデルだ。
このように2画面ディスプレイに最高のCPU&GPU、そしてメモリもSSDも大容量といった具合で、ハイエンドスペックが次々と出てくる。完璧を求めた妥協のないスペックだ。どれだけの性能になるのか気になるところだ。
圧倒的なゲーミング性能。そしてその性能はクリエイティブ用途にも最適
ではベンチマークで性能を見ていこう。ベンチマークに用いたのは、Futuremarkの「PCMark10」、「3DMark」、MAXON「CINEBENCH R20」、ペガシス「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、そして「HandBrake」。
ASUS ROG Zephyrus Duo 15 | ASUS ROG Zephyrus G14 | |
---|---|---|
CPU | Core i9-10980HK | Ryzen 9 4900HS |
GPU | GeForce RTX 2080 SUPER Max-Q | GeForce RTX 2060 with Max-Q |
メモリ | 32GB DDR4-3200 | 16GB DDR4-3200 |
ストレージ | 1TB NVMe SSD+1TB NVMe SSD | 1TB NVMe SSD |
OS | Windows 10 Home 64bit |
ASUS ROG Zephyrus Duo 15 | ASUS ROG Zephyrus G14 | |
---|---|---|
PCMark 10 | v2.1.2177 | v2.1.2177 |
Extended Score | 7,162 | 6,727 |
Essentials Scenario | 9,494 | 9,735 |
App Start-up Test | 12,404 | 12,805 |
Video Conferencing Test | 8,541 | 8,461 |
Web Browsing Tset | 8,079 | 8,517 |
Productivity Scenario | 8,982 | 7,578 |
Spreadsheets Test | 10,992 | 8,866 |
Writing Test | 7,341 | 6,478 |
Digital Content Creation Scenario | 5,291 | 6,697 |
Photo Editing Test | 11,519 | 11,166 |
Rendering and Visualization Test | 3,197 | 6,261 |
Video Editing Test | 4,024 | 4,297 |
Gaming Scenario | 15,763 | 11,205 |
Fire Strike Graphics Test | 21,683 | 14,324 |
Fire Strike Physics Test | 20,834 | 21,116 |
Fire Strike Combined Test | 8,995 | 6,684 |
3DMark | v2.11.6846 | v2.11.6846 |
TimeSpy Extreme | 4,030 | 2,728 |
TimeSpy | 8,443 | 5,876 |
FireStrike Ultra | 5,419 | 3,487 |
FireStrike Extreme | 10,215 | 6,834 |
FireStrike | 18,582 | 13,743 |
NightRaid | 27,192 | 27,977 |
SkyDiver | 29,854 | 29,778 |
CINEBENCH R20 | ||
CPU | 4,102 | 4,113 |
CPU(SingleCore) | 479 | 471 |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 | ||
4K/60p/MP4→フルHD/60p/H.265/HEVC/SW | 43.62fps | 21.92fps |
4K/60p/MP4→フルHD/60p/H.265/HEVC/HW_iGPU | 65.31fps | 42.45fps |
4K/60p/MP4→フルHD/60p/H.265/HEVC/HW_dGPU | 64.43fps | 44.38fps |
HandBreak | v1.3.0 | |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast SW | 49.32fps | 49.84fps |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast HW | 41.66fps | 63.99fps |
4K/60p/MP4→フルHD/30p/H.265/MP4 Fast HW | 45.17fps | 65.20fps |
PCMark 10はExtendedスコアで7,162。各シナリオまんべんなく高いスコアだがとくに高いのはGaming。GeForce RTX 2080 SUPER Max-Qの主戦場はゲームということになるだろう。Digital Content CreationはRendering and Visualization Testが伸び悩んでおり、これはドライバの問題と思われる。
このほか、CPU性能を測るCINEBENCH R20のスコアはおおむねAMD Ryzen 9 4900HSと同等レベルだ。モバイル向けの8コア16スレッドCPUの最上位同士、ほぼ同スコアというのは興味深い。
続いてゲームベンチマーク。「Red Dead Redemption 2」、「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を計測した。
ASUS ROG Zephyrus Duo 15 | ASUS ROG Zephyrus G14 | |
---|---|---|
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク | ||
3,840×2,160ドット、最高品質 | 7,569 | - |
2,560×1,440ドット、最高品質 | - | 9,248 |
1,920×1,080ドット、最高品質 | 16,705 | 12,560 |
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands | ||
3,840×2,160ドット、中 | 50.64fps | - |
2,560×1,440ドット、中 | - | 58.86fps |
2,560×1,440ドット、低 | - | 81.90fps |
1,920×1,080ドット、ウルトラ | 63.13fps | 43.98fps |
1,920×1,080ドット、非常に高い | 90.65fps | 66.02fps |
1,920×1,080ドット、高 | 101.98fps | 74.70fps |
Red Dead Redemption 2 | ||
1,920×1,080ドット、画質優先(Level 20) | 61.49fps | - |
1,920×1,080ドット、画質優先(Level 14) | 70.49fps | 39.78fps |
1,920×1,080ドット、バランス(Level 7) | 104.30fps | 60.49fps |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク | ||
3,840×2,160ドット、標準品質 | 3,944 | - |
3,840×2,160ドット、軽量品質 | 5,586 | - |
2,560×1,440ドット、高品質 | 5,864 | - |
2,560×1,440ドット、標準品質 | 7,133 | 5,357 |
2,560×1,440ドット、軽量品質 | 9,288 | 7,142 |
1,920×1,080ドット、高品質 | 8,021 | 6,050 |
1,920×1,080ドット、標準品質 | 10,380 | 7,906 |
1,920×1,080ドット、軽量品質 | 12,965 | 9,961 |
ゲームベンチマークで試したいくつかのゲームでは解像度の選択肢にWQHD(2,560×1,440ドット)が現れなかった。マルチディスプレイが原因ではないかと疑ったが、これをオフにしてシングルディスプレイ状態としてもWQHDの項目が現れることがなかった。そのためこれはドライバ側に問題があるのだと思われる。代わりに4Kパネルを搭載する製品ということで4Kでのテストを追加している。
GeForce RTX 2080 SUPER Max-Qを搭載するため、たとえばTom Clancy's Ghost Recon Wildlandsの1,920×1,080ドット(フルHD)、ウルトラ画質や、Red Dead Redemption 2の最大画質(21段階中の最高)で60fpsを超えている。フルHDに関しては重量級タイトルでも最高画質が望める。これはインパクトがある結果だろう。
4K解像度でのゲームプレイはタイトルと画質を選ぶ。ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークは最高画質でも余裕だが、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは軽量品質でも「やや快適」にとどまる。軽量なタイトル中心と考えるのがよいだろう。また、ゲーミングノートPCではあるが、ROG Zephyrus Duo 15の液晶パネルリフレッシュレートは60Hz駆動だ。その意味で60fpsラインを満たせばよい。
オンリーワンの存在でありROG Zephyrus Duo 15でしか実現できないものがある
ROG Zephyrus Duo 15はROGのフラグシップ、技術的に可能なすべてを注ぎ込んだノートPCということになるだろう。8コア16スレッドのCPU、モバイル向けで最上位のGPUといったスペックからも容易に予想できるところだが、PCとしての基本性能が高くゲーム性能も高い。とくにGPU側もハイエンドを搭載したことで真のフラグシップになったと言える。
初代ZenBook Pro DuoはGeForce RTX 2060だった。RTX 2080クラスは価格あるいは冷却面であきらめたのではないかと想像していた。しかしROG Zephyrus Duo 15はGeForce RTX 2080 SUPER Max-Qを搭載できた。価格を無視したのか、あるいはAAS+によって冷却が可能になったということだろう。
おそらく、Core i9-10980HKとGeForce RTX 2080 SUPER Max-Qの組み合わせは他社からも登場する。ただしマルチディスプレイでこのスペックを実現できるのはASUSだけだろう。その意味でオンリーワンな存在だ。コストパフォーマンスで語る製品ではない。