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“特別なRyzen”が切り開くスタンダードノートの新しい地平。NEC PC「LAVIE N15」を試す

Ryzen 7 Extreme Editionを搭載する「LAVIE N1585/AAL」

 Ryzenの登場で、AMDの存在感が増している。これは、パーツ単位で購入して自分で組み上げる「自作PC」だけの話ではない。メーカー製PCでも、AMD製CPUを搭載するモデルが増えてきているのだ。

 7月16日に発売されたNECパーソナルコンピュータ(NEC PC)のスタンダードノートPC「LAVIE N15」シリーズでも、Intel製CPUを搭載しているモデルは、全6モデル中1モデルしかない。ノートPCでは長らくIntel製CPU搭載モデルが主流だったことを考えると、隔世の感がある。

 今回はその最上位モデルにあたる「LAVIE N1585/AAL」を紹介したい。CPUにはAMDのWebサイトにも記載されていない8コア16スレッド対応の「Ryzen 7 Extreme Edition」を採用し、基本スペックが充実した高性能な15.6型ノートだ。

光学ドライブ搭載のスタンダードモデル

 LAVIE N15シリーズは、いわゆるホームユーザー向けのスタンダードノートPCで、15.6型ワイドの比較的大きめな液晶を搭載する。また最近のノートPCではめずらしく光学ドライブを搭載しており、LAVIE N1585/AALならBlu-rayビデオの鑑賞や、容量が大きなBD XLメディアのリード/ライトも可能。

 CPUのグレードやメモリ、内蔵ストレージの容量などが異なる6モデルを用意しており、今回試用したLAVIE N1585/AALは、CPUに8コア16スレッドのRyzen 7 Extreme Edition、メモリは16GB、ストレージは1TBのSSDなどを搭載する。実勢価格は20万円台半ばだ。

【表1】LAVIE N15シリーズのスペック
型番PC-N1585/AALPC-N1575/AA
OSWindows 10 Home
Microsoft OfficeHome & Business 2019
CPURyzen 7 Extreme Edition(1.8GHz)Core i7-10510U(1.8GHz)
メモリDDR4-2666 16GBDDR4-2666 8GB
ストレージ1TB(PCI Express)512GB(PCI Express)
光学ドライブBD-XLドライブ
ディスプレイ15.6型(1,920×1,080ドット)
通信IEEE 802.11ax、Bluetooth v5.0
おもなインターフェイスUSB 3.1 Type-C、USB 3.0×2、HDMI、Gigabit Ethernet、ヘッドフォン/マイク
カメラ92万画素
バッテリ駆動時間約7時間
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)362.4×253.8×22.7mm
重量約2.2kg約2.1kg
税別価格‭204,800円前後18万9,800円前後

 カラーは深みのあるブルーを基調とした「ネイビー」で、表面にはしっとりとした質感の塗装が施されている。ツルテカ感のない高級感のある塗装のおかげで、安っぽさはみじんも感じられない。他社製のミドルレンジホームユース向けノートPCを含めて考えても、デザインにはかなりこだわっている印象だ。

天板にはLAVIEのロゴが小さく入っているだけで、全体的に高級感のあるデザイン

 光学ドライブは右側面に装備する。ノートPCではスタンダードなトレイ引き出しタイプなので、光学メディアを利用するなら右側にある程度のスペースが必要となる。光学ドライブを搭載しながらも厚みは22.7mmと薄型設計だ。15型ノートPC対応のインナーケースにも、余裕を持って収納できた。

右側面には光学ドライブを搭載する
光学ドライブはトレイを側面に大きく引き出すタイプだ

 幅は362.4mm、奥行きは253.8mmで、15型前後の液晶を搭載するノートPCとしては一般的なサイズ感である。キーボードは横幅いっぱいを使い、テンキーも装備している。キーピッチやストロークも十分確保しており、タンタンと軽快にタイプできる。

横幅いっぱいを使ってゆったりとキーを配置している
右側にはテンキーを装備。Excelなどで数字を入力するときに便利だ

 タッチパッドは、メインキーの位置に合わせて左に寄せられた配置になっている。幅は実測値で10cm、奥行きも6cmとかなり広く取られている。すべすべとして触感や滑りもよく、マルチタッチによるスクロール機能などにも対応する。

 ホームユーザー向けのノートPCらしく、ドングルなしで利用できるBluetooth接続のマルチボタンマウスも付属するが、どちらを使っても快適な操作が可能だろう。

タッチパッドはボタンを装備せず、全面を操作に利用できるタイプ
Bluetoothでペアリング済みのマウスを同梱する

 メインキーとテンキーの間には特段スペースは設けられておらず、キートップや文字の色も同じなので、個人的には若干指先の動きに迷いが発生することもあった。テンキー自体は便利な物なので、キートップの色を変えるなどの工夫があるともっと便利になりそうだ。

 光学ドライブを右側面に配置し、薄型設計ということもあり、インターフェイスは左側面に集中する。左から電源端子、Gigabit Ethernet、HDMI、USB 3.1対応のUSB Type-Cポート、USB 3.0ポートという構成だ。周辺機器を利用する機会が多いなら、やはりこちら側にもある程度スペースを確保しておく必要がある。

インターフェイスが集中する左側面。USB Type-CポートはUSB PDや映像出力には対応しない
角形のコネクタを採用するコンパクトなACアダプタを同梱する

 指紋認証リーダは搭載しないが、液晶画面の上部に赤外線カメラを搭載する。Windows Helloの顔認証機能を利用して、Windows 10にサインインしたり、一部のWebブラウザの認証作業を行なえる。顔の情報を登録しておけば、カメラに顔を向けるだけで即座に認証作業が行なえるので非常に便利だ。

一般的なWebカメラではなく、顔認証に対応するIRカメラを搭載

 キーボードの右上、電源ボタンの左にある「ワンタッチスタートボタン」を押すと、作業内容に応じて適切なアプリを起動できる「LAVIEナビアプリ」が起動できる。PCの操作に慣れていないユーザー向けのナビアプリであり、ホームユース向けのLAVIEではおなじみのものだ。

 またこのボタンで起動するアプリは、「LAVIE簡単設定」アプリの「ワンタッチスタートボタン」から変更できる。よく使うアプリがあるなら、このボタンから起動できるように設定しておくと便利だろう。

電源ボタンの左に装備するワンタッチスタートボタン
自分がしたいことに合わせて起動するアプリを選択できる「LAVIEナビアプリ」
ハードウェアの設定をまとめた「LAVIE簡単設定」

Ryzen 7 Extreme Editionの圧倒的な性能に震える

 LAVIE N1585/AALでは、前述のとおりAMDのWebサイトにも記載がない「Ryzen 7 Extreme Edition」というCPUを搭載している。

 定格の動作クロックは1.8GHzで最大4.2GHz、8コア16スレッド対応、キャッシュメモリは12MBということで、AMDのラインナップと比較すると「AMD Ryzen 7 4800U」(L2キャッシュが4MB、L3キャッシュが8MBで合計12MB)に近い。

 こうした高性能CPUだけではなく、16GBの大容量メモリやPCI Express接続で1TBもの大容量SSDなど、高いレベルの基本スペックをサポートする本機が、どのくらいの性能を発揮してくれるのかが気になる人は多いだろう。いくつかの定番ベンチマークテストを実行して検証してみたい。

 比較対象は、筆者が所有するレノボの「Yoga C740(14)」だ。CPUは、今回のLAVIE N15シリーズのなかで唯一Intel製CPUを搭載する「LAVIE N1575/AA」と同じ「Core i7-10510U」(4コア8スレッド対応、1.8GHz)を搭載している。

 またBTOでメモリは16GB、SSDはPCI Express接続の512GBモデルに変更しているため、基本スペックはLAVIE N1575/AAにかなり近い。またCore i7-10510Uは、他社のホームユース向けスタンダードノートPCでも採用されていることが多いので、厳密ではないにせよ、そうしたモデルとの比較と考えてもよいだろう。

【表2】ベンチマーク結果
LAVIE N1585/AALYoga C740(14)
PCMark 10 Extended v2.1.2177
PCMark 10 Extended score4,2463,038
Essentials7,92110,053
App Start-up score8,56016,622
Video Conferencing score8,2177,259
Web Browsing score7,0668,120
Productivity7,5277,223
Spreadsheets score9,7058,235
Writing score5,8386,336
Digital Content Creation5,4753,208
Photo Editing score8,5024,020
Rendering and Visualization score5,5371,983
Video Editting score3,4874,142
Gaming2,692989
Graphics score3,5641,327
Physics score18,3518,212
Combined score1,097386
PCMark 10 Battery Test v2.1.2177
※バッテリー節約機能を有効、液晶の輝度は40%
MODERN OFFICE5時間24分計測せず
3DMark v2.11.6846
Time Spy1,226466
Fire Strike3,2481,196
Sky Diver11,7305,024
CINEBENCH R20.0
CPU3332cb1514cb
CPU(Single Core)472cb423cb
CINEBENCH R15.0
CPU1483cb686cb
CPU(Single Core)186cb180cb
CrystalDiskMark 7.0.0h
Q8T1 シーケンシャルリード3569.2 MB/s3256.07 MB/s
Q8T1 シーケンシャルライト3006.99 MB/s2710.18 MB/s
Q1T1 シーケンシャルリード2088.34 MB/s2223.98 MB/s
Q1T1 シーケンシャルライト2553.89 MB/s2050.67 MB/s
Q32T16 4Kランダムリード1880.49 MB/s973.12 MB/s
Q32T16 4K ランダムライト2131.73 MB/s470.96 MB/s
Q1T1 4Kランダムリード49.48 MB/s50.08 MB/s
Q1T1 4K ランダムライト160.87 MB/s149.99 MB/s
TMPGEnc Video Mastering Works 7
※1,920×1,080ドットでbitレート15~16Mbps、約3分の動画を、H264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま変更なし
H.264/AVC2分30秒6分21秒
H.264/AVC(Video Codec Engine/Quick Sync Video有効)42秒44秒
H.265/HEVC5分22秒12分18秒
H265/HEVC(Video Codec Engine/Quick Sync Video有効)43秒1分30秒

 8コア16スレッド対応というと、デスクトップPC向けのCPUでもハイエンドに近いレンジだ。そうしたスペックの高さを素直に反映し、CPU性能を反映しやすいCINEBENCHのスコアやTMPGEnc Video Mastering Works 7の動画エンコード速度は、ノートPCのレベルではない結果をたたき出した。もちろんYoga C740(14)とは比較にならない。

 内蔵GPUの性能は、3DMarkの結果で比較できる。こちらもIntelの内蔵GPUを利用するYoga C740(14)とは比べものにならないスコアであり、Ryzen 7 Extreme Editionが内蔵するGPU性能の高さを実感できる。

 実際のPCゲームでこうした性能差がどう反映されるのかが気になったので、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、および「ファイナルファンタジーXIV : 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」を実行させてみた。

 どちらのテストも解像度は1,920×1,080ドット、表示モードはフルスクリーンモードを選択している。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークは、Yoga C740(14)ではどちらの設定でもほぼコマ落ち状態で、ゲームにならないのに対し、LAVIE N1585/AALでは「軽量品質」モードならややコマ落ちが出てくるかな、という程度だった。

 ファイナルファンタジーXIV : 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、LAVIE N1585/AALなら「標準品質(ノートPC)」モードはもちろん、「高品質(ノートPC)」モードでも動きはなめらかだった。Yoga C740(14)で高品質(ノートPC)モードだと、かなり厳しい状況になる。

左はLAVIE N1585/AAL、右はYoga C740(14)でファイナルファンタジーXIV : 漆黒のヴィランズ ベンチマークを走らせた結果だ。Yoga C740(14)では設定の変更が必要と表示された

 今回のベンチマークテストでは、LAVIE N1585/AALとYoga C740(14)の違いが際立つ結果となった。ただこれは、Yoga C740(14)や、Core i7-10510Uを搭載する同クラスのノートPCの性能が低いことを示すわけではない。

 スタンダードPCの枠のなかで考えると、LAVIE N1585/AALの性能が飛び抜けて高いと考えたほうがいいように思う。筆者としても、外付けGPUを搭載しないスタンダードノートPCや、TDP 15WクラスのCPUを搭載することが多いモバイルノートPCで、ここまで圧倒的な性能を示したモデルはほぼ記憶にない。

 ただ、性能が高い場合は発熱状況も気になる。下記のグラフは、3DMarkの「Time Spy」を実行中に、CPUの温度がどう変化するのかを、CPUIDの「HWMonitor Pro 1.41」で計測したものである。CPUにはそこそこ、内蔵GPUにはかなり大きな負荷のかかるテストであり、おもにPCゲームをプレイ中にどうなるのかということを想定したテストだ。

温度変化

 グラフを見ればわかるとおり、Time Spyの実行中は60~80℃の間で推移していることがわかる。過去に検証したことのある4コア8スレッド対応のCPUと、ほぼ同じレベルのCPU温度の状況で、ベンチマークテストの実行中は冷却ファンの音もそれなりに大きくなった。もちろんテストが終わればCPU温度は下がり、冷却ファンの音も静かになるので、うるさい状況が続くわけではない。

今後のAMD製CPU搭載ノートPCの試金石となるか

 見た目はシンプルなデザインのスタンダードPCながら、Ryzen 7 Extreme Editionによる圧倒的な性能に驚かされる高性能な1台だ。軽作業を中心とした日常的な操作はもちろん、最新のPCゲームも、設定次第では十分に楽しめるポテンシャルを秘める。BDビデオの再生やデータの書き込みなども行なえ、高い次元でバランスのとれた良機と言ってよいだろう。

 難点は、「20万円半ば」というスタンダードPCとしては高い価格設定だ。特別なCPUを搭載している以上、発売当初はどうしようもないことではある。これが17~18万円前後まで下がってくれば、かなり買い得感が出てくると思う。あるいは、8コア8スレッド対応の「Ryzen 7 4700U」を搭載する「LAVIE N1565/A」も狙い目だ。

 長くPC業界を見ている筆者にしても、ここまで性能に圧倒的な差がつく状況が生まれるとは思っていなかった。自作PC向けの単体CPUに続き、メーカー製のノートPCの分野でも、AMD製CPUを搭載するモデルが席巻するようになるのだろうか。今後の展開に注目したい。