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エンタメにも強いハイエンドビジネス2in1「ThinkPad X1 Yoga Gen 5」

ThinkPad X1 Yoga Gen 5は、360度回転ヒンジを備えたコンバーチブルタイプの2in1デバイスだ。名前が示すとおり、ThinkPad X1 Yogaとして5世代目の製品になる

 レノボ・ジャパンのThinkPad X1 Yoga Gen 5は、360度回転ヒンジを備えたコンバーチブルタイプの2in1デバイスだ。

 通常のノートPCとしてもタブレットとしても、あるいはその中間のスタイルでも使うことができ、タッチ操作やペンでの描画にも対応している。またIntel最新の第10世代CoreプロセッサーにThunderbolt 3、Wi-Fi 6、顔認証カメラなど、先進の装備を備える点も特徴だ。

 メモリやストレージなどのスペックをカスタマイズして注文できる「直販カスタマイズモデル」の評価機を入手できたので、使い勝手や性能を検証しよう。

ThinkPad X1 Yoga Gen 5(直販カスタマイズモデル)のスペック
CPUCore i7-10510(4コア8スレッド)
CPU周波数1.8GHz(最大4.9GHz)
メモリ16GB(LPDDR3-2133、デュアルチャネル対応)
ストレージSSD(PCI Express 3.0x4、512GB)
グラフィックス機能Intel UHD Graphics(CPU内蔵)
ディスプレイ14型光沢液晶、HDR Dolby Vision、10点マルチタッチ対応
表示解像度3,840×2,160ドット
カメラWebカメラ(720p)、Windows Hello顔認証対応IRカメラ
インターフェイスThunderbolt 3×2、USB 3.0×2、ヘッドフォン/マイク兼用、HDMI出力、セキュリティロック・スロット
通信機能Wi-Fi 6対応無線LAN(2.4Gbps)、Bluetooth 5、WWAN(LTE、SIMロックフリー)
サウンドステレオスピーカー
その他指紋センサー、ThinkPad Pen Pro
バッテリ駆動時間非公開
サイズ323×218×15.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量約1.36kg
OSWindows 10 Pro
直販価格276,375円

約1.36kgのコンバーチブル筐体

 筐体の基本設計は先代製品(ThinkPad X1 Yoga 2019)を引き継いでいる。ThinkPadシリーズはブラックのイメージが強いが、ThinkPad X1 Yogaは先代から筐体色に「アイアングレー」と呼ばれるグレーを採用している。

 筐体のメイン素材にアルミニウムを使い、表面はアルマイト加工が施され、質感高く仕上がっている。実際に持って見ると金属筐体ならではの高い剛性感があり、指紋などもつきにくく、とても好印象だ。

 具体的なサイズは、323×218×15.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.36kgだ。狭額縁デザインを採用し、従来の13型クラスのフットプリントで、14型の画面を搭載できている。

 公称のバッテリ駆動時間は、最大約19.3時間となっている。BTOではCore i5やフルHD解像度の液晶ディスプレイも選択できるため、Core i7と4K液晶ディスプレイの組み合わせの評価機では公称値よりも短いことが予想される。バッテリレポートで見たバッテリ容量は51Whで、十分な容量が搭載されている。

ヒンジは360度回転し、ノートPCとしてもタブレットとしても、その中間のスタイルでも利用できる
アルミニウムの削り出しで成型された筐体。「アイアングレー」と呼ばれるグレーのカラーリングを採用している
シンプルなデザインの底部。手前側にサブウーファを2基搭載している
公称重量は約1.36kg、実測重量はそれよりも少し軽かった
付属のACアダプタ(最大出力45W)の実測サイズは、約40×93×28.5mm(幅×奥行き×高さ)。ケーブル込の実測重量は254gだった
バッテリレポートの出力。バッテリの設計容量は51Whだ

第10世代Coreプロセッサー(Comet Lake-U)を採用

 CPUには、開発コードネーム「Comet Lake-U」こと第10世代Coreプロセッサーを搭載。BTOに対応しており、CPUは評価機と同じCore i7-10510UかCore i5-10210Uの2種類が選べる。

 Comet Lake-Uは6コア12スレッドのモデルもあるが、Core i7-10510Uは4コア8スレッドで、基本周波数が1.8GHz、最大周波数は4.9GHzという仕様だ。

 メモリはオンボードで最大容量は16GB、ストレージはPCI Express(NVMe)インターフェイスのM.2 SSDで、最大で2TBの選択肢も用意されている。

 評価機はメモリ16GB、SSD 512GBという構成だった。PCの起動、スリープからの復帰なども含めて、オフィスアプリケーションを快適に利用することができる内容だ。

評価機Core i7-10510Uは、4コア8スレッドで、最大4.9GHzで動作する
全コアターボするさいの最大周波数は4.3GHz。HWiNFOの表示では、PL1は7.5W、PL2は51Wとされている
ストレージはPCI Express(NVMe)インターフェイスのM.2 SSDを採用。容量は256GBから2TBまで選べる。評価機ではSamsungのPM981a(MZVLB512HBJQ)を搭載していた
CrystalDiskMark 7.0.0(ひよひよ氏・作)のスコア。PCI Express 3.0x4接続のSSDとしても高速な部類に入るスコアが出ている

ディスプレイとサウンドも良質

 14型画面の仕様は4種類から選べる。すべて視野角の広いIPS方式の液晶ディスプレイで、解像度は、3,840×2,160(4K)、2,560×1,440(WQHD)、1,920×1,080(フルHD)の3種類が選択可能。そして、フルHDのみは覗き見防止の内蔵型プライバシーフィルタ「ThinkPad Privacy Guard」が搭載されるタイプも用意される。

 評価機が搭載するのは、もっとも高精細な4Kパネルで、この4Kパネルのみ「Dolby Vision」(Dolby独自のHDR規格)にも対応しており、Netflixなどで配信されているDolby Vision対応コンテンツをDolby Visionならではの高色域の画質で楽しむことができる。

14型液晶ディスプレイは4種類から選択可能。評価機は、Dolby Visionに対応した4K UHD(3,840×2,160ドット)パネルを搭載。高精細かつ色鮮やかな表示が印象的だ

 エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」を使って計測した輝度やコントラスト比、色域も良好な数値を示した。

エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」を用いて作成したICCプロファイルをPhonon氏制作の色度図作成ソフト「Color AC」で表示した。実線が本製品の色域で、グレーの点線で示したのがsRGBの色域、紫の点線で示したのがAdobe RGB。sRGBカバー率は100%、Adobe RGBカバー率は84%
「i1 Display Pro」の計測結果。最大輝度481cd/m2(481nit)と、公称値(500nit)どおりとても明るく、液晶ディスプレイとしてはコントラスト比も高い。

 表面は光沢仕上げだ。色鮮やかに表示できる一方で照明や外光などが比較的映り込みやすいが、輝度が高いこともあってとくに映り込みが気になるようなことはなかった。

 サウンド機能にもこだわっている。スピーカーは、キーボード奥のツイータのほかに、底部にサブウーファを搭載しており、しっかりとした低音を再生可能。Dolby Atmosにも対応しており、臨場感あるサラウンドサウンドを楽しめる。また、天板には360度マイクを搭載しており、ビデオチャットなどの音声入力もクリアにできる。

キーボード奥と底部合計でスピーカーを搭載するクアッドスピーカーシステムを採用。Dolby Atmosにも対応しており、臨場感あるサラウンドサウンドを楽しめる。

ThinkPad X1シリーズならではの快適な入力環境

 キーピッチ約19mmを確保した6列アイソレーションタイプのキーボードを搭載する。ThinkPad X1 Extremeと比べると、少しストロークは浅め、わずかな頼りなさは感じるものの、キートップには軽いへこみがつけられていて指が置きやすく、スイッチの反発も強すぎることなく適度に調整されており、快適なタイピングができる。

 ポインティングデバイスとしては、タッチパッドのほかにThinkPadシリーズ独自のトラックポイントを搭載。キーボードのホームポジションから指を動かすことなく、中央のスティックに触れて、カーソルを動かしたい方向に軽く力をかけるだけで操作することができる。

アイソレーションタイプの6列キーボードを装備している。キーピッチは約19mmとゆったりとした配置。キートップにへこみがついていて指を置きやすく、快適なタイピングができる。
キーボードバックライトも装備している。

Thunderbolt 3、Wi-Fi 6など先進機能を装備、4G LTE対応も

 通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0を標準装備。WWAN(4G LTE)もBTOで選択可能だ。有線LANは「イーサネット拡張コネクター2」と呼ばれる専用端子に接続する「イーサネット拡張ケーブル2」での対応となる(BTOで選択)。

 本体装備のインターフェイスは、Thunderbolt 3(USB 3.1兼用)、USB 3.0 Type-Aを2基ずつ備えるほか、HDMI、ヘッドフォン/マイク兼用端子などを備える。メモリーカードスロットは省かれている。

 2基のThunderbolt 3は充電端子も兼ねており、最大45W仕様のACアダプタが付属する。なお、レノボはUSB PD(Power Delivery)への対応を公式に明記しておらず、スペック表の注釈にも「PC本体への充電は、Lenovo純正品のUSB Type-C ACアダプタのみ対応します」と記載されている。

 しかし、充電システムにUSB PDの仕様を利用していることはよく知られており、自己責任でUSB PD対応機器と同様の運用をすることは保証外ながら可能だ。

 画面の上には、ビデオ会議に便利な720p対応のWebカメラ、顔認証対応IRカメラを搭載。タッチパッド脇には指紋センサーも装備しており、Windows Helloの顔認証、指紋認証が利用可能だ。また、Webカメラは物理シャッターの「Think Shutter」により物理的に閉じることが可能で、カメラを悪用した盗撮などの不安を緩和できる。

前面。天板にある穴はデジタルマイクだ
背面。WWAN(4G LTE)のSIMカードスロットがある
SIMカードスロットはNano SIM用だ
HDMI、USB 3.0、ヘッドフォン/マイク兼用端子のほか、充電用端子を兼ねるThunderbolt 3が2基ある。手前側のThunderbolt 3には独自の「イーサネット拡張コネクター2」が隣接している
左側面にもUSB 3.0がある。一番奥は盗難防止ワイヤーを取りつけるセキュリティロック・スロット。電源ボタンの手前にはペンスロットがある
専用の「ThinkPad Pen Pro」が標準で付属。ペンスロットに入れておけば充電できるので便利だ。4,096段階の筆圧検知に対応する。適度な摩擦があってソフトな描き味。視差や遅延などもほとんど気にならない
タッチパッドの脇に指紋センサーを搭載している
Webカメラ、Windows Helloの顔認証対応カメラを搭載。物理的にシャッターを閉じる「Think Shuttter」機構も搭載されている

2世代前のノートPCからも堅実な進化

 ベンチマークテストの結果を見よう。比較対象として、筆者が所有する旧世代のノートPCで計測したスコアも掲載する。両者のスペックは表にまとめたとおりだ。

 比較対象も2年前の製品でCPUは4コア8スレッドなのでマルチスレッド性能ではあまり差がないが、シングルスレッド性能では大きな進歩が見られ、システムの総合性能を見るPCMark 10や3D描画性能のテストである3DMarkでも全般にスコアがよくなっている。

 バッテリ駆動時の性能と駆動時間を測定するPCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFEはディスプレイの輝度50%の状態で実行して、残り5%になるまでの駆動時間は8時間42分だった。高輝度の4Kディスプレイの搭載とバッテリ容量を考えると妥当な駆動時間だろう。

【表1】ベンチマークテスト環境
ThinkPad X1 Yoga Gen 5ThinkPad T480s
CPUCore i7-10510UCore i5-8250U
メモリLPDDR4-2133 16GBオンボード(デュアルチャネル)DDR4-2400 4GB+16GB(一部デュアルチャネル)
ストレージSamsung PM981a(512GB、PCI Express 3.0x4)WD Blue 3D NAND SATA SSD(1TB、SATA 6Gb/s)
グラフィックス機能Intel UHD Graphics(CPU内蔵)Intel UHD Graphics 620(CPU内蔵)
OSWindows 10 Pro(1909)Windows 10 Pro(1909)
【表2】ベンチマークテストの結果
ThinkPad X1 Yoga Gen 5ThinkPad T480s
CINEBENCH R15
CPU(cb)698695
CPUシングルコア(cb)175140
CINEBENCH R20
CPU(cb)1,6221,611
CPUシングルコア(cb)427347
PCMark 10
PCMark 103,8983,626
Essential8,5687,650
Productivity5,9255,698
Digital Content Creation3,1662,970
PCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFE
SCORE8時間42分7時間48分
Battery Life Performance4,2324,478
3DMark
FireStrike1,2391,061
Graphics1,3561,146
Physics10,4317,921
Combined418372
SkyDiver4,8954,445
Graphics4,5184,160
Physics8,7736,995
Combined4,7244,308
FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマーク
1,920×1,080/ノートPC標準/フル2,6161,799
ローディングタイム(秒)38.0267.41
CINEBENCH R20のスコア
PCMark 10のスコア
PCMark 10/Modern Office Battery Lifeのスコア
FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマークのスコア(1,920×1,080ドット、フルスクリーン、標準品質)

テレワーク適性、エンタメ適性も高い充実機能のビジネス2in1

 ThinkPad X1 Yoga Gen 5は、かなり欲張りな製品だ。ノートPCとしてもタブレットとしても使え、キーボードでもタッチ操作でもペンでも快適に操作できる。

 また、ビジネス向けに文句のない高性能にThunderbolt 3、Wi-Fi 6などの先進機能を備え、顔認証カメラや指紋センサーなどのセキュリティ機能、Webカメラ、360度マイク、高音質スピーカーなど、テレワーク/リモートワークに向いた機能も抜かりなく装備する。

 カードリーダが省かれていることには注意が必要だが、WWAN(4G LTE)、Dolby Vision対応4K UHD液晶ディスプレイ、内蔵型プライバシーフィルタ搭載液晶ディスプレイなど、ビジネスまたはエンターテイメント向けの付加価値をさらに高めるBTOオプションも用意されている。

 それだけに価格は少し高め。直販価格はほぼ毎週変動するが、最小構成で評価機と同等の構成だと税込で26万円前後といったところ。それでも十分に対価に見合う内容。ペンが使える2in1デバイスであることやThunderbolt 3/USB Type-Cを活用した先進的な運用に価値を見いだせるのであれば満足できる製品だろう。