Hothotレビュー

痒いところに手が届きまくる配信者向けミキサー「GoXLR」

~音質改善からボイスチェンジャーまでワンタッチでできる多機能コンソール

TC HELICON「GoXLR」

 インプレスeスポーツ部として、「ガチくんに!」、「喪服は準備したか!?」という定期配信を行なっていることもあり、そこで得た知見をまとめた記事を過去何本か掲載してきた(末尾の関連記事参照)。ただ、それらはおもに、画質向上を目指した内容だった。今回は、オーディオ周りについて、配信者にとってさまざまな便利機能を搭載したTC HELICON製オーディオインターフェイス「GoXLR」を紹介したい。

 ゲームに限らず、配信にとって重要なのは、トークがうまい、内容が役に立つ、ゲームでスーパープレイを見せてくれるなど、内容の自体の面白さだ。だが、画質や音質もいいに越したことはない。リアルタイムの配信は数時間ぶっ続けなんてのはザラなので、画質や音質が良くないと、観てる方が疲れてしまうからだ。

 では、音質を上げるためにはどうすればいいのだろうか? まずはマイクのグレードを上げることが挙げられる。ただ、マイクをいいものにすれば終わりというわけではない。音量のバランスや、反響や環境ノイズの低減なども地味ながら重要な要素だ。

 外部マイクを接続可能とし、こういったことを実現できるのが今回紹介するGoXLRだ。基本的には、GoXLRはミキサー機能を持つUSBオーディオインターフェイスだが、あまりに多機能なので、この製品のカテゴリを一言で表わすのは難しい。音質を上げるだけでなく、さまざまな楽しい機能や便利な機能も搭載している。価格は4万円少々と少し張るが、価格以上の機能を持っている。

マイクの接続。ダイナミックとコンデンサ、どちらを使うべき?

 GoXLR本体の前に、少しだけマイク選びの話をしよう。多くの配信者はゲーマー向けヘッドセット(ヘッドフォン+マイク)を使っているだろう。ヘッドセットは使いやすさの点では便利だが、音質の面ではあまり期待はできない。基本の音質を上げるには、まずオーディオ用マイクの購入をお勧めする。

 筆者はそこまでオーディオ機器に通じているわけではないが、1万円程度のオーディオマイクなら配信にはじゅうぶんな品質をもたらしてくれると言っていい。環境にもよるが、それ以上高級なものは、配信にはややオーバースペックとなるだろう。

ダイナミックのShure「SM58」とコンデンサマイクのオーディオテクニカ「AT2020」

 参考までに、ロジクールのヘッドセット「G633」と、Shureのダイナミックマイク「SM58」、オーディオテクニカのコンデンサマイク「AT2020」で録り比べしてみた。SM58とAT2020の音質の違いを感じるのは難しいが、ヘッドセットマイクだと音が痩せてしまっているのがわかるだろう。

3種類のマイクでの録り比べ

 オーディオ用マイクについてよくある疑問が、ダイナミックとコンデンサ、どちらを買えばいいのかということだ。マイクの特性としての違いを言うと、コンデンサ型はより感度が広く、かすかな音から大きな音まで拾ってくれる。それだけ聞くと、コンデンサマイクの方がいいように思うかもしれない。しかし、それは「音楽スタジオのような環境の整った場所で使う場合」という但し書きがつく。

 自宅では、エアコンなどの生活騒音をはじめ、PCのファンの音、キーボードの打鍵音など、自分が使っている分にはあまり気にならない音も、高感度なコンデンサマイクではしっかりと拾われてしまい、ノイズが目立つことがある。ということで筆者は最近、それまで使っていたAT2020から、SM58に買い換えた。これによって、環境ノイズを減らすことができた。

 先ほどの録り比べで、SM58とAT2020の音に「ぶ~ん」という環境ノイズが乗っていることに気づいた人もいるだろう。これは、筆者宅の環境照明に内蔵されたポンプの音だ。下記の画像は、それぞれのマイクで録音した上で、ノーマライズをかけた後の波形。どちらも、環境ノイズ(筆者宅のポンプの音)が入っているが、ダイナミックマイクの方が、しゃべっていないときの入力レベル(ノイズ音量)が小さいのがわかるだろう。

 とは言え、いずれの場合もポンプの音は入ってしまっているが、それについては解決策を後述する。

ダイナミックマイクで録音し、ノーマライズした後の波形
コンデンサマイクで録音し、ノーマライズした後の波形

 ダイナミックマイクの注意点として、口元になるべく近づけなければならない。筆者はもともと持っていたが、マイクアームのようなものが必要になる。一方、コンデンサマイクなら多少離れていても声を拾ってくれるので、机の上に置いておいても大丈夫。設置のしやすさはコンデンサ型だろう。このあたりは利用者の環境に依存するが、自宅配信でノイズが乗るのを減らすという観点からは、ダイナミックマイクの方がいい。

こういったマイク用アームを使うと、マイクを口元に持ってこられる

 ダイナミックマイクでも、多少は口から離れていても音は拾ってくれるが、そうすると壁で反響した声(エコー)の相対的音量が大きくなるぶん、声がこもってしまう。もちろん、コンデンサマイクでも口元から離れた場所に置くとそうなる。部屋の構造によっては、マイクが口元にあってもエコーが気になることがあるが、対策としては、カーテンに近い場所で利用する、床がフローリングならカーペットを敷くなどがある。ちょっと大変かもしれないが、壁に吸音材を貼るというのもある。

 これらオーディオ用マイクは一般的に、XLRと呼ばれる大きめの3ピンの端子を備えている。これは、そのままではPCにはつながらないので、オーディオインターフェイスと呼ばれる機器が必要となる。GoXLRにもXLR端子が1基備わっている。コンデンサ型はファンタム電源と呼ばれる電源供給が必要なのだが、GoXLRはそれにも対応しているので、どちらのタイプのマイクもつなげられる。

 一般的な音楽用のオーディオインターフェイスだと、ファンタム電源のオン/オフはボタンなどのハードウェアで行なうものが多いが、GoXLRでは「Mic Setup」の設定画面で「Condenser (+48V)」を選ぶとオンになる。マイク入力はXLR以外に3.5mmのジャックもあるので、ヘッドセットや3.5mm音声出力を持ったUSBマイクなどもつなげられる。

GoXLRはファンタム電源対応のXLR端子を装備。3.5mmマイク入力もある

コンプレッサーを使って音量を均一化

GoXLRアプリ

 使用にあたり、まずは公式サイトから「GOXLR App」をダウンロードしてインストールする。続いて、Windowsの「サウンドの設定」を開き、出力デバイスとして「System (TC-Helicon GoXLR)」を、入力デバイスとして「Chat Mic (TC-Helicon GoXLR)」を選ぶ。なお、残念ながらGoXLRはmacOSには対応していない。

 マイクを接続して最初に行なうのはマイクの設定。GoXLR App初回起動時は「Mic Setup」の画面が出るので、ダイナミックかコンデンサか3.5mmかを選ぶ。同時にプリアンプによるゲインも調整する。大きな声を出したときに、メーターが「Loud」にかかるかかからないかくらいに調整しよう。マックスまで振り切れてしまうと、音がクリップして割れてしまう。

マイクの設定。種類を選択し、ゲインを調整する

 基本的なマイクの設定は種類の選択とゲインの調整だけだが、コンプレッサーも設定しておきたい。コンプレッサーには5個の設定項目があり、細かい説明をするとそれだけで記事が1つできてしまうくらいなので、筆者の場合は、Threshold(閾値)を-14dB、Make-up Gainを6dBに変更し、あとはデフォルト(Ratio=4:1、Attack=10ms、Release=100ms)のままにしている。

コンプレッサーは、しきい値、比率、アタック時間、リリース時間、メイクアップゲインを個別に設定できる

 この設定では、音声レベルが-14dBに到達すると4:1の比率で音量にブレーキがかかる。こうすることで、ゲーム中に興奮して大きな声を出してしまっても、音声が割れる(0dBに達する)ことを防げる。同時に、6dBほど持ち上げることで、小さめの声を出したときは、GoXLRが音量を自動的に引き上げてくれ、音量がある程度均一化される。

 この音量バランスも、配信の音質における重要な要素だ。OBSやXSplitなどの配信ソフトのオーディオミキサーで声の音量を変えて話しても、音量が-10~-20dBくらいに収まっていることを確認しよう。

OBSは最初からオーディオのレベルメーターが表示されているが、XSplitの場合は、「拡張」→「Audio Mixer」を選択して、正確なオーディオレベルを確認しよう

 これ以外に、GoXLRは、マイク入力にEQ、ディエッサーをかけられる。EQは、音声に対して周波数帯ごとに音量を調節する機能。これも詳細説明は割愛するが、ざっくり低域(Bass)を下げて、人の声の周波数帯である中域(Mid)を目立たせることで、よりとおりが良くなる。細かい周波数帯ごとの設定もできる。ディエッサーをかけると、強くなりがちなサ行の音を低減してくれる。

マイクEQは、細かいバンドごとに設定可能。ディエッサー機能もある

 なお、これらの調整機能はGoXLRのハードウェアで行なわれるので、PCに負荷をかけることはない。

ノイズゲートによるノイズ抑制も可能だが、お勧めはRTX Voice

 さきほどのマイクの設定で1つ省略したものがある。それがノイズゲートだ。ノイズゲートを使うと、一定のレベル以下のマイク入力がカットされる。これを使うことで、エアコンやPCのファンの音、マウスのクリック音などが消え去る。このノイズ除去も音質改善では考慮したい点だ。

ノイズゲート機能では、しきい値、減衰率、アタック時間、リリース時間を設定可能

 ただ、結論から言うと、GoXLRのノイズゲートからは期待した結果を得られなかった。筆者は、配信のとき、背後の壁際の間接照明を点けている。この照明、中に水が入っており、下から空気をポンプで送り込むことで、中を泡が舞い、見栄えを向上させてくれる。しかし、同時にポンプがぶ~んというノイズを発し続ける。

配信映え用に使っている照明だが、ノイズが少し大きい

 このノイズがだいたい-40dBくらいなので、ノイズゲートで-40dB以下をカットするように調節すると、このノイズはきれいに消え去る。しかし、ひとたび声を発すると、その背後にはしっかりこのノイズが乗っている。また、声を出す(ゲートを開ける)、声を出し終わる(ゲートを閉じる)さいの音が不自然になる。いろいろ微調整してみたものの、最終的にこの機能は使わないことにした。

GoXLRのノイズゲートを使って録音した音声

 しかし、ノイズはできるだけ除去したい。挙げられる対策の1つが、BGMを常に鳴らすことだ。ゲームの配信なら、そのBGMがだいたい鳴っているだろう。BGMの音量が騒音より大きければ、何も話していないときでも、ただ「ぶ~ん」と鳴っているという状況を避けられる。それでも、ノイズが消えたわけではない。

 そこでお勧めしたいのが、最近NVIDIAが無償提供開始したGeForce RTXシリーズ対応のノイズ除去ソフト「RTX Voice」。このソフトを使うと、環境ノイズ問題が一気に解決される。このソフトは、GeForce RTXシリーズのユーザーなら、オーディオインターフェイスやマイクの種類を問わず利用できる。

 使い方だが、公式サイトからRTX Voiceをダウンロードして、インストール。

 起動したら、「Input Device」に「Chat Mic (TC-Helicon GoXLR)」を選び、「Remove background noise from my microphone」にチェックを入れる。「Noise Suppression(ノイズ抑制)」は最大でいいだろう。「Output Device」は「System (TC-Helicon GoXLR)」を選ぶ。これだけで、話していないときはもとより、話している時の環境ノイズやマウスのクリック音や、コントローラの操作音などがきれいさっぱり消えてなくなる。威力の程はサンプル動画を観てほしい。

 話ながら騒音が入ると、じゃっかん声が不自然になることもあるが、それでも見事と言うほかない。配信者なら、このためだけにGeForce RTXを買ってもいいのではと思うくらいだ。

RTX Voiceのデモ

 ただし、配信ソフトと組み合わせるには設定に工夫が必要となる。GoXLRはデフォルトで、配信におけるすべての音声入力と出力を統括する。RTX Voiceの処理に多少の遅延が発生するため、デフォルト設定だとGoXLRのマイク入力がまず配信に乗り、そこからコンマ何秒か遅れてRTX Voiceで処理された音声も乗ってしまう。

 それを避けるため、OBSでは音声設定の「デスクトップ音声」を無効にし、マイク音声を「Broadcast Stream Mix (TC-Helicon GoXLR)」に、マイク音声2を「マイク(NVIDIA RTX Voice)」にする。

 XSplitでは、オーディオ設定で「システムサウンド」を「System (TC-Helicon GoXLR)」にし、「マイク」を「Broadcast Stream Mix (TC-Helicon GoXLR)」にする。加えて、シーンのソースからに「ソースの追加」→「デバイス」→「オーディオ」→「マイク(NVIDIA RTX Voice)」を追加。また、このマイクのプロパティで「オーディオ出力」を「放送のみ」にする。

 これら配信ソフトの設定ができたら、GoXLRアプリで「ROUTING」タブを開き、「Mic」列の「Broadcast Stream Mix」のチェックボックスを外し、「Chat Mic」のチェックボックスはオンにしておく。

 なお、RTX Voiceによる音声遅延を考慮し、OBS、XSplitとも、カメラ映像には数百msの遅延をかける必要がある。

 ちなみに、一般的なオーディオインターフェイスだと、XLRでの音声入力がステレオのLかRに割り当てられ、配信ソフト側でモノラルミックスダウンする必要があるが、GoXLRではそれは不要だ。

強力なルーティング機能で配信に乗せたい音だけを選択可能

 さきほど、RTX Voiceの設定に関して「ROUTING」の設定を変更したが、これも配信にはひじょうに便利に活用できる。

 GoXLRでは、入力系統として、Mic、Chat、Music、Game、Console、Line In、Sysytem、Samplesの8系統がある。Windowsからもこれらは個別の入力として認識される。このうち、MicはXLRか3.5mmマイク入力、CosoleはS/PDIF入力、Line Inは3.5mmライン入力そのもの、つまり物理的な入力となる。Samplesも、サンプラーボタンに割り当てられた物理的な入力だが、この説明は後に回す。

ルーティングの設定画面

 これ以外の、Chat、Music、Game、Systemは、Windows上で鳴る音をソフトで割り当てたものとなる。たとえば、音声チャットソフトでDiscordを使うなら、その出力デバイスとして「Chat (TC-Helicon GoXLR)」を選ぶ。これで、Discordから聞こえる音声は、GoXLRのChatから出力される。

 デフォルトでは、GoXLRは、フェーダーの左から3番目にVoice Chatが割り当てられているので、これを上に動かすと相手の音声が大きくなり、下に動かせば小さくなる。そして、一番下のミュートボタンを押せば、まったく聞こえなくなる。

 さて、音声チャットの相手の音声を配信に乗せたくなかったとしよう。その場合は、GoXLRアプリのROUTINGでChat列のBroadcast Stream Mixをオフにすればいい。Headphoneにチェックが入ってさえいれば、自分にしか聞こえなくなる。

 同様にして、ゲーム中にゲームBGM以外の音楽を聴きたい場合。多くの音楽は著作権の観点から許諾なく配信には乗せられない。そういうときは、Game列のBroadcast Stream Mixはオンのまま、Music列をオフにすれば、配信ではゲームBGMのみが聞こえ、自分には音楽のみが聞こえるという具合だ。

 ただし、どの音声がMusicで、どの音声がGameかは、GoXLRは自動判別はできない。そこで、Windowsのサウンドの設定で「詳細オプション」のアプリの音量とデバイスの設定を開き、たとえばSpotifyアプリの出力を「Music (TC-Helicon GoXLR)」にして、Fortniteの出力を「Game (TC-Helicon GoXLR)」という具合に、事前に個別設定しておく必要がある。なお、各アプリは起動していないと、この一覧に出てこないので、起動してから変更しよう。

アプリごとに出力を変えることで、GoXLRの柔軟なルーティング機能を活用できる

 Music、Chat、Gameに割り当てた以外の音声は、デフォルト、すなわちSystem系統から出力される。通常、配信に乗せる必要がある音声は、マイク、チャット音声、ゲーム音、音楽(著作権的にOKな範囲で)くらい。逆に言うと、LINEなどの各種通知音や、USBデバイスをつないだときのシステム音などは乗せる必要がないし、乗せたくない。そこで、こちらもROUTINGでSysytem列のBroadcast Stream Mixをオフにしておけば、配信に乗らなくなるし、なんならSystem列のHeadphonesもオフにしておけば、一切鳴らなくなるので、ゲーム中に集中を削がれなくなる。

 ただ、残念なことに、筆者が頻繁にプレイする「ストリートファイターV」については、割り当てを変えても、Systemからしか音を出力できなかった。

 なお、GoXLRの出力にはヘッドフォンとラインの2つがある。これらは個別にルーティング設定できるので、たとえば、System入力をBroadcast Stream Mixに対してはオフ、Line Outにはオンとしておくと、OSの警告音などは配信には乗らないが、普段使いのスピーカーからは聞こえるようになる。

ミュートまで多機能なMixer周り

 GoXLR本体のフェーダーは、デフォルトで左からMic、Music、Voice Chat、Systemが割り当てられているが、GoXLRアプリで自由に変更できる。本体のフェーダーの上には個別の小さな液晶画面があるが、ここに表示する文字やアイコンもユーザーが変更できる。

GoXLRのフェーダー。割り当ては自由に変えられる

 物理フェーダーにVoice ChatやGameなどを割り当てておくと、配信中に「ちょっとボイスチャットorゲーム音が大きいかも」と視聴者からコメントされたさいに、ゲームやアプリの設定を開かずとも手元ですぐに変更できる。

 そして、先に説明したとおり、フェーダーの下のミュートボタンを押せば、即ミュートにできる。じつはこのミュートボタンも多機能なのだ。

 初期設定では、ミュートボタンは、Headphones、Broadcast Stream Mix、Line Out、Chat Micという4つの全出力に対して機能する。つまり、Voice Chatフェーダーのミュートボタンを押すと、配信にも乗らなくなり、自分のヘッドフォンからも聞こえなくなる。GoXLRアプリの「MIXER」タブで、「MUTE」のオプションが「Mute All」になっているからだ。

 しかし、このオプションは、All以外に、Stream、Voice Chat、Phones、Line Outにも変更できる。たとえば、Fortniteのようなバトロワ系ゲームを友人とプレイしながら配信していたとしよう。パーティのなかで、いきなり自分だけが死んでしまうことがある。こういうとき、視聴者に対してしゃべっていると、その音声が仲間のボイスチャットにも乗っかるので、仲間が慎重に周囲の音を聴きたいときに迷惑になってしまう。

 そこで、MicのMuteオプションを「Mute to Voice Chat」にして、本体のVocie Chatのミュートボタンを押せば、配信には自分の声が乗るが、仲間のボイスチャットからは聞こえなくなるのだ。

ミュートボタンはデフォルトでは、全出力に対して機能するが、アプリで特定の出力先にだけミュートすることもできる

 そして、MuteオプションをAll以外にした場合でも、ミュートボタンを2秒間押すと、Allミュートと同じ状態になる。つまり、ミュートボタンはハイブリッドで機能するのだ。これで、配信中に電話に出たいときも大丈夫だ。

 MicをMute to Voice Chatにして、チャットのみミュートにした状態で、Micフェーダーを一番下まで下げてもMute Allと同じ状態にはなる。それでもいいのだが、GoXLRはフェーダーがモーター制御となっており、Mute Allにすると、自動的に物理フェーダーが一番下まで下がり、ミュートを解除すると、自動的に元の場所に戻るのだ。そのため、ミュートボタンを使うようにしておけば、ミュート状態から音声を元の音量に戻すときに、間違って小さすぎたり大きすぎたりな状態になるのを防げる。

 そして、なにより、「シャコッ」という音を立ててフェーダーが自動で動くのがかっこいい。ちなみに、GoXLR本体の電源を入れたときは、4つのフェーダーがシャコシャコッと波打つように動作するギミックもある。また、本製品には電源スイッチがなく、頻繁にオン/オフするものではないが、電源を入れ直したときは、フェーダーがアプリで設定した音量に自動的に戻る。

GoXLRの電源を入れると、ちょっとした演出が行なわれる

ボイスチェンジャーとサンプラー機能も搭載

 GoXLRは、ミキサー/オーディオインターフェイスとしてだけ見ても豊富な機能を持っているが、さらにボイスチェンジャー機能とサンプラー機能も搭載している。

 本体右上の部分がボイスチェンジャーで使うもので、マイク入力に対して、リバーブ、ピッチ、エコー、ジェンダー(性別変更)のかかり具合を細かく変更できる。1~6のボタンに対して、個別にプリセットしておけば、数字ボタンを押すだけで即座に呼び出せる。変更に使うノブのところにはレベルを示すLEDもあるので、プリセットを変えたとき、どんな音声になるのかは視覚的にもすぐわかる。

 アプリを使えば、リバーブやピッチなどは、個別に種類を変更可能。また、電話っぽい音声、ロボット的な音声のエフェクトをかけることもできる。さらにマイク以外の入力に対して、ハードチューンエフェクトをかけることも可能だ。ボイスチェンジャー機能は、「FX」ボタンでオンオフできる。

ボイスチェンジャーは、リバーブをかけたり、声色を変えたりできる
本体部分

 かけ声をかけるときに、リバーブを強くかけてスタジアムっぽい雰囲気にしたり、あるいはTVで見かける、出演者のプライバシーに配慮した声色への変更も再現できたりと、うまく使うと視聴者を盛り上げられるだろう。

ボイスチェンジャーを使った例(冒頭の1分半ほど)

 右下にある比較的大きなボタンは、サンプラー機能で使うもの。こちらはA、B、Cのプリセットに対して、最大4つまでのサンプリングを登録できる。4つのサンプラーボタンのいずれかを押しながら、マイクにしゃべれば即座に録音され、もう1度押せば、その声が再生される。

 サンプリングは、ルーティングが独立しており、どの入力に対してサンプリングするかを設定できる。たとえば、OSで再生されている音をサンプリングしたければ、ROUTINGでSystem→Samplerをオンにすればいい(著作権には気をつけよう)。あるいは、すでに録音済みの音声やサウンドデータがあるなら、アプリ上でそのファイルをドラッグアンドドロップすることで録音せずとも登録もできる。

 さらに、サンプリングした音声は、アプリ上でトリミングもできるので、使いたい部分だけを再生できる。再生方法も、サンプラーボタンを押している間だけや、ループ再生なども選べるようになっている。

即興で録音したり、あるいは保存済みの音声データをサンプラーボタンに割り当てると、いつでも再生できる
本体部分

 このほか、サンプリング機能ではないが、サンプラーボタンの横にある「!@#$?*」ボタンを押すと、「ピー」というビープ音がなり、マイクのアイコンボタンを押すと、押している間、マイク入力がミュートになる。前者はたとえば、配信には乗せられないような言葉を出す時に使ったりすると演出としておもしろい。ミュートボタンは、咳が出るときなどに使う。

2台連結や2PC配信環境にも対応

 このように、GoXLRは配信に便利な機能がこれでもかと凝縮された高性能なコンソールだ。日常的に配信を行なっている人なら、さまざまな使い方ができるだろう。GoXLRの各機能は、OSや配信ソフトだけでもできるものもある。しかし、配信中にそういった作業を行なうのは手間がかかるし、ゲームによってはバックグラウンドになると一時的に停止してしまうものもある。しかし、GoXLRなら、手元でワンタッチで行なうことができる。

 ちなみに、GoXLRには、ボイスチェンジャーとサンプラー機能部分、およびフェーダーのモーター制御と小型液晶機能を削除し、本体サイズを半分程度にした「GoXLR Mini」も発売されている。こちらは価格は2万6千円程度だ。ボイスチェンジャーなどが不要という人は、こちらでもいいだろう。ちなみに、GoXLRとGoXLR Miniは、3.5mmオーディオケーブルで接続し、並べて置くことで、GoXLRを8フェーダーのミキサーとして使うこともできる。

 また、ゲームPCと配信PCをわけている人の場合、GoXLRは配信PCにUSB接続し、ゲームPCのライン出力とGoXLRのライン入力をつなぐことで、ゲーム音はアナログ入力になってしまうが、問題なく利用できる。