イベントレポート
キーワードは「EPICからLEGENDへ」
~今後5~6年のALIENWAREのデザインを象徴する「ALIENWARE Area-51m」
2019年1月11日 09:32
Dellは1月8日~1月11日(現地時間)にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで開催されているCESの初日にあたる1月8日に記者会見を開催し、ゲーミングPC向けブランドの「ALIENWARE」の最新ゲーミングノートPCとなる「ALIENWARE Area-51m」を発表した。
このALIENWARE Area-51mは17.3型FHD(60Hzないしは144Hz)の液晶パネルを採用しており、CPUはLGA1151ソケットベースの第9世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Coffee Lake S Refresh)を採用しており、GPUはDellオリジナルのモジュール上にGeForce RTX 20シリーズないしはGeForce GTX 10シリーズのGPUを搭載しており、いずれもユーザーによるアップグレードが可能な仕様になっている。
Dell エクスペリエンスデザイングループ コンシューマーデザイン担当 副社長 ジャスティン・ライルズ氏に、ALIENWARE Area-51mの特徴などを伺ってきたので、その内容を踏まえながらスペックではわからないALIENWARE Area-51mの特徴をお伝えしていきたい。
一世を風靡した「ALIENWARE」生みの親、次に進む必要性を感じ始めていた
ALIENWAREと言えば、筆者が改めて説明するまでもないゲーミングPCのリーディングブランドだ。元々は1996年に創業したゲーム専業のPCメーカーで、アメリカでハイエンドゲーミングPCを販売して人気を集めて急成長した。
2006年にDellによって買収され、その後は子会社として活動しているが、すでに一体化がかなり進んでいる。ALIENWARE創業者の1人で、ALIENWAREの事業本部長でもあるフランク・アゾール氏は、XPS、GシリーズといったDellブランド製品も統括しており、むしろALIENWAREのチームが、DellのハイエンドブランドであるXPSをリードしている印象もあるぐらいだ。
Dell エクスペリエンスデザイングループ コンシューマーデザイン担当 副社長 ジャスティン・ライルズ氏によれば、今回Dellは、ALIENWAREのアイデンティティとなっているデザインを大きく変えることを決断したという。
「ALIENWAREにとって今回のデザインアイデンティティの変化は4回目となる。現在のデザインは2012年に変更することを決めてから6~7年経った。その間、手前味噌にはなるが、大成功を収めたと言ってよい。というのも、Dell以外のゲーミングPCのブランドも右へ習えとなってしまい、デザインがかなり似通ったモノになってきたからだ」と、DellのALIENWAREのデザインは、他社が真似をするぐらいのデザインとして成功したが、逆にそのために差別化ができなくなってしまったという。
そんな時に、前出のALIENWAREの事業部長であるアゾール氏がライルズ氏に「そろそろ変わる時期だ、ゲーミングPCの未来というのを真剣に検討して欲しい」と言ってきたのだという。それ受け、デザインチームが、これまでのゲーミングとは違うデザインが必要だということで、今後のALIENWAREのデザインを検討し始めた。
今後5~6年のALIENWARE製品のデザインキーワードは「LEGEND」に
ライルズ氏によれば、そうしたに採用されたデザインはALIENWARE Area-51mは「LEGEND」(レジェンド)がキーワードになっているという。「LEGEND」は、従来のゲーミングPCと言えば暗い色というイメージを覆すような、ルナーライトホワイトという明るい色と、ダークサイドオブザムーンという従来のゲーミングPCに近い暗めの色という2色が用意されており、ユーザーが選択できるようになっているという。
かつ、薄型軽量なノートPCが欲しいというユーザーのニーズに応えるために、熱設計にも配慮したデザインになっており、デスクトップ向けのCPUを採用し、いわゆるデスクトップリプレースメントというカテゴリのPCでありながらも、軽量コンパクトに収まっており(従来モデルに比べて32%の小型化を実現)、液晶部分を強度に影響がないように薄型化を実現しているという。
これをもう少し平易に言い換えるなら、オリジナルのデザインという他社との差別化、そして薄型で軽量という現在のトレンドを抑えながらも、性能では妥協しないゲーミングPC、それが「LEGEND」のコンセプトだと言える。
ライルズ氏によると、従来のALIENWAREのコンセプトは「EPIC」というものだったが、今後ALIENWAREから発売されるPCはこの「LEGEND」ベースになっていくという。ただ、今回同時に発表されたALIENWARE m17は、EPICベースの従来デザインベースとなっている。
ライルズ氏は、「ALIENWARE m17はすでに発売されているm15の派生製品となる。このため、ALIENWARE m15/17はEPICデザインの最後の製品となる。今後、これから5~6年の間に登場するALIENWAREの製品はLEGENDベースになっていくだろう」と述べた。
CPU/GPUを最新版に交換したいというゲーマーの声に応えた設計
すでに述べたとおり、LEGENDはゲーミングPCに新しいデザイントレンドを持ち込むが、それ同時に性能で妥協しないというのがテーマになっている。とくにALIENWARE Area-51mはデスクトップリプレースメントとなるので、デスクトップPCに近い性能を実現しなければならない。
そこで、ALIENWARE Area-51mはLGA1151ソケットを備えており、第9世代CoreプロセッサをCPUとして選択することができる。現在IntelのLGA1151向けの製品としては、Core i9-9900Kが最高峰となるが、将来Intelからより高速なプロセッサが発売されても、ピン互換であれば交換できるとライルズ氏は説明した。
また、GPUは、DellがDGFF(Dell Graphics Form Factor)と呼んでいる新しいモジュールに搭載されており、将来のアップグレードが可能だ。
従来はMXMなどのGPUメーカーが定めたモジュールがあったが、現在の世代はそうしたモジュールはサポートされていないので、Dellが独自で定義したGPU向けのモジュールがDGFFだという。たしかに独自だが、別にサードパーティがそれを作るのを妨げるつもりはないとライルズ氏はいう(誰かがそれをやるのかは別の話だが)。
ライルズ氏は「例えば将来GeForce RTX 30シリーズなる製品が発売されたと仮定すれば、我々はそのDGFFのモジュールを作り、ユーザーに販売するだろう。それがどのようなかたちになるか、ファクトリーでの整備扱いでの販売になるか、ユーザーが自身で交換することを認めるかはこれから詰めていく必要はあるが、何らかの形で提供していくだろう」と説明した。
もちろん、DGFFはもう1つ別の目的もあり、製造過程でCTOが容易になるという側面も否定できない。Dellにとっては1つのモジュールで、2つの目的(CTOが容易になる、ユーザーにアップグレードパスを提供できる)を満たすことができるソリューションだと言うことができる。
ライルズ氏は「CPU、GPUは1年で最高速でなくなるが、それ以外の部分は使えるというのがハイエンドPCの特徴。それらを活かしながら最新のCPUやGPUで性能向上したいというニーズに応えたいと考えて、こうした設計にした」と述べた。