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MacBook Proを上回る性能の「12.9インチiPad Pro」レビュー

12.9インチiPad Pro

 Appleは10月31日、「オールスクリーン(全画面ディスプレイ)」をうたう新型iPad Proを発表、11月7日より販売を開始した。2018年モデルは生体認証システムを指紋認証「Touch ID」から顔認証「Face ID」へ変更することに伴い、ホームボタンを廃止。従来よりも狭額縁仕様とすることで、12.9インチモデルは筐体サイズを小型化し、10.5インチモデルはディスプレイを大型化した11インチモデルへと置き換わった。

 今回Appleより「12.9インチiPad Pro」を借用したので、性能、使い勝手、AV品質、拡張性などについて検証しつつ、最後に新型iPad ProがPCに置き換わる存在になるのか筆者なりの考察をお伝えしたいと思う。

歴代iPad Proのなかで最大の進化を遂げた第3世代モデル

 iPad Proは今回で第3世代目。第1世代は9.7/12.9インチ、第2世代は10.5/12.9インチ、第3世代は11インチ/12.9インチのそれぞれ2モデルが用意されている。12.9インチモデルは3世代続きだが、下のモデルは9.7インチ→10.5インチ→11インチと画面が大きくなってきたわけだ。

【表1】iPad Proの世代別一覧
世代製品名発売日
第1世代12.9インチiPad Pro2015年11月発売
9.7インチiPad Pro2016年3月31日発売
第2世代10.5インチiPad Pro2017年6月13日発売
12.9インチiPad Pro
第3世代11インチiPad Pro2018年11月7日発売
12.9インチiPad Pro

※モデルごとの細かな違いは「iPad のモデルを識別する」に詳しく記載されている

 iPad Proは11インチ版と12.9インチ版で基本スペックは変わらない。SoCは7nmプロセスで製造されるApple製最新プロセッサ「A12X Bionic」を採用。A12X Bionicは4つの性能コア、4つの効率コア、7コアのGPUを搭載したうえで、性能コアと効率コアの合計8つを同時駆動可能な新パフォーマンスコントローラを採用。また8コアの機械学習用「Neural Engine」を搭載している。

 Appleは新型iPad Proを「Apple A10X」を搭載する1世代前に比べて、マルチタスク実行時の性能は最大90%、グラフィックス性能は最大2倍に向上したとしており、「ほとんどのノートパソコンよりパワフル」、「コンソールゲーム機のXbox One S並みのグラフィックス性能」と公式サイトや発表会などで表現している。

 ストレージは11インチ版、12.9インチ版ともに64GB、256GB、512GB、1TBモデルが用意され、さらにそれぞれにWi-FiとWi-Fi+Cellularモデルがラインナップされている。価格は下記のとおりで、Wi-FiとWi-Fi+Cellularモデルには17,000円差、11インチと12.9インチモデルには22,000円差がつけられている。

【表2】2018年版iPad Proのモデル別直販価格一覧
Wi-FiWi-Fi+Cellular
11インチ/64GB89,800円106,800円
11インチ/256GB106,800円123,800円
11インチ/512GB128,800円145,800円
11インチ/1TB172,800円189,800円
12.9インチ/64GB111,800円128,800円
12.9インチ/256GB128,800円145,800円
12.9インチ/512GB150,800円167,800円
12.9インチ/1TB194,800円211,800円

 RAM(メモリ)容量は公表されていないが、iFixitの記事を参照すると、11インチiPad Proの64GBストレージモデルには4GBのRAMが搭載されている。一方、今回筆者が複数のベンチマークソフトでデバイス情報を確認したところ、12.9インチiPad Proの1TBストレージモデルには6GBのRAMが搭載されていた。

 すべての組み合わせを確認したわけではないし、カタログスペックに記載されていない以上、今後RAM容量が増減する可能性はあるが、少なくとも現時点で12.9インチiPad Proの1TBストレージモデルに6GBのRAMが搭載されているバージョンが存在することは間違いない。

「AnTuTu Benchmark」のRAMに「566M/5924M」と表示されている

 ディスプレイは「Liquid Retinaディスプレイ」と名づけられたIPS液晶パネルを採用。AppleはiPad Proと「iPhone XR」に採用した角を丸めたIPS液晶ディスプレイをLiquid Retinaディスプレイと呼んで、他社と差別化している。解像度は11インチが2,388×1,668ドット(264ppi)、12.9インチが2,732×2,048ドット(264ppi)だ。

 色域は「DCI-P3」相当の「P3(Display P3)」、輝度は600cd/平方m。利用状況によってディスプレイのリフレッシュレートを最大120Hzまで自動調整する「ProMotionテクノロジー」、環境光に応じて正しい色味に変化させる「True Toneディスプレイ」機能は継承されている。

 サイズと重量は11インチ版が178.5×247.6×5.9mmで468g、12.9インチ版が214.9×280.6×5.9mmで631g(Wi-Fiモデル)、633g(Wi-Fi+Cellularモデル)。第2世代にはシルバー、スペースグレイ、ローズゴールド、ゴールドの4色が用意されていたが、2018年モデルはシルバーとスペースグレイの2色に集約された。

 バッテリは11インチ版が29.37Wh、12.9インチ版が36.71Whのリチウムポリマーを内蔵しており、Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生、オーディオ再生は最大10時間、携帯電話データネットワークでのインターネット利用は最大9時間としている(ディスプレイの明るさ50%で計測)。

 インターフェイスが変更されたのは大きなトピック。Lightning端子に代わりUSB-C端子が採用され、またiPhone同様に3.5mmヘッドフォンジャックが廃止されている。さらにSmart Connectorは左側面から背面下部に移動された。そのためアクセサリに互換性はない。

 iPhoneと新型iPad Proを併用する場合、Lightning端子とUSB-C端子を使い分ける手間が増えたが、iPad Pro単体で考えればデジタルカメラ、楽器、USB Hub、最大5Kの外部ディスプレイに直接接続できたり、USB 3.1 Gen 2をサポートすることでデータ転送速度が最大5Gbpsから10Gbpsへ倍増するなどメリットが多い。

 背面カメラは1,200万画素、f/1.8、前面カメラは700万画素、f/2.2と画素数、絞り値は変わらないが、前面カメラは顔認証システム「Face ID」実装のために赤外線画像を撮影する「赤外線カメラ」、赤外線を照射する「投光イルミネーター」、3万以上の目に見えないドットを投射する「ドットプロジェクタ」が追加された「TrueDepthカメラ」に進化している。これにより前面カメラで背景にぼかし効果を与える「ポートレートモード」、ライティング効果を付加する「ポートレートライティング」、ユーザーの表情に合わせてアニメーションする「アニ文字」、「ミー文字」などを利用可能になった。

 一方カタログスペック的には、背面カメラから光学式手振れ補正機構が省かれ、レンズが6枚構成から5枚構成に減らされている。12.9インチモデルで6.9mmから5.9mmに、11インチモデルで6.1mmから5.9mmに薄型化するにあたって、筐体に納められなかったのかもしれない。「iPhone XS/XS Max」、iPhone XRには6枚構成のレンズが使われているので、なんらかのトレードオフがあったと考えるのが自然だ。

 今回新型iPad Proに合わせて、デジタルペン「Apple Pencil」とキーボードカバー「Smart Keyboard Folio」がニューモデルに切り替わった。上位互換も下位互換も確保されていないが、Apple PencilはiPad Proの側面に磁力で取りつけて充電可能になり、Smart Keyboard Folioは2段階に角度調節できるように改良が加えられている。

本体前面。ディスプレイ上部にTrueDepthカメラを内蔵。生体認証のFace ID搭載に伴い、指紋認証センサー一体型ホームボタンはなくなっている
12.9インチiPad Proのベゼル幅は約8.5mm前後。一見、ベゼル幅が狭すぎて誤作動が多くなるように思えるが、ディスプレイ外周部は意図せずふれても反応しないように「鈍感に」チューニングされている
本体背面。左上には1200万画素背面カメラ、マイク、クアッドLED True Toneフラッシュが、下側にはSmart Connectorが配置されている
本体上部。左から電源ボタン、スピーカー、マイク×2、スピーカーが配置されている
本体下部。左からスピーカー、USB-C端子、スピーカーが用意されている
本体右側面。左からNano SIMトレイ、磁気コネクタ、ボリュームボタンが配されている
Wi-Fi+CellularモデルにはNano SIMカードトレイが用意されており、Apple SIMなどを装着できるほか、eSIMにも対応する
本体左側面。中央にマイクを設置。マイクは全部で5つ、スピーカーは全部で4つ搭載されている
本体パッケージ前面
本体パッケージ背面
本体同梱品。USB-C充電ケーブル(1m)、18W USB-C電源アダプタ、説明書類が同梱される
Apple Pencilパッケージ前面
Apple Pencilパッケージ背面
Apple Pencil同梱品。旧型Apple Pencilに同梱されていた交換用のペン先がなくなっている
Smart Keyboard Folioパッケージ前面
Smart Keyboard Folioパッケージ背面
Smart Keyboard Folio同梱品
18W USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブル(1m)。18W USB-C電源アダプタは、入力100-240V~0.5A、出力5V/3A、9V/2A、容量18W
Apple Pencil。側面に平面が設けられ、転がりにくくなっている。またペン全体が滑りにくいようにマット仕上げに変更された
Smart Keyboard Folio。背面全体をカバーする構造となっている
12.9インチiPad ProのWi-Fi+Cellularモデルの実測重量は629.5g
18W USB-C電源アダプタとUSB-C充電ケーブル(1m)の合計実測重量は78.8g
Apple Pencilの実測重量は18g
Smart Keyboard Folioの実測重量は406g

処理性能はCore i5-8259Uを搭載する13インチMacBook Proを上回る

 まずは「ほとんどのノートパソコンよりパワフル」とうたわれる性能をチェックしてみよう。

 今回は総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark」、CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 4.3.1」、グラフィックスベンチマーク「GFXBench Metal」、そして実アプリケーションのベンチマークとして動画編集ソフト「iMovie」で5分の4K動画の書き出しにかかる時間と、「ミュージック」でミュージックビデオをリピート再生してシャットダウンするまでの時間を計測した。

 なお、比較対象機種として10.5インチiPad ProとiPhone XS Max、そして「Core i5-8259U」を搭載する13インチMacBook Proの2018年モデルを使用している。MacBook Proは記事執筆時点で店頭販売モデルとして最上位の構成だ。MacBook Proのみ皆さんが所有するPCと比較できるように、CPU/GPUベンチマーク「CINEBENCH R15.0」を実施している。

【表3】検証機の仕様
12.9インチiPad Pro(第3世代)10.5インチiPad Pro(第2世代)iPhone XS Max13インチMacBook Pro(2018)
CPUA12X BionicA10X FusionA12 BionicCore i5-8259U
メモリ6GB4GB8GB
ストレージ1TB512GB256GB512GB
ディスプレイ解像度2,732×2.048ドット2,224×1,668ドット2,688×1,242ドット2,560×1,600ドット
OSiOS 12.1macOS Mojave 10.14.1
【表4】ベンチマーク結果
12.9インチiPad Pro(第3世代)10.5インチiPad Pro(第2世代)iPhone XS Max13インチMacBook Pro(2018)
AnTuTu Benchmark
Total549,373283,066321,230
CPU161,404108,732
GPU311,436137,644
UX62,09862,382
MEM14,43512,472
CINEBENCH R15.0
OpenGL56.74 fps
CPU718 cb
CPU(Single Core)152 cb
Geekbench 4.3.1
32-bit Single-Core Score
32-bit Multi-Core Score
64-bit Single-Core Score4,9593,9054,8264,630
64-bit Multi-Core Score17,9489,45011,22417,166
OpenCL(iGPU)34,951
OpenCL(dGPU)
OpenCL(eGPU)
Metal(iGPU)42,49129,95622,62535,299
Metal(dGPU)
Metal(eGPU)
GFXBench Metal
Aztec Ruins (High Tier)1,297.16 Frames1,411.43 Frames997.232 Frames
1440p Aztec Ruins (High Tier) Offscreen2,106.31 Frames930.815 Frames1,428.67 Frames
Aztec Ruins (Normal Tier)2,103.42 Frames2,032.76 Frames1,573.21 Frames
1080p Aztec Ruins (Normal Tier) Offscreen6,123.62 Frames2,552.87 Frames3,813.77 Frames
Car Chase1,762.23 Frames1,577.08 Frames1,161.78 Frames
1080p Car Chase Offscreen4,964.4 Frames2,007.37 Frames2,783.17 Frames
1440p Manhattan 3.1.1 Offscreen4,885.3 Frames1,969.28 Frames2,615.79 Frames
マンハッタン2,775.14 Frames2,734.66 Frames1,782.84 Frames
1080p マンハッタン オフスクリーン8,390.89 Frames3,404.87 Frames4,595.77 Frames
マンハッタン(オリジナル)4,967.55 Frames3,616.95 Frames2,936.77 Frames
1080p マンハッタンオフスクリーン(オリジナル)12,466.4 Frames4,988.62 Frames6,668.38 Frames
ティラノサウルス レックス6,709.8 Frames3,356.44 Frames3,355.86 Frames
1080p ティラノサウルスレックス オフスクリーン21,141.1 Frames10,625.5 Frames11,711 Frames
ALU 23,236.52 Frames1,783.99 Frames1,797.2 Frames
1080p ALU 2 Offscreen17,343.2 Frames7,928 Frames12,782 Frames
Driver Overhead 23,590.68 Frames1,794.21 Frames1,795.5 Frames
1080p Driver Overhead 2 Offscreen16,786.9 Frames1,4687.6 Frames8,325.09 Frames
Fill 250,846 Mtexel/s13,293 Mtexel/s20,160 Mtexel/s
1080p Fill 2 Offscreen35,669 Mtexel/s14,081 Mtexel/s20,137 Mtexel/s
iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し
3,840×2,160ドット、29.97fps5分12秒676分12秒16
3,840×2,160ドット、29.97fps(品質:高、圧縮:高速)3分31秒99
3,840×2,160ドット、29.97fps(品質:最高(ProRes)、圧縮:品質優先)6分5秒24
「ミュージック」でミュージックビデオをリピート再生してシャットダウンするまでの動作時間
ディスプレイの明るさは約40%15時間50分54秒

 詳細は上記の表を見ていただくとして、A12X Bionicを搭載する新型iPad Proが、A12 Bionicを圧倒する性能を備えているのは明らかだ。AnTuTu BenchmarkのCPUでは1.48倍、GPUでは2.26倍、Geekbench 4.3.1のMulti-Core Scoreでは1.6倍、Metalでは1.87倍のスコアを記録している。GFXBench Metalでも同一解像度(1080p)でベンチマークを実施するオフスクリーンでは1.99~2.49倍のスコアを記録している。

 MacBook Proと比較しても、Geekbench 4.3.1のMulti-Core Scoreでは1.04倍にとどまったものの、Metalでは1.2倍のスコアを記録。GFXBench Metalのオフスクリーンでは1.47~1.87倍のスコアを叩き出している。

 iMovieの4K動画書き出しは同じ設定が存在しないため同じ条件ではない可能性があるが、仮にiPad Pro版と、macOS版の「品質 : 最高(ProRes)、圧縮 : 品質優先」が同じ条件であれば、iPad Proのほうが約1分弱早く処理を終えていることになる。

 バッテリ駆動時間が15時間50分54秒となっているが、これはストレージ内のミュージックビデオを連続再生しているため。YouTubeなどの動画を連続再生した場合は、随時ネットワーク通信が発生するため、当然バッテリ駆動時間は短くなるはずだ。

 今回の結果から、「ほとんどのノートPCよりパワフル」というAppleの表現があながち大げさではないと言える。なによりこの性能を、冷却ファンのないiPad Proで実現しているのは驚くべき事実だ。

Geekbench 4.3.1のCPUベンチマーク実行中のディスプレイ面の最大温度は29℃
背面の最大温度は30.9℃

一度使ったらもう戻れない新型Apple Pencilの使い勝手

 この章ではアクセサリを含めた使い勝手についてレビューしていこう。

 まずApple Pencilだが、おもに2つの点で進化している。1つ目は磁力でiPad Proの右側面に固定して、充電が可能になったこと。初代Apple Penicilはキャップをはずし、Lightning端子に接続して充電しなければならなかったが、新型は定位置に固定しておけばつねにフル充電状態となる。充電を意識することなく利用できるようになったのは大きな進化だ。

 2つ目はタップ操作に対応したこと。人差し指のグリップの位置でダブルタップすれば、対応アプリでブラシのサイズやモードを切り替えられる。たとえば「メモ」アプリではダブルタップで消しゴム機能をオン/オフできる。本物のペンと消しゴムを持ち替えるよりも、すばやく機能を切り替えられて非常に便利だ。

 ただし、1つ不便になったことがある。それはサードパーティー製のゴムグリップなどが使いにくくなったこと。筆者は初代Apple PencilにKordier製のグリップを装着して利用していたが、新型Apple Pencilにはめると磁力で取りつけられないし、タップ機能も利用できない。ヘビーにApple Pencilを使い倒す漫画家やイラストレーターでグリップを愛用している方は多いようなので、取りつけた状態でも充電可能なグリップや、太いグリップ版のApple Pencilを用意してほしいと思う。

ペン先は硬め。個人的にはもっと柔らかいほうが好み。私物のiPad Proには「ペーパーライク」を謳う保護フィルムで書き味を調整する予定だ
ダプルタップでブラシのサイズやモードを切り替えられるのは便利。ちなみにタップする場所はフラットな面だけでなく、グリップ部ならどこでも反応する
Apple Pencilを装着すると自動的にペアリングがスタートする。設定後は装着するたびにバッテリ残量が数秒表示される
筆者が愛用していたKordier製のゴムグリップ。新型Apple Pencilにも装着できるが、充電やダブルタップ操作が不可能となる

 Smart Keyboard Folioは背面をカバー可能となり、またディスプレイ面を2段階で調節できるようになった。底面が完全にフラットな1枚板なので太ももの上で安定しやすい点、またクラムシェル型のノートPCよりも奥行きを必要としない点は使い勝手がいい。

 キーストロークは最小限だが打鍵感はしっかりとあり、12.9インチiPad Pro用はキーピッチが約19mm確保されているので、慣れれば違和感なくタイピングできる。

 ただWindowsとMacを併用している筆者は、「Control+U/I/O/P」によるひらがな/カタカナ/半角/英字変換を多用しており、「iOS 12」のIME(日本語入力ソフト)ではフルスピードでタイピングできない。iOS 12や「メモ」、ワープロソフト「Pages」でも「Control+U/I/O/P」のショートカットは使われていないので、ぜひひらがな/カタカナ/半角/英字変換を割り当ててほしい。古くからの「Microsoft IME」ユーザーの多くが待ち望んでいると思う。

折りたたみ時は表面、裏面を完全にカバー。タイピング時はディスプレイ面の角度を2段階に調節可能となった
「日本語(JIS)」キーボードのほかに、「英語(UK)」、「中国語 - 注音」、「中国語(ピン音)」、「韓国語」、「英語(US)」、「スペイン語」版を購入可能
キーストロークは非常に浅いが打鍵感はしっかりとある。またキーピッチはフルサイズ相当の19mmが確保されているので慣れれば高速にタイピングできる。ただしキーボードのできがよいだけに、iOS 12のIMEにカスタマイズの余地がほとんどないのが惜しい
一般的なクラムシェル型ノートPCや2 in 1 PCはヒンジ部からディスプレイが倒れるので奥行きを多く必要とする。Smart Keyboard Folioは中央付近でiPad Proの下部を支えるので奥行きが浅く、電車や飛行機内のせまいテーブルでも置きやすい

掛け値なしに最高レベルのビジュアル、サウンド品質

 ビジュアル、サウンド品質はタブレット端末として誇張なしに最高レベルだと思う。たとえばMacBook Proと比較すると色域は同じ「Display P3」だが、輝度はMacBook Proが500cd/平方mなのに対して、iPad Proは600cd/平方m。ディスプレイのリフレッシュレートも最大120Hzまで自動調整するProMotionテクノロジーに対応しており、スペックは上だ。

 サウンド面についてはボリューム自体はMacBook Proのほうが上だったが、同じボリュームにそろえると、音の抜けや解像感はMacBook Proのほうが勝っているものの、低音の迫力はiPad Proのほうが強く感じた。それでもトータルではMacBook Proのほうがサウンド性能は上だと考えるが、そもそもMacBook Proと張り合えている時点でタブレット端末としては別格だ。

左がiPad Pro、右がMacBook Pro。環境光に合わせて色味を調整するTrue Toneディスプレイを有効にすると、iPad ProとMacBook Proの色調はほぼ一致する。iPad Proが600cd/平方m 、MacBook Proが500cd/平方mという輝度の差は並べて見ても正直ピンとこなかった
13インチMacBook Pro(2018)で、YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大87.1dBA(50cmの距離で測定)
iPad Proで同じ音源を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大80.9dBA(50cmの距離で測定)。5.9mmの薄型筐体に内蔵されているツイーターとウーファーが最大ボリュームでほとんど破綻しないのは特筆に値する

物理的にはケーブルさえ用意すればすべてのUSB周辺機器を直結可能

 USB-C端子を備えた新型iPad Proは物理的にはケーブルさえ用意すればすべてのUSB周辺機器を直結できる。筆者が試したところUSBメモリ、ストレージ、USBマスストレージモードを有するデジカメ、キーボード、有線LANアダプタなどを利用できた。ただしマウスなどOSがサポートしていないデバイスは接続してもなにも起こらない。

 デジカメ「DSC-RX100M6」、キーボード「Happy Hacking Keyboard Professional JP Type-S」、有線LANアダプタ「LUA3-U2-ATX」の同時利用も確認できたが、今回使用したHooToo製USB-C Hub「HT-UC001」ではUSB-C充電ポートからiPad Proに給電できなかった。HooToo製USB-C Hubにも新製品が発売されているが、給電しながらHub機能を利用したいなら、iPad Proへの対応を謳っている製品を購入することをオススメする。

536枚の画像ファイル(6.32GB)の取り込みに約1分10秒、710万の画像ファイル(4.79GB)の取り込みに約47秒の時間を要した。もっと大容量のデータを取り込むさいには、iPad Proへの給電機能に対応したUSB-C Hubを選びたい

iPad ProはMacやWindowsに代われるか?

 新型iPad Proは性能的には十分PCを置き換えられる存在だと思う。そもそもOS自体が軽く作られており、有り余るプロセッサパワーであらゆる操作にストレスを感じない。またiPadに特化した「Photoshop CC」が2019年に投入されるなどAdobe系アプリが充実していく予定だ。クリエイティブ系ワークにPC、Macを利用してきた方は、そのほとんどの作業をiPadでこなせるようになるかもしれない。

 しかし現在のiOSはmacOSやWindowsに比べるとあまりにもシンプルなOSだと思う。90%の作業がiPadでできるようになったとしても、残り10%の作業にMacやWindowsを必要、もしくは効率がよいのであれば手放すわけにはいかない。とはいえ最上位構成で税別211,800円、税込み228,744円のiPad Proに加えて、MacやWindowsを購入するというのはあまりにも無駄が過ぎると思う。

 「ほとんどのノートPCよりパワフル」な性能をiPad Proは備えたのだから、MacやWindowsでなければやれない残り10%の作業をするために、「Boot Camp」的なエミュレータ環境をiOS 12に用意してもよいのではないだろうか?

すき間の多いホーム画面も再設計されることを強く望みたい