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GTX 1050搭載で約1.19kgの軽量ビジネスモバイル、MSI「PS42 MODERN 8RC 8RC-009JP」

エムエスアイコンピュータージャパン「PS42 MODERN 8RC 8RC-009JP」

 エムエスアイコンピュータージャパンは、薄型軽量ビジネスノート「PS42」シリーズの性能強化モデル「PS42 MODERN 8RC」を10月12日に発売した。

 2018年7月より販売されている従来モデルからディスクリートGPUを強化した、性能追求モデルとなっており、より高性能なモバイルノートを探している人にとって魅力的な製品となっている。すでに発売中で、実売価格は16万円前後。

シンプルなデザインの薄型軽量シルバー筐体

 MSIといえば、マザーボードやビデオカードなどのPCパーツ、ゲーミングPCなどでお馴染みだが、モバイルワークステーションを中心としたビジネス向け製品も多く手がけている。そのMSIが満を持して送り出すビジネス向けモバイルPCが、「PS42」シリーズだ。

 14型液晶を搭載しつつ、約1.19kgの薄型軽量筐体を実現するとともに、ディスクリートGPUも標準で搭載することによって、一般的なビジネスモバイルよりも優れた性能を実現する点が特徴だ。

 今回取り上げる「PS42 MODERN 8RC 8RC-009JP」(以下、PS42 8RC)は、PS42シリーズの中でもディスクリートGPUを強化した上位モデルとなる。

 外観は、ビジネス向けということもあるのか、全体的にフラットかつソリッドで、一枚板のような非常にシンプルなデザインを採用している。天板には、MSIのイメージキャラクターとなっているドラゴンをイメージしたエンブレムが見えるが、こちらも目立ちにくいものとなっており、存在感を強くアピールするものとはなっていない。

 筐体カラーはシルバーと、こちらもビジネスモバイルとして標準的なカラーを採用。個人的には、デザイン面でもう少し遊び心があっても良いのではないかと思うが、これならどういったビジネスシーンでも安心して利用できるだろう。

 本体サイズは、322×222×15.95mm(幅×奥行き×高さ)となっている。ディスプレイのベゼル幅が狭められているため、14型液晶搭載ながら十分にコンパクトとなっている。薄さも16mm弱と申し分なく、ブリーフケースなどの薄型の鞄への収納性も悪くない。

 また、重量は公称で約1.19kgと1.2kgを切る軽さを実現。実測では1,236gと、公称よりも40gほど重かったが、ほぼ誤差の範囲内と言える。

 近年では、13.3型液晶搭載のモバイルPCで重量1kg切りが珍しくなく、1.2kg前後の重量は、モバイルPCとして特別軽いというわけではないが、それでも14型液晶に加えて、高性能GPUを搭載しつつこの軽さを実現しているという点は、高性能モバイルPCを持ち歩きたいという人にとって、大きな魅力となるだろう。

 薄型軽量筐体ということで気になるのが堅牢性だろう。PS42 8RCでは筐体素材としてアルミニウム合金を採用しており、薄型軽量筐体ではあるが華奢という印象は少ない。ディスプレイ部はかなり薄型のため、力を入れてひねるとやや歪む印象もあるが、ディスプレイを閉じた状態では、十分な剛性が確保されていると感じる。

 具体的な堅牢性の仕様については公表していないが、実際に本体をひねったり天板を押したりした印象では、一般的なモバイルノートに必要とされる堅牢性は十分に確保されていると言ってよさそうだ。

ディスプレイを開いて正面から見た様子
天板。筐体はアルミニウム合金を採用し、表面にヘアライン処理を施すなど質感は悪くない
天板にはドラゴンをイメージしたエンブレムがあるが、目立たず存在はあまり気にならないだろう
正面
左側面。高さは15.95mmと十分に薄く、薄い鞄にも余裕で収納できる
背面
右側面
底面。ディスプレイが狭額縁仕様となっているため、フットプリントは322×222mm(幅×奥行き)と14型液晶搭載ノートとしては十分なコンパクトさだ
重量は実測で1,236gと公称をやや上回った

フルHD表示対応の14型液晶を搭載

 ディスプレイには、1,920×1,080ドット表示対応の14型液晶を採用している。パネルの種類は非公開だが、視野角は十分に広く、TNパネルのような視野角の狭さを感じることはない。

 サイズを考えると、QHD(2,560×1,440ドット)クラスの表示解像度を備えるパネルを採用しても良かったように思うが、フルHDでも大きな不満はない。

 パネルの表面は非光沢処理となっており、外光の映り込みが少なく細かな文字入力作業も快適に行なえるという印象。発色は、光沢仕様で広色域表示に対応するディスプレイに比べると、やや鮮やかさに欠けるという印象もあるが、低価格パネルのような発色性能の弱さを感じることはない。全体的には、ビジネスモバイルとして標準的な表示品質を備えていると言える。

 なお、ディスプレイはタッチ操作やペン入力には対応していない。ビジネスモバイルにタッチやペンが必須というわけではないが、対応していればより便利に活用できるのも事実で、今後は対応モデルの拡充も検討してもらいたい。

1,920×1,080ドット表示対応の14型液晶を搭載。3辺狭額縁仕様で、筐体の小型化にも貢献
表面は非光沢処理で外光の映り込みは気にならないが、発色の鮮やかさは光沢液晶にやや劣る印象

ディスクリートGPUとしてGeForce GTX 1050 Max-Qを採用

 PS42シリーズでは、薄型軽量のビジネスモバイルながら、ディスクリートGPUを搭載する点が特徴となっている。

 そして、シリーズでも上位に位置付けられるPS42 8RCでは、ディスクリートGPUがGeForce GTX 1050 Max-Qに強化されており、非常に優れた描画性能となっている。

 ビジネスモバイルでおもに利用されるアプリケーションで、高性能GPUを活用するものはそれほど多くないと感じるかもしれないが、実際には多くのビジネス向けアプリケーションがGPUを活用する。

 たとえば、ExcelやWord、Power PointといったOfficeアプリケーションでも、GPUアクセラレーションによって快適度が大きく高まる。PowerPointのプレゼン資料では、近年画像や動画を多く活用する例が増えているが、そういった場合でも、GPUの有無で編集時の快適度が大きく変わる。

 つまり、ビジネスモバイルといっても高性能GPUが活躍する場面は多く存在するのだ。そのため、ビジネスアプリを利用する場合でも、ディスクリートGPU非搭載の製品より快適な作業が可能となる。

 また、GPUの性能をフルに引き出せるように、PS42 8RCではゲーミングPCで培われた高性能冷却システム「Cooler Boost 3」を採用。CPUとGPUそれぞれに専用のヒートシンクと冷却ファンを用意したツインファン構造により、CPUとGPUを個別に効率良く冷却でき、常に最高の性能が引き出せるように配慮されている。こういった部分は、ゲーミングPCを数多く手がけるMSIらしい特徴だ。

 PS42 8RCをゲーミングPCとして見ると、GeForce GTX 1050はミドルレンジのGPUであり、「VR Ready GPU」認定GPUではなく、搭載CPUも、第8世代Coreプロセッサの中でTDPが15Wの「Core i7-8550U」を採用するなど、やや非力と感じる。

 とはいえ、軽めの3Dゲームだけでなく、CPU内蔵グラフィックスでは厳しい、本格的な最新3Dゲームのプレイも十分可能だ。そのため、エントリー向けのモバイルゲーミングPCとしても十分に活用できそうだ。

CPUやGPUの性能を最大限引き出せるように、CPUとGPUを個別に冷却する高性能冷却機構「Cooler Boost 3」を採用
底面のスリットから給気し、背面排気口から排気することで、効率良くCPUやGPUを冷却する

バックライト付きキーボードを搭載

 キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのものを採用している。キーピッチは約19mmフルピッチを確保しており、ゆったりとタイピングできる。

 ストロークは実測で1.2mmほどと薄型モバイルノートとして標準的で、キーの堅さも標準的。しっかりとしたクリック感もあって、打鍵感は良好だ。また、タイピング時の音も静かで、周りを気にせずタイピングが行なえる。

 ただ、Enter付近の一部キーはピッチが狭くなっていたり、キーを分割して実現している部分もあり、この点は少々気になる。また、Enterキーの右にもキーが配置されている点も気になる人がいそうだが、慣れれば問題なくタッチタイプも行なえそうだ。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。タッチパッドの面積は特別大きいということはないものの、必要十分なサイズが確保され、安定して利用できる。

 タッチパッド左上にWindows Hello対応の指紋認証センサーも搭載。この部分はタッチパッドとしては動作しないものの、利便性は大きく損なわれていない。

 ただ、タッチパッドのクリック操作時のカチカチという音がやや大きい点は、個人的に気になった。キーボードの打鍵音が静かなだけに、余計気になってしまう。できればタッチパッドの動作音も、もう少し静音化してもらいたかった。

アイソレーションタイプの日本語キーボードを搭載
主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。しっかりとしたクリック感で打鍵感は良好で、タイピング時の打鍵音も静かだ
キーボードバックライトを内蔵するため、暗い場所でのタイピングも快適
Enterキー付近の一部キーでピッチが狭くなっていたり、Enterキー右にもキーが配置されている点はやや気になる
ポインティングデバイスはクリックボタン一体型のタッチパッドを搭載。面積は標準的で扱いやすさも申し分ないが、クリック時の音がやや大きい点が気になる
タッチパッド左上にはWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載する

GPU以外のスペックはモバイルノートとして標準的

 強力なディスクリートGPUを搭載してはいるが、そのほかのスペック面は、ビジネスモバイルとしてほぼ標準的なものとなっている。

 CPUはCore i7-8550Uを採用しており、メモリは標準で8GB搭載。英語キーボードを搭載するバリエーションモデル「PS42 8RC-027JP」では、メモリ搭載量が16GBとなっているが、PS42 8RCではユーザーによるメモリの増設が行なえないため、できれば16GB搭載モデルも用意してもらいたかった。内蔵ストレージは、容量512GBのSSDを搭載する。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac対応無線LANとBluetooth 5.0を標準搭載。Webカメラはディスプレイ下部に搭載している。

 側面ポート類は、左側面に電源コネクタ、HDMI、USB 3.0 Type-C、オーディオジャックを、右側面にSDカードスロット、USB 3.0 Type-C、USB 3.0×2の各ポートを用意。

 ポートはまずまず豊富だが、どうせならUSB Type-Cのうち1つをThunderbolt 3に対応させたり、USB PD準拠の給電機能に対応していればなお良かったように思う。

 付属ACアダプタは、ディスクリートGPUを搭載していることもあって、モバイルノート用としてはやや大きい印象。また、重量も付属電源ケーブル込みで実測433gとやや重く、本体との同時携帯は少々かさばりそうだ。

左側面に電源コネクタ、HDMI、USB 3.0 Type-C、オーディオジャックを配置
右側面にはSDカードスロット、USB 3.0 Type-C、USB 3.0×2を配置
Webカメラはディスプレイ下部に搭載している
付属ACアダプタは、余裕のある電力を供給するために、モバイルPC向けとしてはややサイズの大きいものが付属する
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測433gと重い

最新3Dゲームのプレイにも対応できる優れた3D描画能力を発揮

 では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。

 今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 vv1.1.1722」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.5.5029」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の5種類。比較用として、LGエレクトロニクスの「LG gram 13Z980-NA77JJ」の結果も加えてある。

モデルPS42 8RC-009JPLG gram 13Z980-NA77J
CPUCore i7-8550U(1.8-4GHz)
GPUIntel UHD Graphics 620/GeForce GTX 1050 With Max-QIntel UHD Graphics 620
メモリDDR4-2400 8GBDDR4-2400 16GB
ストレージ512GB NVMe SSD512GB SATA SSD
OSWindows 10 Home 64bit
モデルPS42 8RC-009JPLG gram 13Z980-NA77J
PCMark 10 v1.1.1722
PCMark 10 Score3,8453,568
Essentials7,0397,552
App Start-up Score7,8488,546
Video Conferencing Score6,2216,932
Web Browsing Score7,1457,271
Productivity6,0495,867
Spreadsheets Score7,6677,208
Writing Score4,7744,777
Digital Content Creation3,6252,783
Photo Editing Score3,6813,418
Rendering and Visualization Score3,6851,726
Video Editting Score3,5133,655
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,7203,327
Creative accelarated 3.04,5453,458
Work accelarated 2.05,0914,762
Storage5,0354,943
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)97.8753.84
CPU545560
CPU (Single Core)169166
3DMark Professional Edition v2.5.5029
Cloud Gate16,8578,013
Graphics Score36,0739,222
Physics Score5,8855,493
Sky Diver14,1314,266
Graphics Score17,1204,098
Physics Score7,4255,935
Combined score14,8063,833
Time Spy1,628-
Graphics Score1,507-
CPU Score2,998-
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)12,5734,270
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)10,3432,548
1,280×720ドット 最高品質10,012-
1,920×1,080ドット 最高品質5,858-

 結果を見ると、PCMark 10やPCMark 8のスコアは、搭載CPUが同じLG gram 13Z980-NA77JJと比べて、一部優劣が見られる。

 これは、搭載メモリ容量やディスクリートGPUの有無が影響しているものと考えられるが、全体的にはそれほど大きな差ではない。これは、CINEBENCH R15.0のCPUスコアについても同様で、CPUをメインに利用するアプリケーション利用時の性能は、双方にそれほど大きな差はなさそうだ。

 ただ、CINEBENCH R15.0のOpenGLや3DMark、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークの結果はPS42 8RCが圧倒している。もちろんこれは、ディスクリートGPUであるGeForce GTX 1050 Max-Qを搭載することによるものだが、3D描画をメインとするアプリを利用する場合には、性能面でかなり有利となりそうだ。

 ところで、高負荷時の空冷ファンの動作音は、シャーという風切り音が中心ながら、モバイルノートとしてはやや大きい印象。それでも、ゲーミングPCのような爆音ということはなく、図書館などのよほど静かな場所でもない限り、高負荷時の動作音が気になることは少なそうだ。

 また、低負荷時にはほぼ動作音が聞こえない程度に静かとなるため、負荷のかかる作業を行なわなければ、静かな場所での利用も問題ないだろう。

 続いてバッテリ駆動時間だ。PS42 8RCの公称の駆動時間は約9時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。

 それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約10時間43分と、公称を上回る駆動時間を計測した。

 3Dゲームなど、GPUが動作するアプリケーションを利用する場合には、かなり駆動時間が短くなることも考えられるが、比較的軽い作業であれば、ACアダプタを接続せずとも比較的長時間の作業が可能となるはずで、この点はモバイルPCとして魅力となるはずだ。

高性能なモバイルPCを探している人に魅力的な選択肢

 PS42 8RCは、14型液晶に高性能ディスクリートGPUのGeForce GTX 1050 Max-Qを搭載しつつ、重量が1.2kgほどとモバイルPCとして申し分のない軽さを実現している点が大きな魅力だ。

 MSIが得意のゲーミングPCの視点で見ると、搭載CPUがCore i7のUプロセッサになっている点や、メモリ搭載量が標準で8GBとなっている点が少々弱いと感じるものの、ビジネス向けのモバイルPCとしてみると、この点も大きな弱点とはならないだろう。

 その上で、ディスクリートGPUの存在によって優れた3D描画能力が発揮されることを考えると、高性能なビジネスモバイルとして、かなり魅力的な製品と言える。

 個人的には、USB Type-Cのうち1つだけでもThunderbolt 3に対応していたり、USB PDに対応しているとなお良かったと感じるが、それでも高性能なモバイルPCとして完成度はかなり高い。

 ディスクリートGPUを搭載する優れた描画能力を備えつつ、モバイルPCとして軽々と持ち歩ける製品を探している人にとって、魅力的な選択肢となることは間違いないだろう。