Hothotレビュー
高コスパのSnapdragon 845搭載フラグシップスマホ、OnePlus 6
2018年6月28日 06:00
先日、COMPUTEX TAIPEI 2018期間中に試用したXiaomiの「Mi MIX 2S」のレビューをお届けした。海外のECサイトGearbestの提案により、「OnePlus 6」というスマートフォンも同時に試用する機会を得たので、こちらの試用レポートをお届けしたい。
OnePlusはOPPOと同じBBK(歩歩高)グループのスマートフォンブランドであり、QualcommのフラグシップSoCを採用しつつ、コストパフォーマンスを追求したプレミアムスマートフォンの開発/製造を専門とする。OPPOは、2017年11月に日本国内のスマートフォン市場への参入を果たしたが、OnePlusはまだ実現できていない。このため、本機に関しても、日本に在住する者が購入して日本国内で合法的に無線機能を使用するための技適を取得していない。よって、ベンチマークのインストールといった無線機能を使用するものは台湾で試し、それ以外の部分に関しては電波を発しない機内モードに設定した上で国内で試した。
フラグシップしか開発しないOnePlus
スマートフォンに熱心なガジェットギークなら一度や二度はOnePlusの名前を聞いたことがあるだろうが、馴染みのない読者にとって改めてOnePlusについて説明しておこう。同ブランドは元OPPOのバイスプレジデント、劉作虎氏によって2013年にOPPOから独立して設立されたグローバルブランドである。
OnePlusは、QualcommのフラグシップSoCを採用したスマートフォン“しか”手がけず、“素”のAndroidに近いOSを採用、そして高い質感と性能を実現しつつ、コストパフォーマンスを追求するというスタンスを貫いている。2014年4月に発表された「OnePlus One」は、当時最高峰のSnapdragon 801を搭載しつつ、AndroidベースのオープンソースOS「CyanogenMod」を搭載。1999.99人民元(3万円台)という低価格を実現し、世間をアッと言わせた。
このスタンスはOnePlus 6でも受け継がれている。SoCには最新鋭のSnapdragon 845を搭載し、メモリも6GBからスタート。ノッチつきながら画面占有率を高めた、2,280×1,080ドット表示対応の6.28型AMOLEDディスプレイを採用。そしてピュアなAndroid Oreoから、最低限のカスタマイズが入った「OxygenOS」を搭載している。
そしてこのスペックでありながら、デザインにもこだわっており、セラミックに近い質感を実現するために、幾層ものコーティングが施されたガラスの背面カバーを採用している。デザインについては後述するが、これらの特徴を備えながら、529ドルからという低価格を実現している。
OnePlus 6発表会のプレゼンテーションで、「OnePlusは(事業拡大のため)ミドルレンジモデルを手がけたりはしないのか」という、中国のメディアから多数寄せられた同じ質問をスライドで提示した。これに対して劉氏は「作れなくもないが、われわれが得意とする分野ではない」と答えた。
コストを妥協しない姿勢もそうであるが、同氏によると、とくにOSのカスタマイズの部分に関しては、フラグシップのスペックを前提とした作りとなっている。他社、たとえばXiaomiなどは、ローエンドモデルもあるため、OSに関しては低スペックモデルでも動作を保証しなければならないが、OxygenOSは純粋にフラグシップSoCや大容量メモリ向けに最適化を施せばよいわけで、このあたりのコンセプトは当初から変更されていない。
フラグシップらしい高い質感。持ちやすさも特徴
前置きが長くなってしまったが、外観から見ていこう。OnePlus 6は「歳月の経過に耐え、持ち心地を重視した外観」を謳っている。具体的、OnePlus 3より取り入れた“地平線設計”と、優れたフィット感を実現した背面カバーの弧だ。
地平線設計は、四辺のフレームに取り入れられた鋭角線のことで、この線を境目に光と影を作り出し、薄く、先進的で飽きさせないフォルムに見えるようにしている。その一方で、なだらかな弧を背面カバーに取り入れることで、地平線設計によって手にしたときに鋭利なものに当たっているという印象を与えない工夫も凝らしている。
本体サイズは75×155×7.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は177gと、スマートフォンとしては比較的大型/重量級クラスに属するものの、このような工夫によりスペック以上のコンパクトさと軽さを覚えるのだから不思議だ。
背面はガラスだが、40の工程を得て製造され、1μm厚のフィルムをガラスの底面に複数枚貼り付け、独特なテクスチャを実現するとともに、6層のアンチグレアコーティングを施したという。同社はかつて「OnePlus X」という製品で、スマートフォンとしてはじめてセラミック素材を背面に採用したのだが、“重い”というのが唯一の難点であったという。ガラスでセラミック素材のような質感を求めた結果、こうした複雑な製造工程で製造されることとなった。
こうして完成されたOnePlus 6の背面だが、確かにセラミックを採用したMi MIX 2Sに勝るとも劣らない美しさを実現している。プリントもOnePlusのロゴと「Designed by OnePlus」の印字だけで極めてシンプル。Mi MIX 2Sのように、CEやWEEE指令準拠のマークで外観を損ねてしまっていることもなく、好感が持てる。また、確かに見ていて飽きないデザインではある。
ただ、ガラス素材である関係上、やはりというかなんというか、とにかくよく滑るのが欠点。筆者も試用中、少し斜めになった紙の上に端末を置いたりして、何度か落としてしまった。幸い床が絨毯で事なきを得たが、落としたくはなくば、付属のシリコンケースを装着せざる得ない。この場合、さほどの重量増にはならないが、せっかくの美しい外観が見えにくくなるのが難点だ。
ノッチつきAMOLEDディスプレイを搭載
本機は画面占有率を高めるために、上部に切り欠きが入った、いわゆるノッチつきディスプレイを採用している。ただ、受話用開口部は比較的小さく、カメラやそのほかのセンサーも比較的コンパクトにまとまっているため、幅は20mm前後に留まる。そのため、たとえアプリで隠れるにしても面積が最小限となっている。
ノッチがどうしても気になるユーザーのために、アプリケーションにノッチ領域での表示を許可しないモードも用意されている。隠すと言ってもそれは一般的なアプリから利用できないだけで、時計や通知アイコン、バッテリのステータスなどは表示されたままである。表示領域を大きく損なうことがないため、いい解決法だと言える。ちなみに筆者は気にならない派である。
採用されるAMOLEDディスプレイは、先述のとおり2,280×1,080ドット表示対応の6.28型。ただ4隅が丸められているほか、ノッチもつくので、単純に縦×横のドット数が総画素数になるわけではない。
AMOLEDは、画素自体が自発光する方式のため、深みのある黒を再現できるのが特徴だが、OnePlusに採用されているAMOLEDは、太陽光下や強い部屋の光の直下では、若干灰色に見えてしまう。光が直接当たらない環境下では、間違いなく本機のほうがコントラスト比が上だが、そうでない環境だと、若干Mi MIX 2Sに遅れを取る。とは言え、鮮やかさではやはり本機のほうが一歩抜きんでいる印象だ。また、残像も少ないため、動きの激しいゲームにおいても優位性がある。
顔認証を搭載。大画面を活かすジェスチャー操作も
iPhone Xといった端末のノッチの幅がそこそこあるのは、3Dカメラなどが内蔵されているためである。一方で本機はそれらを省いている。ただ、独自のAIによる顔認証機能を備わっているのが特徴だ。この機能をオンにすれば、側面の電源ボタンでスリープ解除し、画面を見るだけでロックが解除できる。
実際試しにやってみたところ、ほぼ一瞬で顔認証が終わり、大変快適であった。部屋の電気をすべて消すといった極端に暗いところでは顔認証できないが、夜の町中などでもほぼ問題なく一瞬でロック解除できる。すでに画面を見ている状態で電源ボタンを押せば、ロック画面が表示されることなく復帰する具合だ。
本製品は背面に指紋センサーを搭載しており、そちらによるスリープ復帰や認証ももちろん可能だが、たとえば画面を上にしたまま机の上に置いた状態だと持ち上げなければならないし、手を洗った直後で手が濡れている状態などではうまく認識しないときがある。そんなときこの顔認証は重宝しそうである。
また、本製品もMi MIX 2Sと同様、ナビゲーションバーを隠してジェスチャーで各種操作することも可能だ。ただ、Mi MIX 2Sでは画面下半分の左右エッジからのスワイプで戻る操作だが、OnePlus 6は画面の下のエッジの左右部分からのスワイプで戻る操作になる。そしてこの範囲が若干狭く、よくホームに戻る操作になってしまう。
さらに、Mi MIX 2Sでは画面を回転させるとジェスチャーの反応位置も付随して回転するが、OnePlus 6はジェスチャー反応位置が回転せず、たとえば左に倒して横持ちにすると、すべて右からのスワイプの操作になる。このあたりは好みもあると思うが、筆者的にはMi MIX 2Sの実装のほうが正しいように思えた。
意外にも高性能なカメラ/ビデオ撮影機能
近年、中国のスマートフォンメーカーのほとんどが写真機能に注力しており、発表会では欠かせない要素となっている。ことXiaomiについてはこのあたりには熱心に取り組んでおり、以前ご紹介したMi MIX 2SやMi 8などの発表会では、少なくとも30分ほどを写真機能の説明に割り当てているほどだ。
その点、OnePlus 6の発表会はそれほど写真の機能について謳われておらず、単純に優れているとアピールするに留まっている。写真撮影のカメラ機能そのものも、Xiaomi製品のようなAIによるシーン判別や、ファーウェイ製端末のようなデュアルカメラを活かしたワイドアパーチャ機能などは実装されておらず、通常の写真モードのほか、背景をぼかす「ポートレート」、ホワイトバランスやISO、シャッター速度を自身で設定する「プロモード」があるのに留まる。
ところが実際に出てくる絵は素晴らしい。背面のメインカメラのセンサーには、ソニーのIMX519(Exmor RS)というものが採用されており、センサーサイズは1/2.6インチ、画素数は1,600万画素、1画素あたりの受光サイズは1.22μm、F値は1.7となっている。受光面積に関してはMi MIX 2Sに搭載されているIMX363(1/2.55インチ、1,220万画素)に劣るのだが、実際の描写能力は非常に高いものだと感じた。鮮やかな色、高いコントラストを残しつつ暗部まで見えるディテールは素晴らしい。
細かいディテールを残さずベタ塗りしてしまったり、一部コントラスト比が高いシーンで、暗部ノイズリダクションの処理において干渉縞のようなノイズが見えたりすることもあるのだが、多くのスマートフォンで共通して見られる現象だし、スマートフォンで撮られた写真の大半が原寸大まで拡大されることがないだろうから、大きな問題にはならないだろう。
また、Mi MIX 2Sは、風景を写しているとさほど気にならないが、直線の対象物を撮影すると糸巻き型+陣笠収差がかなり気になる。一方でOnePlus 6は気持ちいいほどの直線で、歪曲収差はほぼ見られない。この点もMi MIX 2Sより優れていると言っていいだろう。
Mi MIX 2Sのカメラ機能を試したときは、「発表会で労力を割いて説明した割には、ようやくカメラとしてある程度評価できるようになった程度かな?」と思っていただけに、正直OnePlus 6の意外な完成度に驚かされた。“能ある鷹は爪を隠す”とは、このことだろうか。
ちなみに本機は写真のみならず、動画の撮影能力も高い。センサーの高速性を活かし、1分まで撮影できるフルHD/240fpsのスローモーションもさることながら、1080p/30fpsおよび4K/30fpsの記録では、強力な電子手ぶれ補正も利用できる(60fpsはいずれの解像度も非対応)。徒歩しながら撮影する程度では、もはやスタビライザーが不要になるぐらいだ。
フラグシップにふさわしい性能
最後に本機をベンチマークでテストしてみた。利用したのはAntutu Benchmarkおよび3DMarkのSling Shot Extremeである。
結果を見ると、本製品はAntutuでMi MIX 2Sを上回る28万台のスコアを叩き出しているだけでなく、3DMarkではそれを大きく上回るスコアを記録している。3DMarkのランキングを見ると、Snapdragon 845が本来発揮できる3D性能は4,600台が妥当のようで、MIX 2Sの3DMarkのスコアが振るわない原因は不明だが、少なくともOnePlus 6はその性能が遺憾なく発揮されていることがわかる。
ちなみにOnePlus 6はとくにゲーミング向けのスマートフォンであるわけではないが、CPU/GPUリソース配分の最適化や、ネットワークパケットの優先度を上げてレイテンシを削減するゲームモードを備えており、先述のとおりGPU性能も引き出されている。発表会では“西装暴徒”(スーツといったフォーマルな格好をした暴徒)などと比喩された。本来、こちらも「PUBG MOBILE」などで試すべきだったが、残念ながら6月上旬時点では、台湾においてPUBG MOBILEがサービスインしていないため試せなかった。
ちなみに、OnePlusはこうしたベンチマークのスコアのみならず、長年「高速性、安定性、シンプルさ」にこだわった最適化をしているのだという。最適化によって、約2年という一般的なスマートフォンの製品サイクルを超えた使用が可能だとしており、同社のラボでは、いまだ数百台のOnePlus 3に対して、日常使用以上の負荷テストをかけ続けており、性能的に問題なく、スムーズにアプリが使用できることを検証しているのだという。これは実際の利用に換算して6~8年に相当する製品寿命だとしている。
OnePlus 6もそのDNAを汲むモデルとして開発されており、きわめて素のAndroidに近い使い勝手を実現した上で、ハイエンドSoCや大容量メモリに特化したさまざまなチューニングが施されている。
たとえば、アプリ起動時のスプラッシュエフェクトの短縮による起動の高速化、フロントエンドアプリの追従性の向上(21.84%)によるカクつきの解消、そしてユーザーがよく使うアプリを学習し、メモリへの常駐やCPUリソース配分の最適化を行なうことで実行速度を向上させるといった工夫がなされているという。
これがOnePlusが追求する真の速さであると謳っており。パッケージ側面にある“The Speed You Need”のキャッチコピーは、こうしたチューニングに対する開発姿勢の現れと自信だ。短い期間の試用であったが、確かにどのアプリも高速に起動でき、使用中にカクついたり、プチフリしたりするようなことは皆無であった。
グローバル前提のモデルだからこそ日本の早期投入が待ち遠しい
ちなみに本製品は防水/防塵に対する規格には準拠していないが、いわゆる簡易生活防水程度のスペックは確保しており、ある程度水場回りでの使用にも耐えうる。ヘッドセット用に3.5mmミニジャックを残している点も評価でき、USB Type-Cで充電しながらヘッドフォンでゲームをプレイすることも可能だ。
電源ボタンの上にスライド式のスイッチを備えており、通知音あり、バイブレーション、通知オフを即座に選択できる点も好感が持てる。また、USB Type-Cは独自の高速充電技術に対応しており、付属のACアダプタでは、5V/4Aによる急速充電が可能だ。
試用していて唯一気になったのは、microSDによる容量拡張ができない点。ストレージは最低でも64GBからスタートしているが、本製品の優れた性能を活かそうと多数のゲームアプリを入るとストレージを逼迫するし、優れた写真/ビデオ撮影を活用したいと思うと、この容量はやや心許ない印象。せめてビデオ/写真ぐらいはmicroSDに保存できるようにしてほしかった。購入するのならば、最上位の256GBモデルをおすすめしたい。
SIMはNano SIMで、デュアルSIMデュアルスタンバイに対応。グローバル市場を前提とした製品のため、対応バンド帯は非常に多く、FDD-LTEはバンド1/2/3/4/5/6/7/8/12/17/18/19/20/29、TD-LTEは34/38/39/40/41、CDMAはBC0/BC1、WCDMAは1/2/4/5/8/9/19、GSMは850/900/1,800/1,900MHzとなっている。
技適がなく、日本で使えないのが残念ではあるが、非常に高いコストパフォーマンスを実現しているのは疑いようのない事実だ。関連企業であるOPPOが日本のスマートフォン市場に参入しているし、OnePlusは中国国内のみならずグローバル展開を前提としたブランドである。早期に日本での展開に期待したいところだ。