配信修行僧

騒音も不要なサウンドもゲームとVCの音量差も、OBSで制御してより聞きやすいオーディオに

筆者のOBS画面。ここで解説しているのとは違う方法を使っているのだが、グローバル音声デバイスは使わず、シーンごとに音声入出力を制御している

 ゲーム配信でまず目に付くのは映像なので、多くの人は上げられるなら画質を上げたいと思うだろう。それは間違いではないが、実は配信においては画質より、音質の方が重要だと言われている。映像の多少のブロックノイズは見ているとその内慣れるが、音声が途切れたり、割れたりしている動画を聞き続けるのは多くの人が不快と感じると言われているからだ。

 声の音質を上げるには、マイクなど機材面も重要となるのだが、OBSの設定だけでも、周囲の騒音、ひいては、USB機器の挿抜音や、Discord/LINEなどの着信音も配信から排除できることを知っておきたい。また、各種音量を最適な設定にすることで、聞きやすい配信となる。

グローバル音声デバイスは無効がオススメ

 デフォルトでは、「ファイル」→「設定」→「音声」→「グローバル音声デバイス」の「デスクトップ音声」と「マイク音声」は、それぞれ「既定」が割り当てられている。グローバル音声デバイスは、その名の通り、グローバルにどのシーンでも利用されるものなので、複数のシーンを作って切り替えて配信する時に、音が鳴るかどうかを意識しなくてもいいので便利だ。

デフォルトでは、「グローバル音声デバイス」の「デスクトップ音声」と「マイク音声」それぞれに「既定」のオーディオデバイスが割り当てられている
いずれも無効にすると、音声ミキサーは空になる

 ただ、たとえばBGMを流して1枚絵を見せるだけのオープニングシーンなどを用意していて、ここではマイクをオフにしたい場合などは、シーンを切り替える度に手動でマイクをミュートにする必要があり面倒だ。また、マイク以外の音の取り回しを考えた場合も、たとえシーンが1つだったとしても、どの音を配信に載せるかは手動で選択した方がいいと考えている。その観点からは、グローバル音声デバイスはすべて無効にすることをオススメしたい。

 無効にしたら、マイクが必要なシーンで、「ソース」の「+」を押し、「音声入力キャプチャ」を選ぶ。マイクの選択肢が表示されるので、使っているマイクデバイスを選ぼう。これをマイクを使うシーンごとに行なうのだが、一度作った音声入力キャプチャを右クリックでコピーして、別のシーンに貼りつけてもいい。これでマイク音が配信に載るようになる。

「音声入力キャプチャ」を選ぶ。マイクの選択肢が表示されるので、使っているマイクデバイスを選ぶ

 この状態では、ゲーム音などは自分には聞こえていても、配信には流れないので、個別に音声を追加する。と言っても、ゲーム配信なら、ゲーム音、ボイスチャット音、配信でBGMなどを流すならその音声くらいでいいだろう。

 まず、ゲームについては、「ソース」の「+」をクリック。取り込むゲームに応じて「ゲームキャプチャ」か「ウィンドウキャプチャ」を追加する(実は奥が深い、OBSのシーン/ソースの作り方/設定方法参照)。いずれの場合も、プロパティ画面に「音声をキャプチャ」があるので、これにチェックを入れると、そのゲームの音声が「音声ミキサー」に追加され、配信に流れるようになる。

「ゲームキャプチャ」か「ウィンドウキャプチャ」を追加して、「音声をキャプチャ」をオンにすると
ゲーム音声が「音声ミキサー」に追加される。こうしないと自分には聞こえていても、配信に載らない

 ボイスチャットについては、「ソース」の「+」をクリックして、「アプリケーション音声キャプチャ」を選択する。これは任意のアプリについて、画面はOBSに取り込まないが、オーディオは取り込む機能だ。名称はDiscordなど分かりやすい物に変更し、「ウィンドウ」のところで、DiscordならDiscordを選ぶ。これで、Discordの音が音声ミキサーに追加される。

 BGMをブラウザ経由で再生してる場合は、同様に「アプリケーション音声キャプチャ」を追加して、BGMを再生してるブラウザを選ぼう。

「ソース」の「+」をクリックして、「アプリケーション音声キャプチャ」を選択したところ。名前は分かりやすいものにする
次の画面で「ウィンドウ」から音声を取り込みたいアプリを選ぶ

 デフォルトのグローバル音声デバイスを使っていればわざわざこんなことをしなくて済むのにと思うかもしれないが、オーディオをアプリのジャンルごとに分けるのには大きな意味があって、音声ミキサーで配信に流す音をOBS上で個別に制御できるのだ。

 たとえば、配信していて視聴者から「ボイスチャットの音がちょっと大きい」と言われたら、音声ミキサーでDiscordのボリュームを下げればいい。音声ミキサーの音量は(デフォルトではモニターオフなので)配信上の音量なので、これを下げても自分に聞こえるボイスチャット音量に変化はない。また、今はボイスチャットの音は配信には流したくないけど自分では聞いておきたいという場合は、音声ミキサーでミュートすればいい。

音声ミキサーでゲームキャプチャとDiscordが分離されたので、配信に載せる音量をOBS上で個別に調節できる

標準機能でマイク音声をより聞きやすくする

 ここでまた話しはマイクに戻るが、OBSに標準装備のプラグインを使ってマイクの音をより聞きやすくできる。まず導入したいのが「コンプレッサー」。コンプレッサーは、文字通り音声を「圧縮」するのだが、MP3などのようにデータ量を圧縮するのではなく、音量の上下の幅を制限(圧縮)することで、大声で叫んでも、小声でしゃべっても聞き取りやすくするというものだ。

 利用するには、「音声ミキサー」の「…」をクリックして、「フィルタ」を選ぶ。出てきたウィンドウで「コンプレッサー」を選ぶ。ちょっと項目数が多く、かつ、コンプレッサーの設定はその人のマイクや環境、声質によって最適な設定が異なるため、唯一の正解というものはないのだが、以下の説明を参考にして試行錯誤してもらいたい。

「音声ミキサー」の「…」をクリックして、「フィルタ」を選び、出てきたウィンドウで「コンプレッサー」を選ぶ
コンプレッサーの設定画面

 まず「しきい値」というのは、この音量を超えたら音量を抑え始める値だ。デフォルトでは「-18dB」になっている。「比率」は入力がしきい値を超えた場合に、どれくらいの割合で音量を抑えるかというものだ。デフォルトでは「10:1」になっているので、18dBを超えると、その超えた分については音量が10分の1になる。10分の1になるのは、「音量全体」ではなく、「18dBを超えた分」についてだ。

 「アタックタイム」は、入力がしきい値を超えてどれくらい時間がたったらコンプレッサーをオンにするかの値で、デフォルトは「6ms」。「リリースタイム」はその逆で、コンプレッサーが聞き始めてからどれくらい時間がたったらオフにするかの値で、デフォルトは「60ms」だ。

 「出力ゲイン」は、指定した値分だけ「音量全体」を引き上げる。デフォルトは「0dB」だ。これらの値はおおむねデフォルトのままでも悪くないと思うが、出力ゲインは上げた方がいいだろう。

 コンプレッサーを調整する上で参考となるのが音声ミキサーで、普通の声でしゃべっても大声でしゃべっても、レベルメーターが黄色の範囲になるくらいがちょうどいい音量だ。たとえば、小声でしゃべって、レベルメーターが-30dBくらいなら、「出力ゲイン」を10dBほど上げてみよう。それにより、当然上限も引き上げられているので、大きな声を出して、黄色の範囲を超えていないかを確認しよう。

 絶対に避けたいのは、音量が0dBを超えること。0dBを超えると、単に音が大きすぎるだけでなく歪みが発生する。これはいわゆる音が割れた状態で、視聴者が音量を下げれば音は小さくなるが、歪みは解消できず、聞いていて不快に感じる。

 ちなみに、声が小さい分については、視聴者が音量を上げればある程度は引き上げられる。しかし、生配信ではプラットフォームによる広告挿入が行なわれる。これらの広告は大きめの音量で作成されていることがほとんどなので、視聴者が配信者の音量に合わせてスピーカーの音を大きくしていると、広告が流れた瞬間に爆音が発生することになる。これを防ぐためにも、マイク音は適切にしたい。

 コンプレッサーとは関係ないが、併せて言うと、ゲーム音など声以外の音量は-30dB~-25dBあたりになるように調整すると声と比較していい感じになるだろう。

 コンプレッサー以外にも導入するといいのが、「3バンドイコライザー」と「ノイズゲート」だ。「3バンドイコライザー」では、音の高域、中域、低域について個別に音量を微調整できる。ざっくり言うと、声については、低域を削り、中域を持ち上げるのがいいとされている。これも声質によって効果が変わるので、録音して聞き比べていい具合になる設定をみつけよう。

「3バンドイコライザー」の設定画面

 「ノイズゲート」は、一定レベル以下の入力をばっさり切り捨てる機能だ。ゲーム配信では、ゲームの音が終始鳴っているので、エアコンやPCのファンノイズなどが多少載っていても気付きにくいのであまり気にしなくてもいいが、雑談中などでマイク音しかない場合は、ブーンというノイズが気になることもある。

 何もしゃべっていないのに「音声ミキサー」でマイクのレベルメーターがちょろちょろ動いているなら、ノイズゲートが効果を発揮する。「閉鎖しきい値」は、これ以下の音量だとミュートにするという値で、デフォルトは「-32dB」。「開放しきい値」はその逆で、これ以上の音量になるとミュートを解除するもので、デフォルトは「-26dB」だ。

 1つ気をつけたいのが、たとえば声が平均的に-20dB程度だったとしても、話し始めは入力がゼロから上昇していくので、しきい値が大きすぎると、声の出がかりがミュートされることになる。しきい値はかなり控えめにした方がいいだろう。

「ノイズゲート」の設定画面

 なお、マイク機器によっては、ハードウェアでコンプレッサーやノイズゲート、イコライザーなどの機能を持っているものもある。そういう場合は、機器側で設定した方がより細かくかつ高品位にできるだろう。また、これらの設定はどこか1カ所のみでやるべきで、機器とOBSの両方でコンプレッサーを掛けたりすると返って音質が悪くなることもあるので注意しよう。

 そういう点で見落としがちなのが、Discordの高音質化設定だ。Discordには、入力感度の自動調整、エコー除去、ノイズ除去といった機能があり、デフォルトでオンになっている。Discordのボイスチャットを聞いているのが自分だけなら、これらの機能を使って問題ないが、配信に載せる場合、OBSやマイク機器の高音質化設定と競合して音質が劣化してしまうことがあるので、Discordのこれらの設定はオフにした方がいい。

Discordにはボイスチャットの高音質化機能があり、デフォルトでオンになっているが、配信においては別の設定と競合して音質が劣化することもあるので注意が必要