大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

PC値上げの正体と「マウスエフェクト」の衝撃。データが示す2026年1月市場の二極化

 昨今のPC市場において注目を集めているのが、PC本体価格の値上げである。PCメーカー各社に取材すると値上げ幅は10~20%を想定。2026年1月以降、その動きが徐々に顕在化しているものの、値上げへの踏み出し方は、各社バラバラだ。一方で、2025年12月には、「マウスエフェクト」と呼ばれる値上げ前の駆け込み需要が発生する動きも見られた。

 今回は、これらの動きが実際にどうなっているのか。BCNのデータから検証してみた。

2025年~2026年までの平均単価の変化

 BCNのデータは、ビックカメラや上新電機などの全国の家電量販店や、AmazonをはじめとしたECサイトから収集したPOSデータを毎日集計。PCやデジタル家電など、約150品目の販売動向を見ることができる。

 今回は、それらのデータを活用して、PCの需要動向を分析してみた。まずは、2026年1月の販売価格の変化だ。

2025年1月~2026年1月(月次推移) ※平均単価は税抜

 2026年1月の集計では、PC全体の平均単価は13万300円となり、1年前となる2025年1月の12万7,200円に比べると、3,100円の上昇となっている。上昇幅は約2.4%であり、それほど大きな上昇幅にはなっていない。むしろ、年末の2025年12月の集計では13万2,700円となっており、逆に1月に入って、平均単価が減少しているという結果すら出ている。

 内訳を見ると、1年前と比較すると、ノートPCの値上がり幅は3,300円、2.6%の上昇。デスクトップPCでは2,800円、1.9%と、いずれも微増の範囲である。また、昨年末と比較すると、ノートPCは12月の13万1,500円から、1月は12万8,000円へと2%下落しているという状況だ。デスクトップPCでは12月の14万5,600円から、1月は14万9,800円へと3%の価格上昇となっている。

 このように値上がりの影響は、現時点では大きくない。

 ただ、この集計は、PC全体の平均単価の集計であるため、高機能モデルの構成比が上がると、それにつられて平均単価が上昇するということも影響する。

主要メーカーごとの製品価格の変化

 そこで、製品を限定して、価格変化の動きを追ってみた。

 対象にした製品は、主要PCメーカー6社のノートPCで、各社の中で2025年12月に最も売れた製品とした。比較したのは12月第1週となる12月1日~7日と、1月最終週となる1月26日~2月1日の平均単価だ。

※平均単価は税抜

 ここでの動きは完全に二分した。

 2026年1月に値上げの傾向が見られたのは、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)、Dynabook、Appleの3社だ。

 FCCLのPCで、2025年12月に最も売れていたのはFMV Note A A53-K3 ブライトブラックで、12月の平均単価は15万8,200円。これが2026年1月には15万9,800円とわずかに上昇。その一方で、Dynabookで最も人気のdynabook T5は、1月が12万9,400円となり、12月の11万6,700円から11%上昇し、値上げの影響がみられている。

 また、Appleの人気モデルであるMacBook Air Retinaディスプレイモデル ミッドナイトは、12月の12万9,300円から、1月は14万4,600円へと12%の価格上昇となっている。

 逆に、2026年1月に入って価格が下落したのが、NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)、レノボ・ジャパン、ASUSの3社だ。

 NEC PCで最も売れているLAVIE N16の場合、12月が15万2,500円だったものが、1月には14万8,000円と約3%下落。レノボ・ジャパンのIdeapad Slim 3i Gen 10は、12月の10万7,900円から、1月は10万3,500円へと4%の価格下落。ASUSのROG Xbox Ally Xは12月の12万5,100円から、1月は12万3,700円へと1%のダウンとなった。

 こうしてみると、2026年1月に入っても、すべてのPCの価格が上昇したわけではなく、売れ筋モデルでも、これまでと変わらない価格水準で入手できたり、場合によっては12月よりも安く購入できたりするというわけだ。

メーカーによって異なる値上げ対応

 値上げについては、PCメーカー各社の戦略はバラバラだ。

 PCメーカー各社の幹部への取材や、メーカー直販サイトなどの動きを見ると、2026年1月から既存モデルを含めて一斉に販売価格を引き上げたPCメーカーがある一方で、値上げは新製品からとし、既存モデルは現行価格を維持しているPCメーカーもある。また、入学需要や年度末需要が見込まれる2026年3月までは現状の価格を維持し、4月以降に値上げに踏み出す考えを示すPCメーカーもある。

 PCメーカー各社に取材すると、値上げ幅は10~20%になるとの回答が多く、あるPCメーカーでは、「ブランド全体での平均値上げ幅は18%になる」と明言する例もあった。

 だが、BCNのデータからも分かるように、現時点においても、既存モデルについては、これまでの価格設定のままでPCが購入できるケースが多い。中には、新製品への入れ替え前のタイミングに入ったことから、実売価格が低下するといった動きも見られている。

 PC本体の値上げに関する報道が先行しているが、現時点での影響は、まだ限定的だといっていいだろう。

「マウスエフェクト」で注文殺到

 ところで、国内PC市場において、2025年12月に想定外の動きがみられた。それが、「マウスエフェクト」である。

 マウスコンピューターが、2025年12月10日に、同社の公式Xを通じて、「現在パソコン購入をご検討中の方へ、悪いことは言いません、なるべくお早目の購入をオススメします!!本当に!!買うなら今です……!!」と投稿したことで、2026年1月以降の値上げや、年内の品薄を懸念した個人ユーザーが殺到。マウスコンピューターには、創業以来最大となる注文が殺到。生産が追いつかず、納期通りに出荷できないことを理由に、すべてのモデルを一時的に販売中止せざるを得ない事態に陥った。

 さらに、この影響はほかのPCメーカーにも波及。「マウスコンピューターのXへの投稿以降、PCの注文が急増し、製品の確保など、想定外の対応に追われることになった」というPCメーカー幹部の声も聞かれた。まさに「マウスエフェクト」といえる状態が生まれていたのだ。

 実は、マウスコンピューターをはじめとして、PCメーカー各社は、10月14日のWindows 10のサポート終了以降、個人向けPCの販売数量が減少すると想定。部品の調達量や生産体制を絞り込む方向に動いていた。

 そうした中での「マウスエフェクト」によって、各方面で品薄が発生。12月のマウスコンピューターの投稿をきっかけに、PCメーカー各社のECサイトなどにも注文が殺到したものの、すべての注文には対応できないという状況が生まれた。

注文急増による販売現場への影響

 では、販売現場への影響はどうだったのだろうか。BCNのデータから検証してみた。

※指数: 2025年11月3日~11月9日のそれぞれの販売台数を「100.0」として算出

 月次の推移を見ると、2025年1月の販売台数を100とした場合、Windows 10のEOSを直前に控えた2025年9月は142.9となり、販売台数は約1.4倍にまで拡大。EOSを迎えた10月は142.2と、同様に1.4倍の水準を維持。だが、11月は116.1と伸び率が鈍化。これが12月に入ると131.1となり、約1.3倍の水準まで戻っている。この数字からも、12月に再び、個人向けPC市場が活性化したことが分かる。

 販売動向を、さらに細かく分析するために、週次推移のデータも見てみた。

 ここでは、11月第1週(2025年11月3日~9日)の販売台数を100として、1月最終週までの推移を追ってみた。

 販売指数の推移をみると、11月最終週(11月24日~30日)には、231.0となっており、ここに大きな需要の波が訪れていることが分かる。これは、ECサイトや量販店におけるブラックフライデーにあわせた販売キャンペーンの影響によるもので、例年需要が集中するタイミングとなっている。

 しかも、その後も大きな落ち込みがなく、高い水準で推移。12月最終週(12月29日~2026年1月4日)は257.5と、ブラックフライデーを上回る販売指数を記録した。値上げが実施されるといわれた2026年1月に入る前に、PCを購入したいという購入者が集中したといえる。

 「マウスエフェクト」の動きは、対前年同週比でみると顕著だ。

 ブラックフライデーの販促キャンペーンは、前年以上に大きな盛り上がりをみせており、11月最終週のPCの販売台数は前年同週比71.8%増と、約1.7倍に増加。Windows 10のEOSから1カ月半を経過したタイミングではあったが、買い替えに遅れたユーザーなどがセールを狙って購入したといえそうだ。

 その反動が見られた12月第2週(12月8日~14日)は、前年同週比で6.4%減となり、前年実績を割り込む結果となった。

 しかし、マウスコンピューターが、公式Xを通じて、早めの購入を促すメッセージを発信した翌週の12月第3週(12月15日~21日)になると、PCの販売台数は再び上昇に転じ、販売台数は前年同週比33.6%増となったのに続き、12月第4週(12月22日~28日)は同60.9%増、12月最終週も36.1%増と、引き続き高い成長率を維持した。

 また、1月に入っても、PCの販売台数は増加傾向を維持しており、2026年1月第1週(1月5日~11日)は前年同週比50.2%増、第2週(1月12日~18日)が26.4%増と高い水準を維持している。

 その後、需要はようやく一段落しはじめ、1月第3週(1月19日~25日)は前年同週比9.4%増となり、1月最終週(1月26日~2月1日)になって前年同週比1.2%減と、7週ぶりにマイナス成長となった。

 「マウスエフェクト」の影響が、先週になって、ようやく落ち着いたといってもいいだろう。

今後も値上げは続くのか?

 2025年10月の「Windows 10のEOS」、11月の「ブラックフライデー」、12月の「マウスエフェクト」を経て、2026年1月の最終週になって、ようやく需要が一段落した個人向けPC市場だが、これからは2026年1月以降からの「値上げ」の顕在化、2月からのAI PCのラインナップ強化を伴う「PC新製品発売」の本格化、3月の新入学需要による「春商戦」への突入と、市場を取り巻く環境が動くことになる。

 特に値上げの動きは、これからが本番だ。パソコン業界では、値上げがPC需要にどれぐらいの影響を及ぼすのか注視しているところである。