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Windows 10特需は「残り火」さえ消えたのか?2026年1月、PC市場を襲った想定以上の冷え込み

 国内PC市場の動きが、2026年1月に想定以上に急減速したことが、業界団体の出荷統計から明らかになった。

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2026年1月の国内PC出荷実績によると、出荷台数は前年同月比15.9%減の57万9,000台、出荷金額は同9.2%減の781億円となった。

 販売台数で前年割れとなったのは2024年6月以来、19カ月ぶり。2桁台のマイナスは2023年7月以来、実に30カ月ぶりのことになる。

GIGAスクール向け出荷の減少が影響

2026年1月の国内PC出荷実績(JEITA調べ)

 業界関係者の間では、2026年3月までは、GIGAスクール構想第2期によるデバイスの整備が進むため、前年割れになる可能性は低いとの見方が支配的だった。それだけに2桁台のマイナス成長は想定以上の落ち込みになったと見ることができるだろう。

 理由はいくつかある。1つはGIGAスクール構想による出荷が四半期末に集中する傾向があり、それもあって1月にはGIGAスクール構想向けに出荷したPCの数が少なかった点だ。

 JEITAの出荷統計では、GIGAスクール向けというカテゴリでの集計は行なっていないため、具体的な数字を導き出すことはできないが、GIGAスクール向け端末は、政府の5万5,000円という整備補助金によって導入が進められているため、導入対象となるモバイルノートカテゴリの平均単価の推移で、出荷量の増減を推測できる。

 たとえば、2025年度で、最初の四半期末となった2025年6月のモバイルノートの平均単価は7万8,370円となった。4月の11万491円や、5月の11万5,038円といった水準からは大きく下落した。これは、GIGAスクール向けのPC出荷の増加が裏づけられた動きといえる。

 また、学校が夏休みとなり、整備がしやすい時期となった8月にも、平均単価は8万9,931円と下落。さらに、第2四半期末となる9月には8万638円となり、第3四半期末となる12月には7万9,027円となった。

 2025年度は、年間を通じて平均単価が低く、それはGIGAスクール向け端末が毎月計上されていることに起因する。それでも、通常は10万円を上回る平均単価で推移している。しかし、四半期末を迎えるごとに、平均単価が大きく下落していることは、GIGAスクール向けの出荷が一気に増加していることの証明といえる。

 ところが、2026年1月の平均単価は12万2,519円となり、この1年間でも最も高い平均単価となった。12月と比較すると、一気に4万3,500円ほど上昇。単価上昇率は55%増となっているのだ。

 1月は、PC価格本体の値上げという要素もあるが、1.5倍という価格上昇は、それだけでは説明ができない。低価格のGIGAスクール向け端末の出荷が、これまで以上に減少したと推測できる。

Windows 10特需が完全終了、法人需要が急減

 2つ目の要因は、Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が完全に終了したとの見方だ。

 JEITAでは、2026年1月の需要動向について、「法人向けが低調な水準となり、台数、金額ともに、前年同月を下回った」と報告。「Windows 10のサポート終了を背景とした買い替え需要が一巡したことによるもの」と分析している。

 PCメーカー各社も、この点では同様の見方をしており、特に法人向けPCでは、2025年10月時点で、物流などの混乱を及ぼすことなく、特需は終了したとの見方が広がっていた。

 大塚商会は、年間で215万台のPCを販売。国内PC市場の10%以上を占めるが、同社の大塚裕司社長は、「今回のEOSのタイミングでは、メーカーからの納入や物流に大きな混乱はなかった」としながら、「2025年10月以降も、特需の残り火があった。これまではEOSを過ぎるとバサっと止まったが、中小企業の入れ替え需要は残っている」としていた。

 だが、2026年1月の実績を見ると、この「残り火」も消えたことを意味することになりそうだ。

 今回の19カ月ぶりの前年同月比マイナスという結果は、EOS特需の終焉を決定づけるものだといっていいだろう。

個人向けは堅調、「マウスエフェクト」が1月まで持続

 その一方で、JEITAが今回の統計結果で指摘したのが、「個人向けPCが堅調に推移している」という点だ。JEITAでは正式にはコメントしていないが、PC市場全体では、2桁減の大幅なマイナスとなる中でも、個人向けPCは、前年実績を上回る結果になった模様である。

 この理由といえるのが、本誌でも何度か指摘している「マウスエフェクト」の影響だ。これが、1月まで継続したと見ることができそうだ。

 「マウスエフェクト」は、2025年12月10日に、同社が公式Xを通じて、パソコン購入を検討している人を対象に、「悪いことは言いません、なるべくお早めの購入をオススメします!!」と発信したのをきっかけに、年明け以降の値上げなどを懸念した個人ユーザーが購入を急いだことで発生した事象を指す。

 その結果、駆け込み注文が殺到し、マウスコンピューターでは、すべてのモデルを一時的に販売中止したほか、PCメーカー各社のECサイトなどにも注文が殺到し、一部メーカーでは、納期が遅れるという事態を招くこととなった。

 2月10日にシャープが発表した2025年度第3四半期決算においても、同社の沖津雅浩社長 CEOは、「B2C向けPCは、年末にかけてメモリ価格上昇を意識して購入を急ぐ動きがあり、前年同期比7割超の増収になった」と発言。異常ともいえる伸び率から、Dynabookに対しても「マウスエフェクト」の余波が及んでいることをうかがわせた。

 「マウスエフェクト」の影響は、12月だけでなく、1月においても持続。量販店やECサイトから販売データを収集しているBCNの集計でも、1月第3週まで前年実績を上回る形で推移し、この時点まで「マウスエフェクト」が影響していたことが裏づけられている。

 ただ、個人向けPC市場の構成比は、市場全体の3割弱に留まる。個人向けPC市場が前年同月の実績を上回っても、法人向けPCの落ち込みをカバーできずに大幅な前年割れとなったのが現状だといえる。

「冬の時代」到来、起爆剤見えず

 Windows 10のサポート終了に伴う特需、GIGAスクール構想による教育市場向けPCの需要拡大という、2つの大きな潮流の中で、1年半以上、前年実績を上回り続けてきた国内PC市場だが、まもなく長期的にPC需要が低迷する「冬の時代」を迎えるのは明らかだ。2026年1月は、それが一歩早く表面化したといえる。

 さらに、PC価格の上昇や、AI PCのメリットに対する訴求の遅れといったマイナス要素も見逃せない。PC業界には「冬眠」の時期を短くするための起爆剤が必要だが、今のところそれが見当たらない。