大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

2月のPC平均単価は直近1年で最高に。各社で分かれる価格戦略

 主要パーツの調達価格上昇を背景にしたPCの値上げが注目される中、2026年2月は過去1年間で最も平均単価が高くなり、値上げ基調が徐々に顕在化してきたことが分かった。中には、1月から2月の1カ月間で、22%もの価格上昇となったPCもあったほどだ。

 逆に価格を据え置いたり、むしろ下落したりした機種もあり、PCメーカー各社による戦略の差が浮き彫りになる。一方、2026年2月は個人向けPCの需要が減少しており、今後はマイナス成長が長期化するとの見方も出ている。BCNが全国の家電量販店やECサイトなどを対象に集計している最新の販売データをもとに、2026年2月の状況を分析してみた。

2月のPC平均単価は過去1年で最も高く

 BCNのデータは、全国の主要家電量販店や、AmazonをはじめとしたECサイトから販売データを収集。PCやデジタル家電など、約150品目を対象に集計しており、需要動向やメーカーシェア、販売金額の推移などを見ることができる。

 これによると、2026年2月のPC全体での平均単価は、13万8,100円となり、過去1年間で最も高くなった。2026年1月の13万300円と比較すると、わずか1カ月間で7,800円上昇した。

PCの種類別平均単価推移

 だが、約1年前の2025年3月の平均単価は13万6,300円となっており、それと比較すると上昇幅は1,800円に留まる。

 2026年2月は、値上げの影響が極端に表れているとはいえず、PC全体でみれば限定的な影響といってよさそうだ。

 全体の平均単価の推移で注目されるのが、ノートPCとデスクトップPCで異なる傾向が出ている点だ。

 ノートPCは、2026年2月の平均単価は13万7,900円となり、2026年1月の12万8,800円から、9,100円上昇した。これに対してデスクトップPCは、2026年2月の平均単価が14万200円となり、2026年1月から9,600円下落している。ノートPCは平均単価が上昇、デスクトップPCは平均単価が下落するという逆の結果になっている。

 機種別の価格動向を見ると、値上げに関して温度差が出ているのが分かる。

価格の動きはメーカーによってさまざま

ノートPCの特定機種平均単価

 前回のコラムでは、主要PCメーカー6社を対象に、2025年12月に最も売れていたPCを取り上げ、2025年12月第1週(12月1日~7日)と、2026年1月最終週(1月26日~2月1日)の販売価格を比較したが、そのときと価格変化の推移が分かりやすいように、今回も同じ機種を対象に、2026年2月最終週(2月23日~3月1日)のデータを収集し、比較してみた。

 前回の集計で、2026年1月に値上げの傾向が見られたのは、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)、Dynabook、Appleの3社だったが、2月の集計では三者三様の動きとなった。

FMV Note A A53-K3 ブライトブラック

 FCCLの「FMV Note A A53-K3 ブライトブラック」は、12月の平均単価が15万8,200円。これが2026年1月には15万9,800円とわずかに上昇していたが、2月は15万3,100円と逆に価格が下落した。製品ライフサイクルの最後にあたるため、値下がりしたものと想定される。

dynabook T5

 Dynabookの「dynabook T5」は、1月が12万9,400円となり、12月の11万6,700円から11%の上昇となっていたが、2月の集計では13万900円となり、そこからわずかに上昇した。12月からの上昇率は12%となった。

MacBook Air Retinaディスプレイモデル ミッドナイト

 Appleの「MacBook Air Retinaディスプレイモデル ミッドナイト」は、12月の12万9,300円から、1月は14万4,600円へと12%の価格上昇となっており、最も値上げ幅が大きかったが、2月も同じ14万4,600円を維持。新たな価格が定着している格好だ。

 一方で、2026年1月の集計で価格が下落したのが、NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)、レノボ・ジャパン、ASUSの3社だったが、こちらも2月になって、それぞれの動きには大きな違いが見られた。

Ideapad Slim 3i Gen 10

 NEC PCの「LAVIE N16」は、12月が15万2,500円だったものが、1月には14万8,000円と約3%下落。2月は14万5,100円とさらに下落した。また、レノボ・ジャパンの「Ideapad Slim 3i Gen 10」は、12月の10万7,900円から、1月は10万3,500円へと4%の価格下落。これが2月は9万8,300円となり、さらに下落した。12月からの下落率は9%となっている。

ROG Xbox Ally X

 それに対して、大きな変化があったのが、ASUSの「ROG Xbox Ally X」である。12月の12万5,100円から、1月は12万3,700円へと1%のダウンとなったが、2月の平均単価は15万900円に急上昇。1カ月間の値上げ幅は22%にも達した。メーカーの戦略として、大幅な値上げに踏み切ったことが分かる。

 こうしてみると、PCメーカーの戦略の違いや、製品ライフサイクルのタイミングによって、価格変動には大きな差があることが見てとれる。

 ただ、見方を変えると、売れ筋モデルながら価格が下落しているPCがあり、値上げ報道が過熱する中でも、お得に購入できるPCを狙う選択肢もあるというわけだ。

新旧モデル間での価格変動は?

 今回は、もう1つ別の観点でも比較をしてみた。それは、新旧モデルの比較である。

 2026年1月から2月にかけては、主要PCメーカー各社から2026年春モデルが発売されるタイミングである。CPUの世代が変わったり、仕様が変更されたりすることで直接比較が難しいところもあるが、機種の選定についてはBCNの協力を得て、3社の製品を抽出し、価格を比較してみた。

 すると、ここでも各社ごとに戦略の違いが浮き彫りになった。

 特に気になるのは、既存モデルでも22%の値上げとなったASUSが、新製品の価格設定をどうしているのかという点だ。

 BCNのデータによると、2025年3月に発売した「Zenbook 14(UM3406KA)」は、発売時点の価格が16万2,200円であったものが、2026年1月に発売した新たな「Zenbook 14(UM3406GA)」では、20万8,900円となり、単純比較で29%も価格が上昇していることになる。ASUSは値上げを積極的に推進していることが分かる。

Zenbook 14(UM3406GA)
Zenbook 14の平均単価

 これに対して、ほぼ横ばいとなったのが、Dynabookの「dynabook T9」である。2025年2月に発売した「dynabook T9(P2T9YPBL)」は、24万7,700円となっていたが、2026年2月に発売した新たな「dynabook T9(P2T9APBL)」は、25万8,400円でスタート。値上げ幅はわずか4%となった。先に触れたように既存モデルの価格が12月から2月にかけて12%上昇していることに比べると、値上げ幅は小さいといえる。

dynabook T9(P2T9APBL)
dynabook T9の平均単価

 一方でNEC PCの「LAVIE N16 ネイビーブルー」では、異例の結果が出ている。

 2025年2月に発売した「LAVIE N16 ネイビーブルー(N1635/JAL)」は、17万2,900円であったのに対し、2025年7月に発売した「LAVIE N16 ネイビーブルー(N1635/KAL)」は17万8,000円と若干上昇したものの、2026年2月に新たに発売した「LAVIE N16 ネイビーブルー(N1635/LAL)」では逆に16万600円と、10%も値下がりしているのだ。

LAVIE N16 ネイビーブルー(N1635/LAL)
LAVIE N16の平均単価

 LAVIE N16は、16型ディスプレイを搭載したノートPCで、調査対象としたモデルでは、2025年7月発売製品も、2026年2月発売製品も、Core i3-1315U、16GBのメモリ、512GBのSSDを搭載している。

 最も売れ筋となっているモデルだが、新製品の発売時点の価格では従来モデルを下回るという戦略的な価格設定となっている。

 つまり、新製品への切り替えによって、すべての製品が値上げするというわけではなく、発売時点を比較すると、従来製品よりも低い価格設定からスタートしている機種もあるというわけだ。

 しかし、価格の動向は流動的だ。

 LAVIE N16の場合では、2025年7月発売モデルは、発売時には17万8,400円の価格設定でスタートし、2026年2月時点の平均単価は14万5,100円。半年間で約2割の価格下落となっているが、これと同じ値下げ率で推移するわけではないとも見られる。

 また、PCメーカーの中には、年度末需要や進入学需要が一段落する2026年4月以降に値上げすることを検討しているケースもあり、4月以降に全体的な価格上昇が発生する可能性も捨てきれない。

 PCの購入を検討している人は、価格の変動に注意するとともに、PCメーカー各社の販売戦略や価格戦略にも注視しておく方がいいだろう。

需要減と値上げ、2つの逆風に直面するPC市場

販売台数指数の推移(PC全体、2025年1月の販売台数を100として算出)

 一方、BCNのデータでは、2026年2月の販売実績で、前年割れとなる結果が出た。PC全体では、前年同月比11.4%減となり、2025年6月以来、8カ月ぶりのマイナス成長となった。ノートPCは、前年同月比11.5%減、デスクトップPCは同11%減となった。

 2025年6月の前年割れの際には、2025年10月のWindows 10のサポート終了にあわせた特需が控えていたため、業界全体の悲壮感はなかった。実際、BCNのデータでも、2025年9月は前年同月比107.1%増、2025年10月には同95.7%増と、いずれも2倍前後の販売実績となった。

 だが、今回の2026年2月の前年割れの場合は、この先に、需要回復の材料が見当たらないという点で、2025年6月の落ち込みとは状況が大きく異なる。

 PC業界は、起爆剤不在と、値上げという2つの逆風に、これから立ち向かうことになる。