大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

創業30年を迎えたマウスコンピューター。小松社長が打ち出す新たな挑戦

株式会社マウスコンピューターの小松永門社長

 マウスコンピューターが、1993年4月の創業から、30年の節目を迎えた。同社の小松永門社長は、「安心して使っていただけるPCを提供することにこだわってきたことが、30年の歴史につながっている」と語る。

 コーポレートスローガンを、これまでの「期待を超えるコンピューター。」から、「期待を超えるパソコン!」へと変更。さらに、30周年の1年間は、「新しいこと、マウスから。」のメッセージを打ち出し、社内に向けて30件、社外に向けても30件の新たな挑戦を開始することも明らかにした。小松社長に、30年の節目を迎えたマウスコンピューターの今とこれからについて聞いた。

--1993年4月に創業してから、30年の節目となりました。どんな気持ちで迎えましたか。

【小松】今から5年前の25周年の時には、ようやくビジネスが「地に足がついてきた」という状況でした。長年かけ、徐々にビジネス規模が拡大するなかで、製造体制、営業体制、サポート体制が形になり、ビジネスが継続的に展開できる地盤が整い、それをベースに、製品の品質がさらに安定し、よりよい製品をお客様のもとに提供することができるようになったのが5年前の状況です。

 そこから製造、サポート、営業体制をさらに強化し、安心の国内生産によって、高品質の製品を素早く納品する「Made in Japan」、用途にあわせてぴったりの1台を選ぶことができる「Just for You」、24時間365日の電話サポートや72時間での修理完了を目指す「Full Support」といった特徴を生かし、さらに、法人向けビジネスやECによるビジネスを伸長させ、さらにパートナーとの連携も強化することができています。

 この30年間を振り返ると、変わらない姿勢の1つとして挙げられるのが、PCビジネスに対して、社員全員が真摯に取り組んできたことです。開発、営業、サポートにおいて、やらなくてはならないことをしっかりとやり、守らなくてはならないことは守るという姿勢が徹底されています。

 また、お客様の声を聞き、それによって、開発、営業、サポートの体制がより醸成され、安心して使っていただけるPCを提供することができています。自主性を持って、真面目にPCビジネスに取り組む社員が多いことはマウスコンピューターの強みだといえます。

--30年間に渡って、マウスコンピューターは、着実に事業成長を遂げています。経営の観点から、小松社長がこだわってきた点はなんですか。

【小松】ビジネス規模が拡大することで、最も懸念したのはスピードが落ちることでした。そうした状態に陥らないために、規模の拡大にあわせて現場への適切な権限委譲も積極的に進めてきました。現場で判断して、動かしていかなくてはならない部分は、ほぼ権限を委譲しています。

 極端なところでは、私が新製品の内容を知るのが、発表されたニュースリリースを見たときだったということもありますよ(笑)。もう少し相談してほしいなぁと思う部分もあり、個人的には寂しいところもありますが(笑)、スピードが必要なところは、とにかくスピードを出せる体制づくりを優先し、現場で判断できるようにしています。規模は大きくなっても、スピードは落ちていないという自負はあります。

--小松社長がずっと言い続けてきたことの1つに「品質」へのこだわりがありますね。

【小松】お客様の信頼を得るには「品質」が重要な要素であり、「品質」を認めていただけるからこそ、お客様と継続的なつながりを持つことができます。30年間という長い期間に渡って、私たちのPCを使っていただけているのは、「品質」に対する評価の積み重ねに尽きます。「品質」への取り組みには終わりがありませんし、その取り組みの成果は年々高まっています。2018年から2022年の5年間で、AFR(年間平均故障率)は約34%の改善率となっており、初期不良率も約42%改善しています。そして、過去5年間での年平均障害報告件数は約580件ですが、それが故障率や初期不良の改善率につながっています。

--AFRや初期不良率が改善している理由はなんですか。

【小松】実は特別なことはなにもしていません。社内には、不具合が発生したら、それをすぐに報告し、共有するという文化が根づいています。製品の不具合だけでなく、営業部門から得られた情報、コールセンターに寄せられた声まで、なにからなにまで報告し、品質管理本部では、それらの情報をもとに、改善活動を提案し、それに全員で取り組むといったことを繰り返しています。品質の改善は、地道な取り組みしかありません。

 また、部品を調達する際にも品質を重視しています。新たな部品の採用や、海外パートナーからの提案などもありますが、検証をしてみたり、数年かけて一緒に改良をしたりといった取り組みの結果、日本のユーザーが求める品質には到達していないということになれば、製品に採用することはありません。

 日本のお客様が求める品質をしっかりと担保しながら、新たなモノづくりに挑戦するという姿勢は変わりませんし、それに合わせて新たな品質改善活動が次々と生まれています。社員の目がどんどん厳しくなっているようで(笑)、まるでふるいの網の目が年々小さくなっていくようです。そうした地道な取り組みが、品質の向上につながっていると思っています。

 品質は、なにか1つのことをやれば改善するというものではありません。さまざまな要素や、地道な努力が積み重なって実現するものです。企業としての総合力が試される部分でもあり、そこにおいても、しっかりとした力がついてきたといえます。品質の追求と、スピードの追求という両輪を重視するという姿勢は、これからも変わりません。

--一方で、マウスコンピューターの30年の歴史を振り返ると、数多くのユニークなPCが登場していましたが、最近、こうしたPCが減っているような感じがしますが。

【小松】確かにそうした部分はあるかもしれません。ただ、これは、PC市場全体に言えることかもしれません。コロナ禍で市場環境が大きく変化するなかで、開発の手法も変化し、リモートで会議を行なうことも増えました。これまでとは違う環境の中で、新たなアイデアを創出し、それを新機軸の製品やビジネスとして形にしていく作業が、これまでに比べて難しくなっていることは否めません。

 社員同士の日常のなんでもない会話がきっかけになってアイデアが生まれるという、これまでの自然だった活動が、リモートワークでは難しいという部分もあります。コロナ禍での反動のようなものは、PC市場全体にあるのではないでしょうか。

--今後、ユニークなPCがマウスコンピューターから登場することを期待してもいいですか。

【小松】新たなことに挑戦する姿勢はこれからも変わりません。特に、30周年という節目では、改めて新たなことに挑戦する最初の1年にしたいと考えており、挑戦することにはこだわっていきたいですね。

 30周年のキャッチフレーズに「新しいこと、マウスから。」という言葉を掲げたのも、挑戦する姿勢を示すためのものです。この1年の間に社外に向けて30件、社内において30件の新たなことに挑戦する予定であり、その中には「製品」という観点からの取り組みもあります。

 その1つとして、2023年7月には、G-Tuneミニタワーにホワイトバージョンを追加することをすでに発表していますし、それ以外にもいくつかの製品を投入する予定です。ただ、奇をてらったような製品を追求するといったことは、マウスコンピューターが30周年で目指す「挑戦」とは少し意味合いが違うと思っています。マウスコンピューターから発売するPCには、むしろ、まったく驚きがないことが大切ではないかとも思っています。

 驚く時というのは、なにか悪いことがあった場合がほとんどです(笑)。マウスのPCを購入すると、空気や水のように、なにごともなく、3年間や5年間に渡って利用できるという存在でありたいと思っています。なにもないことが一番であり、それが、マウスコンピューターが目指すこれからの姿です。

--30周年の新たな挑戦として、すでに、3件の挑戦を発表しています。1つめは、全てのPC製品において、3年間無償保証サービスを標準で提供するということですね。

【小松】これは、思い切った挑戦の1つです。これまでは1年間の無償保証でしたが、PCを1年で買い替えるという人はほとんどいませんし、最低でも3年間は使いたいと思っています。それならば、少なくとも3年間は安心して使ってもらえる環境を実現しようということが、このサービスを開始した背景にあります。

 マウスのPCは、品質が安定していますから、無償保証サービス期間を3年に延長しても経営へのインパクトがないと判断することもできました。言い換えれば、品質に自信があるからこそ、実現できたサービスであるといえます。「品質が高い」と言ってもなかなか伝わらないのですが、「品質に自信があるので、3年間無償保証します」といった方が伝わりますよね(笑)。品質を分かりやすくお伝えするための施策でもあります。

--2つ目は、PC購入者に対する送料無料サービスの実施です。

【小松】ECサイトで製品を購入すると、一定の金額以上であれば、送料が無料というのは、いまや常識となっています。マウスコンピューターのECサイトもそれに倣ったというわけです。

 欲しいスペックに合わせてカスタマイズをする際には、当然ですが想定した予算を意識しながら、選択していきます。いろいろと検討しながら、なんとか予算内に収めてボタンを押したら、そこに送料が乗って、自分の思いとは違う金額になってしまうと、かなりがっかりしますよね。ユーザーの視点から見て、悪い意味でのびっくり感がないようにするというのが、送料無料サービスの狙いの1つです。

--3つ目の取り組みが製品名の刷新となっています。

【小松】従来の製品名は、社内コードをそのまま使用しており、お客様から見ると、どんなセグメントの製品であるかが分からないという状況でした。そこで、一度、型番を整理したのですが、それをさらに一歩進めて、2023年4月11日以降に発売するPCから製品名を刷新しました。

 一般向けPCのmouse、ゲーミングPCのG-Tune、クリエイター向けPCのDAIV、ビジネス向けPCのMouseProというブランドはそのままに、それぞれの製品において、製品名を見ただけで、スペックが分かったり、選びやすくしたりといったことを目指しました。

 1桁目の文字は、デスクトップPCではM(ミニタワー)、S(スリム)、C(コンパクト)といった筐体を示し、ノートPCであれば、N(パフォーマンス)、Z(ライトウェイト)、S(スタイリッシュ)、B(スタンダード)、D(ベーシック)といった製品の特徴を示しています。たとえば、mouse MH-I7G50では、mouseブランドのPCであり、Mはミニタワー、Hはハイスペック、I7はインテルCore i7、G50はGeForce RTX3050を搭載しているという意味があります。

 また、DAIV Z6-I7G5TSR-Aでは、Zがライトウェイト、6は16型ディスプレイ、I7はインテルCore i7、G5TはGeForce RTX3050Ti、SRはシルバー筐体、Aは第1世代を指しています。約1年をかけて検討してきたものであり、製品名からどんなスペックであるかを理解していただきやすくなります。

DAIV Z6-I7G5TSR-A

--今後1年間で、30件の新たな挑戦を行なうということですが、どんなことを計画していますか。

【小松】これから1年間をかけて実施するものですし、社内からもいろいろなアイデアが集まっているところです。具体的な取り組みについては創業30周年特設ページで随時発表していくことになります。

 その中でも、新たな取り組みの1つとして、2023年度中に行ないたいと考えているのが、ECにおいても、製品に触っていただくための仕組み作りです。購入前にPCの実機を確認したいと思っても、そうした場は限定されているのが実情です。そこで、新製品を購入前に見てみたいという個人ユーザーを対象にPCの貸し出しを行ない、納得していただいてから購入を決めていただく仕組みをECでも用意したいと思っています。

 これまでにも法人ユーザーを対象に、営業部門の判断によって貸出機を用意し、導入検証を行なってもらうということはありましたが、新たに個人ユーザーを対象にした仕組みを構築することになります。アパレルのECサイトでも試着ができたり、ゴルフ用品でも購入前に試用ができたりするのと同じ発想です。ECサイトで、「試してみる」といったボタンを用意して、それを押していただけば試用できるといった仕組みができるといいですね。

 ノートPCであれば、軽さや厚みだけでなく、本体の質感やキーボードのタッチなど、カタログのスペックだけでは伝わりにくい部分も体感してもらえるようになります。特に、これまでマウスコンピューターのPCに触れたことがないような方々に、安心して購入をしていただくための仕組みとして用意したいと思っています。実際にサービスを開始するには、まだまだ詰めなくてはならない部分がありますが、なんとか実現したいと思っています。

--30周年記念モデルの投入はありそうですか。

【小松】今の時点では、具体的なものはないという状況です。ただ、社内では、いろいろと話はしていますよ(笑)。

--社外向けの30件の新たな挑戦は楽しみですが、社内向けの30件の取り組みも気になります。

【小松】社内のことなので、あまり公表する内容ではないのですが(笑)、働きやすい会社づくりに向けて新たな挑戦を行なっていきます。社内向けの挑戦は、下期から具体的な施策を打ち出すことになりそうです。

--30周年にあわせて、コーポレートスローガンを「期待を超えるパソコン!」に変更しました。この意味を教えてください。

【小松】これまでは「期待を超えるコンピューター。」としていたのですが、「コンピューター」という言葉が示す範囲が広すぎるということをずっと感じていました。もともと社名はマウス「コンピューター」ではあるのですが(笑)、2016年に、ブランド名を「mouse」に刷新した時にも、「PCを作っている会社である」ということをもっと前面に打ち出したいと考えていました。

 今回の30周年の節目にあわせて、コーポレートスローガンを変えたのは、PCを事業の軸に据えるということを、より明確にしたいという思いがあったからです。

--ただ、「PCはいつかなくなる」という議論は常にありますね。

【小松】言い換えれば、マウスコンピューターは、「PCはなくならない」ということを宣言したと受け取ってもらってもいいですよ。もちろん、PCの形が変わることはあるでしょう。小型化したり、軽量化したり、よりウェアラブルなデバイスとして進化することも想定されます。また、クラウドに最適化したデバイスとして進化するといったことも考えられるでしょう。

 しかし、PCというハードウェアは簡単にはなくなりません。PCの進化はまだまだこれからだといえます。

--大手PCメーカー各社は、ソリューションと連動させることで、事業を拡大する方針を相次いで打ち出しています。それとは逆の路線のようにも感じられますが。

【小松】その点では、異なる方向性だと言えます。あくまでもハードウェアに集中してビジネスを拡大するというのが、マウスコンピューターの基本姿勢です。

 では、ソリューションやサービスという領域はどうするのか。その点では、MCJグループの中でカバーをしていくことが最適だと判断しています。ソリューションやサービスは、ハードウェアとはビジネスモデルが大きく異なります。これら全てをマウスコンピューターだけでやるのではなく、マウスコンピューターは最も強みを発揮できるPCに軸足を置いて、ビジネスを展開していくことになります。

--「期待を超えるパソコン!」と、パソコンの後ろに感嘆符を付けた意味はなんですか。

【小松】期待を超えるという部分での驚きを持ってほしいという気持ちがあります。実は、感嘆符は、特別にフォントを作って、右斜めに傾けているんです。つまり、PCで右肩上がりに成長していくということを示しているんです。

--コロナ禍においては、事業環境が大きく変化しました。リモートワークの拡大に伴い、PCの価値が再認識された一方で、サプライチェーンの混乱による部品調達の遅れ、材料価格の高騰、円安の影響もありました。ここでは、マウスコンピューターが持つ国内開発や国内生産の強みなどは、どう生きましたか。

【小松】コロナ禍でのリモートワークの拡大に合わせて、ビジネスの生産性を高めるツールとして、PCの価値が大きく見直されたことは大きな変化だったといえます。従来は、カメラやマイクは、どちらかというとあまり性能が重視されない部分だったのですが、リモートワークの拡大とともに、カメラやマイクの性能に対するニーズが高まりました。製品開発においても、お客様のフィードバックを得ながら、リモートワークに最適化したモノづくりを進めてきました。

 一方で、開発体制については、リモートワークが定着したことで、海外のパートナーとも、すぐにコミュニケーションが取れる環境が整いましたから、それを生かして、コミュニケーションの頻度や質を高めることができました。早めに課題を解決し、品質を高め、それが結果として開発期間の短縮にもつながっています。

 ただ、サプライチェーンの混乱については、かなり苦労しました。開発部門と購買(調達)部門が連携して、製品の入れ替えを頻繁に行なったり、営業部門でも、納品が可能な製品から提案をしたりといったことを行ないました。また、生産を行なっている飯山工場に開発拠点があるため、開発と生産が相互に連携しやすい環境にあったことも、この難局を乗り切る上では欠かすことができない要素でした。国内開発、国内生産の強みが発揮できた部分だともいえます。

 振り返ってみますと、マウスコンピューターの場合は、規模が大きすぎず、小さすぎずという状態にあり、規模が大きすぎて数が調達できないとか、規模が小さすぎるために後回しになって入手ができないというようなことが少なく、たとえば、この部品であれば、パートナーの努力によって、なんとか揃えられるといったことも多々ありました。

 現場ではかなり苦労をしましたが、確保した部品を活用し、製品を1台でも多く市場に供給することに力を注ぎました。もともと小回りを利かせることができる体質であり、多品種少量生産に最適化したモノづくりをしていたことも功を奏しています。

 また、コロナ禍での対応という点では、コールセンターの体制強化が挙げられます。現在、直営のコールセンターを沖縄(沖縄県)と米子(鳥取県)に設置し、24時間365日のサポート体制を敷いていますが、コロナ禍において、在宅からも勤務ができるように体制を強化し、オペレータが柔軟に働ける環境を構築しました。特に、メールによるサポートについては、在宅での勤務が増えています。

 子育てのために離職してしまうという社員も多かったのですが、新たな働き方によって、知識や技能を持った人たちが、継続的に仕事ができる環境が整ったとも言えます。

--ゲーミングPCの領域では、G-Tuneのラインナップ強化を進めつつ、市場拡大に向けた支援にも力を注いでいますね。

【小松】日本eスポーツ連合(JeSU)とオフィシャルPCサプライヤー契約を締結したほか、プロeスポーツチームへのスポンサー契約、主要なeスポーツ大会へのスポンサードなどの活動にも力を注いでいます。

 日本のゲーミングPC市場は、海外に比べると、まだ成長の余地があると考えています。eスポーツ全体で見ると、スマホやゲーム専用機を含めて、一定の市場規模となり、認知度も高まっていますが、PCによるeスポーツは、一部のプロゲーマーが愛用している範囲に留まっており、さらなる普及活動が必要だと思っています。

 PCならではのリッチな環境と、世界標準であるという環境を提案し、eスポーツでプレイする人たちを、ハードウェアの観点から支援をしていきます。継続的な投資により、ゲーミングPC市場を盛り上げたいですね。

--直営店であるダイレクトショップを9店舗まで拡張しています。この狙いはなんですか。

【小松】2022年3月には、東京・新宿に、新宿ダイレクトショップをオープンし、同年4月には、福岡ダイレクトショップを移転して、フルリニューアルオープンしました。ダイレクトショップの役割は、お客様に直接、マウスコンピューターのPCを見て、触っていただく場であるということです。また、即納モデルもありますから、すぐに欲しいというお客様にもメリットがあるといえます。

 これからもダイレクトショップは増やしていきたいと思っていますが、具体的な時期や場所、今後の出店数の目標などはありません。ダイレクトショップの担当者が判断して、必要であれば、最適な場所に、最適な店舗を出店するということになります。

--長野県飯山市との包括連携協定を結んだのに続き、四国大学および四国大学短期大学部との包括連携協定を結ぶといった動きもありました。

【小松】包括連携協定を通じて、地域発展や教育研究の充実、人材育成などに貢献することを目指しています。PCはさまざまなシーンで活用されており、コロナ禍において、その重要性はさらに増したといえます。自治体や教育現場におけるPCの活用や、デジタル人材の育成などの課題に対して、マウスコンピューターは、ハードウェアの観点から貢献することができます。

 こうした活動は、若い世代の人たちにも、PCをより身近なものに捉えてもらうことにつながり、利用者の裾野を広げることにもなります。ご縁があれば、今後も包括連携に関する活動は広げていきたいですね。

--SDGsについても、明確な目標を掲げていますね。

【小松】2022年度においては、17の目標から10の目標に絞り込み、「重点的に取り組む活動テーマ」を定め、SDGsに貢献する取り組みを行ないました。

 PCメーカーとしての強みを発揮した「教育支援と地域振興(地域支援)支援」や「環境負荷低減(製品)」、「グリーン調達の推進」にフォーカスし、目標達成に貢献していきます。PCには、多くのプラスチックが使用されていますし、部品の調達や完成品の出荷の際に使用する梱包材にも多くのプラスチックが利用されています。工場で廃棄するプラスチックもかなりの量になります。これらの課題については、私自身、かなり前から気になっていた部分でもありました。

 また、生産拠点やコールセンターがある地域にも、なにか貢献ができるのではないか、ということも考えていた時期でした。そこで、2020年10月に、SDGsへの取り組みについて発表し、社員や地域が一緒になって持続可能な社会を実現するために、どんな貢献ができるのかということを示し、それに向けた活動を開始しました。実際に、プラスチックを使用していた部分を再生可能な材料に変えたり、廃プラやゴミの排出量削減などにも取り組んだりしています。

 この3年間の活動を通じて、SDGsに対する意識が現場の社員にまで広がりつつあることを実感しています。すでに、環境負荷低減への取り組みでは、製品の国際エネルギースタープログラムへの登録件数や、グリーン購入法適合モデル数において具体的な数値目標を設定しているほか、飯山および春日部の拠点では、消費電力の削減量、廃プラスチックの排出量をもとに、CO2排出量の削減目標を設定しています。

 次のステップとしては、より広範に、具体的な数値目標を設定するといったことにも取り組んでいきたいですね。

--これからの30年に向けて、マウスコンピューターはどんな進化を遂げますか。

【小松】この3~4年は、私たちが全く想定しなかったことが世界中で起きていますし、これまでとは違った時間が流れていたとも言えるでしょう。働き方1つをとっても、こんなにガラっと変化してしまうことは想定できなかったことです。

 昨今ではChatGPTの登場に代表されるように、技術の進化が私たちの仕事の仕方や生活の質を変え、人がどこで価値を発揮するのかを再考しなくてはならない時代に入っています。

 そうしたことを考えると、マウスコンピューターを取り巻く変化は、これまでの30年以上に激しいものになり、どんな変化をするのかといったことを予知することがさらに難しい時代に入るともいえるでしょう。そうであるならば、予測ができない未来に投資をするのではなく、新たな動きや想定外の変化にも、柔軟に対応できる体質を作り上げていくことが大切だと思っています。

 変化に対応するためには、常に新たなことに挑戦していく姿勢がこれまで以上に大切であり、その第一歩を踏み出すのがこの1年ということになります。そして、これからも継続的に、法人のお客様、個人のお客様に最適なPCをお届けし、「マウスのPCを買ってよかったよ」と言われるような企業を目指します。

--最後にPCWatchの読者にメッセージをお願いします。

【小松】PCWatchは、PCに関するリテラシーが高い読者が多いのですが、マウスコンピューターは、そうした方々にも、初心者の方々にも、安心して利用していただけるPCを作り続けていきます。PCを購入する際には、ぜひマウスのPCも検討していただきたいと思っています。