大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

生成AIに日本の大手ITベンダーはどう取り組むのか。NTTや富士通、NEC、日立の現在地とは?

 生成AIを取り巻く日本の大手ITベンダーの動きが少しずつ表面化してきた。

 NTTや富士通などは自ら大規模言語モデルの開発に関与する方針を表明。それに対して、日立製作所は自ら開発する計画がないことを示し、姿勢の違いをみせた。一方で、市場調査によると、米国における生成AIの活用が一気に広がり、日本との利用格差が生まれようとしていることも明らかになった。生成AIの動向を、日本の大手ITベンダーの取り組みという観点からまとめてみた。

業界リーダーが歴史の転換点と位置づける生成AI

 生成AIは、この半年間で一気に広がりをみせた新たなテクノロジーだが、それがこれからの社会を大きく変革するテクノロジーになることは、多くの業界関係者の共通認識となっている。

 米IBMのアービンド・クリシュナ会長兼CEOは、「ネットスケープモーメント」という言葉を用いて、「生成AIの登場は、ネットスケープが登場したインターネット黎明期に似ており、今後10年における大きな転換点になる」と発言。米Microsoftのサティア・ナデラCEOは、「生成AIは、これまで親しんできたAIとは根本的に異なる。生成AIによるコンピューティングの進化は、自転車から蒸気エンジンへと変わったような変化である。生成AIの存在は、キーボードやマウス、マルチタッチな機能がないコンピューティングが考えられないのと同じものになる」などと発言している。

 PCの登場、インターネットの登場、スマホの登場、ソーシャルメディアの登場といった過去の大きな節目と、同等規模となるテクノロジーによる歴史の転換点が、いま訪れているというのが業界リーダーに共通した認識だ。

あらゆる製品に生成AIを組み込むMicrosoft

 生成AIに積極的に取り組んでいるのがMicrosoftである。

 同社では、2019年7月に、ChatGPTなどで知られるOpen AIとの戦略的パートナーシップを発表し、生成AIの領域に本格的に参入。共同で自然言語処理を含むAIのアルゴリズムやモデル開発を行なってきた。2020年7月にはGPT-3 Open AI APIモデルを発表したほか、2021年7月にはGitHub Copilotを発表、2021年8月にはOpen AI Codexを発表した。続けて、2022年7月にはGitHub Copilotの正式サービスを開始している。

 そして、2023年1月以降はその取り組みを一気に加速。Microsoftは、OpenAIに対して、複数年に渡り、数10億ドル規模の投資を行なうほか、OpenAIの研究を加速させるために専用スーパーコンピューティングシステムへの投資を拡大。OpenAIが開発したモデルをMicrosoftのコンシューマ製品やエンタープライズ製品に実装し、新たなカテゴリのデジタル体験を実現することを発表した。その言葉通り、2023年1月から、Azure Open AI Serviceのサービスを正式に開始したほか、Microsoft Dynamics 365 CopilotやMicrosoft Security Copilot、Microsoft 365 Copilot、Windows Copilot for Windows 11などを次々と発表している。

 米MicrosoftのナデラCEOは、2023年1月に、「Microsoftのあらゆる製品に、製品を一変させるようなAI機能を搭載していく」と発言。その言葉通りの動きが、この半年間に渡って続いている。

米マイクロソフトのサティア・ナデラCEO

 日本でも、生成AIの利用が進んでいる。日本マイクロソフトの津坂美樹社長は、「GPT-4を実装したNew Bingの利用者数は、米国以外では、日本が最も多く、日本のユーザーが新たな技術に対して強い関心を持っていることが分かる」と語る。

日本マイクロソフトの津坂美樹社長

 そして、「使ってみると、GPT-3.5とGPT-4では、日本語環境の出来がかなり違うことがわかる。ChatGPTでは2021年9月までの学習データしか、情報として持っていないが、Bingでは、新しい情報にアクセスして、答えを出してくれる。また、どの情報ソースから持ってきたのかを示してくれる点も特徴である。業務で利用する際には、有価証券報告書の情報や、特定の信頼できるメディアの情報、特定のアナリストが発信している情報といったように、信頼できる情報に限定して、そこから回答を得るといった使い方もできる。金融機関などが業務で利用するには、New Bingの方が適している」とし、「これからも、日本のより多くの人たちに、New Bingを使ってもらいたい」と語る。

 2023年7月からスタートする同社新年度では、日本において、New Bingに関する訴求活動を拡大する考えも明らかにしている。

日本語をはじめ100以上の言語に対応したPaLM 2

 生成AIの動きで注目されるも1つの企業が、Googleである。

 Googleは、2023年5月に開催した開発者向け年次イベント「Google I/O 2023」で、次世代言語モデルとする「PaLM 2」によるサービスなど、生成AIに関して、25以上の製品や新機能を発表。基調講演では、Googleのスンダー・ピチャイCEOが、「Googleは、2016年にAIファーストの企業としての歩みを開始した。さまざまなサービスに対してAIを搭載し、人やコミュニティの役に立つようにしてきた」と前置きし、「生成AIによって、この取り組みを次のステップに進め、大胆かつ責任あるアプローチによって、検索を含むすべてのコア製品を進化させていく」と、今後の製品戦略の中核に、生成AIを据える姿勢を示している。

PaLM2を発表するGoogleのスンダー・ピチャイCEO

 Googleでは、2015年に機械学習に特化し、より高速に、大規模に機械学習を行なえる専用チップのGoogle TPUを発表。2017年には大規模なデータセットでの学習が可能になるTransformerを発表し、2018年には、それらを活用して、大規模言語モデルのBERTを生み出した。

 さらに、2020年には会話データで学習した大規模言語モデルのLaMDAを発表。2023年2月には、会話型AIサービスのBardの試験運用を開始。今回のGoogle I/O 2023では新たな言語モデルであるPaLM2を発表して、Bardに搭載したことも同時に公表した。PaLM 2 では、日本語を含む100以上の言語に対応。サイズが異なる大規模言語モデルとして、Gecko、Otter、Bison、Unicorn を用意。用途やタスクにあわせて、必要なモデルを選択できるようにしているのが特徴だ。

Googleのスンダー・ピチャイCEO

業務用途に特化したIBMのwatsonx

 ビジネス用途にフォーカスした生成AIを開発したのが、IBMである。

 2023年5月に開催した年次イベント「Think」で発表した「IBM watsonx(ワトソンエックス)」は、2023年7月から提供を開始する予定であり、IBM独自の大規模言語モデルなどによって構成する「IBM watsonx.ai」、AIを構築する際に、それぞれの企業が持つデータをストアし、管理できる「IBM watsonx.data」、信頼できるAIワークフローを実現するAIガバナンスツールキットである「IBM watsonx.governance」で構成する。

 同社では、「ChatGPTなどのコンシューマ向けの生成AIとは、攻めている領域が異なる」とし、「過去3年以上に渡る研究者と開発者のハードワークによって生まれた、まったく新しいAIである。生成AIをビジネスで活用するための新たなプラットフォームになる」(米IBMのアービンド・クリシュナ会長兼CEO)と位置づけている。

 IBM watsonx.aiは、10種類以上の基盤モデルを提供し、そこに自社固有のデータを加えて、自社の業務を理解したモデルを構築。金融機関固有のAIや、製造業の顧客固有のAIといった形でも利用できようになるという。

 一方、米Metaは、新たな音声生成AIモデル「Voicebox」を開発したことを発表。Amazon Web Service(AWS)は、Amazon Bedrockを発表し、テキスト生成系AI「Amazon Titan」や画像生成AI「Stable Diffusion」を利用できるようにしている。また、米オラクルも、エンタープライズ向けAIプラットフォームを提供するCohereと連携し、生成AIサービスを開発する計画を発表するなど、各社各様のスタンスで、生成AIへの取り組みを明らかにしている。ただ、この領域に対して、アップルがなにも発表していないところは気になる点ではある。

NTTは独自の大規模言語モデルを開発

 日本の大手ITベンダーも、生成AIへの取り組み姿勢を示し始めた。とはいえ、大規模言語モデルの独自開発や、先行している大規模言語モデルを活用したサービスの提供など、日本の企業も、各社各様での取り組みとなっている。

 NTTでは、「2023年度内には、法人向けに、小型軽量で、効率性の高い言語モデルを出していきたいと考えている」(NTTの島田明社長)と語る。

NTTの島田明社長

 NTTは、これまでにもCOTOHAのブランドで、AIサービスを提供。金融や保険などの特定分野に特化したAIを提供してきた経緯もある。

 「COTOHAの特徴は、軽量で、高性能である点。言語処理だけでなく、画像処理や音声処理を含めたサービスも提供しており、研究所では、これをブラッシュアップしていく過程で大規模言語モデルにも取り組んでいる」とする。

 NTTが目指している大規模言語モデルの特徴は小型軽量だ。

 島田社長は、「GPT-3は、パラメータが1,750億もあり、電力消費も大きい。NTTは、大規模言語モデルの小型化やカスタマイズ性能を向上させたいと考えており、音声や映像、画像といったマルチモーダルに対応したものを出していきたい」と語っている。

 その一方で、海外においては、ChatGPTをサービスとして提供している実績があるほか、国内では試験段階として、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceをソリューションのなかに組み込んで提供しており、先行する企業の大規模言語モデルを活用したサービス提供に対しても布石を打っている。

大規模言語モデル学習手法の基盤構築に取り組む富士通

 富士通では、「富岳」を活用した大規模言語モデルの分散並列学習手法の研究開発を、2023年5月から開始したと発表。これは、東京工業大学、東北大学、理化学研究所とともに進めているもので、アカデミアや企業が幅広く使える大規模言語モデルの構築環境を整え、国内におけるAIの研究力向上に貢献するものとなっている。

 研究成果は、GitHubやHugging Faceを通じて、2024年度に公開する予定であり、多くの研究者や技術者が、基盤モデルの改善や新たな応用研究に参画することで、効率的な方法を創出。次世代の革新的な研究やビジネスの成果につなげことができるという。

 また、2023年4月には、先端AI技術をPoCなどに迅速に活用できる新プラットフォームとして、「Fujitsu Kozuchi(コードネーム)」を発表。富士通が蓄積した品質、倫理、セキュリティ、技術などのノウハウと、オープンソースソフトウェア(OSS)や他社技術を組み合わせて、オープンに公開。「共創を通じて、AIを活用した持続可能な社会の実現を促進することができる」とする。

 富士通では、AIに関するソリューション提供案件が、2019年度以降、累計6000件以上に達しており、サービスの開発においてはこれらの実績を生かすほか、今後は、富士通が提供するFujitsu Uvanceのソリューションのなかに生成AIを積極的に組み込む姿勢をみせている。

先進AI技術の実績を生かして独自の生成AIに挑むNEC

 NECでも独自の生成AIの開発を急いでいる。

 同社の森田隆之社長兼CEOは、「NEC独自の生成AIを開発し、提供することを検討している」と述べ、「近々に発表する」との考えを明らかにしている。

 NECは、AIに関して50年以上の研究開発の歴史を持ち、AI技術ブランド「NEC the WISE」を展開。顔認証や虹彩認証のほか、群衆行動解析、インバリアント分析、意図学習などの領域で、AIを実用化している。AIの評価として用いられる難関学会での論文採択数も、NECは、日本の企業として唯一、グローバル トップ10に入っている実績がある。

 森田社長兼CEOは、「ビジネスユースで安心して生成AIを利用できるようにするためには、デジタルトラストが大切である。データ取得やその用途の課題、誤情報や著作権に関する課題、人権侵害の課題、日本語で利用する際の課題などを解決しなくてはならない。NECは、こうした課題に対して、技術やサービスで貢献できると考え、独自の生成AIを提供する準備を進めている」と語る。

 また、生成AIのビジネスは、汎用的に利用するサービスよりも、企業などが個別の環境で利用する市場のほうが大きくなると想定。「ビジネスユースで責任をもって生成AIを利用できるようにすることが、NECの役割になる」と語っている。

 森田社長兼CEOの発言は、大規模言語モデルの提供ということにまでは言及していないため、独自生成AIの範囲がどこまでを指すのかは現時点では不明だ。だが、研究開発レベルでは、大規模言語モデルに取り組んでいるのは、これまでの経緯からも明らかである。近々発表される独自の生成AIの中身が注目される。

 なお、NEC自らも、2023年5月から、ChatGPTをはじめ、いくつかの大規模言語モデルの社内利用を開始。「ビジネスユースで責任をもって生成AIを利用できるようにするため、専門家チームを設置して利用ルールを定め、検証を行っている」(森田社長兼CEO)と述べた。

NEC 森田隆之社長兼CEO

大規模言語モデルは開発しない日立製作所

 日立製作所では、「日立自らがスクラッチで生成AIを作ることは考えていないが、主要なプレーヤーが持つ大規模言語モデルに、日立が持つ固有のコンテンツをマージし、特徴のある生成AIを提供していくことになる。日立の生成AIへの取り組みは、大規模言語モデルを持つ主要なプレーヤーとのパートナーシップが重要になる」(日立製作所の小島啓二社長兼CEO)とコメント。大規模言語モデルの開発には、自ら取り組まない姿勢を明確にしている。

 日立製作所では、生成AIの社内外での利用を促進する専門組織として、「Generative AIセンター」を2023年5月15日に新設。同センターは、生成AIに関する知見を持つデータサイエンティストやAI研究者のほか、社内IT部門やセキュリティ部門、法務部門、品質保証部門、知的財産部門などから、業務のスペシャリストを集結し、日立グループの32万人の社員が、社内で生成AIを活用することを支援する。生成AIを社内で積極的に活用し、そのノウハウを顧客に提供するという流れを描く。

日立製作所の小島啓二社長兼CEO

 日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部長の徳永俊昭副社長は、「Generative AIセンターの発表後、すでに100件を超える問い合わせがある。社内への生成AIを使用する環境づくりの支援や、生成AIを業務に適用するためのコンサルティング支援などの要望が出ており、問い合わせ内容は幅広い」という。

 2023年6月から、生成AIの先端的なユースケースや価値創出を支援するコンサルティングサービスの提供を開始。Azure OpenAI Serviceと連携した「環境構築・運用支援サービス」の提供も開始し、日立グループ内での利用実績をもとに、企業における生成AIの安心安全な利用環境の実現を支援することになる。

「日の丸生成AI」はどうなるのか?

 英国独自のBritGPTの影響を受けて、一時、話題を集めた日本政府主導の「日の丸生成AI」の開発は、ここにきてトーンダウンしている。

 自由民主党デジタル社会推進本部では、膨大な計算資源および人材に投資し、官民連携で日本自前の生成AIを開発することの可能性について議論してきた経緯はあったものの、いまは、先行している海外の基盤モデルを活用し、これらの企業とのパートナーシップによって、国内に最適化した生成AIを開発する方向が現実的であるとの姿勢を示している。そして、これらの実績や蓄積をもとに、将来は、国産大規模言語モデルの開発なども検討していくという考え方だ。自民党内では、「戦艦大和は作らない」という比喩が使われているようで、日本独自の大規模言語モデルの開発には、慎重な見方が広がっているところだ。

この1年で広がった日米企業のAI利用格差

 一方、生成AIの利用は、この1年で、日本と米国で大きな差が生まれていることが、PwC Japanグループの調査で明らかになった。

 同調査は、国内では売上高500億円以上の企業に勤務する部長職以上の331人からの有効回答を得る一方、米国では売上高5億ドル以上の企業に勤務する幹部社員1014人から回答を得て、比較したものだ。

 2022年の調査では、AIを全社および一部に導入しているとの回答は、日本では53%、米国では55%と、ほとんど差はなかったが、2023年の調査では日本は50%と3ポイント減少。それに対して米国では17ポイントも上昇し、72%にまで拡大。日米の差が一気に広がった。
この差が生まれた理由として、PwC Japanグループは、2022年における日米政府のコロナ政策の違いをあげる。

 PwC Japanグループ データ&アナリティクス リーダーの藤川琢哉氏は、「日本では緩やかな行動制限が続いたのに対して、米国ではロックダウン解除で早期経済回復を推進。それが経済活動の回復と、それに伴うAIへの投資を再加速し、AIの利用が進展した」と分析。また、日本の企業では、AIの最優先課題として「リスクの管理」をあげた企業が2022年の6%から、2023年には33%に一気に増加。「リスクに対する懸念が拡大し、それが日本の企業のAI活用に対するブレーキになった」と指摘した。

 生成AIの利用でも大きな差が生まれている。

 生成AIを「利用中」および「2023年に利用予定」と回答した日本の企業は54%となっており、用途としては、AI用学習データ生成で62%、問い合わせ対応チャットボットで60%、ドキュメント作成の自動化が55%、研究開発で55%などとなっている。この数字だけを見ると高い水準であると捉えることもできるが、米国ではさらに利用が進展している。

 米国では、92%の企業が生成AIを「利用中」または「2023年に利用予定」と回答しており、用途別でみても、AI用学習データ生成、ドキュメント作成の自動化、研究開発のいずれもが93%という高い水準に達している。

 これだけの差が生まれた理由について、PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの三善心平氏は、「生成AIに対するリスクの捉え方に差があるため」と分析する。

 「生成AIを活用する際に、リスクがとくにない、あるいは分からないと回答した米国企業は44%であるのに対して、日本企業は9%。これは、裏を返せば、日本企業の約9割が、生成AIを活用する際に、なにかしらのリスクがあると判断していることになる」と指摘した。

 また、リスクの内容を見てみると、日本の企業では、「品質の不安定さ」が50%、「高いコスト」が47%、「プロセスのブラックボックス化や責任の所在の不明確さ」が44%、「なりすましなどのフェイクコンテンツ」が43%といったように、導入検討フェーズにみられる要因が上位を占めているのに対して、米国の企業で最も多かった回答は、「既存社員の知識不足」の44%であり、活用フェーズに生まれる要素がすでに課題となっている。

 このように、今回の調査は、日本の企業における生成AIの利用が、米国企業に比べて遅れていることが浮き彫りになった結果となっていたる。だが、PwCコンサルティングの三善氏は、「日本のAI活用の遅れを挽回する鍵は生成AIにある」と述べ、「生成AIの利用は、いまはドキュメントの下書きや要約、情報収集の高度化、問い合わせ対応などでの活用が中心になっているが、生成AIのポテンシャルを考えた場合、専門知識やノウハウを取り込み、意思決定や判断を支援するといった活用が期待される。そのためには、現場のデータやノウハウが活用されることになる。現場ノウハウは、日本の企業が強みを持つ部分。現場でのユースケースの創出でリードすることができる」と期待する。

 また、「いままでのAIは、マシンが読み込むことが可能な質が高いビッグデータがないと学習しなかったため、大手企業が優位であったが、生成AIでは、ドキュメントなどをそのまま読み込んで学習するため、質が悪いデータでも使えるようになる。これらのデータしかなかった企業にとってチャンスが生まれる点が、これまでのAIとは大きく異なる」とも語る。

 いまは、大規模言語モデルを開発している企業に注目が集まっているが、今後は、それを活用しながら、いかに企業に最適化した生成AIを構築し、活用するかがポイントになりそうだ。そこで、日本の企業が強みをどう発揮できるかが1つの注目点になる。

 米国企業が開発した大規模言語モデルを活用しながら、日本の企業が持つ独自のデータを学習させ、サービスとして提供するところに特徴を生むというのが、生成AI市場における日本のIT企業の立ち位置になるという構図がうっすらと見えてきた。