大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

高い顧客満足度でデル製品を強力にサポートする宮崎カスタマーセンター。働きやすい職場で社員を育成

デル 宮崎カスタマーセンター(MCC)

 デル製品のサポートを行なっている拠点が、宮崎県宮崎市のデル宮崎カスタマーセンター(MCC)である。XPSシリーズやALIENWAREなどのコンシューマ向けPCや、InspironやVostroなどの企業向けPCに用意されているプレミアムサポート「Dell ProSupport Plus」の電話による問い合わせなどに対応しており、顧客満足度調査で高い評価を得ている同社サポート体制の中核的役割を担う。

 このほど、デル宮崎カスタマーセンターを取材する機会を得た。同センターの取り組みを追った。

顧客満足度を高めているデル 宮崎カスタマーセンター

 デル宮崎カスタマーセンター(MCC)は、2005年11月に、国内におけるデル製品のサービスおよびサポートを行なう拠点としてスタート。個人向けおよび法人向けPCのサポート、サーバーやストレージといったエンタープライズ製品やソフトウェア製品のサポート、電話やWebを活用した営業活動や契約更新の提案活動も行なっている。

 現在、テクニカルサポート部門で約350人、テレセールスを行なう営業部門で約100人が勤務。管理部門などを含めて、合計で約480人の体制となっている。

デル宮崎カスタマーセンターの受付の様子
建物の3フロアを使用して、約480人体制で稼働している

 すべてがデルの正社員であるのが特徴で、2017年に行なわれた第1回みやざきコールセンターコンテストでは、最優秀賞にあたる「ベストカンパニーアワード」を受賞。2回目となった「ひなた企業対抗コールコンテスト2019」でもコールコンテスト部門で金賞、企業アピール部門で最優秀賞を受賞。宮崎に拠点を置くコールセンター専業企業などを押さえ込み、堂々と2連覇を達成している。

 また、デルは、日経コンピュータの顧客満足度調査で、デスクトップPC部門およびノートPC部門の2部門で2年連続での1位を獲得しており、それを下支えしているのが、デル宮崎カスタマーセンターということになる。

デル 宮崎カスタマーセンターの概要
テクニカルサポート部門と営業部門が入る
地元のコールセンターコンテストでは2連覇を達成
コールセンターコンテストのトロフィーなどを社内に展示している
社内には表彰状も展示している
こちらは顧客満足度調査の評価。最新の評価でも首位になっている

 デル 宮崎カスタマーセンター長兼インフラストラクチャーソリューションズグループ サポートサービス エリアマネージャーの石口靖信氏は、「MCCは、正社員によるカスタマーサポートを行なっている点が最大の特徴である。対応するエンジニアはすべて社員であり、24時間365日体制で顧客に対応している。問い合わせ当日に解決できる案件が30%以上。また、7日以内に65%の案件が解決している。解決後のフォローアップコールや第三者機関の調査によって満足度を確認しており、つねに90%以上の顧客満足度を目指している」とする。

デル 宮崎カスタマーセンター長兼インフラストラクチャーソリューションズグループ サポートサービス エリアマネージャーの石口靖信氏

 地元採用が中心で、MCCに勤務する社員の約6割が宮崎県出身者。鹿児島県や福岡県などの九州出身者も多い。

 石口氏は、「宮崎県が親孝行ランキングでトップを獲ったことからもわかるように、ホスピタリティあふれる宮崎県の県民性が、デルのサポートを支えている。また、離職率は1桁台と、コールセンター業界では異例とも言えるほど社員の定着度が高い。MCCがスタートして14年目になるが、平均勤続年数は毎年着実に伸びている」とする。

宮崎市の中心市街地に設けられた宮崎カスタマーセンター

 MCCは、PowerEdgeやEqualLogicといったメインストリームのエンタープライズ製品や、クライアントPCのサポートを行ない、デル全体のサポートの約7割を担当している。CompellentやVxRailなどのハイエンドエンタープライズ製品、ソフトウェア/ソリューション製品などを担当する川崎、EMCのストレージ製品を担当する新宿、個人向けPCの基本サポートを行なっている中国・大連の拠点とも連携しているほか、宮崎で入社した社員が、川崎や新宿に勤務し、ハイエンド製品のサポートに従事するといった例も出ているという。

 MCCがあるのは、宮崎市のまさに中心部である。かつては、地元大手百貨店の宮崎寿屋が入居していた建物で、現在でも、カリーノ宮崎と呼ぶ商業施設として利用されている。1階には蔦屋書店やタリーズコーヒーなどが入る。繁華街にも近く、通勤にも便利であり、近隣には社員のための駐車場を確保。なかには、徒歩や自転車で通う社員もいるという。

テクニカルサポート部門の様子

 石口氏は、「15年前に宮崎県や宮崎市の協力を得て、中心市街地にオフィスを確保できた。開設前から、自治体のなかに準備室を設置して取り組んできた経緯がある」とする。

 MCCは、宮崎ブーゲンビリア空港からも車で約15分という距離にあることから、全国からの訪問も多く、2019年は、地元の学校のほか、ユーザー企業やパートナーなど200社以上が見学に訪れたという。

 「これだけの規模で正社員が直接サポートをしている様子を見て、安心して製品を購入をしていただいたり、パートナービジネスを拡大するきっかけになったりといった成果がある」という。

 MCCは、カリーノ宮崎の4階、5階、6階の3フロアを利用している。4階フロアには、法人向けPCおよびサーバー、ストレージのサポート部門の約200人が勤務しており、国内でのビジネスが堅調な法人向けPCや、成長が著しいHCI向けのサポートを強化しているという。

ディスプレイにはさまざまな情報を表示して対応する
評価用の機器を持ち込んで不具合を再現するといったことも行なう

 「初期コールの100%を、正社員のエンジニアが行ない、内部に蓄積した知識を活用するともに、グローバルチームとのナレッジシェアも進めており、高い品質を求める日本のユーザーに対して、安心してデルのIT機器を利用してもらうための体制を整えている」とする。

 ここでは、一括導入した企業ユーザーでまとまった不具合が発生したり、特定の機種で同じ不具合が発生した場合には、インシデントとして問題解決に取り組み、営業部門と連携しながら対策を行なうといったこともしている。

 電話によるサポートのほか、ソーシャルメディアを利用したサポートにも力を注いでいる。ソーシャルメディア専任の社員が公式アカウントから発信。TwitterやLINEのつぶやきでデル製品に関するものを見つけると、そこに入っていって問題解決をすることもある。

ソーシャルメディア専任のサポートチーム

 「デルの製品についてつぶやいていたら、公式アカウントからいきなり問題解決の提案があって、びっくりするということも起きている」と、石口氏は笑う。これまでは個人向けのサポートの1つとしてソーシャルメディアを活用していたが、今後は法人向けの対応にもソーシャルメディアを積極的に活用していく考えだ。

障害の自動検知と通報テクノロジー

 また、テクニカルサポート体制の1つとして、障害解決を最短化するために自動検知および通報テクノロジーを採用。修理が必要なさいには、全国200カ所の保守サービス拠点から、約700人のオンサイトエンジニアが駆けつけ、全国の95%の地域で、4時間以内の対応が可能だ。

 迅速な保守対応を行なうために、川崎のDell EMCグローバルコマンドセンターと連携。交換パーツの手配状況を24時間体制で監視しているほか、自然災害が発生したさいにもオンサイトエンジニアが迅速に対応できる危機管理体制を整えている。

 台風や大雨の被害を受けた特別災害地域に対して、特別サポートを提供するといったことも、Dell EMCグローバルコマンドセンターの役割であり、2019年8月に、九州北部を襲った大雨の影響による災害でも、災害救助法指定地域となった佐賀県の10市10町のデル製品のユーザーを対象に、特別修理サービスを提供。修復が可能なデル製品に関しては無償で修理を行なうことを発表している。

サポート力を高める体制

 5階フロアには、個人向けPCのサポート部門が入り、約130人が勤務。ここ1年でこの部門の人員を約20人増加している。「国内におけるコンシューマ向けPCの販売が増加しているのが要因。それにあわせて国内のサポートを強化している。だが、販売増加量と同様の増員率にはなっていない。品質の向上も図っており、販売量が増加しても、少ない人数で対応できるように、生産性を高める活動も行なっている」とする。

こちらは5階の個人向けPCのサポートエリア

 2020年1月には、Windows 7のサポートが終了するが、駆け込みでの買い替えが発生するこれからの時期には個人向けのサポートも増えることになりそうだ。生産性を高めながら、こうした問い合わせのピークにも対応していくことになる。

 一方、6階フロアには、中小企業向け、官公庁向けのテレセールス部門、さらには、有償保守契約を行なう部門もここに入居している。

コンシューマ向けPCのほか、VRの検証機もある
ゲーミングPCであるALIENWAREのサポートも行なっている

 MCCの定着率が高い理由の1つが、社員が働きやすい環境が整備され、キャリア形成にも力を注いでいる点だ。

 入社した社員は、約6週間のトレーニングを行ない、PCの基礎から学習。デル製品の知識習得やトラブルシューティング、ロールプレイングなどのほか、サービスマインドに関する学習や、話し方に関する学習も行ない、最終段階での審査を経てから合格者だけが、実際にユーザー対応を行なう。

 さらに、その後もブラッシュアップトレーニングの実施のほか、定期的な1対1の面談や、新人1人に先輩2人がつくという手厚いメンター制度の導入、会社が補助するかたちでの各種資格の取得制度なども用意している。

 MCCで勤務する社員は、合計で150種類以上の認定資格を取得しており、昨今では、デルテクノロジーズ独自の認定資格を用意して、これを取得する動きを加速させている。ソフトウェアに関するサポートは川崎の拠点が中心となっているが、MCCでもMicrosoftやVMwareなどの認定資格取得している社員が在籍しており、年を追うごとにMCC全体のスキルが底上げされている格好だ。

さまざまな資格を取得した社員が在籍している
VMwareの資格取得者もいる
デルテクノロジーズ独自の資格制度も用意している

 キャリア形成には、職歴、学歴、性別、年齢が不問で、顧客満足度調査などのデータから社員を評価。顧客満足度を昇進や昇格、昇給に反映したり、エージェントランキングや四半期アワード、エブリディヒーローなどの表彰も行なったりしている。

 ちなみに、顧客満足度の評価は、0~11段階で評価。7以上が満足と判断しており、90%以上の満足度獲得が目標だ。チームによっては95%以上という高い目標を掲げている例もある。

 「1回の問い合わせで問題を解決したり、1回の修理で改善することも重視している」という。これは、顧客満足度の向上とともに、生産性や効率性の向上にもつながる。

社員が働きやすい環境を提供

 今年(2019年)に入ってからセンター内に、コールの対応状況を示すディスプレイを設置した。部門ごとにコールの待ち状況などを確認することができるもので、すべての社員が、顔をあげるだけで状況を確認できる。これも、顧客満足度の向上、生産性向上、効率性の向上にもつながる施策の1つに位置づけている。

管理部門では、コールの状況などを把握している
コールの状況はディスプレイに表示して情報を共有している

 また、「満足度が低い場合には、どうやって満足度を高めることができるのかといったことを、マネージャーとの話し合いなどを通じて改善することになる。全社員が『ありがとう』と言ってもらえるサポートができるようにすることを目指している」と語る。

 15人のエンジニアを、1人のマネージャーがまとめており、チーム全体として目標を設定したり、スキル向上の取り組みを行なったりしている。

 さらに、MCCでは、オープンボジションの仕組みの採用によって、自らの方針に則ったキャリアアップが可能だ。PCのサポートからキャリアをスタートし、サーバーやストレージのサポートへとステップアップし、その後、川崎や新宿で勤務するといったようなキャリアアップ形成に向けた取り組みも可能で、MCCもそれを支援する体制を整えている。

 MCCのテクニカルサポート部門では、顧客対応を行なう「レベル1エンジニア」、技術的なエスカレーション対応、検証作業、技術情報の作成とトレーニングを行なう「レベル2エンジニア」、海外部署との対応や、新たな製品のサポートについてプランを作成する「レベル3エンジニア」のほか、複雑な問題への対応などを行なう「レゾリューションマネージャー」、エンジニアを管理する「チームリーダー」、技術以外のエスカレーション対応を行なう「クオリティリード」、修理情報のチェックを行なう「ディスパッチャー」といった役割があり、案件ごとに最適な人材が対応する体制を取っている。同時に社員も明確な目標を持ってキャリア形成ができるようになっている。

テクニカルサービスのラボルーム
サーバーやストレージの検証を行なえる。ラボだけで閉じたネットワーク環境を実現
歴代のサーバー、ストレージも検証できるようにしている
検証用の法人向けPCもここに保管している

 育休や産休などにより、女性が働きやすい職場を実現しているのも特徴と言える。

 一方、「オールハンズミーティング」と呼ぶ、全社ミーティングを四半期ごとに開催。ここには、社長をはじめ幹部社員も出席し、デルテクノロジーズの最新情報について共有し、日本法人の方向性などについても説明する。

 MCCの社内にはリラクゼーションコーナーやマッサージルームなどを設置。社員が利用できるようにしているほか、社員が仮装して出社するハロウィーンイベントや、夏休み期間中に家族を招待するファミリーイベントといった社内イベント、自治体が主催するイベントへの共同参加、シティクリーン活動、災害支援なども行なっており、参加している対外的な各種イベントは年間約20に達し、延べ500人が参加している。ちなみに、10月末のハロウィーン当日は、社員全員が仮装をしており、その姿のままで、電話でサポート業務を行なっている。

街並みを見ながら休憩できるエリアも用意
休憩室には軽食が購入できたり、共用の冷蔵庫も用意している
社員が利用できるマッサージルームも完備している
もともとは百貨店として使用されていたビル。階段も大型のものになっている

 ユニークな取り組みの1つが、障碍者を対象にしたキャリアサポートセンターである。

 2012年6月に設置した同センターでは、障碍者を対象にIT関連の技術や知識を習得してもらい、将来のキャリア形成を支援する役割を担う。習得内容はPCの操作方法やITスキルだけでなく、ビジネスマナーなどにもおよんでおり、12カ月間の講習期間後、希望者はMCCのビジネスサポートグループで再雇用する。すでに8期目に入っており、多くの卒業生を輩出している。

障碍者を対象にしたキャリアサポートセンター

来年には設立15周年を迎える

 MCCは、2020年には、設立15周年を迎えることになる。

 この15年の取り組みによって、デルのサポートに対する評価は大きく変化し、いまやPCメーカーとして、もっとも高い評価を得るサポート体制を確立しているほどだ。

 また、デルテクノロジーズファミリーが拡大するのにあわせて、サポート対象となる製品群が広がり、それにあわせてデル宮崎カスタマーセンターが対象とする製品も広がり、求められるスキルも変わってきた。

 今後もコンシューマ向けPCの事業拡大によるサポート体制の強化、法人向けPCでは、より効率的で品質の高いサポート体制の確立を行なう一方、サーバー、ストレージに対するサービス強化も期待される。

 さらに、デルテクノロジーズにおいては、VMwareとの連携が、今後ますます重視されるなかで、ソリューションに対するサポートを強化する必要がある。そこに、デル宮崎カスタマーセンターがどう貢献するのかも注目される。

 15年間にわたり、正社員によって運営することで、スキルを高め、高い評価を得てきたMCCが、新たな節目に向けて、さらにもう一歩高い頂を目指すことになりそうだ。