山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

“積ん読”の消化に最適なページめくりデバイス、新型指輪リモコン「PR5500-C」を試す

キヤノン「PR5500-C」。2024年6月に発売された新モデル。実売価格は5,500円

 キヤノンマーケティングジャパンの「PR5500-C」は、指にはめて使うBluetooth接続のクリッカーだ。もともとはプレゼンテーションでスライドをめくるなどの操作を行なうためのツールだが、Kindleなど電子書籍アプリと組み合わせて、リモートでのページめくりをサポートしているのが特徴だ。

 本製品は以前本稿で紹介した「PR5000-C」の兄弟モデルに相当するが、そのキー割当については、プレゼン用途よりも電子書籍や動画、音楽などに寄せた仕様へと変更されている。今回は電子書籍アプリと組み合わせた場合の使い勝手について、従来モデルにあたる「PR5000-C」と比較しつつ紹介する。

指に装着するデバイス。ボタン配置がより直感的に

 まずは使い方から見ていこう。本製品は背面にあるリング状のパーツに、人差し指ないしは中指を通して本体を保持しつつ、親指を使って表面のボタンを操作する構造になっている。ボディはほぼ左右対称であることから、左手でも右手でも、どちらの手でも利用できる。

 デバイスとの接続にはBluetoothを用いる。従来モデル「PR5000-C」はBluetoothに加えて2.4GHzでの接続にも対応しており、同梱のUSBドングルを差し込んで持ち歩くための穴がこのリング部に設けられていたが、本製品はBluetooth専用となったため、そのギミックは廃止された。組み合わせるのがタブレットであればBluetoothさえあれば問題ないので、この変更は特に問題はならないだろう。

パッケージ。従来モデルよりもプレゼン以外の用途が強調されている
本体のほか電池、電池フタを開けるためのピン、使用説明書が同梱される。従来あったUSBドングルおよびポーチは廃止された
正面。中央とその左右に計3つのキーがあり、これらを親指で操作する
側面。人差し指もしくは中指に取り付ける。左手右手を問わず利用可能
実際に取り付けた状態。メーカーの写真はすべて人差し指に装着しているが、個人的には中指のほうが安定して保持できるように感じる
従来モデル「PR5000-C」(右)との比較。ボタンのラベルが変更になっている
横から見たところ。全体のフォルムは変わらない
従来モデルはUSBドングルを装着して持ち歩くための穴が開いていたが、本製品では廃止されている

 本体表面には3つのボタンが配置されている。中央にあるのが一時停止/再生ボタン、右側に送るボタン、左側に戻るボタンという配置だ。役割としては中央が「主」、その左右に「従」が並ぶと配置だが、従来モデルを電子書籍で使おうとした場合、「従」でページをめくり、「主」で戻るという、ボタンの利用頻度と見た目とが一致しない状態になっていた。

 今回のモデルではこれが改められ、ページをめくる/戻るの操作が左右の「従」のボタンに割り当てられた。これならば、電子書籍が右綴じ/左綴じのいずれであっても、進みたい方向に向かって左右のボタンを押せばよいので、直感的に分かりやすい。結果的に「主」にあたる中央の一時停止/再生ボタンの使い道がなくなってしまったのだが、割り当てられる機能がないのだから仕方ない。

ページをめくる/戻るは左右のボタンを使って行なう。中央ボタンは電子書籍ユースであれば割当はない
たとえばこの左側のボタンは電子書籍が右綴じであれば「めくる」に、左綴じであれば「戻る」となる

 なおこれら電子書籍ユースにおけるページめくりの操作は、本体手前にあるスライドスイッチを右方向に移動させた状態で行なう。ちなみに左方向にスライドさせた状態では音量調整に対応しており、電子書籍を閲覧しながらバックグラウンドで音楽を再生していた場合などは、それらの操作が行なえる。このあたりはアプリによっても組み合わせが異なるので、本稿では詳しい紹介は省略する。

 駆動は従来と同じく電池(LR44)を用いる。背面のリング状のパーツをひねって外せば電池を交換できる仕組みだが、従来と異なり、付属のピンを差し込まなければひねることができない仕様に改められている。詳細は不明だが、不意の脱落を防止する目的とみてよさそうだ。

電子書籍利用時は側面ボタンを右方向へとスライドさせる。従来モデル(Bluetooth接続時)は左方向にスライドさせて電源をオンにしていたので、感覚的には左右逆になっている
電池はLR44を使用。背面のリング状のパーツをひねって開ける
パーツをひねって開ける時、右上の穴に付属のピンを差し込む必要があるのは、従来モデルにはなかった仕組みだ

幅広いOSに対応。対応する電子書籍アプリは一部のみ

 対応する電子書籍アプリは、従来と同じく制限があり、公式にサポートしているのはAmazonのKindleアプリのみ。このほか筆者が確認した限りでは、AppleのBooksアプリ、さらにebookjapanの3つが、本製品でのページめくりに対応している。これらは特にアプリ個別の設定を行なう必要もなく、Bluetoothでペアリングが完了すればすぐに利用できるようになる。

 そのほかのアプリについては、筆者環境では、楽天Kobo、DMMブックス、紀伊国屋書店Kinoppy、ブックライブ、BOOK☆WALKERは動作しなかった。基本的にデバイス側でどうにかできるものではなく、電子書籍アプリ側の仕様によって決まるのだろう。本デバイスがよりメジャーになり、アプリ側で対応がなされるのを期待するしかない。ちなみにこれらアプリごとの動作の可否は、従来モデルと変わっていない。

今回は主にiPad(13インチiPad Air(M2))で、Kindleアプリと組み合わせて試用している
【動画】電源をオンにし、数ページめくったあと、数ページ戻って元のページを表示する様子。挙動はきびきびしておりストレスはない
接続はBluetooth。ペアリングは左ボタンを押しながら電源をオンにすることによって行なう

 対応OSは、今回試用しているiOS/iPadOSに加え、Windows、macOS、Android、さらにFireタブレットにも対応するなど幅広い。iOS/iPadOSは、Androidのように音量ボタンを使ってページをめくる仕組みがないので、そうした意味でも魅力的だ。またFireは、中身はAndroidでありながら、音量ボタンによるページめくりには対応しないので、こちらも本製品は貴重な選択肢ということになる。

Androidの設定画面。音量ボタンによるページめくりのオプションを有効にしなくとも動作する
Fireとの組み合わせでも利用可能だ
Fireの設定画面。ちなみに前述のAndroidもそうだが、この画面でバッテリ残量を見られるのは、iOS/iPadOSにはない特徴だ

 なお本製品は電子書籍専用というわけではなく、動画/音楽プレーヤーの操作、さらにはカメラのシャッター操作にも対応している。その一方でプレゼンまわりの操作は機能が縮小されるなど、従来モデルの主用途だったプレゼンテーション利用よりも、個人のマルチメディア目的の用途が強化されている。具体的には、スライドショーを開始する機能などが、本製品では省かれている。

 これについての是非は人それぞれだろうが、従来モデルも併売されていることから、目的に合ったモデルを買い求めさえすれば、特に問題にはならないだろう。ちなみに筆者は従来モデルを購入して1年強、電子書籍ユースでしか使っておらず、プレゼン用途での使い方はほとんど把握していない有様なので、筆者のようなユーザーをターゲットに機能をチューニングしてくれるのはありがたい。

“積ん読”の消化に最適

 以上のように、従来モデルからキー配置が改められたことで、電子書籍ユースではより自然に使えるようになった。ベッドサイドでタブレットをアームに取り付け、寝転がったままページをめくりつつ読書を楽しむという環境を実現するには、もってこいのデバイスだ。

 唯一気になるのは電源まわりだ。本製品は電源を手動でオン/オフする仕組みで、使い終えたあとに電源をオフにするのを忘れてしまいがちだ。実際には未使用状態で7分経過するとスリープ状態になるのだが、スイッチがオンの位置のままという気持ち悪さは残る。機能を切り替えるスライドスイッチと電源スイッチを分け、プッシュ式の電源ボタンを採用すれば解決できそうだが、これはコスト次第だろう。

スイッチを中央にスライドさせれば電源がオフになるが、うっかり忘れてしまいがちなのがネックだ

 実売価格は従来モデルの4,500円に対して5,500円と、USBドングルなど付属品を省いたはずが逆に上がっているのが少々残念だが、リング部の金型を新たに起こすなど、コストが増しているであろうことは十分に理解できる。筆者は従来モデルによって、積読本の消化が相当進んだりと、効果は十分に保証できるので、特にタブレットをメインに電子書籍を楽しんでいるユーザーは、ぜひ試してみてほしい。