山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Apple「iPhone 12 Pro Max」で電子書籍を試す

~iPhone史上最大、6.7型の画面サイズでコミックも読みやすい

Apple「iPhone 12 Pro Max」。今回紹介する新色のパシフィックブルーのほか、シルバー、グラファイト、ゴールドをラインナップする

 「iPhone 12 Pro Max」は、5Gに対応したAppleの6.7型スマートフォンだ。iPhoneシリーズなかでもっとも大きな画面サイズを備え、さらに超広角/広角/望遠のトリプルレンズを搭載するなど、カメラ機能にも注力していることが特徴だ。

 新登場のiPhone 12シリーズは、コンパクトな「iPhone 12 mini」がひときわ注目されているが、このiPhone 12 Pro Maxも、歴代のiPhoneのなかで最大となる6.7型の画面を備えるほか、iPad Proにのみ搭載されていたLiDARスキャナを搭載するなど、見どころの多い一品だ。

 今回はSIMロックフリーモデルを用い、従来のiPhone 11 Pro Max、および本製品とは実質的なサイズ違いにあたるiPhone 12 Proと比較しつつ、電子書籍ユースを中心としたレビューをお届けする。

6.7型のOLEDディスプレイを搭載。iPhone史上最大となるサイズだ
左側面はサウンドオン/オフスイッチと音量ボタンを備える。従来は右側面にあったSIMカードスロットはこちらに移動している
右側面は電源ボタンを備える。左側面のボタンもそうだが、筐体側面が垂直にカットされたデザインに改められたため、ボタンもフラットな形状に変化している
底面はLightningコネクタとスピーカーを搭載。ここは従来モデルと同じだ
背面にはトリプルカメラを搭載する。レンズの右下にあるのがiPhoneでは初搭載となるLiDARスキャナ

筐体デザインが一新。落としにくく壊れにくい

 まずは従来モデルであるiPhone 11 Pro Max、およびもう1世代前のiPhone XS Maxとの比較から。

【表】iPhoneシリーズのスペック
iPhone 12 Pro MaxiPhone 11 Pro MaxiPhone XS Max
発売年月2020年11月2019年9月2018年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)78.1×160.8×7.4mm77.8×158.0×8.1mm77.4×157.5×7.7mm
重量226g226g208g
CPUA14 Bionicチップ
次世代のNeural Engine
A13 BionicチップA12 Bionicチップ
RAM6GB4GB4GB
ストレージ128/256/512GB64/256/512GB64/256/512GB
画面サイズ/解像度6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi)
Wi-FiWi‑Fi 6(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)
コネクタLightningLightningLightning
防水防塵IP68IP68IP68
生体認証Face IDFace IDFace ID
駆動時間/バッテリ容量最大20時間のビデオ再生最大20時間のビデオ再生最大15時間のビデオ再生
備考MagSafe対応-

 本製品を含むiPhone 12シリーズは、従来のiPhone 11から筐体デザインが一新されている。具体的には、これまでラウンド加工されていた側面が垂直に切り落とされたデザインへと改められ、それに伴って画面が筐体の横幅ギリギリまで広がっている。

 その結果、筐体の横幅は約0.3mmしか大きくなっていないにもかかわらず、画面の横幅は約3mm大きくなっている(詳しくは後述)。解像度は458ppiと変わっていないとはいえ、電子書籍、とくにコミックなど固定アウトのコンテンツを表示するのに有利な仕様だ。また筐体が従来より薄くなっているのもポイントと言える。

 注目したいのは、Ceramic Shieldの採用により、耐落下性能が4倍向上したとされていることだ。本製品はiPhone 5s以前に似たデザインに戻ったことで、本体を両側から挟むようにして持ちやすくなっているので、落としにくさと壊れにくさ、この2点を両立させていることになる。むしろ性能向上よりこちらのほうが直接的なメリットを感じられるかもしれない。

 またカメラは、暗所でのオートフォーカスに有利なLiDARスキャナを搭載することに加えて、このiPhone 12 Pro Maxは広角レンズがiPhone 12 Proより明るく、光学ズームレンジも4倍ではなく5倍と、ワンランク上のスペックを実現している。これら目当てでこのiPhone 12 Pro Maxを選択するユーザーもいるだろう。

 一方で、新型コロナウイルスの影響下にある現在、マスクと相性のよくないFace ID以外の生体認証方法が搭載されなかったのはやや疑問だ。たとえば電車の乗り換えにあたって読書を中断して画面をロックし、また解除して読書を再開するように、外出先でロック・アンロックを繰り返す機会が多いと、多少なりともハンデになるだろう。

左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。筐体、画面ともにひとまわり大きくなっている
背面。トリプルレンズ搭載は従来と同じだが、レンズ自体がひとまわり大きくなったほか、iPad ProでおなじみのLiDARスキャナが追加されている
厚みおよび側面の加工の違い。左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。従来は丸かった側面が垂直にカットされたデザインへと改められている
左が本製品、右がiPhone 12 Pro。デザインは同じだがサイズが異なる
背面。カメラの径は本製品のほうが大きく、スペックも本製品が上だ

サイズが大きいのに意外に持ちやすい

 今回登場したiPhone 12シリーズからは、iPhoneには充電器とイヤフォンが同梱されなくなった。よって本製品の付属品は、実質的にLightningケーブルだけだ。パッケージも大幅なスリム化を果たしている。

パッケージの比較。左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。充電器類が同梱されなくなったことで体積が激減している
同梱のケーブルはUSB-C - Ligntning仕様。従来と同じ仕様だが、充電器は自前で調達する必要がある

 実際に手に持った感覚としては「サイズが大きい」のは当然として「そのわりに持ちやすい」ということだ。従来のiPhone 11 Pro Maxは側面が丸くカットされていたので、無理な持ち方をすると手が滑って落としそうになることもしばしばだったが、本製品は角に指を引っ掛けられるので、片手でも安定して保持できる。

 本製品は側面ギリギリまで画面があるため、持ち方によっては不意にページがめくられるなどの誤操作が起こってもおかしくないが、試したかぎりではそのようなことはない。むしろ従来モデルのほうが、持ち方が不安定になりがちで、そうした誤操作は起こりやすかった印象がある。

従来のiPhone 11 Pro Max。iPhone 6以降に共通する、側面が丸いフォルム
本製品は側面が垂直にカットされた、かつてのiPhone 5sまでのモデルに近いデザイン
側面が垂直にカットされているせいか、片手でも安定して持ちやすい
Webページの上下スクロールや、電子書籍のページをめくるような簡単な操作であれば、仰向けになった姿勢でも問題なく行なえる

 一方、これは製品そのものの問題ではないが、MagSafeに対応したことで、スマホバンドやリングが使いにくくなったのはマイナスだ。一般的に、筐体の大きいスマートフォンならば、スマホバンドやリングで持ちやすくしようと考えるユーザーも多いはずだ。筆者自身、従来のiPhone 11 Pro Maxは、保護ケースの上からバンドを貼り付けて使用していた。

 しかしながらこのiPhone 12シリーズは、MagSafe充電器を背面に装着できるようになったため、スマホバンドやリングなどのオプションを背面に貼り付けると、MagSafeが使えないという問題が発生する。どのようなスタイルで運用すべきか、決めかねている人も多いだろう。

 そうした意味で(長期的にどうするかは追って考えるとして)従来よりも片手で持ちやすいことは、ひとまずスマホバンドやリングなしで使えるという意味でありがたい。今後ケースを買い足すにあたっては、こうした持ち方の部分は、意識しておく必要はあるだろう。

筆者私物のiPhone 11 Pro Maxの利用スタイル。ケースの上からスマホバンドを取り付けている。この状態でワイヤレス充電も行なえるのだが、今回のMagSafeではこれが難しくなった
MagSafe充電器(右)。本製品をはじめとしたiPhone 12シリーズの背面に吸着させて充電が行なえる
実際に取り付けた状態。薄型のケースや、MagSafe対応ケースの上から吸着させることは可能だが、スマホバンドやリングをつけたままではまず無理だ

従来モデルよりひとまわり大きいコミックの表示を実現

 さて電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルに、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。電子書籍ストアはApple Booksを使用している。

 冒頭にも述べたように、本製品の最大のポイントは、画面が大きいことだ。これにより、従来のiPhone 11 Pro Maxと比べても、コミックなど固定レイアウトのページを大きく表示できる。

 横幅を実測してみたところ、iPhone 11 Pro Maxが68mmなのに比べて、このiPhone 12 Pro Maxは71mmということで、ひとまわり大きく表示できる。たった3mmと思うかもしれないが、対角線ではなく横幅で3mmというのはそれなりの差だ。

左が本製品、右がiPhone 11 Pro Max。横幅が広くなったことで、表示されるページもひとまわり大きくなっている
従来のiPhone 11 Pro Maxは、画面の横幅が約68mmある
本製品は約71mmと、従来よりも約3mmほど横方向に広がっている
ちなみにiPhone 12 Proの画面の横幅は約64mm

 またテキストコンテンツについても、画面が縦に伸びたことで、1行に表示できる文字数が1~2文字ほど多くなっている。あくまでもApple Booksでの話で、ほかのストアやコンテンツでは未検証だが、以前のiPhone XS Max→iPhone 11 Pro Maxへのモデルチェンジではなかった変化だ。

 Apple Booksにはコミックを縦スクロールで読めるモードがあり、これをオンにした場合は、そのぶん多くの情報量を1つの画面内に表示できる。ストアのランキングや、ライブラリなど、縦スクロールのページについても、それだけ多くの項目を1画面に表示することが可能だ。

テキストコンテンツについても、1行に表示される文字数が、従来モデル(右)よりも数文字程度増えている
コミックを縦スクロールで読めるモードでは、画面の長さを最大限活かせる。もっともコミックの読み方が変わってしまうため、好き嫌いは分かれるかもしれない
ストアのランキングを表示したところ。項目数にして約2分の1個分、天地に長くなっていることがわかる
Apple Booksは、「Aa」のアイコンが「大小」に変更されるなど、細かいマイナーチェンジが行なわれている

 ところで本製品はiPhone史上最大のサイズだが、では小型のiPad miniと呼んでも差し支えないかと言われると、アスペクト比が異なることもあり、少なくとも電子書籍ユースでは明らかに「No」だ。実際、コミックの表示サイズは比較にならないほど違う。

 ただし解像度は458ppiと高いため、強引に見開き表示にしても、細部までディティールはきちんと読み取れる。こうしたポテンシャルについては、ある意味でiPad miniを上回るものがある。

iPad mini(右)との比較。6.7型と7.9型ということで、数値上はかなり近い画面サイズに思えるが、実際には似ても似つかぬサイズだ
iPhone史上もっとも大きいとは言え、見開き表示はあまり実用的でない
ただし解像度は高いため、強引に見開き表示にしても、表現力は高い。吹き出しのセリフもきちんと読み取れる

電子書籍のビューアとしても実力派

 最後に電子書籍ユースにかぎらず、実際に使ってみて感じた点もいくつか書き留めておきたい。

 まず1つ気になったのは、背面カメラの厚みが従来より増したせいで、テーブルに置いたときの傾きも増していることだ。iPhone 11 Pro Maxと比べた場合も、またiPhone 12 Proとの比較でも、明らかに違いがある。カメラ・テーブル双方に傷がつかないようにするためにも、また安定性の面からも、保護ケースで段差を緩和してやるとよいだろう。

本製品(左)、iPhone 11 Pro Max(右)を平坦な面に置き、上方から見た状態。本製品のほうがカメラの厚みのぶん余計に持ち上がっている

 また、前面のノッチ部分は、従来からサイズが変わっておらず、邪魔な印象は否めない。前面カメラでもナイトモードが利用可能になるなど、機能自体は進化しているのだが、パンチホールタイプのカメラを採用している他社製品との比較では、ノッチ部分の横幅の広さは、どうしても気になってしまう。

iPhone 11 Pro Maxを天地逆にし、本製品の上に並べた状態。ノッチ部分のサイズ、アイコンのサイズと間隔は変化がない一方、画面の横幅は広がっている。またベゼルは若干細くなっている

 以上見てきたように、ツッコミを入れたくなるポイントはちょくちょくあるのだが、その多くは機能優先でそうなったものであり、全体として優れた製品であることに変わりはない。もともとかなりヘビー級の製品とは言え、大型化したにもかかわらず重量が増していない(226g)のもよい。あとは11万7,800円(税別)からという価格とどう折り合いをつけるかだろう。

 おそらくカメラ機能に魅力を感じて購入する人が多いであろう本製品だが、今回見てきたように、電子書籍のビューアとしてもなかなかの実力派だ。カメラ目当てで本製品を購入した暁には、ぜひ電子書籍も試してみてほしいと思う。

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