山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
Apple「iPhone 12 Pro Max」で電子書籍を試す
~iPhone史上最大、6.7型の画面サイズでコミックも読みやすい
2020年11月14日 06:55
「iPhone 12 Pro Max」は、5Gに対応したAppleの6.7型スマートフォンだ。iPhoneシリーズなかでもっとも大きな画面サイズを備え、さらに超広角/広角/望遠のトリプルレンズを搭載するなど、カメラ機能にも注力していることが特徴だ。
新登場のiPhone 12シリーズは、コンパクトな「iPhone 12 mini」がひときわ注目されているが、このiPhone 12 Pro Maxも、歴代のiPhoneのなかで最大となる6.7型の画面を備えるほか、iPad Proにのみ搭載されていたLiDARスキャナを搭載するなど、見どころの多い一品だ。
今回はSIMロックフリーモデルを用い、従来のiPhone 11 Pro Max、および本製品とは実質的なサイズ違いにあたるiPhone 12 Proと比較しつつ、電子書籍ユースを中心としたレビューをお届けする。
筐体デザインが一新。落としにくく壊れにくい
まずは従来モデルであるiPhone 11 Pro Max、およびもう1世代前のiPhone XS Maxとの比較から。
iPhone 12 Pro Max | iPhone 11 Pro Max | iPhone XS Max | |
---|---|---|---|
発売年月 | 2020年11月 | 2019年9月 | 2018年9月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 78.1×160.8×7.4mm | 77.8×158.0×8.1mm | 77.4×157.5×7.7mm |
重量 | 226g | 226g | 208g |
CPU | A14 Bionicチップ 次世代のNeural Engine | A13 Bionicチップ | A12 Bionicチップ |
RAM | 6GB | 4GB | 4GB |
ストレージ | 128/256/512GB | 64/256/512GB | 64/256/512GB |
画面サイズ/解像度 | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) | 6.5型/2,688×1,242ドット(458ppi) |
Wi-Fi | Wi‑Fi 6(IEEE 802.11ax) | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac) |
コネクタ | Lightning | Lightning | Lightning |
防水防塵 | IP68 | IP68 | IP68 |
生体認証 | Face ID | Face ID | Face ID |
駆動時間/バッテリ容量 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大20時間のビデオ再生 | 最大15時間のビデオ再生 |
備考 | MagSafe対応 | - |
本製品を含むiPhone 12シリーズは、従来のiPhone 11から筐体デザインが一新されている。具体的には、これまでラウンド加工されていた側面が垂直に切り落とされたデザインへと改められ、それに伴って画面が筐体の横幅ギリギリまで広がっている。
その結果、筐体の横幅は約0.3mmしか大きくなっていないにもかかわらず、画面の横幅は約3mm大きくなっている(詳しくは後述)。解像度は458ppiと変わっていないとはいえ、電子書籍、とくにコミックなど固定アウトのコンテンツを表示するのに有利な仕様だ。また筐体が従来より薄くなっているのもポイントと言える。
注目したいのは、Ceramic Shieldの採用により、耐落下性能が4倍向上したとされていることだ。本製品はiPhone 5s以前に似たデザインに戻ったことで、本体を両側から挟むようにして持ちやすくなっているので、落としにくさと壊れにくさ、この2点を両立させていることになる。むしろ性能向上よりこちらのほうが直接的なメリットを感じられるかもしれない。
またカメラは、暗所でのオートフォーカスに有利なLiDARスキャナを搭載することに加えて、このiPhone 12 Pro Maxは広角レンズがiPhone 12 Proより明るく、光学ズームレンジも4倍ではなく5倍と、ワンランク上のスペックを実現している。これら目当てでこのiPhone 12 Pro Maxを選択するユーザーもいるだろう。
一方で、新型コロナウイルスの影響下にある現在、マスクと相性のよくないFace ID以外の生体認証方法が搭載されなかったのはやや疑問だ。たとえば電車の乗り換えにあたって読書を中断して画面をロックし、また解除して読書を再開するように、外出先でロック・アンロックを繰り返す機会が多いと、多少なりともハンデになるだろう。
サイズが大きいのに意外に持ちやすい
今回登場したiPhone 12シリーズからは、iPhoneには充電器とイヤフォンが同梱されなくなった。よって本製品の付属品は、実質的にLightningケーブルだけだ。パッケージも大幅なスリム化を果たしている。
実際に手に持った感覚としては「サイズが大きい」のは当然として「そのわりに持ちやすい」ということだ。従来のiPhone 11 Pro Maxは側面が丸くカットされていたので、無理な持ち方をすると手が滑って落としそうになることもしばしばだったが、本製品は角に指を引っ掛けられるので、片手でも安定して保持できる。
本製品は側面ギリギリまで画面があるため、持ち方によっては不意にページがめくられるなどの誤操作が起こってもおかしくないが、試したかぎりではそのようなことはない。むしろ従来モデルのほうが、持ち方が不安定になりがちで、そうした誤操作は起こりやすかった印象がある。
一方、これは製品そのものの問題ではないが、MagSafeに対応したことで、スマホバンドやリングが使いにくくなったのはマイナスだ。一般的に、筐体の大きいスマートフォンならば、スマホバンドやリングで持ちやすくしようと考えるユーザーも多いはずだ。筆者自身、従来のiPhone 11 Pro Maxは、保護ケースの上からバンドを貼り付けて使用していた。
しかしながらこのiPhone 12シリーズは、MagSafe充電器を背面に装着できるようになったため、スマホバンドやリングなどのオプションを背面に貼り付けると、MagSafeが使えないという問題が発生する。どのようなスタイルで運用すべきか、決めかねている人も多いだろう。
そうした意味で(長期的にどうするかは追って考えるとして)従来よりも片手で持ちやすいことは、ひとまずスマホバンドやリングなしで使えるという意味でありがたい。今後ケースを買い足すにあたっては、こうした持ち方の部分は、意識しておく必要はあるだろう。
従来モデルよりひとまわり大きいコミックの表示を実現
さて電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルに、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。電子書籍ストアはApple Booksを使用している。
冒頭にも述べたように、本製品の最大のポイントは、画面が大きいことだ。これにより、従来のiPhone 11 Pro Maxと比べても、コミックなど固定レイアウトのページを大きく表示できる。
横幅を実測してみたところ、iPhone 11 Pro Maxが68mmなのに比べて、このiPhone 12 Pro Maxは71mmということで、ひとまわり大きく表示できる。たった3mmと思うかもしれないが、対角線ではなく横幅で3mmというのはそれなりの差だ。
またテキストコンテンツについても、画面が縦に伸びたことで、1行に表示できる文字数が1~2文字ほど多くなっている。あくまでもApple Booksでの話で、ほかのストアやコンテンツでは未検証だが、以前のiPhone XS Max→iPhone 11 Pro Maxへのモデルチェンジではなかった変化だ。
Apple Booksにはコミックを縦スクロールで読めるモードがあり、これをオンにした場合は、そのぶん多くの情報量を1つの画面内に表示できる。ストアのランキングや、ライブラリなど、縦スクロールのページについても、それだけ多くの項目を1画面に表示することが可能だ。
ところで本製品はiPhone史上最大のサイズだが、では小型のiPad miniと呼んでも差し支えないかと言われると、アスペクト比が異なることもあり、少なくとも電子書籍ユースでは明らかに「No」だ。実際、コミックの表示サイズは比較にならないほど違う。
ただし解像度は458ppiと高いため、強引に見開き表示にしても、細部までディティールはきちんと読み取れる。こうしたポテンシャルについては、ある意味でiPad miniを上回るものがある。
電子書籍のビューアとしても実力派
最後に電子書籍ユースにかぎらず、実際に使ってみて感じた点もいくつか書き留めておきたい。
まず1つ気になったのは、背面カメラの厚みが従来より増したせいで、テーブルに置いたときの傾きも増していることだ。iPhone 11 Pro Maxと比べた場合も、またiPhone 12 Proとの比較でも、明らかに違いがある。カメラ・テーブル双方に傷がつかないようにするためにも、また安定性の面からも、保護ケースで段差を緩和してやるとよいだろう。
また、前面のノッチ部分は、従来からサイズが変わっておらず、邪魔な印象は否めない。前面カメラでもナイトモードが利用可能になるなど、機能自体は進化しているのだが、パンチホールタイプのカメラを採用している他社製品との比較では、ノッチ部分の横幅の広さは、どうしても気になってしまう。
以上見てきたように、ツッコミを入れたくなるポイントはちょくちょくあるのだが、その多くは機能優先でそうなったものであり、全体として優れた製品であることに変わりはない。もともとかなりヘビー級の製品とは言え、大型化したにもかかわらず重量が増していない(226g)のもよい。あとは11万7,800円(税別)からという価格とどう折り合いをつけるかだろう。
おそらくカメラ機能に魅力を感じて購入する人が多いであろう本製品だが、今回見てきたように、電子書籍のビューアとしてもなかなかの実力派だ。カメラ目当てで本製品を購入した暁には、ぜひ電子書籍も試してみてほしいと思う。