山田祥平のRe:config.sys
電気あっての通信、電気なければただの……
2025年11月22日 06:32
6回目となるTOKYO Data Highwayサミットが開催された。東京都庁第一本庁舎の大会議室に「つながる東京」の未来社会像を担う通信事業者が一堂に会し、その意見交換を行なった。このサミットは東京都が「TOKYO Data Highway基本戦略」に基づき、超高速モバイルインターネット網の早期整備を目指して開催している会議だ。
世界最高の通信環境を享受するために
第5回会議「首都防衛に向けた通信環境のあり方」に続き、2025年のテーマは「『つながる東京』の未来社会像」で、小池百合子都知事と、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなどの通信事業者8社の代表者が参加、各社のプレゼンテーションが行なわれたあと、多少の議論が交わされた。
座長はミスター・インターネットこと慶應義塾大学特別特区特任教授の村井純氏だ。会議そのものは固定されたメンバーで構成されているわけではないが、コアメンバーとしてのNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、つまり大手通信キャリア4社に加え、インフラシェアリング事業者のJTOWER、そして小池百合子東京都知事、宮坂学副知事など、また、NTT東日本が光ファイバー網などの固定通信インフラの観点から参加している。
東京都は3月に、「2050東京戦略」を策定しているが、今回のサミットとテーマが関連している。冒頭に挨拶に立った小池知事は、1901年に報知新聞が未来技術を予測した例を挙げ、技術進歩の早さについて夢のある展望を議論したいとした。
今回が6回目であることから分かるように、このサミットが始まったのは2019年のことだった。これまでの成果として、都のアセット(施設)の基地局設置への開放、公衆電話ボックスの活用、非常用電源の強靭化、衛星通信設備の配備などが着実に進められてきた。そして今、2050年のビジョンとして「世界最高の通信環境でつながる東京」の実現を目指し、多様な技術を組み合わせて通信が途絶えない街を構築しているわけだ。
通信各社が考える将来の展望
大手通信キャリア各社のプレゼンテーションの内容は次のような概要だった。
まず、NTT東日本は、AIによる予兆検知でプロアクティブな対応が可能となり、ウェルビーイング、食の安定供給、インフラ保守、防災などの課題を解決する今後の社会を予測している。将来のネットワークはIOWN技術などを活用した分散型になるとし、信頼性の高いネットワークと増大する電力消費への対応が不可欠と指摘した。
続いてNTTドコモは、6GやIOWNを基盤としたAIとICTプラットフォームで、交通、防災、医療などの都市課題を省エネルギーで最適化するスマートシティの実現を目指すとした。レベル4自動運転に不可欠な遠隔監視において、スライシング技術を活用したクリアな映像伝送に取り組んでいるという。
一方、KDDIは、デジタルインフラとスマートシティの2層構造で未来の東京像を目指すとする。この夏の高輪ゲートウェイへの本社移転を機に、人の流れを予測して店舗運営やオンデマンド交通に生かそうとしているほか、5Gに加え、衛星通信「Starlink」サービスを開始。災害対策ではドローンを活用する「フェーズフリー」の考え方を提唱し、全国1,000カ所のドローンポート展開を目指すという。それによって全国どこにでも10分で駆けつけられるようになるらしい。
また、ソフトバンクは、AIエージェントやVR/ARが普及し、「AIとつながる」ことがサービスの核になると展望する。次世代社会デジタルインフラとして高性能AIデータセンターを構築中で、屋内や地下空間でも100%の信頼性を持つネットワーク構築で都との連携を要望していた。同時に2027年頃から非地上ネットワーク(NTN)事業に注力し、デジタルツインで未来をシミュレーションする構想を提示した。
さらに、楽天モバイルは基地局拡大を最重要課題とし、災害対応の教訓から衛星通信の有効性を認識しているとして、2026年にも衛星通信サービス開始を予定していることや、楽天グループの総合力と独自開発の日本語LLMを活用し、「誰一人取り残さないデジタル都市東京」の実現に貢献するとアピールした。
JTOWER社からは、通信トラフィックが2020年から2040年までの20年間で348倍に増えるという話が出た。また、消費電力はデータセンターで857倍、ネットワークで383倍増えるという予想も。同社はインフラシェアリングの専門会社として、複数のキャリアが1本のアンテナタワーを共用するための設備を提供している。スペースがない、電気を準備するにも10年ぐらいかかるといった課題がある中で、東京に大きなデータセンターを作るのは難しいかもしれないが、こういった分散型エッジデータセンターみたいなものを東京都がドライブして、AIの基盤を作っていくことなどを提案した。
電力あっての通信
興味深かったのは、各社のプレゼンテーションが終わり、村井教授がまとめにはいったところでの発言だ。ここに引用しておこう。
「デジタルインフラというのは、皆様のお話からあるようにデジタルデータ、それからデジタル技術は電力がないといけないんです。これは通信各社だけではできない。力を合わせなきゃいけないことだと思うんで、まあこの点も、国の方ではワットビットっていうことで進めている政策でもあるわけです」(村井教授)
ワットは電力、ビットは通信を意味する。この両方を効率的に整備し、官民協力のもとに全体の最適化を目指すわけだ。
ちなみに東京都は「東京とどまるマンション普及促進事業」を進めている。災害による停電時でも、自宅での生活を継続しやすいマンションを「東京とどまるマンション」として登録・公表し、普及を図っているのだ。この事業を利用すれば、登録している分譲マンションの管理組合や賃貸マンションの所有者などを対象に、簡易トイレや、エレベータに設置する防災キャビネットなど、防災備蓄資器材の購入への補助を得ることができる。
考えてみたら、何らかの理由で電力の供給が絶たれたら、マンションでの生活はほぼアウトとなる。避難所に頼るのも難しいかもしれない。これが都市部の悩みだ。
ガスは使える可能性が高いが、給湯器やガスコンロは100V電源を使う高機能機は使えない。もちろんIH機器は100%を電力に頼る。
水道については、6階、7階程度の場合でも、加圧給水方式や高置水槽方式ではポンプが停止して断水する。三相200Vで数KWの出力をポータブル電源で工面するのは大変だ。
シンプルな固定電話は使える可能性は高いが、光電話やIP電話は使えない。各戸にあるONUの電源が切れたり、共用部の集合装置の電源が切れることで、インターネットが使えなくなる。
エレベータは停止し、集合玄関のドアもどうなるか分からない。
各戸の備えで、飲料水や生活用水は何とかなるだろうし、ポータブル電源やモバイルバッテリでスマホも使えるかもしれない。昨今のポータブル電源は、冷蔵庫や電子レンジの利用もある程度可能だし、短時間に太陽光パネルで継ぎ足し充電もできる。カセットコンロもあるし、備えをすることであまり憂いなく過ごせる可能性もある。
情報収集手段としてのTVやラジオはどうかというと、仮に、各戸の備えによってTVの電源を確保できたとしても、TVのアンテナや有線放送からのパススルー電波を共聴するシステムへの電源が断たれていたりすれば映らない。目の前にスカイツリーが見えていて、電波も出ているのに、それで搬送されているはずの放送が視聴できないこともあるわけだ。
集合住宅に居住しているのなら、電力が絶たれると何ができなくなるのかを調べておいたほうがいい。そしてそれを回避する方法がないのかを調べるなり、今後のマンション全体における対策のテーマにしておこう。
もちろん、通信を頼れるモバイルネットワークは命綱だ。それが使えるだけで、TV放送も配信で見れるし、ニュースサイトでの情報収集、SNSでの安否確認などなど、何だってまかなえる。だからこそ、1週間くらいの停電でも、スマホのバッテリだけは心配ないようにしたいものだ。
20Wh程度のバッテリを搭載したスマホが家族全体で4台あるとすれば合計80Wh。スマホのみの充電に限定すれば、1週間でも500Wh程度の容量を確保できれば安心だ。とにかくできることから準備をしておこう。











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