山田祥平のRe:config.sys
長期的にカラダを測定して健康のトレンドを把握したい
2025年11月15日 06:15
いつまでも健康にいるためには、今、自分の身体がどのような状態にあるのかを正確に把握しておく必要がある。さまざまなバイタル情報はもちろん、体組成などの推測によるデータも含めて日常的に記録しておくのは大事なことだ。今回は、エレコムから新製品の体組成計を借りることができたので、そのインプレッションを紹介したい。
より正確に体組成を知る
エレコムが体重・内臓脂肪レベルなど13項目を測定可能な体組成計のニューモデル「HCS-BTWFS01」を発売した。筑波大学との産学連携の製品で、体重はもちろん、内臓脂肪レベルなどの13項目を測定可能ながら、廉価に設定された低価格モデルだ。
専用アプリ「ELECOM Healthcare」を使い、クラウドデータとして蓄積された13項目(体重・体脂肪率・BMI・基礎代謝量・骨格筋率・内臓脂肪レベル・骨量・皮下脂肪率・FFMI・ボディタイプ・前回体重差・体脂肪量・骨格筋量)を確認することができる。
エレコムと筑波大学との産学連携は、体積推定方式を採用した内臓脂肪レベルや体脂肪率、骨格筋率などによる正確な測定を実現していることだ。エレコムと筑波大学との連携は2016年からで、家庭用として初めてMRIによる体積推定方式を採用して正確な内臓脂肪レベルを評価できる体組成計を発売したそうだ。
内臓脂肪は、へそまわりのCT画像1枚から面積で算出するのが一般的だった。だが、体積推定方式では、胸の下~腰上までの腹部全体のMRI画像24枚から内臓脂肪体積を算出して、内臓脂肪の立体的な測定データに基づいた評価をする。筑波大学の研究発表についてはプレスリリースに詳細が解説されている。
もちろん、この体組成計がMRI測定機能を持っているわけではない。この方法で得られた最も正確なデータを、体組成計が推測する推定アルゴリズムに生かしているわけだ。つまり、測定の答え合わせに、正確な内臓脂肪の体積を評価基準としていることになる。
体組成計は、微弱な電流を体に流し、その電気抵抗値(インピーダンス)から体内の水分量や脂肪量を非侵襲的、つまり体を傷つけたり、体内に医療器具などを挿入したりしない方法や手法の1つである生体電気インピーダンス法(BIA法)で各種組成を推定している。
それで得られた値と答え合わせに使うMRI測定の正確な内臓脂肪体積を比べ、体組成計で得られた電気抵抗値がこれくらいなら、内臓脂肪の体積はこれくらいになるという、極めて精度の高い「推定アルゴリズム(計算式)」を完成させたのだ。
体重を測るだけで体組成が測定される
こうしたストーリーはともかく、製品の使い方はとても簡単だ。製品をパッケージから取り出し、製品裏面の電池カバーを外して同梱のお試し用アルカリ乾電池(単4×3)をセットする。そのあと、使用位置の重力加速度の影響補正のために地域を設定する。日本全国が北は北海道、南は沖縄まで5つの緯度帯に分類されている。
製品には4つの電極が装備されている。4つのすべての電極に足の裏が接触するように裸足で乗ると約10秒で測定が完了する。
完了はするのだが、この製品単体で確認できるのは体重だけだ。測定後のデータは体組成計自身が直接そのままクラウドに送る。
この手のデバイスの多くは、スマホアプリとBluetooth接続し、アプリがデータをデバイスから受け取り、それをクラウドに送る。だが、この製品はそうはなっていない。日常の測定で体組成計がスマホと通信することはないのだ。
新アプリの「ELECOM Healthcare」をスマホにインストールして起動すると、スマホとのBluetoothでBLEプロビジョニングが行なわれているようで、スマホの接続されたSSIDが体組成計に設定される。この初期設定の完了後、体組成計はスマホと通信することはなく、ペアリングされることもない。
以降、体組成計はWi-Fiを通じてクラウドとの通信ができるようになる。いったん体組成計がクラウドと通信できるようになれば、スマホの接続先が変更されてもかまわない。もう、スマホと体組成計が通信することはないからだ。
残念なのはこの体組成計のWi-Fi対応が2.4GHz帯(IEEE 802.11b/g/n規格)のみの対応で、5GHz帯には非対応である点だ。この製品のためだけに2.4GHzのアクセスポイントをキープしなければならない。同社によれば、この製品を低価格帯モデルとして販売することが主目的のためだとのことで、5GHz対応には部材の大幅変更と、ファームウェアやアプリの改修が必要になるため見送られたという。
こうして体組成計がクラウドサービスの「ELECOM Healthcare Cloud」につながり、測定のたびにその体組成計の結果がそこに送られ、デバイスからはデータは削除される。
スマホアプリの「ELECOM Healthcare」で、データを更新すると、クラウドと通信して測定データがダウンロードされるという仕組みだ。ここには今のところ制限なしにデータを格納しておけるという。だから、体組成計を買い替えるなどしても、このクラウドに接続できればデータを引き継げる。
ちなみにこの製品は測定したユーザーの測定データを個別に判断する。基準はシンプルで、前回測定体重との差分を判断し、あらかじめ指定したしきい値からはみ出している場合は別のユーザーとみなすという仕組みだ。しきい値については±nキロで指定しておける。
体重がほぼ同じユーザーが複数いる場合など、しきい値で識別できなかった場合は、測定後のデータがアプリ上で候補者として提示され、手動でユーザーを選択してデータを紐づける必要がある。このあたりの処理は少し手間がかかるかもしれない。
膨大なデータ量を蓄積しているのにそれらの連携が難しい現実
測定結果は、アプリ上で、表やグラフで確認することができる。だが、そのビジュアルや表項目の自由度が低いのが残念だ。たとえば、任意の日付に測定した結果としての体重と他体組成データを一覧することはできるし、体重の推移をグラフで確認することもできるのだが、体重グラフに重ね合わせることができるのは体脂肪率と骨格筋率だけだ。時系列での関連を明確に判断するのは難しい。
個人的に、体重はその日の食事などに大きく影響を受けてkg単位で上下することが多いのだが、体脂肪量や骨格筋量はほぼ同じで、日常のトレーニングなどで少しずつ増えていったりする。体重、体脂肪量、骨格筋量の3要素が一目で分かればいいのに、それらの推移を一度にチェックすることができない。グラフへの項目追加くらいはもっと自由度があってもいいんじゃないだろうか。
もちろんデータの出力もできる。ただCSVでの出力は体重と体脂肪率のみだ。それ以外はPDFで全データを出力するが、体組成については出力されない。PDFでは測定日ごとのサマリーは出力されるが、体組成の詳細値は含まれない。ここはまだまだ改良の余地があるだろう。
低価格帯ということで、対応が難しいというのも分かるが、そこにあるデータが自由にならないというのはくやしい。ソフトウェア的にはまだまだだといってもいいだろう。だが、この先のためにも継続してデータを蓄積しておけば、将来の対応時に役に立つだろう。膨大な体組成データは、将来的にAIやより高度なヘルスケアサービスと連携する際の基盤となる。現在はCSV出力が限定的でも、クラウドにデータが蓄積されていること自体が、この製品の大きな価値と言えるだろう。
今、各種の健康デバイスのアプリは測定した値を、iOSならヘルスケア経由でApple Healthアプリなどに、Androidならヘルスコネクト経由でGoogle Fitアプリなどに連携することができる。個人的には朝に血圧、体温、体組成を測定し、それぞれのアプリに蓄積、ヘルスコネクトで統合している。スマートウォッチも各種のデータをヘルスコネクトに連携している。だが、これがまた一筋縄ではいかない。オムロンコネクトで体温のデータが連携されない不思議も解決しないでいる。このあたり、もうちょっと整理ができないものだろうか。
スマートウォッチの歩数データや心拍データなども含めて、自分のカラダを詳細に知ることは健康の第一歩でもある。このAIの時代に、各種のデータを俯瞰するのがこれほど難しいというのは、どうにももどかしい。











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