山田祥平のRe:config.sys
大きなデスクトップの功罪
2024年2月24日 06:24
4K解像度125%拡大の42.5型モニター2枚という環境が広大であることは間違いない。そうは言っても使い方を工夫しないと消費電力の増大などサステナビリティを真逆でいくことにもなりかねない。何よりも、出先で使うモバイルノートの画面との落差が大きすぎるというのは、結構深刻な問題だ。
モビリティは妥協の産物
持ち運びのために小さなものでガマンしたり、同様に軽いことを求めて機能を犠牲にするなど、モビリティは人間に何かと妥協を求める。
23.8型のモニターをスーツケースに入れて出張に出かけるのを常としていた自分自身でも、それは出張先のホテルで数泊というそれなりの時間を、調べ物や原稿書きなどの仕事のために費やすことが分かっているからそうしていたまでで、数泊でも観光旅行のための宿泊には、そうした装備を持ち込むことはない。
そうは言っても14型前後のモバイルノートに加えてほぼ同サイズのモバイルモニターは持参したりもする。それは万が一を考えてのことだ。遊びのための旅行でも、行った先で美味いものを食いたいとか、名所について調べたいといったニーズがあって、そのためには、PCがうまく機能してくれたほうがいい。
それに、フリーランスの宿命として、緊急にちょっとした作業をしなければならないこともある。やはりそのときに使えるのがスマホやタブレットだけでは心許ない。そして、それは、結局のところ画面の面積という作業領域の広さに依存する安心感だ。
広いと言っても4K解像度125%拡大の42.5型モニター2枚のデスクトップに同時に開く各種アプリのウィンドウはたかだか6つ程度だ。それ以上開いても、背後に隠れてしまうのでは、何のウィンドウを開いているのか把握するのは大変だ。
だが、ブラウザやエクスプローラーのウィンドウは、タブの機能があるので、開いているウィンドウは1つでも、複数のサイトを同時に開くことができる。それをうまく活用して、タブ切り替えの達人になれれば効率は高まる。でも、それが難しい……。
ちなみに、各種アプリが開くウィンドウの表示管理については、PowerToysのfancyzonesや、Windows標準のスナップレイアウトが便利だ。広い画面、狭い画面を問わず、画面スペースを無駄なく使えるし、単一のモニターを複数のモニターであるかのようにも扱える。これらのユーティリティについては、ぜひチェックしてみてほしい。ノートPCのモニターのように比較的小さな表示デバイスでも役に立つはずだ。
開いたタブと、閉じたタブ
個人的に愛用しているブラウザはGoogle Chromeで、用途によってはWindows標準ブラウザのEdgeを使う。大きなモニターを並べたことで、自分的にはブラウザの使い方が少し変わった。タブ一覧を見ることが多くなったのだ。
ぶっちゃけ、サイトを開いているか、これから開くかというのに違いを感じることはない。それが目の前に表示されているのなら違いはあるが、タブを切り替えるのと、ブックマークの一覧から選んで開くのとで情報を参照できるまでの時間はそう変わらない。
それでも作業を続けるうちに、いつの間にかたくさんのサイトを開いている。たくさんのタブを開くと、どのサイトを開いているのか把握するのが難しくなる。特に、検索結果の一覧から開いたようなサイトは、あとで見つけられなくなってしまうこともある。
検索結果など、なんらかのリンク一覧からサイトを開くとき、Chromeを使っている場合にはShiftキーを押しながらクリックすることが多い。これは新しいウィンドウでサイトを開くためのおまじないだ。新しく開いたウィンドウでの情報を一通り参照したら、そのウィンドウは閉じてしまう。
たとえばPC Watchのトップページにはその日のニュースのタイトルが並んでいる。気になるタイトルがあればそれをShift + クリックで新しいウィンドウで開いて中身を読み、読み終わったらそのウィンドウを閉じる。そのほうが元のページに戻るときに発生するリドローの時間を節約できるはずだ。
これはタブでも似たようなことができる。新たなタブでリンクを開くにはCtrl + クリックを使うが、それでは新たなタブがページを開いても、表示フォーカスがそのタブに移動しない。開いて移動するには、Ctrl + Shift + クリックと、それなりに複雑なショートカットが求められる。これらのショートカットはChromeとEdgeで共通だ。
開いていても見えなければ閉じているのと同じ
こうして気が付くと、デスクトップには大量のウィンドウとタブが開いている。もはやぐちゃぐちゃだ。Alt + TabもWindows + Tabも役に立たず途方に暮れる。今、どのサイトを開いているのかを把握するにはどうするかを考えるが、もうこれは考えても仕方がない。
Edgeの場合なら、垂直タブ機能が装備されている。Chromeのタブは水平タブのみでウィンドウ上部に横方向に並ぶが、Edgeではウィンドウ左上、最初のタブの左側にあるタブ操作メニューボタンをクリックし、[垂直タブバーをオンにする]ことでタブは垂直に表示されるようになり、たくさんのタブを開いても、そのタイトルを把握しやすくなる。
Chromeには標準で垂直タブ機能は装備されていないが、ウィンドウ左上の[タブを検索]ボタンをクリックすると、現在開いているタブの一覧を垂直方向に表示する。また、閉じてしまったタブについても最近のものはここで確認し、再度開くことができる。Chromeでは、複数のウィンドウを開いていても、すべてのウィンドウのタブ一覧が表示されるのは使いやすい。
ただ、ズラリと並ぶページタイトルから目的のものを目視で探し出すのは大変だし、検索機能はページタイトルの文言しか対象にならない。そんなことなら見たタブは閉じる、閉じないタブはページが見える状態でキープするという原則を守ったほうがいい。そのためには広い画面が必要だということだ。
それ以外のタブについては開いていようが閉じていようが次の参照に影響するほどの時間の浪費にはならない。
その一方で、文書を書いたり、プレゼン資料を作るような作業では、参考資料を紐解いていくデータを集める作業が終わっていれば、それほど大きな作業領域が必要になるわけではない。
大きな画面が要るのは資料を集め、作るものの方向性を決めるまでだ。場合によっては、その先はAIに任せてしまうということも一般的になっていくだろう。そこをAIに任せてしまうのか、それこそAIには任せられない人間ならではのクリエイティブな領域として守り続けるのか、そこがまだ自分の中で決まらない。
コンピュータを使って自分は何をしたいのか、コンピュータには何を期待し、何を任せればいいのか。そして、自分にしかできないことは何なのか。
大きなモニターが提供する広い作業領域は、その禅問答への解を導き出すに違いない。それまでは工夫が求められない饒舌な環境で作業してみることが必要だ。そのためのもっとも手っ取り早い方法が大画面モニターによる広大なデスクトップの確保だ。