山田祥平のRe:config.sys
モニター/ディスプレイ、その役割としての気づき、対話、再生
2024年2月17日 06:17
大きなモニター/ディスプレイは、PCの使い方に少なからず影響を与える。そんな視点は過去にもここで取り上げたりもしている。ある意味でモニターは環境だ。だから自由なほうがいい。人間の視野はそう広くはないので、仮に部屋の壁全体がモニターだったとしても、必ずしも便利が手に入るとは限らない。そういう難しさもある。
刺激が冷めないモニターまでの距離
前回は、現行の環境にチューナーレスTVのXiaomi TV A Pro 43を追加し、42.5型という比較的大きなサイズのモニター2台体制にしたらPCの使い方にどんな変化が訪れるのかを調べるチャレンジを始めたことを書いた。
チューナーレスTVとは言え、TV用のハードウェアをPC用のモニターとして使うことについては懸念もあったが、モニター表面の光沢も妥協の範囲内だ。窓からの光が差し込む午前中や昼間は少しやっかいに感じるが、夕方以降は特に気にならなくなる。これは部屋の窓の向きなどにも依存する。
弊害を最小限に抑えるためには、Windowsの表示モードをWindows、アプリともに、白っぽくするライトモードで使うといい。ダークモードでは自分の顔が映るなどの弊害で使いにくい。
また、壁紙を使わず背景を白に設定しておく。これは以前から、ウィンドウとデスクトップのコントラストを低くして疲労を抑制するためにそうしてきた生活のハックでもある。
実際の運用では、2台のモニターのうち、右側に設置したモニターの上部にはアームで27型モニターを配置してある。つまり合計3台のマルチモニター体制だ。3台目のモニターは27型で決して小さくはないのだが、42.5型と並べると小さく見える。
新たに追加した左側の1台には3つのHDMI入力ポートが装備されているが、その1つにPCからの映像信号を入れている。また、Dell 6-in-1 USB-Cマルチポート アダプター - DA305を用意し、そのHDMI出力をモニターの2つ目のHDMI入力にしてある。
このアダプタは最大90WのUSB PDパワースルーに対応しているので、大きめの出力に対応したUSB PD対応ACアダプタから電力を供給、ほかにも、USB-Aのポートにキーボード、マウスのためのプロプライエタリーUSBドングルを装着してある。
これをノートPCに接続すれば、その拡張モニターとして使え、どのPCをつないだときでも、同じマウスやキーボードが使える。もちろん充電もできる。いわゆるなんちゃってUSB-C対応をこのアダプタを使って実現できている。
日常的にはデスクトップPCの映像出力を映し出しているが、作業に応じてノートPCを接続するときに便利なようにしてある。このサイズ感のモニターだと、設置の自由度が制限されるので、PCからの距離も遠くなりがちだ。
映像を伝送できるUSB-Cのケーブル長は2m(通常ケーブルでは1m)に制限されるので足りない場合も多い。だから、かなり長い距離を手軽に映像伝送できるHDMIケーブルというのは渡りに船でもある。もっと高速なポートが必要なら、ここにThunderbolt 4のドックなどを接続してもいいだろう。
現在の環境では、設置した2台の42.5型モニターまでの瞳からの距離は約80cmを確保できている。正面のもの、そして左前方で斜めにこちらに向かっているもう1台ともに、顔を正面に向ければ似たような距離だ。一般に、TVでは画面の高さの3倍の距離を確保する必要があるとされている。つまり、42.5型の場合、縦は約53cmなので約1.5m離れて見るのが望ましい。
さすがにそれは無理だ。ただ、この距離は映画やTVコンテンツ、静止画写真といったものを見る場合の話だ。これらのコンテンツはフルスクリーンで表示され、小さなモニターでも大きなモニターでも見えているもののサイズが異なるだけで内容は同じだ。だから、ながめる推奨距離がモニターサイズに依存する。つまるところは画面全体を視野に入れるための距離感だ。
PC画面のようなコンテンツを表示する場合、その制限を考える必要はない。推奨距離の半分しか確保できなくても、見やすいサイズで表示されたウィンドウやその中身としてのコンテンツだけに注目すればいいからだ。
Webブラウザや各種アプリのウィンドウサイズ、そして、その表示倍率は好きにできる。画面全体が常に視野に入っている必要はなく、42.5型だろうが23.8型だろうが、画面までは同じ距離で構わない。
そうは言っても、画面上部を見るときに首を上げ下げするのはつらいかもしれないし、左右に長細すぎることによる首振りも億劫だ。そのあたりの損益分岐点となるサイズが42.5型あたりではないかと思う。そのサイズの中にさまざまなサイズのウィンドウがオーバーラップし、タイル状になったりして表示されるのだ。
幸い、Xiaomi TV A Pro 43は、画面の高さ調節はできないが、机上高5cmと、比較的設置時の高さが低い。画面上部を見る障害は軽いほうだ。そこで、これまで使っていた既存のモニターは、机上高4cmだったのを1cmほど高くした。並べて同じ高さにしたかったからだ。
同じサイズ/解像度のモニターを使ったマルチモニターがいい
Windowsから見たときの42.5型というモニターサイズは、本当なら108%表示が必要だ。だが、Windowsの拡大縮小設定のスケーリング幅が25%なので、2台の42.5型モニターは125%表示に設定している。また、上部の27型モニターは本当なら170%表示にしたいところだが、同じ理由でそれができないので175%表示になっている。
Windowsには「メインディスプレイ」という概念があって、その下部にタスクバーを横たえたり、ウィンドウが開くデフォルトのモニターになったりするのだが、ここでは27型モニターをメインディスプレイとして設定している。
これで擬似的にではあるが、メインに使うモニターの上部にタスクバーを置いたのと同様の効果が得られる。ポインタは突き抜けてしまうが、アプリのリボンやメニューバーと近い位置にあったほうが何かと便利だ。
ただ、昨今もてはやされているWindows + CによるCopilotのウィンドウはメインディスプレイの右端に開く。つまり27型のモニターの右側にウィンドウが開くので、その対話のためには自分の首を上に振る必要がある。そこをなんとかしたいところではあるが、2台の42.5型モニターはメインディスプレイにしたくない。とりあえずはガマンしているが、Copilotとの対話の機会が多くなってきたら、対策を考えようと思っている。
同じスケーリング設定の同じサイズのモニターが横に並んだことで、モニター間のウィンドウの移動の煩わしさがなくなった。いちいちウィンドウのサイズを手動調節しなくても、ドラッグするだけでそのままのウィンドウサイズを維持して移動できるからだ。
個々のモニターには、曖昧ながらも役割を与えている。「気づき」「対話」「再生」だ。自分と正面に対峙している42.5型モニターは対話のために使う。今回追加した左前方の42.5型モニターは再生のために使う。そして、上部の27型モニターは気づきのための存在だ。
正面のモニターはアプリとの対話に使う。日常的には何も表示していない。作業机の上には何も置かないイメージだ。タスクバーさえあると邪魔。必要に応じてブラウザを開き、エディタを開きといった具合に、主にインタラクティブな操作が求められるウィンドウを開く。
これらのアプリをフルスクリーンにすることはまずない。そういう意味では対話用のモニターはこんなに大きい必要はないかもしれない。でも、Premiere ProなどAdobeのアプリのように1つのウィンドウ内に複数のウィンドウ的要素をタイル表示する環境ではフルスクリーンにしたりもする。
左側のモニターは再生用だ。配信動画をフルスクリーンで見たり、TeamsやZoomなどのWeb会議アプリをフルスクリーンで開く。また、作業中のファイルを置いたフォルダ類のウィンドウを開いたりもする。壁紙的に画面の左半分にOutlookの受信トレイ、右半分に予定表の週表示が開いている。
参考資料のPDFを参照するような場合は、このモニターの右半分を使う。A4縦サイズ相当の書類1ページを120%サイズくらいで読みやすく表示できる。場合によってはこのスペースにブラウザを開くこともある。
配信動画やWeb会議アプリをフルスクリーン表示したときには、再生役モニターのメール受信トレイと予定が背後に隠れてしまう。そこで役立つのが27型の気づきモニターだ。ここには、2つ目のOutlook受信トレイ、LINEアプリ、Facebook Messengerアプリのウィンドウが置いてある。作業中にチラチラと視線を向けるだけで、新着メールや各種メッセージの到着を知ることができる。TVClockというアプリを使って現在時刻も大きく表示している。
日常的には、こんな感じで3つのモニターを使い分けているが、PCでの作業内容は人それぞれだ。長時間Premiere Proで動画編集する人と、PhotoshopやInDesign、Illustratorなどでクリエイティブな作業をする人、PowerPointやExcelなどのアプリを単体で使いながら資料を作る作業をする人ではモニターの使い方は異なる。
とにかく1台のPCに複数のモニターがつながり、それらが物理的にも論理的にも連続している状況をうまく活用できるようになれば作業効率は格段に向上する。
PC操作に習熟すればノートPCの13.3型程度のディスプレイ1つで、使うアプリを切り替えつつ、神業的に作業を進めることもできる。だが、そのテクニックの修得には時間もかかればある種のスキルも求められる。その時間と手間、スキルがなくても一定以上の効果が得られるのが、大きなモニターの導入という力業だ。そしてここは念を押しておきたいのだが、スキルがあれば、もっと高い効果が得られるのだ。そこがミソだ。