鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第162回:4月9日~4月13日


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●キーワード


4月10日

■■ 日本ポラデジタル、3万円を切る低価格USBフィルムスキャナ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010410/pola.htm

フィルムスキャナ(film scanner)

 ネガやポジフィルムから直接画像を取り込むための、高解像度な透過型イメージスキャナ。

 イメージスキャナは、紙やフィルムなどを光学的に走査(scan)し、撮像素子を使って反射光や透過光の強弱を検出。これをデジタル値に変換し、画像(image)として取り込むデバイスである。紙に書かれた原稿などを取り込む一般的なイメージスキャナは、原稿に光をあてて反射光を検出する反射型だが、フィルムスキャナの場合には、フィルムの裏から光をあてて透過光を検出する透過型が用いられる。透過原稿ユニットが用意されている一部のフラットベッドスキャナでは、フィルムスキャナと同じようにフィルムも取り込むことができる。が、小さなフィルム向けに特化したフィルムスキャナの場合には、1,200~3,000dpi(※1)と非常に高解像度な設計になっており、フィルム向けのローディング機構や各社のフィルム特性に合わせた補正といった工夫も凝らされている。

(※1) dots per inchの略で、1インチ(2.54cm)あたりの画素数。

【参考】
□フラットベッドスキャナ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000601/key121.htm#flatbed
□コンタクトイメージセンサ(Contact Image Sensor[CIS])
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000831/key133.htm#CIS
□CCD(Charge Coupled Device)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980324/key23.htm#CCD
□CMOSセンサ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000120/key104.htm#CMOS


■■ Intel、Ethernetベースのストレージ規格「iSCSI」のソースを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010410/intel2.htm

iSCSI(Internet Small Computer System Interface)
 アイスカジー、インターネットスカジー

 Adaptec、Compaq、Hewlett-Packard、IBM、Quantumなどが参加する、IETF(Internet Engineering Task Force)のIPS(IP Storage)ワーキンググループで標準化が進められている、TCP/IPを使ってSCSIパケットをやりとりするためのプロトコル。

 ANSI(American National Standards Institute)で標準化が行なわれているSCSI(Small Computer System Interface)は、一般には、古くからある8bitや16bitのパラレルインターフェイスを指す。が現在の規格そのものは、このパラレルインターフェイス(SPI [SCSI Parallel Interface])をはじめとするさまざまな物理層と、その上で行なわれるデバイス間のやりとりを規定した規格の総称であり、例えばIEEE 1394に接続されたハードディスクにアクセスする際には、パラレルSCSIと共通のコマンドセットが使われている。

 このSCSIの上位プロトコルは、コマンドやレスポンスなどのメッセージとデータをパケットにしてやりとりする仕組みになっている。例えばSPIの場合には、バスの使用権を獲得したり信号を送る部分は、ハードウェアに依存した物理層の処理だが、フロッピーディスクインターフェイスのように、信号線を直接制御してヘッドを動かす処理は一切無く、デバイスの制御はあくまでメッセージのやりとりで行なわれる。

 iSCSIは、このSCSIのメッセージをそのまま(あるいは暗号化して)TCP/IPのパケットにカプセル化してやりとりする規格で、Ethernetや通信回線などの既存のIPネットワークを使い、LAN上や遠隔地にあるSCSIデバイスに直接アクセスできるようにする。

□IETF IPS(IP Storage) Working Group
http://www.ietf.org/html.charters/ips-charter.html
□iSCSIドラフト規格(v05-2001年3月1日版)
http://www.ietf.org/internet-drafts/draft-ietf-ips-iscsi-05.txt
【参考】
□Ultra320 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010215/key153.htm#Ultra320
□Ultra 160 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981105/key53.htm#Ultra160
□Ultra2 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980407/key25.htm#ultra2scsi
□IEEE 1394
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971118/key7.htm#ieee1394
□Fibre Channel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/key152.htm#FC
□TCP/IP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980729/key40.htm#TCP/IP


4月11日

■■ 元麻布春男の週刊PCホットライン
   仕事マシンの次のOSを考える
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010411/hot140.htm

IPv6(Internet Protocol version 6)
アイピーブイシックス、アイピーブイろく

 IETF(Internet Engineering Task Force)が、'95年に策定した、IP(Internet Protocol)のバージョン6。

 インターネットの標準プロトコルとしてお馴染みのTCP/IPは、主にパケットの伝送を行なう「IP」と、通信制御を行なうIPの上位プロトコルTCP(Transmission Control Protocol)を組み合わせた名称である(※1)

 現在使われているIPは、「IPv4」と呼ばれるバージョン4のプロトコルで、32bit(4byte)のアドレス空間(※2)を持つ。2の32乗個のアドレスは、フルに活用しても43億足らずであり、'90年代に入ると、やがて来るであろうアドレスの枯渇が叫ばれるようになった。IETFでは、92年から次世代IP「IPng(IP next generation)」の検討を開始。'94年に仕様案の中からSimple Internet Protocol Plus(SIPP)が採択され、この「IPv6」が誕生した。

 IPv6では、32bitだったアドレスを128bit(※3)に拡張。フルに活用すれば、340澗(※4)という途方もない数のアドレス空間が利用できる。プロトコルでは、このアドレスの前半64bitをネットワークを識別するためのネットワーク部に(※5)、後半64bitをそのネットワーク内の機器を識別するホスト部として使用。どちらも、IPv4全体より大きなアドレス空間があり、従来のIPアドレス感覚で各組織にネットワークアドレスを配布でき、ネットワーク内では、NAT(Network Address Translator)のような特別な仕組みを使うことなく、全ての機器に直接グローバルなIPアドレスを割り当てられるようになる。ホスト部は、EthernetのMACアドレスをそのまま格納することができるので、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)などを使わずに、一意のグローバルアドレスを自動生成することも可能だ。

(※1) IPの上位には、TCPのほかにUDP(User Datagram Protocol)という、IPをほとんどそのまま利用した(要するに接続や切断、エラー訂正といった基本的な通信制御を行なわない)プロトコルもある。

(※2) ネットワークに接続されたデバイスを識別するために付ける、系統化された論理的なアドレスで、一般には「192.168.1.1」という様に8bitずつ4つに区切り、10進数で表記する。

(※3) IPv6のアドレスは、16bitずつ8つに区切り、「:」で区切った16進数で表記する。

(※4) 澗(かん)は10の36乗。1兆が10の12乗なので、これを3回かけ合わせた天文学的な数字。

(※5) 組織などに割り当てられるネットワークアドレスは、ネットワーク部の前半48bitで、残り16bitは、ネットワーク内をさらに複数のネットワーク(サブネット)に分割するためのアドレスとして利用する。前半の48bitは、さらに16bitのTLA(Top Level Aggregator)と32bitのNLA(Next Level Aggregator)で構成されており、上位プロバイダから下位プロバイダ、各組織というように、通信経路にしたがって系統立てて付与される。

□RFC2460 - Internet Protocol, Version 6 (IPv6) Specification
ftp://ftp.nic.ad.jp/rfc/rfc2460.txt
【参考】
□TCP/IP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980729/key40.htm#TCP/IP
□NAT(Network Address Translator)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#nat
□DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#dhcp
□MACアドレス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000706/key126.htm#MAC
□グローバル/プライベートIPアドレス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000406/key115.htm#IP


4月4日

■■ 三菱電機、17インチ高輝度ダイヤモンドM2管を量産開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010412/mitsu.htm

カソード(cathode[K]~略号はギリシャ語のKathodosから)

 真空管やブラウン管などの電子管や、ダイオードなどの半導体素子のマイナス電極 (陰極)。

 真空管は、ヒーター(フィラメント[※1])で熱したマイナス極から活発化した電子が飛び出し、プラス極(陽極)に引き寄せられて電流が流れるという仕組みである(※2)。この原理は、1883年にエジソンによって発見され(エジソン効果)、1904年にフレミングの手によって最初の真空管が発明された。フレミングの真空管は、いわゆる2極真空管と呼ばれるタイプで、電子が暖められた側に来た時にだけ電流が流れる整流作用を持つ。この電子が飛び出す側をカソードといい、飛び出した電子を受け取るプラス電極をプレート(plate)、あるいはアノード(anode)という。

 この2極真空管の名がそのまま付けられたダイオード(diode)は、2極真空管と同じ2つの電極を持つ半導体素子である。半導体は、製造時に加える微量の不純物によってその性質が大きく変化する。電子過剰な添加物なら、マイナスの電子が電荷を伝導するN(Negative)型半導体に、電子不足している添加物なら、電子が飛び出した抜け殻である正孔(ホール)が伝導するP(Positive)型半導体になり、この2種類の半導体を接合(PN接合)して電気を流すと、接合境界付近で様々な現象が発生する。2極真空管と同じ整流作用を使うタイプは整流ダイオード。発光現象を利用するのがLED(Light Emitting Diode)。デジタルカメラなどに使われている撮像素子には、光起電力現象を使ったフォトダイオードが組み込まれている。そんなダイオードの、順方向の電流を流すマイナス電極側をカソード、プラス電極側をアノードという。

 1906年には、フォレストが両極の隙間にグリッド(grid)という格子を設け、グリッドにかける電圧(通常はマイナス)でカソードとプレート間の電子流を制御できる3極真空管を発明する。こちらは、グリッドの微小な変化をカソード/プレート間の大きな変化に変える増幅作用を持つ。これと同じような働きをする半導体素子がトランジスタやFETで、その構造も3極真空管と良く似た3層構造になっている。ただし電極には、カソードやプレートという名は使われず、カソードにあたる順方向のマイナス側を、エミッタ(emitter)/ソース(source)(トランジスタ/FET、以下同じ)、プラス側をコレクタ(collector)/ドレイン(drain)、真ん中のグリッドに相当する極をベース(base)/ゲート(gate)という。

 発明者の名にちなんだブラウン管は、CRT(Cathode-Ray Tube~陰極線管)とも呼ばれる。これも真空管の一種だが、電子を飛ばして極間に電流を流すのが目的ではなく、飛び出した電子を蛍光スクリーンにぶつけて発光させる、蛍光灯のような存在である。

 電子をスクリーンに向けて勢い良く発射する装置を、一般に電子銃と呼ぶ。これは、真空管と同様の仕組みになっており、じょうごのような形をしたブラウン管のくびれた先(一番奥の部分)に、ヒーターと電子を放出するためのカソードが取りつけられている。プラス極の方は、飛び出した電子を受けとめるのではなく、加速してスクリーンにぶつけるカタパルトのような役目を担っている。これをアノードといい、ここには非常に高い電圧がかけらている。ちなみに、そのままではただの点にしかならないので、テレビやPCのディスプレイに使われているブラウン管では、水平方向と垂直方向の制御を行なうコイル(偏向ヨーク)を取り付け、磁力を使って電子線の方向をコントロール。ユーザーから見て左から右、上から下に向かって高速に走査し、蛍光体を次々に発光させて画面全体を描画している。

(※1) 真空管には、ヒーターを使ってカソードを暖める傍熱管と、ヒーターとカソードが一体になった直熱管があり、直熱管のカソードのことをフィラメントという。

(※2) フランクリンが凧を使って雷を採集した頃には、電気は、その元となる何かが、たくさんあるプラス側から不足しているマイナス側に移動するものと考えていた。その後、電気の元となる電子が発見され、電気の正体はマイナスの性質を持つ電子の移動であることがわかった。そのため、電気の流れと電子の流れとは逆の関係になってしまった。ちなみに、誰もが中学で習ったこの電気の根源に関わる現象は、2002年に導入される学習指導要領からは削除され、義務教育では教えない事柄になってしまった。

【参考】
□LED(Light Emitting Diode)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990423/key74.htm#LED
□CCD(Charge Coupled Device)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980324/key23.htm#CCD
□CMOSセンサ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000120/key104.htm#CMOS

[Text by 鈴木直美]


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