鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第153回:2月5日~2月9日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


2月5日

■■日本IBM、15,000prmの36GB HDD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010205/ibm.htm

Ultra320 SCSI
ウルトラさんにーまるスカジー
ウルトラさんびゃくにじゅうスカジー

 ANSI(American National Standards Institute~米国規格協会)で策定中のSPI-4(SCSI Parallel Interface 4)に規定される、320MB/Secの転送速度を持つ同期転送モード。

 SCSI-3(Small Computer System Interface 3)は、さまざまなメディアとコマンドセットから成る規格の総称で、物理層には、旧来からのパラレルインターフェイスと、IEEE 1394、Fibre Channel、SSA(Serial Storage Architecture)といったシリアルインターフェイスを使用。SPIは、この中のパラレルインターフェイスの仕様を規定した規格である。

 '95年に策定された最初の規格は、それまでのSCSI規格の物理インターフェイス部分をまとめたもので、電気的には、5Vのシングルエンドとディファレンシャルの2タイプ(※1)が、バス幅には、8bitと16bit、32bitを規定。SPI-2からは、3.3Vの低電圧でドライブする、16bitのLVD(Low Voltage Differential)が追加されている。

 転送モードには、2本のタイミング信号(REQ/ACK)を使って、データを出力するごとに応答し合う非同期転送と、データを出力するタイミングと応答を待たずに先送りできる回数をあらかじめ決めておき、その範囲内で連続転送を行なう同期転送とがある。

転送時には、非同期でメッセージをやり取りした後、高速な同期転送に切り替えてデータを転送するようになっており、規格が新しくなるに連れより短いタイミングで出力できる高速な同期転送モードが追加。SPI-3からは、タイミング信号の立ち上がりと立下りの両方でデータを出力するDT(Double Transition)モードも追加され、同じタイミングで2倍の高速転送が行なえるようになっている。

 一般に「Ultra3 SCSI」あるいは「Ultra 160 SCSI」と呼ばれている「Fast-80」モードは、DTを使ったLVD専用の同期転送モードで、ST(Single Transition)のFast-40(これもLVD専用)と同じタイミングで、転送速度は2倍の160MB/Sec。「Ultra320 SCSI」と呼ばれている「Fast-160」モードでは、タイミングを25ns(40MHz)から半分の12.5ns(80MHz)に短縮し、さらに2倍の320MB/Secを実現している。

(※1) データは、bitの状態を信号線にかける電圧のON/OFFで表わし伝送する。シングルエンド(Single Ended[SE])は、1本の信号線とグランド間でこのON/OFFを行なう単純なタイプで、グランドとの電位差をチェックしてbitの状態を判定する。一方のディファレンシャルは、現在はHVD(High Voltage Differential)と呼ばれているタイプで、一般にはほとんど用いられていない。こちらは、2本の信号線を使い、一方をONにしたらもう一方をOFFと、反対になるように駆動し、2本の信号の差をとってbitの状態を判定する。SEが「0V」と「+5V」の識別であるのに対し、こちらは「+5V」と「-5V」の識別になるわけだ。信号の減衰やノイズの混入で、仮に±2Vの電圧の変動があったとしよう。SEは「+2V」「+3V」を識別しなければならなくなるが、HVDは「+3V」「-3V」とまだまだ余裕があり、伝送特性が優れていることが分かる。

【参考】
□Ultra 160 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981105/key53.htm#Ultra160
□Ultra2 SCSI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980407/key25.htm#ultra2scsi
□IEEE 1394
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971118/key7.htm#ieee1394
□Fibre Channel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010209/key152.htm#FC


■■国内メーカー6社が共同で次世代液晶技術の開発会社を設立
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010205/altedec.htm

アクティブマトリックス(active matrix)

 液晶ディスプレイの駆動方式の1つで、アクティブ素子(トランジスタのスイッチ)を使ってセルをON/OFFするタイプ。

 個々のセグメント(同時にON/OFFするひとまとめの素子)に電極を付け、1つ1つを個別にON/OFFするタイプをセグメント駆動あるいはスタティック駆動という。電卓の数字のようなパターンの少ない液晶表示では、このタイプが用いられることもあるが、液晶ディスプレイの様に大量の画素を個別にON/OFFしなければならない場合には、画素の数だけ電極を用意するのは効率的ではない。そこで通常は、縦横の格子状に張りめぐらした導線に一定のタイミングで信号を送り、交点の画素を次々に点灯させて表示する方式が用いられている。これを、マトリックス駆動あるいはダイナミック駆動という。

 マトリックス駆動には、導線にかけた電圧で直接液晶セルを駆動するタイプと、アクティブ素子を使って駆動するタイプがあり、前者を単純マトリックス方式あるいはパッシブマトリックス方式、後者をアクティブマトリックス方式と呼んでいる。

 単純マトリックス方式は、一般には電位差に敏感なSTN(Super Twisted Nematic)液晶を使用。構造が単純で安価なのだが、画素数が増えるに従って画素の駆動時間(※1)が短くなってしまうため、表示ムラが目立ったり、コントラストの低下やレスポンスの悪化を招く。そこで、高解像度が必要なノートPCの液晶ディスプレイ等では、画面を分割して個別にドライブするタイプが用いられており、これをDSTN(Dual-scan SuperTwisted Nematic)と呼んでいる。最近は、応答性が以前よりも改善されていることをアピールするために、HPA(High Performance Addressing)液晶という名で呼ばれることが多いが、このHPAはDSTNのことである。

 一方のアクティブマトリックス方式は、コストはかかるものの、間に入るアクティブ素子が、液晶を確実にON/OFFするため、画素数に関係無く、画質や応答性に優れたディスプレイを提供することが出来る。使用するアクティブ素子には、通常TFT(Thin Film Transistor~薄膜トランジスタ)が使われており、この様なタイプをTFT液晶と呼んでいる。TFTのほかには、「金属-絶縁層-金属」という構造のダイオードを使ったMIM(Metal Insulator Metal)というタイプもある。こちらは、TFTよりも構造が簡単なので安価に製造できるが、性能面で劣るため、PC用のディスプレイ用としては、もはや使われていない。

(※1) 個々の画素に電圧をかける時間を短くしていかないと、全体がまんべんなく点灯しているように見えなくなってしまう。

【参考】
□FSTN(Film [compensated] Super Twisted Nematic)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000907/key134.htm#FSTN
□TFT(Thin Film Transistor)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971216/key11.htm#TFT
□ポリシリコンTFT液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980924/key47.htm#polysilicon_TFT
□HR-TFT(High Reflective-Thin Film Transistor)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980331/key24.htm#HRTFT
□DSTN(Dual-scan SuperTwisted Nematic)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981126/key56.htm#DSTN
□MVA(Multi-domain Vertical Alignment)液晶
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990210/key64.htm#MVA


2月6日

■■ダイジェストニュース (2月6日)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digest/

OFDM(Orthogonal Frequency Divison Multiplex)

 地上波デジタルテレビ放送や音声ディジタル放送(ラジオ)に使用される、マルチパスに強いデジタル変調方式。直交周波数分割多重方式。

 オーソドックスな無線通信は、信号波を1つの搬送波で変調して伝送する。例えばAMラジオなら音声を、テレビなら映像と音声をまとめた信号を、搬送波の振幅で表して伝送する(AM~Amplitude Modulation~振幅変調)。ラジオのチューニングダイヤルやテレビのチャンネルは、受信機の周波数をこの搬送波に合わせて受信するためのもので、受信した搬送波の振幅から元の信号波を取り出し(復調)再生する。こうすることによって、音声や映像といった遠くへ伝播する能力の無い信号が、電波を介して伝送できるわけである。

 単純なこのAM変調の場合には、搬送波の周波数を中心とした上下両側に、信号波の周波数分の周波数帯域を使用する。AMラジオなら約15kHz(音声は7.5kHzまで伝送)、テレビは、約6MHz(テレビは下側波帯をカットして半分だけ伝送している)である。

 デジタル変調も理屈は同じで、搬送波の振幅や位相、周波数のいずれか、あるいはこれらを組み合わせたものに、ビット(一般には1bitをそのまま割り当てるのではなく、これをシンボルと呼んでいるが、ここでは分かりやすくビットとしておく)の状態を割り当てて伝送する。同じ変調方式なら、1bitを表す時間を短くすれば、より高速に伝送できる。これは、周波数を上げるということであり、使用する周波数帯域が広がる。逆に、時間を長くすれば、伝送速度は落ちるが使用帯域を狭めることができる。

 電波は、送信所から直接届くとは限らず、ビル等の色々なものに反射してから届くことがある。異なる経路を通って来れば、いかに高速な電波であっても到着時間は微妙に異なる。このような現象をマルチパスといい、テレビのゴーストがこのマルチパスの現れである。デジタル伝送の場合にも、マルチパスはゴーストと同様の現象を引き起こす。この時、1bitを表す時間がある程度長ければ、同じ遅延が重なっても相対的な干渉は少なく、信号を適切に識別できる可能性が高い。が、時間が短くなればなるほど干渉の度合いが大きくなり、エラーが起こりやすくなってしまう。

 とても長い前置きになってしまったが、OFDMでは、元の信号を数学的な方法(フーリエ変換)を使って複数に分割し、狭い周波数帯域を使用する複数の搬送波を使って伝送する。すなわち、伝送速度を上げるために1bitの伝送時間を短くするのではなく、搬送波の数を増やそうというアプローチである。さらに、1bitの時間軸方向にガードインターバルという冗長なタイミングも設けられているため、マルチパスに非常に強いという大きな特徴を持っている(この特性を積極的に利用すると、同じ周波数帯を使った電波の中継も可能)。また、信号が使用帯域内に分散しているため、一部の周波数帯に障害があってもエラーが分散され、エラー訂正をより効果的に機能させられる可能性が高い。

【参考】
□パスダイバシティ(path diversity)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990428/key75.htm#pathdiversity
□CDMA(Code Division Multiple Access)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980526/key31.htm#CDMA
□DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum~スペクトラム拡散方式)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991125/key99.htm#DSSS
□周波数ホッピング方式(Frequency Hopping [FH]、Spread Spectrum [FH-SS])
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#FH-SS

[Text by 鈴木直美]


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