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PCゲームで最強は“21:9”という新事実!没入感マシマシのおすすめウルトラワイドゲーミングモニターはこれだ!
- 提供:
- エムエスアイコンピュータージャパン株式会社
- ベンキュージャパン株式会社
2023年8月4日 06:30
PC業界では近年、アスペクト比21:9以上のウルトラワイドタイプのゲーミングモニターに強い関心が寄せられるようになってきた。 ウルトラワイドゲーミングモニターは、一般的な16:9の画面よりも横に広い領域を映し出せるため、段違いに没入感が高まるのが特徴だ。
今回はそんなウルトラワイドゲーミングモニターのおすすめ製品として、MSIとBenQの2社のモデルを紹介したい。前半ではウルトラワイドモニターを使うことのメリットなどを解説し、そのあとで各製品をレビューしていく。
知っておきたいウルトラワイドモニターのメリット
現在のモニターやTVの横辺と縦辺の比率、いわゆるアスペクト比は16:9が主流だ。
16:9のアスペクト比は、TV放送のデジタル化のタイミングで標準アスペクト比として採用され、それまでのブラウン管時代のアナログTVで使われてきたアスペクト比の4:3よりも、横に広いことから「ワイドアスペクト」と呼ばれるようになった。
これに対して、ウルトラワイドモニターのアスペクト比は21:9や32:9となっており、16:9のワイドアスペクトよりもさらに横に広いということから「ウルトラワイド」と呼ばれるようになる。
昔の古い4:3映像を、16:9のワイドアスペクトのTVにフル画面で映すと、ビニョーンと横に伸びた感じで表示され、人物などが横に太って表示される様子を見たことがあると思う。実際、既存の16:9のワイド映像を、ウルトラワイドのモニターに表示させれば、同じようにビニョーンと横に太って見づらいだけとなる。
そのため、ごくまれに、ウルトラワイドモニターを使ってゲームプレイすると「ビヨーンと太った映像でプレイするハメとなる」と勘違いしている人がいるようなので、最初にその誤解を払拭しておきたい。
以下の図にあるように、PCゲームにおける3D系タイトルの多くは、プレイヤー位置を中心に、ゲーム進行に関わるゲーム世界のデータ群をメモリ(メインメモリやグラフィックスメモリ)に展開している。つまり、描画の際には、設定された視界の角度や向き、そして画角(≒アスペクト比)を設定してGPUにリアルタイムで出力させている。
その描画結果を映像としてTVやモニターにHDMIやDisplayPortなどの映像伝送手段で出力しているわけだ。なので、そうした3Dグラフィックスベースのゲームでは、GPUに描画させる映像のアスペクト比が16:9固定である必然性はない。もともとゲームそのものは、ポテンシャル的に(というか基本設計上は)、16:9のアスペクト比以外でも映像を描画できるのである。
そして、PCゲーミングやeSports系タイトルのプレイが盛んな欧米エリアを中心に、こうした横に広いアスペクト比を生かすべく、今から10年ほど前から「ウルトラワイドゲーミング」という概念が発祥した。
ウルトラワイドゲーミングの利点は、アスペクト比16:9の画面の左右端よりもさらに広い情景を見ることができるという点にある。
たとえばレーシングゲーム。冒頭の画像にあるように、 三人称視点モードでは、アスペクト比16:9では見えなかった左右から迫り来る敵車の様子や、道幅をより正確に知ることができ、サイドバイサイドのデッドヒートを増強された臨場で楽しめるようになる。
コクピット視点であれば、車内情景と車外情景を、アスペクト比16:9の時よりも格段に広く把握できるようになるので「実車の中にいる感」が増して、車両の挙動を把握しやすくなったりする。
ガンシューティングやアクションアドベンチャーなどのゲームでは、より広範囲のゲーム世界の情景を見渡すことができるようになるため、敵の接近をアスペクト比16:9の時よりもいち早く察知することが可能になる。
オープンワールド系のゲームであれば、広大な景観をパノラマ的なビジュアルで楽しめるようになり、ゲーム世界へより深く入り込んだような感覚を楽しめる。
人間の視野角は正面を0度とすれば、左右に100度近くあるとされ、つまり視野角は200度前後はあることになる。これは当然、アスペクト比16:9よりも格段にワイドな画角である。
なので、一人称視点タイプのゲームであれば、ウルトラワイドゲーミングだと、普段の視野角に近いビジュアル感覚でゲーム映像が楽しめるようになり、キャラクターとの一体感が増すのだ。
特に湾曲タイプの映像パネルを採用したウルトラワイドモニターでは「映像に取り囲まれている感(≒サラウンド感)」が増すので、VRに近い没入感を得られることもあるだろう。
それこそ、すでにクリア済みのゲームであっても、ウルトラワイド環境でプレイすると、一味違ったおもしろさを発見することがあるほどだ。
対応ゲームは意外に多く、ゲーム性(や競技性)の観点から、意図的に16:9アスペクト比に固定されていなければ、3DグラフィックスベースのPCゲームは、かなりの高確率でウルトラワイドで楽しむことができる。
プレイするにあたっては、普通にゲームを起動して、グラフィックスオプションのゲーム画面の解像度設定で、購入したウルトラワイドゲーミングモニターの解像度を選択するだけでOKなことが多い。
なお、現状市販されているウルトラワイドモニターの最大アスペクト比は32:9だが、これを採用する製品の数は限られ、比較的高価だ。それに加えて、解像度が増えることによる描画負荷の増大により、PCの要求スペックも上がってしまう。そのため、ここではスタンダードなウルトラワイドモニターとして、21:9の製品をおすすめしたい。
ウルトラワイドモニターの注意点
注意点もある。それは家庭用ゲーム機とつないでも、ウルトラワイド画面にはならないというところ。家庭用ゲーム機に接続しても、ゲーム映像はウルトラワイド画面の中央のアスペクト比16:9領域だけに表示されるか、あるいは「例の」太っちょ表示になってしまうだけ。
ウルトラワイドゲーミングモニターのAmazonのレビューには「PS5に対応していなかった!」という低評価レビューが散見されるが、本稿の読者は、こういうことにならないように(笑)。
ところで、最近までウルトラワイドゲーミングの認知度が日本で低かったのは、eSportsブームが盛り上がる昨今以前は「ゲーム=家庭用ゲーム機(ゲーム専用機)で遊ぶもの」という図式が支配的だったからだ。
確かに「画一化されたGPU性能のゲーム機」と「アスペクト比16:9のTVでの表示を前提に設計されたグラフィックス設計」の組み合わせでは、ウルトラワイドに対応することは難しいのも理解できる。
さて、PCゲーミングやeSportsブームが浸透し始めた最近の日本では、ゲーミングPCの人気も上り調子のようだ。筆者連載(ページ下部の関連記事に掲載)の反応なども見た感じでは、欧米エリアほどではないにせよ、コアなPCゲーミングユーザーが、ウルトラワイドなゲーミングモニターに関心を示し始めてきたような手応えを感じた。
今後は日本でも、ウルトラワイドゲーミングモニターは増えていくはずなので、気になっている人は本稿を参考にしていただきたい。
それではここからは実際にウルトラワイドゲーミングモニターの紹介を行なっていこう。
MSI「MPG ARTYMIS 343CQR」~最強レベルのカーブで没入感アップ!
エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の「MPG ARTYMIS 343CQR」(以下343CQR)は、画面サイズが34型で、アスペクト比21:9のウルトラワイドゲーミングモニターになる。解像度は21:9のモデルでは採用例の多い3,440×1,440ドットだ。リフレッシュレートは最大165Hzと高く、応答速度も最大1msと高速だ。
21:9の34型がどんなサイズ感かというと、27型サイズのモニターを横に引き伸ばしたものと言えば分かりやすいだろう。27型でアスペクト比16:9、2,560×1,440ドットのモニターがカーブを描きつつ、ググっと横に広がったという感じだ。
343CQRの外観上の最大の特徴は、1,000Rの湾曲率だ。湾曲率1,500Rの採用例が多い21:9のウルトラワイドモニターの中にあって、最強レベルの曲がり具合となっているのだ。つまり、ユーザーはより画面に覆われているように感じるので没入感が高い。
スタンドとインターフェイス
スタンド部とモニター部との組み付けは4点のネジ留めで行なう。100×100mmのVESAマウントにも対応するので、汎用のモニターアームとの組み合わせも可能だ。
スタンド部は左右15度、上下の傾き-5度~+15度、そして約10cmの高さ調整に対応する。
接続端子は背面側にあり、HDMI 2.0が2系統、DisplayPort 1.4が1系統、そしてDisplayPort Alternate Modeに対応したUSB Type-Cが1系統ある。
USB Type-C端子は、対応するPCやスマートフォンとの接続が可能なほか「DisplayPort→USB Type-C変換ケーブル」を用いることで、追加のDisplayPort端子としても使える。接続性はとても優秀だ。
このほか、USB 3.0ハブ機能関連のUSB端子、そして3.5mmのステレオミニジャックのヘッドフォン端子を備える。本機はスピーカーを内蔵していないので、PC側のオーディオデバイスを使わない場合、この端子にヘッドフォンやスピーカーを差す必要がある。
なお、モニター部の左側と右側にはマウスのケーブルのひっかかりを回避できるマウスバンジーを装着可能となっている。1つ付属しているので、利き手に応じて好きな方に取り付けよう。
また、心憎いアイディア機能として、モニター部の右側面から引き出して使えるヘッドセットハンガーがある。机上に雑然と置いてあるよりも、モニターの横にかかっていた方が見た目にもかっこいいので、ぜひ活用したい。
表示性能と画質
続いて、画質性能を見ていこう。
液晶パネルは非光沢タイプのVA型を採用する。VA型は視野角の広さでIPS型に一歩譲るも、画面に視線が直交する状態で見た時のネイティブコントラスト性能はIPS型液晶パネルの数倍も高いという特長がある。
日本メーカーの液晶TVのハイエンドモデルに、依然としてVAパネルが好んで採用されるのは、この部分を高く評価するメーカーが少なくないからである。
平面タイプの液晶パネルを、画面中央前に座っているユーザーが画面端を見るとき、その視線は画面に対して斜めに入射することになる。この時の見映えにおいて、VA型液晶パネルは視野角の不利が露呈するが、湾曲型ではそうはならない。
湾曲型の液晶パネルでは、画面の外周付近の画素も、ユーザーの方に向くことになるため、視線が画面に対して斜めになりにくい。湾曲型VAならば、画面中央にいるユーザーが、画面端を見ても、理想に近いハイコントラストな映像を見ることができるのである。
色域はDCI-P3色空間カバー率92.7%を謳う。白色光を色度計で計測してみたところ、以下のようになった。
結果はご覧の通りで、赤緑青の各スペクトラムピークが鋭く立ち上がった感じ。各スペクトラムが分離しているが、これは珍しいことではない。最近では、発色性能を重視して設計された液晶モニターの光スペクトラムは、よく似たものになることが多い。発色性能のよいバックライトLEDが広く普及しているということなのだろう。
本機に対し、普段筆者が使っている4K/HDR映像評価テストを行なってみたが、VA型液晶らしいパリっとしたコントラスト感の高い映像となっていた。宇宙空間に無数の星々が輝く映像では、液晶特有の黒浮きが少なく、液晶モニターにしては深い漆黒の闇の表現がすばらしかった。
343CQRは、HDR映像の表示に対応しており、VESA DisplayHDR 400認証を取得しているとのこと。
最大10,000cd/平方mまでの多様な試験映像を入力して計測・視聴した感じでは、本機は700cd/平方mまでの階調は正しく表示できていた。筆者が個人的に感心したのは、600cd/平方m以上の高階調表現だ。高輝度領域でも、色が白に飛ばず、各色味が褪せないのだ。色のダイナミックレンジは相応に高いと思う。
表示の高速化機能
343CQRの高速化機能をチェックしていきたい。
まずは入力遅延から。343CQRは、卓越した入力遅延性能を実現する「ゼロレイテンシ」機能が搭載されており、これを有効化することで高画質化処理をバイパスして入力遅延の削減を優先させるモードに移行する。入力遅延の計測はこの状態にしてから、「4K Lag Tester」(Leo Bodnar Electronics)を用いて行なった。
計測結果は、入力解像度によらず、60Hz時に約1.4ms、フレームレート換算で約0.08フレーム、120Hz時で約1.0ms、フレームレート換算で約0.12フレームとなった。
残像低減機能は、液晶画素の応答速度の調整は「応答速度」にて調整可能で「Normal/Fast/Fastest」が選択できる。いわゆるオーバードライブ機能なので、設定値を高めすぎると、映像の種類によっては、リンギング現象が発生して、二重輪郭が散見されることがある。「Normal」設定で試し、二重輪郭が見えないようであれば徐々に上げていこう。
もう1つの残像低減機能は「MPRT」(Motion Picture Response Time)機能だ。これは、バックライトの高速明滅によって行なう黒挿入技術になる。この機能は、映像表示のリフレッシュレートが100Hz以上に設定されていないときには利用できない。
343CQRは、可変フレームレートの映像を美しく表示できる「FreeSync Premium」機能を搭載。48~165Hzの範囲のリフレッシュレートで利用できる。
その他の機能 - 「Gaming Intelligence」でPCから画面設定が可能
343CQRは、モニターの設定をPC上から手軽に行なえるユーティリティ「Gaming Intelligence」を利用できる。
製品のサポートページからダウンロードしてインストールし、USBでPCとつなぐことでGaming Intelligenceがモニターを認識するようになる。
Gaming Intelligenceを使えば、モニター本体のボタンを押すことなく、事細かな設定を行なえるため、ゲームやムービー視聴、写真編集など、使用状態に応じてプロファイルを頻繁に切り替えるといった使い方をするユーザーに向く。
もちろん輝度や応答速度の変更もでき、PBP(ピクチャーバイピクチャ)/PIP(ピクチャーインピクチャ)機能の切り替えと調節まで行なえるため、非常に便利である。
なお、「MPRT」についてはすでに説明したが、同じくユーティリティからオン/オフできる「HDCR」(High Dynamic Contrast Range)というものもある。これはフレーム単位に最適なコントラスト最適化を行なうもの。いわゆるフレーム単位の動的コントラスト調整機能だ。
このほかにも、暗いシーンで自動的に明度を上げて視界を確保する「ナイトビジョン」も実装されている。
また、「Optixスコープ」はゲーミングモニターにはよくある画面の中央に「照準器」を強制表示する類の機能。しかし、ほかとは異なりユニークなのが、画面中央に「照準器」ではなく、画面中央を拡大表示するというもの。一人称シューティングタイプのゲームであれば、まるでズームスコープを組み付けたような映像表示になるということだ。操作には慣れが必要だろう。
まとめ
343CQRはよくできたウルトラワイドゲーミングモニターだ。さまざまなテスト映像を見た筆者の所感としては、全体的に「階調よりもコントラスト感重視の画作り」の思想を感じた。つまり、色階調よりも黒の締まりを優先しているという印象だ。
とは言え、高輝度性能を生かした映像表現は文句なしだ。たとえば、HDR映像中の逆光や炎、ゲームの発光エフェクト表現などの、いわゆる「自発光表現」は、有機ELにも肉迫する鋭さを感じる。
なので、本機と相性が良いのは、比較的明るいシーンが主体的な映像コンテンツやゲームになるかと思う。
BenQ「MOBIUZ EX3415R」~おもしろ2画面機能でゲームファン大興奮!
ベンキュージャパン(BenQ)の「MOBIUZ EX3415R」(以下EX3415R)は、MOBIUZシリーズに属するアスペクト比21:9の34型ウルトラワイドゲーミングモニターだ。解像度3,440×1,440ドット、湾曲率1,900Rの非光沢IPS型液晶パネルを採用したモデルになる。リフレッシュレートは最大144Hz、応答速度は最大1msと十分高速だ。
34型の3,440×1,440ドット解像度のウルトラワイドは、ちょうど27型の2,560×1,440ドット解像度のアスペクト比16:9のモニターの横幅をアスペクト比21:9に拡大したようなサイズ感となる。
もしこれまでに、27型以下の16:9モニターを使っていたのであれば、使用感はそのままに、左右が広がった視聴体験が堪能できると思う。
スタンドとインターフェイス
スタンド部は左右回転±15度、上下傾き-5度~+15度、そして約10cmの高さ調節に対応する。
接続端子は背面にあり、HDMI 2.0を2系統、DisplayPort 1.4を1系統実装。ほかにUSB 3.0ハブの関連端子と、3.5mmステレオヘッドフォンジャックを装備する。
この手のゲーミングモニターとしては珍しく、出力2W+2Wでステレオの「treVoloスピーカー」に加え、5W出力のサブウーファを内蔵した2.1chサウンドシステムを搭載しているのが特徴的。
実際にこのスピーカーの音を聞いた感じでは、一般的なPCスピーカー程度の音質と音圧はあるので、ヘッドフォンを使わずに、EX3415R側のスピーカーでゲームや映像コンテンツを楽しめるだろう。
音質調整には音響プログラムがプリセットされており、筆者のおすすめは「シネマ」モード。本来は映画コンテンツ視聴向きの音響モードだと思うが、セリフやボーカルの人間の肉声音域が聴きやすく、それでいて低音も適度に増強されるので、ゲームプレイにも適していると感じた。
汎用性が高い音響モードは「ライブポップ」モードで、すべての音域がフラットよりに聞こえるチューニングとなっていた。音響モード「RCG」はレーシングゲーム用のモードとのことで、エンジン音にブーストをかける目的なのか、低音出力がかなり強化される。ちょっと特殊なチューニングだが、試してみたら、意外とEDM系の楽曲との相性もよかった。お試しあれ。
こんな感じで、EX3415Rの内蔵スピーカーは、サウンドの種類に合わせて音響モードを切り換えると、コンテンツをより楽しめる。
表示性能と画質
表示性能や画質を見ていこう。
色域はDCI-P3色空間カバー率98%を謳う。筆者の色度計で本機の白色光を計測してみたところ、以下のようになった。
赤緑青の各スペクトラムピークが鋭く立ち上がり、適度に分離しているのが分かる。
また、赤色のスペクトラムに二重のピークがあることから、KSF蛍光体を使っているようだ。この蛍光体は、グラフィックデザイン用途向けのモニターにも採用されるもの。発色性能はメーカーの主張通り、こだわって設計されていることがうかがい知れる。
実際に、普段筆者が使っている4K/HDR映像評価テストをEX3415Rに対して行なってみたが、肌色の再現性は良好だった。
暗がりの人物表現においても、ちゃんと暗い肌色が出ている。暗がりの肌色は、カラーボリュームの作り込みが甘いと、灰色や緑に変移することがあるのだが、EX3415Rはちゃんと「暗い肌色」の階調が表現できていた。
EX3415Rは、HDR映像の表示にも対応している。HDR映像の表示ポテンシャルはVESA DisplayHDR 400認証を取得しているという。最大1万cd/平方mまでの多様な試験映像を入力して計測・視聴した感じでは、本機は1,200cd/平方mまでの階調はそれなりに表現できていることを確認した。
EX3415RをDisplayPort経由で接続したときの、HDR表示が可能な最大解像度、最大リフレッシュレートについては3,440×1,440ドット/144Hzであった。ビット深度もちゃんと10bit対応となっているところにも感心した。
HDR映像は、映画もゲームも、自発光表現はDisplayHDR 400認証に相応しい及第点が与えられる。個人的にはややコントラストを強めにチューニングしている印象を感じたので、カラーモードの「シネマ(HDRi)」をリセットした上で、「Light tuner」設定を-4か-5とした方が、一般的なTVの映画モードに近くなると思う。
ちなみに、本機には輝度自動調整機能「B.I.+」が搭載されており、視聴環境に応じた輝度調整機能が働くが、これを有効化していると、変更できる画質項目が限られる仕様となっている。
「ユーザー本位の画質の作り込み」を行ないつつ、本機を活用するならば、B.I.+機能をオフにして、自分好みの画調を作り込むとよい。筆者のおすすめとしては、B.I.+オフ時はLight tuner=-5、オン時は-4が好みだった。
表示の高速化機能
表示の高速化機能についても見ていこう。
入力遅延を「4K Lag Tester」(Leo Bodnar Electronics)で計測したところ、入力解像度によらず、60Hz時に約1.4ms、フレームレート換算で約0.08フレーム、120Hz時で約1.0ms、フレームレート換算で約0.12フレームとなった。ゲーミングモニターの名に恥じない低遅延性能である。
残像低減機能についての調整は、BenQ製品では「AMA」(Advanced Motion Accelerator)の設定と、「ブレ削減」設定から行なえる。
AMAは、液晶画素に対するいわゆるオーバードライブ駆動設定に相当する。0がオフ相当で、数値を上げると応答速度が速まるが、映像によってはリンギング現象(明暗差の激しい表現が二重に見える現象)が顕著になる場合がある。最弱設定の「1」あたりから始め、見た目に異変を感じない場合は徐々に上げていこう。
「プレ削減」は、バックライトを高速に明滅させる、いわゆる黒挿入制御になる。残像が減る代わりに、映像によっては若干輝度が下がったように感じる場合があるので、こちらも活用は好みに応じて。ちなみに、この機能はリフレッシュレートが100Hz以上で利用可能となる。
もう1つ、本機は可変フレームレートの映像を美しく表示することができる「FreeSync Premium」機能を搭載するが、こちらはリフレッシュレートが144Hz以上の設定時に限って使うことができる仕様となっていた。
その他の機能 - リモコンが便利でPBP機能も優秀
実際に使った上で、おもしろかった独特な機能についての紹介をしたい。
EX3415Rには、ゲーミングモニターとしては珍しくリモコンが付属する。これがかなり便利で、モニターの背面や前面下部のボタンをいじらずとも、TVのように手元で電源オンから各種設定の操作が行なえるのだ。画面から少し離れてゲームをプレイするユーザーにとっては特にありがたい。
リモコンだけでなく、本機は独特な操作系を採用している。ちょっと最初は面食らうかもしれないが、慣れてしまえばゲームファンにとって使いやすいものとなっている。
EX3415Rは、入力切換メニューの「シナリオ」を有効化すると、HDMI×2とDisplayPortの各入力系統を「標準」(一般PC用途用)、「ゲーム」(ゲームプレイ用)、「シネマ」(映像鑑賞用)にあらかじめ振り分けておくことができるのだ。いわば入力端子ごとに基本画質モードを割り当ててしまうイメージだ。
こうすることで、たとえば2番目のHDMIにBDプレイヤーが接続されていて、ここを「シネマ」に割り当ててしまえば、入力系統を切り換えた瞬間に、映像鑑賞用の基本画調や基本設定がなされた状態で表示が行なわれる。各入力系統ごとの接続機器を固定的に運用した場合はすこぶる便利な操作系だと思う。
それと、今回の試用でかなり気に入ったのが、「マルチ入力」機能、いわゆるPIP(ピクチャインピクチャ)/PBP(ピクチャバイピクチャ)機能だ。
小画面が大画面の隅に表示されるPIPモード、いわゆる親子画面モードは普通なのだが、ユニークなのはPBPモードの方だ。
PBPモードには3つのモードがあり、1つは21:9の画面を均等に分割し、表示に選択された入力系統が2つとも1,720×1,440ドットとなるモードだ。
PCを接続すれば、21:9の半分アスペクト比「10.5:9」の正方形に近い1,720×1,440ドットの2画面をドットバイドットで表示できる。異なる2つのPCで、同時にアプリを動かしたりするのに便利だ。
もう1つは、ゲーマーには使い勝手のよい非対称な画面サイズの2画面を実現するモードだ。これは左側の16:9領域に2,560×1,440ドット解像度の画面をドットバイドット表示し、さらに同時に右側に880×1,440ドット解像度のタブレットっぽい画面をドットバイドット表示できるPBPモードだ。
左側に普通のゲーム画面、右側にDiscordのようなチャットアプリやゲーム攻略サイト、配信のコメントなどを表示するのに使える。左の大きい方の画面はアスペクト比16:9なので、家庭用ゲーム機にも適合するのだ。
ちなみに、PIP/PBPモードでは画面合成の処理系が入る関係で若干遅延は増大する。筆者の実測では、リフレッシュレート60Hz時で17.8ms、フレームレート換算で約1.06フレーム遅延、リフレッシュレート120Hz時で10.3ms、フレームレート換算で約1.24フレーム遅延となっていた。RPGのようなゲームであれば、全然プレイに支障のない遅延だと思う。
まとめ
最後に、EX3415Rがどんなユーザーに適しているのかどうかを考察して終わることとしたい。
湾曲率は数値が小さい方が強い曲がりを表すのだが、本機の湾曲率は1,900Rである。湾曲型のIPS型液晶パネルでアスペクト比21:9のウルトラワイドモニターは、湾曲率1,500Rのものが多いので、本機はどちらかと言えば、カーブは緩やかな方だと言える。
筆者が思うに「平面ではおもしろみがない。かと言って曲がりが強すぎるのは遠慮したい」、そう考えるユーザーにおすすめ。具体的には、「湾曲タイプが初めて」という人だ。本機から湾曲系ウルトラワイドゲーミングの世界に入門するのがいいと思う。